少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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 ある時は魔竜として英雄に討たれる。

 ある時は英雄として魔竜を討つ。

 そのような矛盾を旅する魂、抑止力。もしもあり得たかも知れない、最悪な結果を無いものとして消し去るモノ。

 それこそが星と霊長が用意した抑止力たる己なり。

 だからこそここはいる場所ではない。速やかに星と霊長の世界へと帰還するべき。

 この世界の物語は、自分には無関係、自分と言う存在は無用。

 意味は無い。響達の人生に、龍崎アスカは必要ない。

 それが、はっきり分かった………


15話・祭り、ひとときの休息

 理由は分からない。だが、抑止力と言うものは、星または人類消滅を回避するためのシステムだ。

 

 そして何故か分からない、だがはっきりだ。はっきり断言できる。自分はそれだと。そう言うシステムの一部だと理解した。

 

 自分の事故は運命で定められていた。それは不必要な時代、世界、場所に生まれた場合は魂の休息と言う意味合いを込めて見逃されていただけで、管理から離れたわけではない。だから、そう言ったケースは短命だとも理解した。

 

 だが一番理解できないのは、自分がこの世界にとって意味がない?

 

 ああそうだ、この世界に自分を管理する存在意識はけして関わり合いがない、全くの別世界。ここに自分が『ある』のがおかしすぎる。直ちに戻らなければいけない。

 

 だがそれは龍崎アスカの死を意味する。魂が必要であって、器である肉体はいらない、むしろ邪魔でしかない。

 

 そしてもう一つ分からない。ここは彼の存在がいないのなら、自分と言う存在が生まれる必要性は全くない。龍崎アスカの存在は不要その物であり、この世界にとっては害悪とも言うべき、異物その物だ。

 

 ………ならば、

 

 オレは、龍崎アスカの人生は、なんだ………

 

 

 

「………朝か」

 

 最近寝不足であり、精神安定剤を飲んでいる。

 

 潜水艦で寝泊まりしながら、日々学校まで行く。正直、アサシンがどこから見ていてもおかしくないが、それは気にしない。

 

 向こうは事情の知らない人達の前では、姿を現さない。彼はアサシン、そこはむしろ強すぎるが故に信用できる。見られてはいるだろうけどね。

 

 そんな日々の中、

 

「アースカっ♪」

 

 響が満面の笑みで現れる。当初、色々話し合ったが、こちらが聞く耳を持たなかった。そんな時に、

 

「これ、学祭のチケット♪ ここなら、少しは気が安らぐと思うから………」

「リディアン新校舎の………響」

「はいこれ夏服ね♪」

「………うん」

 

 

 

 ――立花響

 

 あれから抑止力と言うものの存在が何か話し合い、仮説が師匠達から話しかけられた。

 

 曰く、アスカと言う存在の次は、世界を変える誰かなのかも知れない。

 

 無論本来ならばかばかしいと言うが、誰も言わなかった。

 

「魂を解き放つと言っていたからな、少し考えられないが………そうも言っていられない。なにより、アスカがいるいまが本来あり得ないだと?」

「なら私はなんだ!? 彼奴がいなかったら私は死んでたぞッ」

 

 奏さんは叫びながら、そうだと強く思う。

 

 私も、アスカがいなかったら、どんな辛い思いをしたか分からない。

 

 アスカがいなくてもいいはずはない。少なくても、もうアスカはいるんだ。

 

「………ともかく、フィーネと言う組織、アスカについての問題。俺達が抱える問題がでかくなる一方か」

「ですが、アスカも彼らもどうにかします」

「ああ、もう止まってる暇はねぇッ」

「………私も、私もアスカを守りますっ。いつも守られているから、今度は私が、アスカを守りますっ」

 

 そう言う話をした時、アスカからアサシンさんは、あまり被害を広げないだろうから、監視はあっても、戦闘中や周りに被害が出る手段はしないと言う。

 

 ので、私達の学園祭に呼んだ。女子服で♪

 

 ………

 

「で、弁解はあるかな響?」

「ごめんなさーーいーーーーまさか、普通に着るなんて思わなかったんですーー」

 

 絶賛未来さんに怒られました。

 

 

 

 学園祭で、それでもみんなと共に巡る。

 

「ほら響、食べ過ぎだ」

「アスカごめんね」

 

 そう言いながら、少しだけ戦いを忘れられる中、そう言えば、コンサートの話があった。

 

 実はクリスちゃんを出す予定で、翼さんが裏で色々しているらしい。みんなも出るらしい。楽しみだ。

 

