少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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頑張ります。次からは一週間、月曜か日曜日に投稿します。続きは月曜日か火曜日で、それから一週間。内容を確認しながらですので、気を付けます。


3話・彼に成れない

 英雄アストルフォ、クラスライダーで、聖杯大戦において、黒のライダーとして顕現したポンコツ英雄だ。

 

 なぜならば、彼は理性が蒸発しているうえ、彼が本来持つ宝具は、全てが全て、偶然手に入れた品々である。

 

 彼は運良く、多くの道具を巧みに扱う騎士である。運が良いと聞こえは悪いが、それでも彼は英雄である資格はある。

 

 それらの品や、仲間達。彼らに慕われた結果故に英雄だと思う。

 

 なら、自分はどうだ?

 

 自分こそ運良く手に入れた『だけ』の、ポンコツではないか?

 

 その疑問は一月経っても消えない。

 

 

 

「響っ、後ろ」

「はいっ」

 

 響の相方として戦う中、翼さんは一人黙々とノイズを倒す。

 

 これは一月前だった。戦いの中、響はやはりと言うか、誰かの変わり、奏さんの変わりに、頑張りたいと言ったこともあり、溝が深まった。

 

 誰も悪くないと言う言葉は誰にも届かない。強いて言えば、響は未熟でダメなのは分かり切っている、それでも前に出ろと言う環境が悪い。

 

 自分は二人の気持ちを理解している。誰かのために頑張りたい響、自分の思いを剣へと例え、防人として戦う戦士であり続けようとする翼さん。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ」

 

 自分も戦う中、奏さんも、響との交流しつつ、翼さんと会話している。だが一行に良くならない。

 

 オレは英雄に、アストルフォ、君にすら成れない。君のように、仲間を守れない。

 

 

 

「未来、響の様子はどうかな?」

 

『………少し無理してる、話してくれないけど。今日もレポートの山がまだあるんだけど………』

 

「そうか」

 

 学園側から急に響の対応を軟化できない以上、響の切り替えに時間がかかる。響個人が抱える問題は多い。

 

 人間関係、ノイズ、そして友人。一番は友人であるが、自分も強く言えない。

 

『最近響、無理してるんだ。アスカ、なにか分からない?』

 

「ごめん、分からないよ」

 

『そう………ごめんね、変なこと聞いて』

 

 その声も元気が無い。そのまま切る、余計なことを聞いてしまう。

 

「………くそ」

 

 別に英雄に成りたい訳ではない。だけど、だけど、

 

「せめてこんな姿なんだ………友達くらい、笑顔を守らせろよ神様………」

 

 そう、窓ガラスに映る自分に祈る。

 

 生前の自分は剣道部にしか通っている以外は、ゲーム好きな学生程度。

 

 よそ見運転で死んだはず、たぶん、見えたもん。

 

 その事故は………まあ気にしない。考えたところで意味無い。

 

 それ以外は剣振ってただけだ。家、剣道道場だし、剣道好きだし、すいません、アサシンさん、竜殺し凄いと聞いてリスペクトしてます。

 

 なんで死んだら赤ん坊で、可愛い幼なじみが二人いて、アストルフォで、特別な力がある?

 

 もしも神様はいるなら、せめて………

 

「彼奴らだけは笑ってて欲しい」

 

 そして今日も、ノイズと戦う。

 

 

 

「今回は少し別れてもらう、急いで倒して立花とこに出向いてもらうから」

「分かりました」

 

 奏さんと共に、ヘリからその場へと向かう。今回は三カ所と、少し難しい顔になる。

 

 ここ最近、頻繁にノイズが現れる。二課は本部最深部にある『アビス』に納められた完全聖遺物『デュランダル』が関係していると推測している。

 

 完全聖遺物、自分達の聖遺物と違い、一度解放されれば、その力を別の人でも使えると言う、ロストテクノロジーの最先端だが、扱いが難しい。

 

 その難しいには、国際問題まで加わる。誰もが日本政府がノイズ対策の独占を許す気はないようで、米国が暗躍していると言われている。それは弦十郎司令官達の仕事と言われている。

