アスカ「………」震えて奏にしがみついています。
奏「おーよしよし」弟のようなものなので頭をなでます。
翼「………」少しうらやましいという視線で見てます。
異世界聖杯事変、のちにこう呼ばれる事件は幕を下りた。
二課は変化と共に、新たな装者二名を見つけだす。
アーサー王伝説から、聖槍ロンゴミニアド装者、天羽奏。
同じく、円卓の盾装者、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。
この事件での被害者0名、建物は高エネルギーで半壊しているもののである。
そして何故かナスタージャ教授の病状など、完治に近い状態であり、その後も良好である。
「で、現在加工中。しかし、二人揃って適合率高いか」
「ああ、しかも槍だ。ガングニールは響に渡した以上、こいつで頑張るさ」
そう言い、相棒解消することになったが、気にもせず、色々な手続きがあるため、マリア達はいまだ自由とは言えないが、別の場所で羽を伸ばしている。というよりか、
『私達もそっちがいいデスっ!!』
『美味しそう………』
テレビ中継で、我が家のテーブルを見て騒いでいる。向こうは向こうで料理が並んでいるのだが、こっちは全部オレが作った。
「相変わらず………」
「お前っ、なんで女子力高いんだよ」
「なんで文句言われないといけないんだよ!?」
エプロン姿で料理しているが、響も未来も頷いて、三人の友達も見ている。
「女の子………」
「男だよ………」
そう言いながら、新たな料理をテーブルに置きながら、モニターにセレナが映る。
『あの、アスカさん料理できるんですね。今度教えてくれますか?』
「? 別にいいよ」
『ありがとうございます、せっかくあの人のおかげでマム達に出会えたから、みんなを守りながら、前に進んでいきます』
『セレナ………』
そばで嬉しそうにするマリア。マリアはすぐに国外でアーティスト活動して、セレナは13歳で歳が止まっていたため、色々手続きするが、マリアとの関係はなるべく隠す方向らしい。
「まあ、マリアの方は、響と切歌達に手を出すとか裏で言ってそうだもんな」
「ああ、こちらも目を光らせてはいるが、明らかだからな………だが落としどころはここだろうと、なにも言えないと、叔父様が言っていた」
色々複雑な事情が分かる者達がそう話し合いながら、セレナ、切歌、調だけは歳相当の自由な生活を優先させたいと、マリアが言っているので何も言えない。
ともかく、セレナ達は今後、二課の組織で面倒を見ることになる。
『アスカさん、料理教えてもらうの、楽しみにしてますね………』
優しく微笑むセレナに、ああと頷くが、少しだけ疑問に思うマリアがいた。
(………まさかね)
冷や汗を流しながら、微笑むセレナを見つめる姉。
しかしと、色々と自分の情報を纏める。
「まずはオレは抑止力と呼ばれる、世界が崩壊する事態に陥るのを回避するシステムの一部か………」
主人公など、物語に出てくる大事な役の代役。
または、最悪な事態を極力避ける立場へ転生する者。
それにセレナも頷く。
『彼女と一緒にいたから知り得たことですが、アスカさんは、もしも、あり得た、かも知れない、そう言う平行世界の人物。それか別の平行世界すら悪影響をもたらす可能性がある世界、その抑止力として生まれる人物。そう言う『保険』が正式な立場のようです』
「英霊では無い英霊ってところだね」
正式な登録はけしてされず、それでも歯車として用意されている。運命の歯車、頭の痛い話だ。
『彼女は、あまねく世界軸で聖杯を手に入れ、色々な問題を一つずつ見合った聖杯で、願いを叶えて、世界を欺いていたようです。アスカさんとして生まれたのは、さすがにバレた時は焦っていたようですけど』
ルナアタック事変のことを話す。だが、それより目がいっていた、彼、白銀の騎士と成ったモードレッド卿に、目がいっていた。
自分、龍崎アスカなど眼中になかったため、むしろこの事態を利用できないかと、ずっと見ていたらしい。
『………正直、マリア姉さんのあの姿は………』
『セレナ!? あの姿ってなに!?』
