少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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可哀想なアスカへ、少しだけ幸せにしよう。

その後酷いけど。


外の理・第6章、幸せ

 朝日が入る、今日は洋食のつもりだから、すぐにできるため、睡眠に時間を割くつもりだった。

 

 龍崎アスカ、前世で英霊アストルフォと契約し、その後転生先が彼と関わり合いがある血脈だからか、その容姿は彼とよく似た男性である。

 

 だがアストルフォは男の娘と言われるほどの美少女であり、数多くの傷を受ける羽目になり、その傷は常人ならどうなるか分からないほどである。

 

 ちなみに前世は普通の日本人男性、二十歳過ぎの大学生のため、考えてみて欲しい。計り知れないほどの心の傷だ。

 

 そんな日々の中、彼はシャツと短パン姿で布団の中で寝ていて、何かを、

 

 

 

 抱きしめながら寝ていた。

 

 

 

 ………

 

「ん?」

 

 それに頭が覚醒し、目を見開くと、自分に顔を埋め、幸せそうに寝る。

 

 銀髪の少女がいるので、思考が停止した。

 

「おかあさん………」

 

 寝言でそう呟くその子は、前世大切にしていた英霊である。

 

 

 

『もしもし~実はこの前の件で、少しばかり契約のパスがおかしくなって、一人そっちに行ってないかな? いま調べたらしいんだけど、いないんだよ』

 

「まずテメェはどこから電話してる? グランド・キャスター」

 

『えっ? 話聞いてアヴァロンだよ。ここ電話線とか引いてるから』

 

 業者さん呼べなくて苦労したと愚痴りながら、理想郷とも呼ばれる場所に呼ぼうとするなと思いながら、ベーコンを焼く。

 

「おねえさん、わたしたちの席はここ?」

「ああ、もうすぐ作るから少し待ってろよ」

 

 電話片手にいそいそと料理している。クリスに面倒見てもらいながら、いまの彼女の状態を聞く。

 

「さすがに魂食らい? だったか。んなことさせられないんだが」

 

『ああ問題ないよ、君の魔力で現界してるだろうからね。数日すればもとのパスになるから、問題ないから面倒見てよ。向こうには私がメールなりなんなり出しておくよ』

 

「お前現代かぶれ過ぎないか?」

 

 現代魔術師は科学を嫌悪しているのに、その最高位とも言えるグランド・キャスターが躊躇いもなく使ってる。これ聞けばどれほどの魔術師が発狂するだろうか? 元々おかしい価値観がよりおかしくなるなと思いながら、ご飯を持ってくる。

 

「えっと、アサシン? しばらくはオレがおかあさんになるみたいなんだ。令呪も浮かんでるし、嫌じゃない?」

「うんっ♪ おかあさんは、おかあさんと同じだから、わたしたちは別に良いよっ」

 

 そう言いながら、美味しそうな朝食を見ながら、それじゃいただきますと言いながら、ご飯を食べる。

 

 興奮したように喜びながら食べるアサシン。よごれた口元を拭いたりと、面倒を見ながら、その容姿を見る。

 

 自分が知る礼装そのままで、さすがに連れて歩けない。

 

「クリス、悪いけど下着と洋服頼めるか? 話の通りだから、司令にはオレから連絡する。今日は休みで良かった」

 

 そうやれやれと思いながら、食べ終えたら膝の上に載せて、よしよしと頭を撫でる。

 

「別に構わないけどよ………平気か?」

 

 少し鋭い目で言うが、それにはのほほんと、

 

「問題ないと言うか、その辺り気にしてたら身が持たないが正しい。令呪はこの通りあるし、いざとなれば切るよ」

 

 そう言って、心臓の部分。胸に現れていた令呪を見せる。おかげでシャツと短パン姿のままだが、クリスは気にしなくなっていた。

 

 わーかったよと言ってから、食べ終えたアサシンに洋服買ってきてやると言って、別室に連れてサイズを計ると共に、連絡をしておく。

 

 しかし、

 

「まさか食費を削ってガチャったジャック・ザ・リッパーが家に来るなんてな」

 

 念のためにアサシンちゃんと呼びながら、ぼーとしている今日この頃である。

 

 

 

 正直、色々とツッコミが来そうな反英霊。

 

 彼女は本来生まれるはずか、不幸にも生まれなかった子供達の集合体。怨霊だ。

 