 

 結局、ノイズを倒すしかできない。できない。

 

「………」

 

 窓ガラスに英雄が写る。彼がいれば、きっと笑って前に出て、どうにか無い知識を使って、みんなの幸せを目指すだろう。

 

 自分にはできない。だからこそ彼は英雄だろう。

 

「そろそろ着くぞ」

「ここが終わったら、すぐに響のもとに合流します」

 

 そう言って、ヘリから飛び降りる。その様子に奏さんは難しい顔をして、

 

「ったく、あんな難しい顔されたら、セクハラもなにもできねぇっての」

 

 そう呟いたのがかろうじて聞こえた………

 

 

 

「いつもよりノイズが多い?」

 

 そう、いつもより数が多い、これきついかと思いながら、しかも地下施設と、ヒポグリフが使えず、苦戦する中、通信が入る。

 

『まずいッ、アスカくんっ。そっちは出られるか!?』

 

「!? どうした」

 

『完全聖遺物ネフシュタンの鎧を着た何者かが現れた!! しかも彼女は響くんを狙っているらしい』

 

「………は?」

 

 なんだそりゃと思いながら、ノイズを倒すスピードを速める。

 

 だが、数が多い。

 

「倒したらすぐに出向く、翼さんには時間稼ぎをっ」

 

『すいません藤尭ですっ、司令官はいま現場へ。現在翼さんは応戦中ですが、苦戦してますっ』

 

「!?」

 

 その瞬間、無数のノイズが迫る。だが槍で転倒させ、槍を振り回す。

 

 インカムの声が聞こえる。響の、

 

『お願い、出てアームドギアっ、奏さんの変わりに、私は、私は』

 

 彼女のその叫び、悲痛な叫び、

 

『お願いっ』

 

 いまの状況が分からない。だけど、

 

「ふざけるな響っ」

 

『!?』

 

 静かに叫び、ああそうかと納得する。

 

「お前は立花、立花響だろ、天羽奏じゃないんだっ。オレもお前も、できることなんか決まってる」

 

『あす、か………』

 

「響、お前が誰かを守りたいんなら、オレだって手伝う。だけど、他人に押しつけちゃだめなんだ」

 

『アスカ………』

 

「ああ、そうだ、オレは、いまのオレは」

 

 装甲の一部から煙が吹き出し、力がわき上がる。歌が、喉から、口から叫ぶように出てくる。

 

「オレは龍崎アスカだっ、聖遺物アストルフォ!! 束ねていくっ」

 

 槍を振り回し、ノイズを殲滅、それと共に剣を取り出す。アストルフォにも、この生物の欠片にも剣が無いのだが、何故か有る剣。なら、これを振るう。

 

「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 爆走する、マントを翻すと共に、全てのノイズが切れ、そのまま外に、もう一人の相棒が待機していた。

 

「頼むヒポグリフ………仲間のもとに、オレ、オレ達の歌を届けろッ」

 

 吼えるヒポグリフ、そのまま滑空して駆ける。

 

 ただ早く、それは、

 

「はあ?」

 

 奏の目の前で、消えた。

 

 

 

 ――立花響

 

 私は役立たずだ、アームドギアも出せない。このまま翼さん達の足を引っ張る。

 

 嫌だ、嫌だよ………アスカ………私は、私だって、

 

(誰かを守りたい………)

 

 そう思ったとき、

 

「ちょっせぇっ!!」

 

 鎖の先端が黒い固まりのようなものが、翼さんに叩き付けられ、

 

「させないっ」

 

 その前に、アスカが槍を突き刺して方向をねじ曲げた。

 

「!? 龍崎っ」

 

「テメェ、融合型!?」

 

 その時のアスカは、

 

「………悪いね、やるときはやらないと!!」

 

 いい笑顔でそう言った。

 

「融合型聖遺物アストルフォ装者、龍崎アスカっ。完全聖遺物ネフシュタンの鎧っ、回収させてもらうっ」

「チッ、できるもんならやってみやがれ!!」

 