『だって、マム達のためだからって、持って帰るのは』
慌て出すマリアに、セレナは恥ずかしそうにしている。
切歌達は目を背けながら、オレは唐揚げを食べる。うん、いいできだ。
『ともかくアスカさんは、世界から許可をもらえましたから、この世界に龍崎アスカとして生きても問題ない。それは彼女を通して、本来アスカさんの魂を管理する存在が決断したことですから、もう心配ないです』
「………抑止力か、エミヤくらいしか意味分からないんだけど」
『ただ、根元? ってのがよく分かりません。アスカさんは根元にアクセス可らしいですよ』
いまこの子からもの凄い情報を仕入れた気がする。セレナはそのまま、
『そもそも、アスカさんの魂事態が、すでに根元と繋がっているらしいんです。ですからグランド・サーヴァント達が出てきたようです』
「………そう」
そうか、そうだよなと納得する。
もしも、かも知れない、考えられる可能性と言う可能性の代理品であり、それらの中でまずい可能性の芽を変える役目。それは根元だと思う。
「根元………確か、人が近づいてはいけない領域………だったか?」
「………はい」
アタランテは難しい顔で頷く。彼女も詳しくは、
「吾々は抑止力案件でもある、人類史修復のため、あるいは特異点にいました。マスターなら、自分が二度、特異点にいたことは知っていますね?」
「ああ」
竜の魔女に、バーサーカー・アーチャーとして、もう一つは航海時代、聖杯持ちの黄金ワカメが、かつての仲間の一人として喚んだ。
黄金ワカメと言ったとき、ぶっと吹き出したが無視して、そうですと頷くアタランテ。
こういう時、花の魔術師辺りが来ればいいのにと思うが、そう都合良くいかない。
「ま、深く考えても、いまのお前はアスカだ。んなもん気にしなくてもいいだろ」
「………それもそうだな、いざと成れば、向こうから話しかけてくる」
そう言いながら、いまだオレに情報と聖遺物を繋げてくれているだろう、英霊アストルフォを思い出しながら、ペンダントを見る。
「彼奴との令呪が無くても、オレのサーヴァントならきっと助けてくれる。もう一人の二課、みんなの仲間としてな」
「アストルフォさんか、うん、そうだね」
「私は全然お話しできなかったけど、ちゃんとお話ししたかったな」
そんな話をしながら、アストルフォは何となく、照れてそうな気がする。そんな風にパーティーをして、終わりを告げた。
片づけ等々し終え、寝間着に着替えて眠る。
そう、静かに………
「さてと、本題しますか大人の皆々様」
ジャックを寝かせたアタランテは、難しい顔のまま、現れる。
テレビ電話で映るのは、これからする話を話せる者達。響達には、話せない。
「まずアタランテ、あれから推測される話で、オレは」
それは少し躊躇うが、すぐに首を振り、
「長く、生きていけるか?」
それに、アタランテは唇をかみしめながら、静かに、目を閉じ、従者として答える。
「不可能の可能性が高いです」
『なぜだっ』
弦十郎、司令がすぐに尋ねたが、それの答えは、
「貴方は抑止、世界を存続させるシステムの一つ。なら、時間も空間、時代も何も関係無くとも、管理されるべき魂」
そうだ。許した? 違う。
そう思える。
「もしも抑止力に人権、多少の安全装置があるのなら、エミヤシロウと言う守護者の精神は摩擦しない」
100を救うため10を殺し、世界を存続させ続けた錬鉄の英雄。
骸の上に立ち、生前も救うために戦い、死ぬときだって誰かのために死んだ英雄。
どれほど殺した? 頭がおかしくなるほど殺した。本人がいればそうしれっと言うだろう。それくらい、感覚がおかしくなるほど、彼は抑止力として働いた。
そしてその変わりとも言える、エミヤと言う守護者もいる。そうだ。
抑止力は単純に、世界さえ救えれば、どれほどの犠牲が出ても気はしない。世界のための犠牲。それが、その魂達とも言える。
そうじゃなきゃ、救われない。まあそれは外から見たらだが、
「本人であるオレは無自覚。エミヤ達からすれば、望んだ道だ。どう思われようと知ったことじゃない」
だが、その雇い主達の方針は、そう言ったものならば、本当にいまのオレは、自由か?
