この物語は男の娘なので、やはり性別変化はさせられなかった。踏み切れなかった私を許してください。
ではどうぞ。
カルデアのシミュレーションルームで身体を動かし、この身体で戦えることを確認して、レイシフト前に来る三人。
オレことセイバーと、シールダーであるマシュさん。そしてマスターだ。
「マスター他にサーヴァントは呼べないの?」
「ああ、何人かはいない、何人かは国や組織から隠してる。後はまあ、今回の件にそれほど乗る気じゃないとかね」
苦笑しながら、こちら側の用件は伝えている。アストルフォもどきなのは伝えている。いないサーヴァントには、アストルフォもいるらしい。
何故かは分からないが、多くのサーヴァントが行方をくらましていたりする中で、いまの謎の空間を感知したカルデアチーム。
こうして出向くことになったらしい。
「攻撃は君に任せる、俺が攻撃サポートするよ。防御系統はアスカだと回復に回した方が早いし効率はいいな。マシュは俺の援護と、アスカの補助を」
「はい」
「それじゃ」
「行くよ」
光に包まれ、数秒の浮遊感の後、地面に着地する。レイシフト成功らしいが、
「ここは………ロンドン風城下町?」
「造りからして、アスカさんの推測通りかと」
「そうか………ともかく人が来る前にダ・ヴィンチちゃんに連絡を」
立体映像が現れるが、ザーーとノイズしか出ず、ん?と全員が首を傾げた。
「変ですね、通信が繋がらない………」
「霊脈は分かる? それの所為かも知れない」
「ん、それはマシュさん、お願いします」
「分かりました」
マシュさんが確認しようとした時、瞬間、剣を抜き、居合いの如く、それを弾く。
甲高い金属音を始めに、無数の弾丸が放たれる。
二刀流で全て弾き、マシュさんは即座に切り替え、盾で全員を覆う。
「二人とも」
「エネミーです、数は分かりますか」
「弾丸からして銃使い………英霊だとアーチャーかライダーか。サーヴァント反応が分かれば良いんだけど」
「通信ができれば分かりますが………」
「二人とも、いま気配は」
「………来る」
盾を構えるマシュと共に走るが、別の方角から来る狙撃は剣で防ぐ。
「マシュは悪いけどそのまま走行。アスカは盾で防げない正確射撃を防いでくれ」
「「了解」」
銃撃の嵐の中、それら全て叩ききる剣の中、それは、
「!?」
現れた。
「「「ノッブっ!!!」」」」
瞬間、オレは意識が吹き飛び、鬼神のごとく切り刻んだらしい………
――藤丸立香
「………コロシツクシタ?」
セイバーこと、マーリンの頼みで、今回限り召喚に応えてくれた英霊アスカは血走った目で、けして本人などには見せられないほど、ちびノブ達を切り伏せていた。
いまも虫の息のちびノブを掴み上げ、握りしめてトドメを刺した。
「えっ? これぐだぐだなの? えっ、オレその所為でアストルフォウくんになったの? えっ、マジで? マスターオレは誰を殺せばいいの? ははっ、ダレヲコロセバイイノ?」
「落ち着いてくださいアスカさんっ」
「アストルフォの姿はいいよ!! 実際この肉体だからいいよッ、スカートとかも短パンだからギリで耐えるよッ。だがなぜアストルフォウくんだっ!! 殺す、殺し尽くす………織田信長と沖田総司はどこだッ、首を出せえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「自重してくれアスカっ」
っていうか、肉体の姿はアストルフォなんだと思いながら、俺達は辺りを見る。
うん、とりあえずちびノブ達から素材とかゲットする辺り、話通り、一時的に英霊化した人なんだろうな。少し親近感を感じる。
「とりあえず、二人を捜そう。まずはそこからだ」
「了解マスターっ」
「分かりました先輩」
心強いな、二人だけだけど。と、金属と銃撃音が聞こえる。
「念のために見に行こう」
「えーーーいっ、わしッ、いい加減にせぬか!! 沖田っ、元気か!?」
「まだ平気、へいきっへっちゃらでゴフっ」
「沖田あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
相も変わらず、二人は揃っていて、二人して武装ちびノブに囲まれていた。
「アスカ頼むっ」
「分かりましたマスターとりあえず二人以外のノブは全て八つ当たりするよ!!」
過激なことを言うけど、彼が一番早く加速する。
「ノブ!?」
「遅い」
冷ややかな一言と共に、斬撃が三度同時に放たれ、回転するように身体を動かし、地面を回る。
気づいたときにはすでに斬られていて、大型のノブに対しても、
「ニセ無明三段突き」
その瞬間、急所全てに一瞬で撃ち込み、静かに、
「切り捨てご免ってねっ」
ウインクすると共に剣を仕舞うと、全てのノブは倒れ、消えていく。
あれ? この子本当にアストルフォの姿なのか? スペックは遙かに違うよ!?