 その時、アスカはヒポグリフから降りて、槍も手放して、一つの剣を持って、彼女に迫った。

 

「ざっけんな!! アームドギア無しでアタシに」

「勝てるさ、オレはオレだからな!!」

 

 鎖が交差して迫る中、アスカはその小柄な身体を駆使して接近して、剣を振るう。

 その余波が鎧に触れると、鎧にヒビが、

 

「なっ」

「………」

 

 そのまま無心に剣を振るい、ただ鎖を避ける。いつものアスカから感じない、男らしさがある。

 

「なんでテメェ………ただの寄せ集めの装者のくせに」

 

 蹴りを放つネフシュタンの子だけど、剣の柄で防がれ、逆にダメージを負ったりする。

 ヒポグリフが取り出されたノイズを倒したりする。あの子の謎の力、ノイズを操る力でも、ヒポグリフが私を助けてくれた。

 

「ありがとう」

 

 ヒポグリフは咆哮して、翼さんも参戦しようとするけど、その気迫に押される。

 

 いつものアスカから感じられない、その気迫は、

 

「………すごい………」

 

 

 

 ――龍崎アスカ

 

「すぅ」

 

 息を吸う、呼吸と歌と共に切り込み、ただ技の冴えのみで完全聖遺物と渡り合わなければいけない。

 

 向こうはそれなりに鍛えられているだろうけど、こっちは年期が違う。

 

 こっちに来る前も来てからも、ただ剣を振った。ただ剣技を鍛えた。

 

 見切れ、斬れ、穿つ。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 それが龍崎アスカ、装者である自分だ。

 

「ふざけるなっ、アームドギアでもなんでもない付属品でっ、勝てると思うな!!」

 

 そう言ってオーバーアクションをした瞬間、後ろへと飛ぶ。

 

「!?」

 

 身体を回し、突如空間からヒポグリフが現れた。

 

 空間転移、これがヒポグリフと言うアームドギアが持つ能力。先ほど発現した物だ。

 ヒポグリフに乗り、その手には槍を構え、静かに、

 

「穿て、ヒポグリフ!!」

「!!?!?!!!」

 

 その槍で転倒し、体のバランスを無くして、ネフシュタンの子は地面に倒れ、その場に倒れた。

 

「悪いね、オレの勝ちだ」

 

 静かに立ち上がろうとするが、その前に、翼さんが剣を向ける。

 

「………龍崎、その能力は」

「いまは後だ、いまは」

「………………分かっている」

「………」

 

 その時、ネフシュタンの子は、

 

「なめるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 大量のノイズを爆発するように発生させ、それに周りがすぐに蹴散らすが、

 

「ざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 そう叫びながら、いまだノイズを出す。

 

「アスカっ、このままじゃ」

「分かってるっ、だけど」

 

 自分は角笛の音波はあるが、あれは広げれば広げるほど、威力を無くす。響も拳しか対処できない。唯一出来るのは無数の刃を降らす翼さんだが、様子がおかしい。

 

「………」

 

「翼さん?」

 

 その時、インカムから、

 

『アスカっ、いますぐ翼を止めろッ』

 

「!?」

 

 そして静かに、

 

「防人の覚悟、月が出ている内に終わらそう………」

 

 その戦慄が奏でられる。それはまさか、

 

「絶唱!?」

「ぜっしょう?」

「言えば自爆技だっ」

「!? 翼さんっ」

 

 ヒポグリフを呼び寄せ、飛翔して止めに入ろうとするが、ノイズが邪魔をする。

 その間も、翼さんは命の歌を歌う。

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 その瞬間、高エネルギーが辺りを包み込んだ………

 

 

 

 ――???

