少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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襲われたアスカくんはとりあえず無事です(報告

アスカ「………」震えて奏にしがみついています。
奏「おーよしよし」弟のようなものなので頭をなでます。

翼「………」少しうらやましいという視線で見てます。


27話・話し合い

 異世界聖杯事変、のちにこう呼ばれる事件は幕を下りた。

 

 二課は変化と共に、新たな装者二名を見つけだす。

 

 アーサー王伝説から、聖槍ロンゴミニアド装者、天羽奏。

 

 同じく、円卓の盾装者、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。

 

 この事件での被害者0名、建物は高エネルギーで半壊しているもののである。

 

 そして何故かナスタージャ教授の病状など、完治に近い状態であり、その後も良好である。

 

「で、現在加工中。しかし、二人揃って適合率高いか」

「ああ、しかも槍だ。ガングニールは響に渡した以上、こいつで頑張るさ」

 

 そう言い、相棒解消することになったが、気にもせず、色々な手続きがあるため、マリア達はいまだ自由とは言えないが、別の場所で羽を伸ばしている。というよりか、

 

『私達もそっちがいいデスっ!!』

『美味しそう………』

 

 テレビ中継で、我が家のテーブルを見て騒いでいる。向こうは向こうで料理が並んでいるのだが、こっちは全部オレが作った。

 

「相変わらず………」

「お前っ、なんで女子力高いんだよ」

「なんで文句言われないといけないんだよ!?」

 

 エプロン姿で料理しているが、響も未来も頷いて、三人の友達も見ている。

 

「女の子………」

「男だよ………」

 

 そう言いながら、新たな料理をテーブルに置きながら、モニターにセレナが映る。

 

『あの、アスカさん料理できるんですね。今度教えてくれますか?』

 

「? 別にいいよ」

 

『ありがとうございます、せっかくあの人のおかげでマム達に出会えたから、みんなを守りながら、前に進んでいきます』

『セレナ………』

 

 そばで嬉しそうにするマリア。マリアはすぐに国外でアーティスト活動して、セレナは13歳で歳が止まっていたため、色々手続きするが、マリアとの関係はなるべく隠す方向らしい。

 

「まあ、マリアの方は、響と切歌達に手を出すとか裏で言ってそうだもんな」

「ああ、こちらも目を光らせてはいるが、明らかだからな………だが落としどころはここだろうと、なにも言えないと、叔父様が言っていた」

 

 色々複雑な事情が分かる者達がそう話し合いながら、セレナ、切歌、調だけは歳相当の自由な生活を優先させたいと、マリアが言っているので何も言えない。

 

 ともかく、セレナ達は今後、二課の組織で面倒を見ることになる。

 

『アスカさん、料理教えてもらうの、楽しみにしてますね………』

 

 優しく微笑むセレナに、ああと頷くが、少しだけ疑問に思うマリアがいた。

 

(………まさかね)

 

 冷や汗を流しながら、微笑むセレナを見つめる姉。

 

 しかしと、色々と自分の情報を纏める。

 

「まずはオレは抑止力と呼ばれる、世界が崩壊する事態に陥るのを回避するシステムの一部か………」

 

 主人公など、物語に出てくる大事な役の代役。

 

 または、最悪な事態を極力避ける立場へ転生する者。

 

 それにセレナも頷く。

 

『彼女と一緒にいたから知り得たことですが、アスカさんは、もしも、あり得た、かも知れない、そう言う平行世界の人物。それか別の平行世界すら悪影響をもたらす可能性がある世界、その抑止力として生まれる人物。そう言う『保険』が正式な立場のようです』

 

「英霊では無い英霊ってところだね」

 

 正式な登録はけしてされず、それでも歯車として用意されている。運命の歯車、頭の痛い話だ。

 

『彼女は、あまねく世界軸で聖杯を手に入れ、色々な問題を一つずつ見合った聖杯で、願いを叶えて、世界を欺いていたようです。アスカさんとして生まれたのは、さすがにバレた時は焦っていたようですけど』

 

 ルナアタック事変のことを話す。だが、それより目がいっていた、彼、白銀の騎士と成ったモードレッド卿に、目がいっていた。

 

 自分、龍崎アスカなど眼中になかったため、むしろこの事態を利用できないかと、ずっと見ていたらしい。

 

『………正直、マリア姉さんのあの姿は………』

『セレナ!? あの姿ってなに!?』

『だって、マム達のためだからって、持って帰るのは』

 

 慌て出すマリアに、セレナは恥ずかしそうにしている。

 

 切歌達は目を背けながら、オレは唐揚げを食べる。うん、いいできだ。

 

『ともかくアスカさんは、世界から許可をもらえましたから、この世界に龍崎アスカとして生きても問題ない。それは彼女を通して、本来アスカさんの魂を管理する存在が決断したことですから、もう心配ないです』

