あっ、そう言えば彼の普段着は彼が買い、女物は奏さんが買ってます。下着は無いです、当たり前ですが。
本人? ああ、連れてかれてるよ。着ないと分からないもん、休日も地獄だった。
全てのノイズを倒しきり、一課の人達が二課の人と共に現れる中、響の方を見る。
「響、平気………なわけないか」
「アスカ………その服、っていうか、私もだけど」
「まずは落ち着いて、解けろとか、いつもの自分、さっきまで着てた物を思い浮かべて、解除しろ」
それにぎこちなく頷きながら、響は目を瞑り、シンフォギアは光に包まれる。こっちも解除する。
こちらのシンフォギアはペンダントに変わるが、響のは、
(!? なんで響のは無い!?)
よくよく考えても響には聖遺物を持っている様子は無かった。リディアンの制服の中に隠れているか? こちらを見る響に気づく。
「アスカ、その姿」
「えっ………あ、気にするな」
響、翼と同じ、リディアンの学生が着る、女性制服。響はもの凄く見るが、それで気づかないのならいいだろう。
あっ、ダメだ。助けた子供さんと親御さんが、契約書類書くの見られた。国家機密だからな、装者のこと。
「あ、あの~それじゃ、私達はそろそろ帰ろっかアスカ」
「安心しろ、未来にはすでに手を打った」
その瞬間、ずらりと黒服の人達が我々を囲む。
翼も腕を組み、静かにこちらを見ながら、
「貴方にはこのまま、特異災害対策機動部へご同行お願いします」
ガシャンと響の腕に手錠する緒川さん。身内の扱いだが、初期は自分もだったので、なにも言わない。
助けを求める響を背に、相棒が乗る車の方へ移動する。
「奏さん、翼さんやその、響ですが」
「ん、まあ翼だよな~………なーんか、険しい顔し出してるし………」
車が走り出す中、響が何か叫んでいないか不安になるが、それよりも、
「響のことだから、手を貸すとか、奏さんの変わりに頑張りますとか言い出す気がして、胃が痛い………」
「そうなのか? それは………」
険しい顔をする奏さん、それに首を振る。
「私は復讐のためにノイズと戦おうとしたんだ、少なくてもそれが始まりだ。そんなん他人に押しつける気は無い」
暗い顔のままそう言い、だからと付け加える。
「彼奴はきっと奏さんの優しいところしか見えてないですから、その」
「分かった、協力者とかになったら、よく話すよ。ガングニールの先輩だ、現相棒の頼みでもあるしな」
「お願いします」
だけどな~と険しい顔で、考え込む。
「翼だな、あとは」
「………」
それに黙り込む。正直、まだ彼女と連携は取れていない。
「翼はまあ、お前にその、な………」
「分かってます………」
少しの間を置きながら、ともかく、本部へ行くことを考える。
「ところで、短パンは誰が用意した? あたしらは用意してないぞ」
「言わないよ」
緒川さんがわざわざ特製品を用意してくれたんだ。
車から降りると、響は奏さんに気づき、こちらに気づく。念のため、側にいるが、詳しくは後でと言うしかない。
リディアン音楽院、その教師達が使う施設の特別なエレベーターへたどり着き、そこから本部へ降りる。
苦笑する響に、翼は静かにたしなめる。
「愛想は無用よ………これから向こうとこに、微笑みなぞ無用だから」
(オレがこの格好の時点でそれを言うか)
そして本部へたどり着けば、響の鞄から響のことを知った二課メンバーのパーティー的な歓迎会であり、色々翼さんの思いが台無しである。
身体検査で響はそれで帰された。本部で色々話がされた後、正直顔を洗い、このまま二課で泊まることにした。
顔を洗い終え、鏡を見る。鏡にはアストルフォ、自分じゃない自分。
「そうだ、メールで予定開けてくれって出しておくか」
響にメールで送っておく。まだ決まった訳ではないが、色々と心配する。
「はあ………」
顔を洗い終えて、数ある休憩スペースに座り込み、しばらくして学校へも休みを入れておく。
「響第一だ、だけど」
未来にこのことを黙る。響には酷だな。
自分は生前もそうだが、一人には慣れていると言うより、一人での行動ごとを好むし、誰かが関わるときは構わないと、その辺りは浮いていた。
まあ、向こうは女装させられたり、そのネタを扱われるから少し距離があると思われているのは知っている。
と、翼さんも女性シャワー室から出てくる。
「あっ、翼さん」
「!?!?!?」
と、こちらを見る際、何故かもの凄く驚いて、肩を掴む。
「貴方何を考えているの!?」
「えっ」
突然のことなので、よく分からない。
「い、いや、たぶん、翼さんと同じで、家に帰らず、ここで泊まっておく気ですが?」
「そうじゃないっ、自分の格好をよく見なさい!!」
その格好って、
「長ズボンにシャツ一枚ですけど、このまま仮眠室に行きますが」
そうだ、寝間着の長いズボンに、シャツ一枚。後は首にタオルをかけているだけだ。
湯気が肌からうっすら出ているが、湯冷めしないだろう。シャワーだしね。ここのシャンプーとか使うのが楽なんだよ。泡立ち良いしね。
「貴方は他人の目を気にしなさいっ、女性がそんな薄着でうろつかない!!」
「オレは男ですッ」
それにあっと呟いた後、しばらく黙り込む。
えっ、なに、この人。オレの薄着見て瞬時に男だと言うことが消えたの?