 その時、頭の中で一瞬あることが浮かんだ。

 

「あっ、ごめんねアスカ。私、用事があるから少し、未来、クリスちゃん、会場案内よろしく」

「ん? どうしたんだ彼奴?」

「?」

 

 二人は?が浮いていた。

 

 分かってる、分かってますよ、いまはそんなことしてる場合じゃないのは分かっていますよ私。

 

 だけど、だけど………

 

「………かな、でさん………」

「………響、お前もか」

 

 穏やかな顔で、そこに奏さんが颯爽と登場した。これで決まった………

 

 

 

 ――雪音クリス

 

 音楽コンサート、自由参加のはずが、あの人の所為で参加する羽目になった。

 

 悪くなかった。歌うことが楽しかった。

 

 だけど、

 

「ここからは私達のターンデスっ」

「私達が勝ったら、そのペンダントをもらいますっ」

 

 そう言ってステージに現れ、歌い出す。

 

 その様子を見ながら、あのバカが青ざめている。

 

「お前、まさか負けるとでも思ってるのか?」

「い、いや、その、違うんですよクリスさん」

 

 ………

 

 気持ち悪いことにさん付けで呼んでくる。

 

「奏、なぜそんなに青ざめている?」

「い、いや、ななな、なんでもないぞ翼」

 

 なんで血の気が引いてる?

 

「あれが天然物か………」

「私達、女の子ですのに………」

「この世は残酷だ………」

「ど、どうしたの? 二曲目歌えないのがそんなにショックだったの!?」

 

 何故灰になっているんだあの三人?

 

 こうしてあの二人の曲が終わった。

 

「いっや~飛び入り参加のお二方も素晴らしいっ。で・す・が、まだ参加者はいますっ。彼女の曲が終わり次第、終車発表ですっ」

「私達が負けるはず無いデスっ」

「うんっ」

 

 ステージから降りながらそう言うと、その時、ステージから靴音が鳴り響く。

 

「それでは、次の方は飛び入り参加で匿名希望っ、名前は」

 

 その時、知っている者達の世界が止まった。

 

「………私の名前はアストルフォと言います、それでは聴いてください」

 

 紛れもない、少女になった。濁った目の彼奴が、いた………

 

 そしてステージは、熱狂に包まれた………

 

 

 

 ――天羽奏、数分前

 

「というわけで、コンサートに出て、クリスと対決だ」

「……………………………………なんで?」

「私達に任せてくださいね~」

「可愛くしますよ~」

「最強兵器男の娘っ♪ 本物お願いします♪♪」

「それじゃ、可愛くするからね~」

「……………………………」

 

 一人の少年は、少女へと変わり、彼いな、彼女は完璧に女の子になり、少女として歌うと心に決めた。

 

 ………

 

「………彼奴って男か響?」

「自信持てなくなってきました」

「服着てから、彼奴女の子になってたな」

「はい、もう何か壊れた音しました。やはり、タイミングがまずかったかと」

「………あたしら、無事で学園祭終われるかな?」

「………泣いて謝るしか………無いんじゃ無いでしょうか………」

「………」

 

 やべっ、どうしよう。

 

 

 

 ――同時刻、マリア・カデンツァヴナ・イヴ

 

 米国の秘密機関がついにここに来た。ウェル博士は躊躇いもなくノイズを放つ。

 

 多くの人の命が消える。これが正しいことか分からなくなる。

 

 だけどしなきゃいけない。そう言い聞かせていた………

 

「!?」

 

 だけど、側で無関係の子供達がいる。すぐにノイズを引くように言うが、博士はする気も無いうえ、自分が出ても間に合わない。

 

 これが………正しいの?

 

(セレナっ)

 

 その時、だった。

 

 

 

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 

 

 

 一人の男性が、ノイズを倒した。それに私達は驚いた。

 

『無事か? なら急いでここから離れるんだ』

『う、うん』

 

 急いで逃げていく子供達、それにノイズが向かってくる。

 

 だが男性は気にせず、その剣を振るう。その姿は、

 

「………騎士?」

 

 モニターに映る蒼と銀の騎士は、静かにノイズを倒し続ける。

 

 それにマムや博士は出るように言う。私は静かに、彼のもとへ走り出す。

 

 

 

「………」

 

 大量の炭が舞う中で、それでも銀色に輝く鎧は燦然と輝き、仮面の隙間から、覗く瞳は鋭く、こちらを見る。

 