 

「………抑止力か、エミヤくらいしか意味分からないんだけど」

 

『ただ、根元? ってのがよく分かりません。アスカさんは根元にアクセス可らしいですよ』

 

 いまこの子からもの凄い情報を仕入れた気がする。セレナはそのまま、

 

『そもそも、アスカさんの魂事態が、すでに根元と繋がっているらしいんです。ですからグランド・サーヴァント達が出てきたようです』

 

「………そう」

 

 そうか、そうだよなと納得する。

 

 もしも、かも知れない、考えられる可能性と言う可能性の代理品であり、それらの中でまずい可能性の芽を変える役目。それは根元だと思う。

 

「根元………確か、人が近づいてはいけない領域………だったか?」

「………はい」

 

 アタランテは難しい顔で頷く。彼女も詳しくは、

 

「吾々は抑止力案件でもある、人類史修復のため、あるいは特異点にいました。マスターなら、自分が二度、特異点にいたことは知っていますね?」

「ああ」

 

 竜の魔女に、バーサーカー・アーチャーとして、もう一つは航海時代、聖杯持ちの黄金ワカメが、かつての仲間の一人として喚んだ。

 

 黄金ワカメと言ったとき、ぶっと吹き出したが無視して、そうですと頷くアタランテ。

 

 こういう時、花の魔術師辺りが来ればいいのにと思うが、そう都合良くいかない。

 

「ま、深く考えても、いまのお前はアスカだ。んなもん気にしなくてもいいだろ」

「………それもそうだな、いざと成れば、向こうから話しかけてくる」

 

 そう言いながら、いまだオレに情報と聖遺物を繋げてくれているだろう、英霊アストルフォを思い出しながら、ペンダントを見る。

 

「彼奴との令呪が無くても、オレのサーヴァントならきっと助けてくれる。もう一人の二課、みんなの仲間としてな」

「アストルフォさんか、うん、そうだね」

「私は全然お話しできなかったけど、ちゃんとお話ししたかったな」

 

 そんな話をしながら、アストルフォは何となく、照れてそうな気がする。そんな風にパーティーをして、終わりを告げた。

 

 片づけ等々し終え、寝間着に着替えて眠る。

 

 そう、静かに………

 

 

 

「さてと、本題しますか大人の皆々様」

 

 ジャックを寝かせたアタランテは、難しい顔のまま、現れる。

 

 テレビ電話で映るのは、これからする話を話せる者達。響達には、話せない。

 

「まずアタランテ、あれから推測される話で、オレは」

 

 それは少し躊躇うが、すぐに首を振り、

 

 

 

「長く、生きていけるか?」

 

 

 

 それに、アタランテは唇をかみしめながら、静かに、目を閉じ、従者として答える。

 

「不可能の可能性が高いです」

 

『なぜだっ』

 

 弦十郎、司令がすぐに尋ねたが、それの答えは、

 

「貴方は抑止、世界を存続させるシステムの一つ。なら、時間も空間、時代も何も関係無くとも、管理されるべき魂」

 

 そうだ。許した? 違う。

 

 そう思える。

 

「もしも抑止力に人権、多少の安全装置があるのなら、エミヤシロウと言う守護者の精神は摩擦しない」

 

 100を救うため10を殺し、世界を存続させ続けた錬鉄の英雄。

 

 骸の上に立ち、生前も救うために戦い、死ぬときだって誰かのために死んだ英雄。

 

 どれほど殺した? 頭がおかしくなるほど殺した。本人がいればそうしれっと言うだろう。それくらい、感覚がおかしくなるほど、彼は抑止力として働いた。

 

 そしてその変わりとも言える、エミヤと言う守護者もいる。そうだ。

 

 抑止力は単純に、世界さえ救えれば、どれほどの犠牲が出ても気はしない。世界のための犠牲。それが、その魂達とも言える。

 

 そうじゃなきゃ、救われない。まあそれは外から見たらだが、

 

「本人であるオレは無自覚。エミヤ達からすれば、望んだ道だ。どう思われようと知ったことじゃない」

 

 だが、その雇い主達の方針は、そう言ったものならば、本当にいまのオレは、自由か?