その様子に、そそくさと立ち去る翼さん。あれ、オレって寝間着や普段着すら女性物にしないといけないのかな?
………泣いて良いよね?
――立花響
今日の放課後、翼さんに呼ばれ、私はまた手錠付きであの場所に呼ばれた。
そこにはリディアンの女性制服のアスカもいる。正直、似合っている。
「まず響の力だが、オレと翼さんが持つこれだ」
そう言ってペンダントを胸元から出すアスカ、ごめん、見た目が女子だから気を付けて、ブラ付けてるのかな? いやいまは違う。真面目に、
「アスカ、そう言えばブラつけてるのか? いまなんか見えたが」
「付けてないよぉぉぉぉぉ、オレは男だっ。女性物は服だけで下着は男性だよ!!」
「奏」
「ごめんごめん」
そう言われながら、しっかりと見せてくれるペンダントは、聖遺物と言われる物で、その欠片らしい。翼さんのは第1号の『天羽々斬』と言うらしい。
それでアスカのは?
「オレのは滅茶苦茶らしい」
「滅茶苦茶?」
「響の聖遺物の話をしてからでいいだろ、オレはもう聞いてるけど、他の人はまだだから」
そう言って、話を聞かされる。二年の前、あの事件の時、私の心臓に残った欠片、あれが奏さんの聖遺物、第3号『ガングニール』の欠片だった。
それを聞き、奏さんも翼さんも狼狽している中、それでもここに止まって、話をしてくれる。
「つまり、簡単に言えば、響、オレ、翼さんは、聖遺物、ノイズと戦えるいまの技術力じゃ分からない技術の物を、全うに扱える人材ってことだ」
「えっ、奏さんは………」
「私は薬を使って、無理矢理適合率上げてたんだよ」
苦笑しながら言う奏さん、それに黙りながら、アスカを見る。
「えっと、アスカはいつから………」
「二年前のあの事件、二人が心配で、駆けつけた」
迷わずそう言ったとき、私の胸が軋む。
「それじゃ、やっぱり」
「………」
難しい顔をする。アスカはいままで戦っていた。ノイズと危険な戦いをして、守ってくれていた。
私達を、ずっと………
「どうして話してくれなかったの!?」
「それは俺達が彼に止めていたんだ」
そう言って司令官、風鳴弦十郎さんがそう言って止めてくれた。
「君のことは彼から聞いていた、ガングニールの破片、奏くんも心配していたからね。彼には君の容態を見てもらうと共に、その日から協力者として活動してもらっていた」
「それって」
「あの日、彼の聖遺物が彼と適合し、彼はぶっつけ本番で我々より、多くの活躍をしてくれた。これには、二課司令官として、何度礼を言っても言い尽くせられない」
「それには私もだ、私が強ければ、あんたや他の観客だってって、何度も思ったよ」
そう言う二人の言葉は本心からだ。だけど私が聞きたいのはそこじゃない。
「じゃ、アスカは、アスカはずっと私を守ってくれてたの? なにも言わずにそんな」
「そんなこと気にするな、第一、やれるのならやるがオレ。それに、本当に助けられたか、分からないしな」
アスカがあのことを強く気にしているのは分かっていた。こんなことがあったんだ。
酷いよ、それなのにいつも私は嫌がるアスカに女装させたりして申し訳ないよ。
「それで、えっと、アスカの聖遺物って」
「彼の聖遺物は、特別中の特別、『融合型聖遺物アストルフォ』と我々はしている」
「アストルフォ?」
首を傾げる響に、了子さんが側にある大型モニターにある騎士の物語を映し出す。
「英雄アストルフォ、フランスのパラディン、シャルルマーニュ騎士団に所属する騎士で、彼は多くの逸話を持つ、ただの騎士なのよ」
「えっと………それって」
「天羽々斬、ガングニールは、簡単に言えば英雄達が持つ武器や武具の名前だけど、オレのは違うんだ。オレの聖遺物はその時にあった研究品、聖遺物として加工すらできないほどの欠片中の欠片だった」
あの日、ノイズが人を襲う場面や、人が人を押す瞬間に、身体が動く。できることが少ないのに、やれないと言うのに動いた。
その時、何故か欠片の聖遺物達が反応し、全て龍崎アスカの元に集まった。
「それで生まれたのが、聖少女アストルフォ♪ 我々でも把握仕切れていない、聖遺物の融合と言う、イレギュラーの聖遺物を纏う、可憐な美少女のことよ♪♪」
「………」
なにも言わずに、黄昏れているアスカ。でもごめん、私より似合ってるよその制服。
「それでその聖遺物の能力から、アストルフォって名前になったんだ。能力もその騎士がたまたま手に入れたアイテムに近いもんだからな」
奏さんがそう言い、私もと言う。