 それが何故殺人鬼の名前を借りているのかは、縁があるからである。としか言えないのだろうか? 素人であるオレではそこまでだ。

 

 女性を多く殺し、今だ正体不明の殺人鬼。その器を借りて現界する彼女達を優しくするが、余りすぎると腹を切り裂かれるので、気を付けないといけない。

 

「ってくせにな~………」

「ジャック、はいアーン」

「あーん♪♪」

 

 パフェを食わせたり、連れ回したりしてあげるオレである。

 

 クリスは呆れながら見ていて、その様子に真顔で、

 

「実はオレ、ジャックを課金ゲー時代、食費削ってまで手に入れたほどの思い入れ深く、当時知り合いからロリコンと言われても悪いかと反論したほどだ」

「真顔でアホなこと言うな」

 

 いまはジャックのリクエストで可愛らしいワンピース姿に、顔の傷は絆創膏や化粧などで隠して、こうして連れ回している。

 

 クリスは家が隣であることもあり、前世のことやら色々話す機会があり、ジャックのことはよく知っている。

 

 だが、

 

(ま、こいつのやりたいことは分かるか………)

 

 生まれるはずが、親の都合で生まれることすらされず、またはできなかった者達。

 

 聖杯への願いは、また母親の中に戻りたい。

 

 それを聞けば、何も言えなくなる。この子は悪で間違いないだろう、目的のためなら躊躇い無く人を殺す子だ。だからこの子を悪とはっきり言える。

 

 だが、けして忘れてはいけないのは、彼女を裁く際、けして自分は正義では無いことも、忘れてはいけない。

 

 そして、オレで現界している。戦う必要も、聖杯も関係ないいまは、サーヴァントの身分で幸せに過ごして欲しいと願うのは、間違いかどうか分からない。

 

 分からないがいいだろうとも思いながら、手を握り散歩する。

 

「けどクリスはいいのか? これは」

「別に。部屋にいてもバカが来るし、わたしは構わない」

 

 そう言って、ジャックを真ん中に、二人して散歩する。

 

 誰かに見られながら………

 

 

 

 遊園地、ジェットコースターに乗ること十回。

 

「す、少し休ませろっ」

「おねえさんよわーい」

「なんだとッ、いいだろ。また乗るぞジャック!!」

(おいおい………)

 

 オレはヒポグリフや自身の飛行で慣れているため、ジェットコースターくらいは平気だが、何度も乗るのはクリスは疲れたらしい。

 

 だがジャックは楽しんで、遊園地を満足している。

 

 そんな中で買い食いしながら、ジャックは年相応にはしゃいで、楽しみ、笑顔である。

 

 その様子を見ながら、オレは少しだけ微笑みながら、抱きついてきたりするジャックを受け止めたりして、楽しむ。

 

 

 

 ――藤丸立香

 

 

「というわけでさ、少し回線引きたいんだけど、業者に頼めないかな?」

「貴方は一度斬るべきでしょうか?」

 

 アルトリアがそう聞きながら、俺はまあまあと止めておく。

 

 便利になるからいいじゃないかと本気で言うマーリンだが、このままじゃアヴァロンが現代風に開拓されそうだ。

 

「いや、影の国にも少しばかり欲しいぞ。あそこは暇だからな」

 

 人理修復し終えたら、行き来してくる人の一人がそう言いながら、ズタボロな何かを床に置く。ああ、また弟子さんがと思いながら、少しは大人しくして欲しい。

 

「いやしかしなマスターよ、わしの国はほんとに暇なんでな。伊達や酔狂で言っている訳ではないのだよ」

「そうだよ!! 少しはいいだろ!?」

 

 二人とも真剣だが、ともかくそっとしておこう。

 

「それじゃマーリン、ジャックは向こうの、アスカくんの元にいるんだね?」

 

 少し心配だ。マーリンの話では、彼は魔術師では無いが、特別だと言うし、サーヴァントは最終的にどういう存在かも知っていると言っていた。

 

 だからと言って、彼は自分と同じ、優しい類と言われている。自覚があるだけ少し心配だ。

 

 自分もジャック、ナーサリーやジャンヌリリィにも優しすぎる。よく注意を受けたりするのだが、やめることができない。

 

 例えそれで彼女達に殺される可能性があるとしても………

 

「大丈夫かな………」

「危険な思考のサーヴァントは向こうには居ないらしいから問題ないと思うけどね」

「………ん?」

 