「わ、私の、私の宝具がッ。私の宝具が!!」
「落ち着け沖田っ、あれはニセと当本人も言っているっ」
「落ち着けるはず無いじゃないですかッ、宝具が無い沖田さんは一体なにが残るというのですか!? もうこうなれば北欧かどっかの神の槍手に入れて、みんなの手を繋ぐ歌を歌うしかないじゃないですか!!」
「おいそこの漫才サーヴァント」
「誰がじゃっ」
「っていうか、ああ♪♪ マスターさーんっ♪ 沖田さんですよ~来てくれたんゴフッ」
「沖田平気か!?」
「先輩、血、血っ」
俺にかかった血を拭いてくれるマシュ。とりあえず沖田と信長がここにいるのは、
「これってぐだぐた?」
「うむ………しょーじき、わしらも来たばかりだが、これらがうろちょろしてるから、またわしの悪い心とかがの~」
「ですね~さすがに飽きましたね」
「もう沖田、そいうこと言わないで欲しいわい。ネタ切れが分かってしまうじゃろ」
「ともかくマスターさん達と、私の宝具泥棒さんが来てくれて助かりました」
意外と根に持つな沖田。まあ、本当に宝具レベルだけど、そんなに魔力が使われた感覚は無いんだけどね。
そんな話をしていると、隅っこからまた、
「ノブノブ」
「斬っ」
ともかくここにいても敵に出会うだけのようだから、どこかに隠れよう。
全員顔を合わせ、殿をアスカに頼んで進むことにした。
「あれ? 切り込み隊長も取られてない!? 沖田さん、沖田さんの立ち位置がっ。ど、どうすればいいのですか、沖田さんの未来は如何に!? 未来~!! 未来~」
「おぬしがみらい言うと、なぜかみく~と読む者が居るからやめいっ」
………何のことだろう?
下水道らしき場所に隠れたが、やはりかなり違う。
「ここは………綺麗すぎる」
「ん? どゆことだ?」
「この時代とかだったら、下水道のにおいは酷いってこと?」
さすがアスカだ、マシュもそれに同意するように頷く。
かつてレイシフトの際もそうだけど、ここまで真水のような下水道はそうはない。となるとここはどこだろうか?
「歴史の分岐点、あるいは閉ざされた空間………経験から後者かな? 固有結界系かな?」
「それなら術者がいるよね? 聖杯かな?」
「聖杯ですか」
「聖杯………なんかあるたびにそれがあるだけで納得するのう」
「ですね~」
あまりそれを言わない方がいいんだけど、まあ気にしたら負けだな。
そう思っていると、外のちびノブ達がうるさい。なんだ?
「アスカ、気配を消してみてきてくれ」
「分かったよ」
「………あれ、本当に私達のポジションが」
「安心せい沖田よ、あれはあれだ。ゲスト出演なだけだ、古株ならどっしり構えておれ。男なんじゃし、ユーザーも離れることないじゃろ」
「それもそうですね♪」
無視しよう。
――アスカ
いまサーヴァントとして視界共有できるか少し試して、できなくても側なら使える通信機を使い、様子を見せている。
「ノッブ達なにしてる? 大型テレビ?」
配線に苦戦しているが、あるちびノブがうまく設定した瞬間、歓声が湧く。そしてテレビを始め、大ガラスなどの普通のガラスに何かが映る。おいテレビはなんだ?