「私が持っていたガングニールを吹き飛ばす変わりに、私が薬の所為で負ったもんも吹き飛ばす、魔防の本」
「それと、相手を転倒、彼の場合、槍に触れた周囲の空間の重力を操る槍。他者の装者の力を上げたり、音波による攻撃する角笛。そして幻獣ヒポグリフと言う、自立型アームドギアと、普通のシンフォギアより、多数の能力所持している」
そんな裏側があって驚きながら、私もガングニールにも、同じようにノイズへと対策できるらしいけど、
「アスカ、やっぱり………その」
「未来には言えない、オレ達のことは、他の組織、ノイズの対策に困る組織は、全部が全部良心的じゃないんだよ。その為にな」
「それに対してはすまないが、許可することはできない」
それには黙り込みながら、私は考える。
私の力が誰かを救えるのなら、私は………
――龍崎アスカ
「悪い予感の方になっていく」
「………悪い」
奏さんがそう呟き、それに首を振る。
「奏さん、ガングニールは奏さんの所為じゃないです。もし悪いと思うなら、その」
「翼と立花のことだろ? 分かってる………翼の奴、立花が戦うって言ったら、険しい顔しやがって………」
あれは私のことやら、なんやらで色々勝手に考え込んでると言いながら、頭を抱える奏さん。
「ガングニールで誰かを守る、か………立花っていつもか?」
「………あの事件以来、酷くなりました」
「………そうか」
お節介、誰かが傷付くより、自分がと言う自己犠牲。それが酷くなったのはあの事件以来だ。
あの調子じゃ、奏さんの変わりを、頑張って勤めますと言い出しかねない。
「………二人でどうにかしないとな」
「はい」
「それはまあ、お前と翼もだけどな」
実際、自分も翼さんと距離感を掴んでいない。
――天羽奏
龍崎アスカ、私の次に、翼の相棒になった相手。最初は女の子と思っていたが、男性と知り、何言ってるか分からなかったから、確かめに脱がしてみたら………まあ男だった。
色々な噂を逆手に取り、女装させたり、リディアンに入るためにも女子生徒の服を着たりしてくれる。それは非常に似合う。
だが、いまはそれより、翼とアスカだ。
この二人、二人が二人して避けている。
(片方は、私の命を救ったけど、私の人生、ノイズ殲滅って言う可能性を消した)
最初は戸惑ったが、仕方ないと思った。自分は色々間違えていた。
だからこそ、今度は間違えない、裏方で翼やアスカを支えると決めたんだ。
まあなにより、ガングニールは無くなったけど、装者としての可能性は消えた訳じゃない。もしかすれば自分にあった聖遺物だって見つかるかもしれない。だからこそ、アスカには感謝してもしきれない。
だけど翼からすれば複雑な相手だ。
自分達の不始末を最大限に押さえ込んでくれた、天羽奏を救った。
だが、私から戦う翼を奪った。翼が何度言っても分かっているとしか言わないが、分かっていてもそれがアスカを許せない壁になっている。
アスカもアスカで、それを気にしている。何度私がバカして、アスカをいじっても、改善しない。切っ掛けを作る身にもなって欲しい。いつの間にセクハラ女になってるんだぞわたしゃ~
そしていま、その翼を持った立花。それにどんな感情を抱いているか分かる。いい気分じゃないだろう。
このままじゃ、問題が起きる。
「………はあ、裏方も大変だ」
そう言いながら、もういっそ、アスカをランジェリーショップに拉致ってやろうか? もうそこまで墜ちてやろうか? 翼、オメェが止めないと私は墜ちるところまで墜ちるぞ。
今度何かあったら視野に入れよう。
そう思ったとき、警報が鳴り響いた。
つまり、魔払いの力で、身体に害があるものを、ガングニールの欠片ごと吹き飛ばしたため、薬の後遺症も、絶唱の後遺症も吹き飛ばしたため、入院生活には一時期なるものの、命はつなぎ止めましたのが奏さんです。
その為、奏さんのガングニール本体は消滅。欠片が響さんの中に残り、それを気にして二課に入ったアスカと言う流れです。
寝間着は長ズボンとシャツ一枚、夏場は短パンに袖無しシャツで寝るスタイル。
彼はオシャレではありません、基本的に着れればいいです。
女装に関しても仕方ないの一言で着てます。精神はすでに手遅れです。
幼年期は響、母親の所為、次に奏、了子の所為です。母親はアストルフォの髪の色なので、彼のことを珍しいとは思っても不思議がる人はいません(マリア、奏も色はね)
いまの彼はアストルフォとうり二つ、声もです、響より背が高くてよかったねアスカ。
それでは、お読みいただきありがとうございます。