 いまなんて言った。

 

「マーリンッ、いま危険な思考のがいない? なら、サーヴァント事態は!?」

「ん? それは」

 

 それを聞き、少しだけ俺は焦った。

 

 心配だ。

 

 

 

 ――龍崎アスカ

 

 

「ったく………ホントガキだなこいつ」

「子供の集合体だから、仕方ないよ………」

 

 そう言い、背負いながらすーすーと眠る可愛らしい少女。

 

 スカートの中にナイフやらなんやらを隠し持つ子とは思えない。可愛らしいこのうえないし、笑顔を振りまき、楽しんでいた。

 

「………聖杯ってのに戻れば、このこと忘れちまうんだよな………」

 

 夕焼けの中でそう呟くクリス。それにああと呟く。

 

「確かそういう仕組み、この子達にとっていまは夢を見ているようなもんだ」

「夢か………」

 

 顔を埋めて、おかあさんと嬉しそうにオレを呼ぶこの子。

 

 だが、オレの中でそれを呼ぶべきに相応しいマスターは一人だけではないかと思いながら、帰路を歩く。

 

 

 

 家の中で、目を覚まして、ご飯を食べて元気なジャック。ハンバーグがお気に入りらしい。

 

 そして、

 

「ほら、頭洗うから、大人しくしなさい」

「はーい」

 

 目を瞑るジャックの頭を洗いながら、一緒にお風呂に入る。

 

 湯船の中、ふぅ~と落ち着き、ジャックも疲れを取る中、どんどんと言う音と共に、誰かが浴室前に来る。

 

『おいアスカっ!? お前いま風呂か!! いまジャックはどこだ!?』

 

「? ここだよ~」

 

 そう返事をするな、しばらく沈黙が来る。

 

 なんだ? もう身体も洗い終えたし、身体を湯船で暖めるだけだぞ?

 

 そう思っていたら聖詠が流れ聞こえてきた。何故だ!?

 

「待てクリス!? なにがどうし」

 

『るっせぇ、お前風呂出たら覚えてろよっ!! 年齢考えろバカ!!』

 

「?」

「えへへ」

 

 嬉しそうにするジャックが甘えてくる。別に気にせず、風呂に入り、出たら殴られたよ。なんでだ?

 

 

 

「でだ、オメェまさか」

「一緒に寝るらしいから、一緒に寝るぞ」

 

 髪を拭いてあげ、髪を乾かして、丁寧に髪の手入れをするオレはそう答えると、クリスが顔を赤くして、睨む。

 

「お前、オレが変なことすると思ってるのか? オレはジャックは大切なだけだ。変な想像するのは響達だけにしてくれないか?」

「おまっ、だけど」

「それに」

 

 クリスだけ奧に連れて行って、こそこそと話す。

 

「ジャックの性質は変わらないんだ、令呪があるオレが面倒を全部見ていた方がいいんだよ実際」

「………ほんっとうに、妙なことは無いんだな?」

「やめてくれ、お嫁さんや恋人は欲しいと思うけど、そんなに飢えてない」

 

 それを言われ、むすっと言う顔で叩かれ、クリスは隣部屋に帰っていく。

 

 そんな様子を見ながら、少しだけ話しながら、すやすやとジャックを寝かせる。

 

(明日も現界してたら、学校休んで面倒見るか)

 

 そう思いながら、密着するジャックの優しく撫でながら、目を閉じる。

 

 

 

 ――???

 

 

 それは静かに、部屋に入る。

 

 二人の少女(片方は少年だが)がいて、幸せそうに寝ている。

 

 その様子にほっとする中、静かに、

 

「やっと姿を見せたけど、魔力は平気?」

「!?」

 

 耳と尻尾を立てて、びっくりする彼女に、アスカはむくっと起きあがる。

 

「魔力はある? 無理してないか?」

「………いつから」

「いいから答えろ、それからだよ。アタランテ」

 

 

 

 アタランテ、女神アルテミスを信仰する狩人であり、その恩恵と技でその腕の逸話がある。

 

 その為に求婚者が多く、徒競走で勝負して、勝った者の伴侶になる。だが負ければ射殺すと言う勝負をしたが、男が黄金のりんごと言う神話のアイテムを使い、それに目が眩み負けてしまう。

 