魔術的なそれを見ると、謎の黒いフードの何かが映る
【は~いみなさ~んっ♪♪ こーんばーんはー♪】
『ノブーーーーーーーー』
声は加工されていなければ女性の声、ん? 少なくても信長の声ではない。沖田でも無ければ誰だと思いながら、それはテレビ番組のお姉さん的にテレビ側に話しかけてくる。
【今日はとっても嬉しいニュースよ~♪ なんと、この結界内に、藤丸立香お兄さんが来てくれました~ぱちぱちぱちぱち~♪♪】
『ノブノブブ~』
【これで計画第二段階は完了しました~】
それに戦慄する。つまりこうしてカルデアマスターである彼が来ることはすでに計画とやらに組み込まれ、いま策にはまる。
今頃マスター側は騒がしいだろうと思いながら、様子を見ていた。
【という訳で、計画第三段階で~すっ。それでは】
テレビ側からノブと言う声、カメラマンもノブかいと思いながら、切り替わるのは、スポットライトに映り、拘束台に乗せられている。
「セイバーランスロット、トリスタン」
そこにいるのは二人のサーヴァント。どちらも円卓関係者じゃないかと思いながら、何が起きるか見ている。
『不覚………』
『まさかお酒に薬が盛られていたとは………』
【うっふふ、それではこれより、大々的な計画プランスリーの説明で~すっ】
そ・れ・はと楽しげに、
【私、浮気が文化って言う人のは、取って言いと思うの】
瞬間、ゴム手袋を付けたナイチンゲールが現れる。準備万端、女医さんが現れた。
『ブチ取ります』
『『何を!!?』』
【それでは、まずはここにいるサーヴァントさん達は、男は男。女の子は女の子と分け分けするべきです。その中ではっきりしない人は取り、可愛い子も取り、浮気が文化な人は取り、悪い人はついでに取ることにします】
『ノブブーーーーーーーーッ』
ちびノブよどこに歓声を上げる瞬間がある? えっ、マジか? 二人がどんどん奧の部屋に連れて行かれていく。
しばらくして絶叫する男性の悲鳴が響き渡り、沈黙が辺りを包む。
【オッホン………それでは、メディアさん。判定官メディアさん】
『ここに』
大人のメディアさんは、どうも向こうらしい。やばいな、あの人神代の魔術師なんだけどな~と奧から血だらけのナイチンゲールさんを無視する。
『オペは成功しました、黄金になって消えないようにして拘束しています。いまは安静にしなければいけませんからね。座には殺してでも戻しません』
帰してあげて。
【実は、興味深い映像がノブちゃん達から送られました、はい】
そこにはアストルフォウくんになったオレが映る。瞬間、玄人のような目つきであらゆる角度を見るメディアさん。やめて。
『この人はいわゆる男の娘です、ええ間違いない。そして肉体はアストルフォをベースで、魂を詰め込んだと言う感じです。肉体は別の場所、異次元にあるのでしょうね』
【そんなことが可能なの?】
『ええ、ただ肉体も近くないといけないです。だいぶ前にそんな話を座で聞いてますから彼でしょう。問題ないです』
なにが?
『彼が例え異次元に肉体があろうと、女性にすることは可能ですッ。ってかしてみせます!!』
やめて。
『無論、アストルフォウくんに永久固定!! 永遠の少女として、私の中に登録しますッ』
【素晴らしいわメディアさんっ!!】
大歓声の中、オレはマーリンに泥のような殺意を越えた何かを抱く。
【というわけで、彼は女の子なのに、男の子なのナイチンゲールさん】
『分かりました』
そう言い、カメラを見る。なんだろうと思い、どんどん近づいてくる。
「………え?」
「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッ!!!」
そう叫び声を上げ、画面を壊してナイチンゲールさんが現れた。
なんなの? ホラー過ぎるよあの人。
「殺してでも取りますッ」
こちらを見ながら、もうなんなのと思いながら、ただ一言、
「お、オレは男なのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
いまは撤退するしかなく、急いで走り出す。
――???
「うふふ、楽しいわ~そうよね?」
そうノブ達に言いながらくるくる回る。
「さあ、みんな女の子、小さな女の子、夢を見る女の子、綺麗な女性になればいいわ。夢も希望も叶えに叶えて、素敵な空間を作りましょう。どんなことをしても………ね………うふふふ」
そう言いながら、逃げまどうアストルフォウくんを見る。
「かわいいわ~楽しみ、ここに来たらどうしましょうね………」
そう言い、
「わたし、可愛い女の子は、可愛い女の子と恋愛した方がいいと思うの」
そう呟いた瞬間、アストルフォウくんは全身鳥肌を立てて走り出す。
アストルフォウくんになったアスカくん。
姿もアストルフォウくん+短パンです。短パンはどこから、アスカの気合いです。
本体は元の世界で寝てます。そしてモニターでみんなが見守ってます、この様子もしっかり見てますよ。響達、アストルフォウくんの写真手に入れられるか?
………前の物語の温度差が酷いなこれ。
それでは、お読みいただきありがとうございます。