 

 答えは、

 

「否です」

 

 アタランテははっきり言う。

 

「貴方はカルデアマスター藤丸立香、人類史を守る唯一一人のマスターである可能性を持っています。だから彼と契約する吾々が、貴方と契約しています」

「そして月の聖杯戦争。ああくそ、そうか………」

 

 許されていると思ったが、結局次は確定しているし、龍崎アスカとして生きていても、英霊、聖杯と縁が切られていない。むしろ強く、強く強く結びついているではないか。

 

 聖杯にも意志があり、正史の記録から外れているとはいえ、聖杯を持つ、彼女の行動が完全に見逃されていたとは思えない。

 

 考えすぎであって欲しいが、これも彼らの掌の上。そう考えると、身体が震える。

 

『アスカくん………』

 

『アスカさん………』

 

 ナスタージャ教授と司令達が、何も言えなくなる。アタランテは静かに抱きしめる。

 

 そのまま静かに、

 

「………私はこうしていても、貴方ではなく、貴方の先、藤丸立香を見てしまう………いまは貴方に従うサーヴァントなのに」

「あの人のことが大事ってことだろ………もう一人のオレはモテモテでいいな………」

「………」

 

 アタランテは静かに、強く抱きしめる。

 

「この場にいる限り、私は貴方の弓矢と成り、貴方の人生、そして大切な人々を守る狩人として居続けます。これは、これだけは、貴方だけに誓う、貴方への願いです………」

「………」

「忘れないでください、私達は過去の貴方を見ます。ですが、けしていまの貴方を蔑ろにしない。もう一度」

 

 静かに微笑みながら、

 

「もう一度貴方に会えるのなら、今度は彼女に渡しません………」

 

 二人の男性を見て、一人の魂に狩人は誓いを立てた。

 

 月と太陽の加護、純潔の狩人の言葉を聞きながら、少しだけ前を見る。

 

「………司令」

 

『………なんだ』

 

 それは残酷なのかも知れないが、聞きたい。

 

 

 

「オレは………龍崎アスカとして生きてますか?」

 

 

 

 それを聞き、司令官、風鳴弦十郎は腕を組み、はっきりと、

 

『ああッ、世界だろうが神だろうがッ、それを否定する奴は俺達が許さん!! 龍崎アスカッ、例え数多くの偉人、英雄として生きる定めだろうが、俺の部下は、龍崎アスカただ一人だ!!』

 

 いまが見えなくなりかけていたが、それを聞き、頷く。

 

 いまはそれでいいと思いながら、支えてくれる者達に寄り添うことにした………

 

 

 

 ――???

 

 

 草原が広がり、雲が流れ、蒼い晴天が広がる世界。

 

 剣が、全ての剣が、ありとあらゆる剣が地面に刺さり、草木に絡まれていて、空に浮かぶ者達もあった。

 

 螺旋を描きながら、鞘に収まる剣達。無限の武器や防具があるが、無限と言う言葉はある意味違うとか、なにか引っかかりながら思う。

 

 森羅万象、武器と言う武器、防具と言う防具が空に浮かび、雲無き蒼穹の下に広がる世界に、誰かがいる。それに呼応したように、現れた。

 

「あの世界は物騒だな………」

 

 そう呟きながら、静かに背を向けながら言う。

 

「世界が抑止力である俺を放置したが、結局やることは変わらない。だから放置したんだよ。意味なんて無いからな」

 

 太陽が無いのに、影が何度も回る世界で、それはため息をつく。

 

 そう言ったとき、彼はズタズタだなと呟いた。なにがズタズタか分からない。

 

「お前は変わらない、俺達はけして変わらない生き方をしている。短命? 違う、意味が違うんだ。俺達は」

 

 何事もなく、淡々と興味もなく、当たり前に、

 

 

 

「誰かのために命を捨てる存在だ」

 

 

 

 そう告げられたが、何も言えない。つまりあれか。

 

「ああそうだ、星も霊長も早い段階で死んで戻るからいいと思っている。正直、龍崎アスカとして生きようと、人の一生はたかが知れる。なにより俺なんだ、死ぬ機会なんて山ほどある。もう場所がわかった時点でもういい事案なんだよ彼らにとって」

 

 酷い話だがそういうもんだとそれは納得していた。

 

「理想通りに事は運ばないことを祈り、理想通りな人生であることは願うよ。お前はお前だ、だがその魂の様子から見て、何をきっかけに再度ここに来るか分からないがな」

 

 呆れた様子であり、そして静かに身体を押して、追い出す。

 

「来るなとも来いとも言わない、お前の人生であり、流れに任せるよ。そして選択も間違えないことを祈ろう。それまで、あの子達を泣かせるな、俺」

 

 そして、世界が暗転した。

 

 

 

 朝日を浴びながら、静かに目を覚まして、静かに、

 

「………頑張って生きるか」

 

 そう呟いた………




これにてセレナ生還ルートは終わりです。

星と霊長はアスカくんが何があろうと早く死ぬに、そうじゃなくても人の一生はたかが知れるなどの理由で、いいかと下しただけです。マーリンレベルだな。

キングハサン、人類に関係とか無かったら従ったり、話を聞いて動かないだろうな。礼節の信念の欠片もねぇ。

次の回は長めで、藤丸さんとで話します。初300回の話やりたいので、ここで早く投稿しました。

それでは、お読みいただきありがとうございます。

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