少年/戦姫絶唱フェイト・シンフォギア   作:にゃはっふー

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9話・歌

 親が死んだ。悲しい。

 

 一人は悲しい、だから考えないように逃げていた。

 

 いつも逃げていた。ゲーム、後輩の指導、学業、なんでも。

 

 考えられることを考え、できることをして、やりたいことをして、現実を見ないように生きて、逃げ続けた。

 

 そんな自分が英雄に成れるはずも、まして、彼女達と共に生きる資格は無い。

 

 世界は、無音と純白で包まれた………

 

 

 

 ――???

 

『アアァァァァァァァァァァァァァ』

 

 悪竜の咆哮よりも轟くは、雑音のように奏でられる、数多の絶唱。それに鼓動するように、空に紅と黒のエネルギー弾ができあがりつつあり、世界を紅く染め上げている。

 

「まずは櫻井女史から救い出すっ、鎖を破壊しろ二人ともっ!!」

 

 雷を纏い、剣を振るう。その一つはデュランダルだが、

 

(早いっ!?)

 

 三人の連携はよくできていた。うまくクリスが弾丸を放つが、それを巨大なデュランダルを振り回して防ぎ、もう一つの魔剣。バルムンクで翼と互角に………

 

(違う)

 

 自分よりも早い太刀筋で、天羽々斬を捌いている。

 

 剣の腕はアスカと言う素材が上であり、その上で巨大なエネルギー弾が完成しつつある。

 

『特大のフォグニックゲイン反応、とんでもないエネルギーで形成されていますっ!! こんな物放てば並の絶唱どころの傷ではありませんッ、なによりここら一帯余波だけで消し飛びます!!!』

『エネルギー量から推測、月を確実に壊すエネルギー弾って………』

『だそうだっ、なんとしても完成する前に阻止するんだ!!』

 

 通信機から入る声に、その黒と紅の球体を見る。まるでアスカの命を吸っているように、大きく、見るものを恐怖に陥れる。世界を紅く染め上げる。

 

「ダメ………ダメだよアスカあぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 拳を振り下ろすが、闇が吹き出し、赤い液体と共に、響を捕まえて、大地へと振り下ろし投げ飛ばす。

 

「アスカ………」

 

 悪竜アスカはただ口から赤い液体と、光が鼓動するだけ。フィーネや鎖、球体に対する攻撃全てを阻むことに、思考が止まりかける。

 

「立花止まるなっ」

「いま彼奴を助けたいなら動けッ!!」

 

 だが、その痛々しい彼を見て………

 

「………できないよ………」

 

 首を振り、涙を流す響。

 

 二人は攻撃の中で、悪竜が持つ両剣から闇があふれる。

 

「「!?」」

 

『Aaaaaaaッ!!!!!』

 

 黒い波動が二人に放たれ、吹き飛んだ。

 

「くっは」

 

『翼ッ!!』

 

 通信機より奏の声が響く中、すぐに悪竜の視線を感じ、千ノ落涙を放つが、その全てが身体に触れても弾かれる。

 

「なに!?」

 

 竜の咆哮と共に剣が振り回され、クリスが銃撃が放たれる。だが全て弾かれて、すぐに位置を変える。

 

「無駄だッ、悪竜を殺せる魔剣はこいつが持っている!! 何人もこいつを殺すことは愚か、傷付けることも出来ないッ」

 

「いやっ、まだだッ」

 

 すぐに影縫いを放ち、悪竜を一瞬止めた瞬間、響が駆ける。狙うは、

 

「一つ!!」

 

 その拳が鎖が埋め込まれた部分に、二つとも放たれ、鎖を掴む。

 

「チィィィィ」

 

「そのままぶっ壊せッ」

 

 クリスの叫びに、頭部に繋がれた鎖を引っ張る。

 

 身体を覆うのは泥のような感触の闇、その衝動に繋がっているだけで、頭部に繋がっているわけではないのは、手応えで分かった。

 

「コッオォォォォォォォォォノオォォォォォォォォォォ」

 

 アスカの身体を足蹴にしてでも、壊すか引き抜こうとするが、その時、アスカの両肩から、

 

「!? 立花離れろッ」

 

 竜の爪のような腕が生え、それに捕まれ、爪が食い込むが、

 

「これくらいぃぃぃ、へいきッ、へっちゃらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

『Aaaaaaaaaaaaa』

 