「貴方は何者? その鎧はなに?」

 

 炭化した死体が舞う、ノイズも人も関係なく。

 

 そんな中、私が現れたことに、騎士は剣を肩に担ぐ。

 

「………お前は、何故今頃現れた?」

「質問に答えなさい」

 

 僅かに心に何かが刺さる。それでも振り切り、彼を見るが、彼のその眼光は、胸に刺さるように、こちらを見る。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ」

「私はフィーネよ」

 

 そう、私はフィーネで在らねばならない。そう叫ぶと、彼はため息と共に首を振る。

 

「はあ、一画を使用されたとは言え、このような形、場所で喚ばれるなんて………」

 

 そう言いながら、騎士道なぞ俺には向かないとも文句を言う。

 

「まあ、あり方から考え、このような裏方が俺に合っているがな。生前もそんなもんだった。この世界で紡がれる物語もまた、無関係な品物………そこまでお節介を焼くのもな」

「なにを言っているの?」

「………いや、ただの愚痴さ。令呪なんてもんに縛られている、哀れなもしもの使い魔のな」

 

 その瞬間、銀色の鎧が光る。いつの間にか銀色の輝きに包まれた剣を構えていた。剣は光の所為で、分からない。

 

「………いずれ運命があんたを潰しにかかる、だが、調整する魂ならあるいは………」

「!? 待ちなさいッ」

 

 剣を地面に叩き付け、閃光のように世界を覆う銀。その場にはもう誰もいない。

 

「何者………調整する魂?」

 

 なぞの言葉を残したまま、ここから立ち去るために動く。

 

 

 

 ――暁切歌

 

「まさかあんな隠し球が控えていたのはずるいデスッ」

「もう凄く気合い入ってたっ、ずるいっ」

 

 時間があれば、私達だってもっとやれるデスよっ。だからと言って負けを認める訳にはいかないのデス。

 

 世界を救うために、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 

 そうこうしていると、彼らが来るデス。

 

「待って、切歌ちゃん、調ちゃんっ」

「響、さすがにいきなり名前呼びはどうかと思うぞ」

 

 そう言いながら、くっやっぱり可愛いデス。

 

 もう周りの人達が男女関係なく魅力してるデスよ、なにをすればああなるんデスか!?

 

「二人とも、話を聞きたいんだけど」

「ここでやるつもりデスか?」

「まさか、君らこそやるつもりなの?」

 

 そう言われ、私達も黙り込む。

 

「私達は私達、世界を救うために動いてる」

「世界を救う? なにから」

「それこそ、知らないんだから邪魔しないで欲しいデスっ」

 

 他の装者も来る中デスが、別に困らないデス。

 

「………」

 

 静かにこっちを見る、あの人は偽善者デス。何も知らないのに助けるとか、言いたい放題に言う人デス。

 

「君達に一つ聞きたい」

「なんデス?」

 

 

 

「君達は君達で世界を救いたいの? それとも、世界を救いたいの?」

 

 

 

 それに何を言っているか分からないデス。結局同じじゃないデスか。

 

「それ、同じだよ」

「違うよ、前者はいまの君達だけだけど、後者は他にも人が手を貸してくれる可能性がある。君達は」

「そんなの、誰も手も借りる訳にはいかないデスっ、マムやマリア以外、信用できないデス」

「ならこのまま敵対するの? このまま争い続けたら、それこそ何も守れない」

「貴方達が戦わなければいい」

「それはできないよ、その時、オレは死ぬ。あのアサシンの手でね」

 

 その時、背筋が凍り付くデス。

 

 分からない、あれは怖いとしか分からないデス。

 

 何故かは知らないデスが、この人の命を狙っている。骸骨の存在。

 

「………あれはなんなの」

「オレの命を狙う人を越えた何か、って言うしか無いね。オレも分からないうちに、命狙われてるから」

 

 なんデスかそれはと、周りを見ると、全員顔をしたにうつむいていたデス。

 

(本当に命を狙われてる………あんなのに?)