 女神の加護は純潔の誓いのため、罰を受けて雌獅子に変えられたと言う逸話から、彼女は獅子の耳と尻尾を持つ。

 

「でよかったのかな?」

「おおむねな………」

 

 軽い食事をもらいながら、アタランテはそれを受け取る。

 

 デザートにリンゴの物ももらいながら、軽く微笑む。

 

「リンゴは敗北の原因だけど、嫌いじゃないんだろ?」

「ああ、すまない………」

 

 食事を受けながら、サーヴァント契約をさせてもらい。それでやっと落ち着けると、しばらく待つアスカ。

 

「ジャックのこと見てたの?」

「………汝は別視点から、自分とあの子のこと」

「聖杯大戦だね………」

 

 それに悲しそうに頷きながら、寝ているあの子を思い出しながら、

 

「………正直、汝に甘えていたためか、こちらに気づかれずだった。油断してしまった」

「別に出てきてもらって良かったよ。むしろ一般人に知られる方が危険なんだし」

「………すまない」

 

 そう言いながら、静かに時間が過ぎていく。

 

「それでは、自分はこれで」

「待て待て、どこ行く気なの?」

「………救えなかった自分が、顔を出す訳にはいかない」

 

 そう言いながら、それに、胸を見せる。胸の令呪を、

 

「!? ま、まさか」

「言っておくけど、オレは本気だよアタランテ」

「いやっ、こんなことに令呪を切るなマスター!!」

 

 だが、

 

「もう敵味方じゃないし、カルデアに戻れば仲間で、守るべき子だろ? 一緒にいられる間、君はあの子を庇護したい。正直に思えば、聖杯に願う願い、叶わないだろうと思ってる」

「? それは自分の願いか?」

 

 子供全ての幸せ、だが、

 

「それは理想的すぎる。オレだから分かる、それは永遠に願われながら、永遠に叶わず、永遠に叶うと言う、矛盾の願い。聖杯だって無理だろう」

「………抑止である汝に言われるとは」

 

 少しだけ悲しそうになるが、すぐに、

 

「だから君が叶い続けさせなよ、アタランテ。子の守護者」

「!?」

 

 顔を上げて見たのは、一瞬、別の人。マスターの顔とも言える人だった。

 

「君が叶えるんだ、聖杯に頼らず、おれたちはずっと君を応援するし、手を貸すよ」

 

 それに黙り込むしかない。

 

 彼は知っている、自分が過去の大戦でどんなことをしたのかを。

 

「おかあさん………?」

 

 目をこすりながら、起きてきたジャック。アタランテを見て、顔を下げて、アスカへと抱きついてくる。

 

 あまり気にしてないようだ。

 

「アタランテ、マスターとして命ずる。カルデアに戻るまでオレと共に、この子を庇護してくれ」

 

 そう言われ、少しばかり戸惑いながらも、はにかみながら、

 

「分かりました、マスター」

 

 

 

 そして、

 

「んで」

 

 クリスはイチイバルを構えそうなほど不機嫌になりながら、アスカを睨む。

 

 少し気になって、何故か持つ鍵を使い入ったクリスが見たのは、美人と言えるアタランテと共に寝る。アスカであった。

 

 何故か、正座させられながら、ジャックはトーストを食べながら、アタランテは弁解する。

 

「ま、マスターは妙なことをする人ではないので、矛を納めてくれっ」

「お、オレも気が付いたらアタランテがジャックごと抱きついてて驚いたんだっ」

「………ともかく、全員に連絡すんからな」

「………嫌な予感しかしない」

「………すまないマスター」

 

 だがしばらく家族が居る状態の中、ジャックの面倒を見てもらうアタランテがいるため、学業は疎かにならないで済むのであった。




 響やらも泊まるとのたうち回ることを言う事態になりながら、やっと落ち着き、いまはアタランテとジャックが風呂に入る。

 と、

「おかあさん髪洗ってっ」
「こらジャック、身体拭いて服着てから」
「ジャック待ちなさいっ、身体を拭いてからではない………」

 とと言うと、目の前に、お風呂上がりのアタランテの………



「!? いまアスカくんになにかあった気がするんだけど」
「先輩? どうして分かるんですか?」
「まあ君だからね………あっ、やっぱりパソコン欲しいな、スマホも」
「わしも少し購入を考えるか………」

 カルデアはもの凄く平和だった。

 お読みいただきありがとうございます。

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