答えは、
「否です」
アタランテははっきり言う。
「貴方はカルデアマスター藤丸立香、人類史を守る唯一一人のマスターである可能性を持っています。だから彼と契約する吾々が、貴方と契約しています」
「そして月の聖杯戦争。ああくそ、そうか………」
許されていると思ったが、結局次は確定しているし、龍崎アスカとして生きていても、英霊、聖杯と縁が切られていない。むしろ強く、強く強く結びついているではないか。
聖杯にも意志があり、正史の記録から外れているとはいえ、聖杯を持つ、彼女の行動が完全に見逃されていたとは思えない。
考えすぎであって欲しいが、これも彼らの掌の上。そう考えると、身体が震える。
『アスカくん………』
『アスカさん………』
ナスタージャ教授と司令達が、何も言えなくなる。アタランテは静かに抱きしめる。
そのまま静かに、
「………私はこうしていても、貴方ではなく、貴方の先、藤丸立香を見てしまう………いまは貴方に従うサーヴァントなのに」
「あの人のことが大事ってことだろ………もう一人のオレはモテモテでいいな………」
「………」
アタランテは静かに、強く抱きしめる。
「この場にいる限り、私は貴方の弓矢と成り、貴方の人生、そして大切な人々を守る狩人として居続けます。これは、これだけは、貴方だけに誓う、貴方への願いです………」
「………」
「忘れないでください、私達は過去の貴方を見ます。ですが、けしていまの貴方を蔑ろにしない。もう一度」
静かに微笑みながら、
「もう一度貴方に会えるのなら、今度は彼女に渡しません………」
二人の男性を見て、一人の魂に狩人は誓いを立てた。
月と太陽の加護、純潔の狩人の言葉を聞きながら、少しだけ前を見る。
「………司令」
『………なんだ』
それは残酷なのかも知れないが、聞きたい。
「オレは………龍崎アスカとして生きてますか?」
それを聞き、司令官、風鳴弦十郎は腕を組み、はっきりと、
『ああッ、世界だろうが神だろうがッ、それを否定する奴は俺達が許さん!! 龍崎アスカッ、例え数多くの偉人、英雄として生きる定めだろうが、俺の部下は、龍崎アスカただ一人だ!!』
いまが見えなくなりかけていたが、それを聞き、頷く。
いまはそれでいいと思いながら、支えてくれる者達に寄り添うことにした………
――???
草原が広がり、雲が流れ、蒼い晴天が広がる世界。
剣が、全ての剣が、ありとあらゆる剣が地面に刺さり、草木に絡まれていて、空に浮かぶ者達もあった。
螺旋を描きながら、鞘に収まる剣達。無限の武器や防具があるが、無限と言う言葉はある意味違うとか、なにか引っかかりながら思う。
森羅万象、武器と言う武器、防具と言う防具が空に浮かび、雲無き蒼穹の下に広がる世界に、誰かがいる。それに呼応したように、現れた。
「あの世界は物騒だな………」
そう呟きながら、静かに背を向けながら言う。
「世界が抑止力である俺を放置したが、結局やることは変わらない。だから放置したんだよ。意味なんて無いからな」
太陽が無いのに、影が何度も回る世界で、それはため息をつく。
そう言ったとき、彼はズタズタだなと呟いた。なにがズタズタか分からない。
「お前は変わらない、俺達はけして変わらない生き方をしている。短命? 違う、意味が違うんだ。俺達は」
何事もなく、淡々と興味もなく、当たり前に、
「誰かのために命を捨てる存在だ」
そう告げられたが、何も言えない。つまりあれか。
「ああそうだ、星も霊長も早い段階で死んで戻るからいいと思っている。正直、龍崎アスカとして生きようと、人の一生はたかが知れる。なにより俺なんだ、死ぬ機会なんて山ほどある。もう場所がわかった時点でもういい事案なんだよ彼らにとって」
酷い話だがそういうもんだとそれは納得していた。
「理想通りに事は運ばないことを祈り、理想通りな人生であることは願うよ。お前はお前だ、だがその魂の様子から見て、何をきっかけに再度ここに来るか分からないがな」
呆れた様子であり、そして静かに身体を押して、追い出す。
「来るなとも来いとも言わない、お前の人生であり、流れに任せるよ。そして選択も間違えないことを祈ろう。それまで、あの子達を泣かせるな、俺」
そして、世界が暗転した。
朝日を浴びながら、静かに目を覚まして、静かに、
「………頑張って生きるか」
そう呟いた………
これにてセレナ生還ルートは終わりです。
星と霊長はアスカくんが何があろうと早く死ぬに、そうじゃなくても人の一生はたかが知れるなどの理由で、いいかと下しただけです。マーリンレベルだな。
キングハサン、人類に関係とか無かったら従ったり、話を聞いて動かないだろうな。礼節の信念の欠片もねぇ。
次の回は長めで、藤丸さんとで話します。初300回の話やりたいので、ここで早く投稿しました。
それでは、お読みいただきありがとうございます。