 

 そう思ったとき、心臓が捕まれた気がしたデス。

 

「聖遺物が必要みたいだけど、渡せない。響のは体内に融合しているものだし、オレは命を狙われているとかじゃない、大切な友達から託された物でできてる。クリスや翼さんのだって、全部が全部、自分や誰かの大切なものを守るために、ある。君達が言う守りたいものが分からない以上、力を貸せない」

 

 そう言われながら、何かが揺るいでいる気がしたデス。

 

 だから、私達は勝負すると約束させて、その場から去ったデス。

 

 

 

「切ちゃん………」

「大丈夫、大丈夫デスよ調」

 

 そうデス、きっと大丈夫。

 

 そう思い、私達は戦いに備えるデス。

 

 だけど知らなかったデス。

 

 私達の出した条件『装者だけ来る』と言う条件が………

 

 死を意味していたなんて………

 

 

 

 ――龍崎アスカ

 

「………学園祭の記憶がまちまちな気がする」

「忘れろ」

 

 クリスからそう言われ、響は未来に必死に誤り、翼さんは何かショックを受けていて、奏さんは奏さんで戸惑う。

 

 だが、いまは、

 

「本当に、自分達だけで行くのか?」

 

 リディアン音楽院跡地、彼女達の指名した場所。

 

 人気のない、あの荒れた場所なら、

 

「………アサシンは動きます」

 

 それに全員が黙り込むが、

 

「オレはそれでも、行きます」

 

 そう、行かなきゃいけない。

 

 オレは、龍崎アスカの人生は、無くてもいい人生じゃない。

 

「援護射撃は任せな」

「我々も、できる限りサポートする」

「お願いします師匠っ」

 

 心の中のアームドギア達、それに全ての命を預けて、

 

「必ず帰ってきます」

 

 そう決めて、動く。

 

 

 

 そこは夜に近づいていた。正直、あの子達が来るとは思えない。

 

「あの二人はいい子だけど、博士の方が外道だろうな」

「あ~じゃ」

「ネフィリムがいると思うのか?」

 

 そう話ながら、すでにシンフォギアを纏い、ガスに気を付けてながら、カ・ディンギルを見る。

 

「………アスカ」

「………大丈夫、へいき、へっちゃらだろ?」

「………うん」

 

 響が手を握り、それを離したとき、それは、現れた。

 

 重々しい鎧の音、剣を引きずり、静かな呼吸音。

 

 気配がないのにあると言う、矛盾する、その姿を見た者は死しか与えなかった存在が、静かに現れた。

 

「………話は聞いていた、すまぬが、龍崎アスカ。お前の相手は我だ」

「………」

「そこに隠れている獣と、殺す価値すらもない生き物、出てこい」

 

 それに、ノイズと共に、ネフィリムと言う獣。ウェル博士も出てくる。

 

「あんたが何者かは知りませんが、殺す価値もないいき「黙れ小物」」

 

 その時、辺りに殺気が包まれ、それだけでノイズが何体か消し飛んだ。

 

「………見ているか、弦十郎。貴様もそこから見守るか」

 

 そう言い、虚空を見たとき、オペレーターから僅かな悲鳴が聞こえたが、そのまま拳を固めて、仕事を全うする。

 

「ほう………覚悟を決めた者達か………別の者達はどうやら、戸惑っているようだが」

 

「あの、カメラ越しで様子見れるってどんな技能ですか?」

 

 さすが次元の会話をぶった斬った人だ。向こう側が分かる様子だ。

 

 そして剣を引きずりながら、静かに、

 

「己が何者、否、なんなのか知り、それでもか?」

「………」

 

 その様子を見ながら、静かに、

 

「ああ、それがオレの意志だ」

「………それでいい、それがお前と言う存在の役割」

 

 剣を構えながら、周囲に闇が漂う。

 

「無意識か、あるいは意識的にかは我すら知らぬ。だが、星と霊長の手により、必ずある最悪なもしもの世界に送り込まれ、それを無いものにするモノよ。お前はそれでいい、そうする権利がある。無論、それを阻まれるものだがな」

「ああ、それは嫌でも分かる。それが自分の役目、星と霊長に管理された、自分の役割だ………」

 

 その言葉に、否定は出来ない。何かがはっきりと告げているからだ。ここは、いるべき場所じゃないと………

 

「だがいまここにいる以上、悪いが抗う。それが、オレの答えだ」

 

 アストルフォ、いまはお前の勇気を貸してくれ。

 

 剣を、竜殺し、銀に燦然と輝く剣を握りしめ、多くの雷鳴を纏う。

 

「さあ始めよう、龍崎アスカ。首を出せ」

 

「ヒポグリフッ、行くぞ、みんなッ」

 

「「「おうっ」」」

 

「僕を無視するなッ、ネフィリム!!」

 

 こうして交錯する戦いが始まった。




アスカはどうなるか、響達の物語に関わり続けられるか。

お読みいただきありがとうございます。

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