 

「………」

 

 誰かが馬乗りになの、吐息のようなものが側にある。

 目を開ければ、

 

「あっ、気が付いた♪ 少し残念」

「………ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 そう言って、突き放す。それにいてっと言って、も~としりもちをついたお尻をさする。

 

「危ないじゃないか、急に突き飛ばして」

「いや、なにしようとしたんだテメェ!?」

「テメェって言い方やめてくれないかな? そりゃ、少し口調は違うのはいいけどね♪」

 

 そう言って、マントを掴み、くるくる回る彼は、静かに微笑む。

 

「ボクは、シャルルマーニュ十二勇士アストルフォ♪♪ ボクは君に会いたかったよアスカ♪」

 

 そう言ってはにかむ彼は、腕を広げて抱きつこうとするが、それを避ける。

 

「ブーなんで避けるの」

「野郎に抱きつかれる趣味は無い」

「いいじゃないか、まるで双子みたいでボクは嬉しいよ」

「オレは………まあいいよ」

 

 そう言いながら、あれれ~?と言いながら、

 

「君はずっとボクに成ろうとしたみたいだけど、君は」

 

「やっぱり無理だ、そもそも響に奏さんの変わりになれないって言ってたくせに、オレは君を意識しすぎてた」

 

「うんうん、そうだね~」

 

 ボク、そんなに凄くないよ?と言いながら、そうだなと言うとぽかぽかと叩く。

 

「ともかく、君は翼って子助けるのに、ヒポグリフの力使いすぎだよっ。ギリギリでぜっしょう? てのどうにかした(・・・・・・)けど、君に負担がね」

「マジか………」

 

 そして静かに、

 

「それじゃ、ボクはこれで。君は君の物語をすると良いよ龍崎アスカ。君はボクと違って、才能がある。ボクに剣の才能で悪いけど、君なら『剣』を手にすることができるよ♪♪」

 

「? どういうことだ? アストルフォの逸話には剣は無いし、なにより、君はなんなんだ? オレの知ってるアストルフォ?」

 

「ボクはボク、アストルフォだっ。君の知っているアストルフォであり、違うとも言う。君がボクの姿をしているのは、まあその、悪のり?」

 

 それに拳を固めるが、その前に、

 

「それじゃ♪、またねアスカ♪♪ 次早く起きないと、ちゅ~しちゃうよ~」

 

 いたずらっぽくそう言うと共に、光が世界を包む。

 

「待て、なんでだお前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!!」

 

 

 

「はっ」

 

 気が付くと目を覚まして、半身起こして、辺りを見る。ここは医務室、本部だ。

 すぐに起きて、司令室の方へと走る。何人か止めようとするが、無視して、

 

「司令、響と翼さんは!?」

「アスカ!?」

 

 司令室にいる全員が驚くが、奏さんに詰め寄る。

 

「奏さんあの後、絶唱は」

 

「落ち着けアスカ、翼は絶唱を歌う前にお前が止めたっ。けどお前はヒポグリフの空間転移でぶっ倒れた上、翼も倒れた。まあ、お前のヒポグリフに体当たりだが、自業自得だからいいし、絶唱よりダメージ少ないからな」

 

「そうか………」

 

 ほっとして、胸を下ろす。奏さんは静かに、

 

「そんで、翼は勝手に絶唱歌うし、色々無理があるスケジュールだから、一遍検査受けることで強制入院。立花は旦那に特訓受けてる」

「特訓?」

「ああ、立花も、色々思うことがあったんだ。お前、数日寝込んでたんだぞ」

「マジか」

 

 そして響は自分の力を高めるため、司令官の下で修行している。

 話を聞き、納得して落ち着いて座り込む。

 

「ともかく、みんな無事か………ネフシュタンの子は」

「あの後逃げた、まあ仕方ないさ」

 

 そう言われて、なら自分も少し休むかと思い、立ち上がる時、気づく。

 

「………えっと」

「………じゃ」

 

 そう言って奏さんは凄い速さで逃げた。えっ、この格好テメェの仕業か!?

 

「なんでミニスカートなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 医務室に入る際、服を脱がせ、女子服を着せられた。

 

 女性の寝間着、どうも寝ている間に着せ替え人形にされたらしい。

 

 もう殺せ。




アストルフォとのやりとり、見た目でガールズ? それともボーイズ?

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