 それでも手を離さず、ふりほどこうとする悪竜。クリスと翼は視線で頷き、了子を見た瞬間、

 

「悪竜ッ」

 

 その瞬間、叫び声が放たれ、黒紅い雷が全体を覆う。

 

 そばにいなかった二人は避けたが、響は、

 

「アアァァァァァァァァァァァァ」

 

 雷に撃たれながらも、それでも離れず、涙のように血を流しながら、けして離そうとしないが、剣が響へと刃先を向けた。

 

「離れろ立花ッ」

 

 天ノ逆燐、それを放ち、クリスは舌打ちして響を無理矢理回収する。

 

 巨大な剣が、悪竜へと激突するが、

 

「!!!」

 

 その手応えがおかしすぎた。

 

 まるで、地面に突き刺さったかのように、手応えがおかしすぎた。

 

『………テンガイ、あきれうす』

 

 そう竜の目で睨みながら、

 

『ガイボウっ、けいろーんッ』

 

 その瞬間、翼は何かに穿たれたように、何かに貫かれた。

 

「がっは!?!!?!!」

 

「翼さん!?」

「なっ、狙撃!? 空から!!?」

 

 そしてその時、何故か夜空に輝いているのは、

 

『!? 射手座!!?』

 

 オペレーターからの声から、それは分かった。

 

 その射手座、本来射手座は矢を引き絞っているはずだが、その星座からは、矢は無くなっていて、輝きも無くす。

 

「これは………龍崎アスカ自身の絶唱? だが威力も何も………」

 

 了子すら分からない事態を引き起こす中、剣を構え、霧が辺りを包み込む。

 

「!」

 

 クリスは何かやばいと思い、すぐに辺りに銃撃で霧を吹き飛ばす。だが、

 

『解放ッ、じゃっく!!!』

 

 瞬間、霧に触れていたクリスは、切り刻まれた。

 

「がっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「クリスちゃん!!?」

 

 翼と響はクリスの爆撃で助かり、クリスも霧を晴らしたおかげで、軽傷に済んだが、片腕が切り傷でズタズタに切られていた。

 

「二人とも!!」

「問題ねぇッ!! まだ動くッ」

「あす………!!!」

 

 そして悪竜の泥から紅い液体混じりながら、流れ出る。

 

 目からも血を流しながら、三人を見ていて、その様子に歯を食いしばる。

 

「私達より、このままでは」

「彼奴の方が先に死んじまうッ」

「アスカ!!!」

 

 腹を貫かれた翼だが、内蔵などは無事と確認し、静かに目を閉じて、アスカを見る。

 

「………二人とも、私が道を開く。その瞬間を逃すな」

「!? まさかあんた」

「ここで歌わずッ、いつ歌う!!!」

 

 そう叫び、翼は駆け出す。

 

 二人が何か叫ぶ前に、デュランダルを居合いのように構えているアスカを見た。

 

『がいぼう………』

 

 翼はその瞬間、時が、

 

(………止まった?)

 

『オキタァァァァァァァァァ』

 

 剣筋が同時に三度、同時の突きが放たれた。

 

「!」

 

 気づいたときにはすでにデュランダルが回避不可能の位置に同時にある。

 

(貫かれ)

「アスカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 その一つを拳で砕き防ぎ、その通路から攻撃をギリギリにかわし、クリスが追撃に弾幕を張る。

 

「絶唱すら使わす気無しかくそッ」

「立花、腕は!?」

「へいき………へっちゃ………あっ、うぅぐ………」

 

 デュランダルの一撃を真っ向すら受け止めて、ギアが破壊され、腕があらわになり、血を流す。流しているだけで、砕けたりしてないだけマシと、思いながら前を見る。

 

「………くっ」

 

 その時、ガッシャンと音が鳴り響く。

 

「「「!!!」」」

 

 剣を天へと掲げ、剣同士ぶつけたアスカは、静かに、

 

『からだ、ハ、ツルギでデキテイタ………』

 

 その瞬間、泥のように空で固まりに成りつつあるエネルギーから、雨のように、

 

「まずいっ、散れえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 

 剣のような斬撃が降り注ぐ。

 

 

 

 クリスの爆撃よりも酷い音を鳴り響かせ、空を見上げながら、血を吐き出す悪竜。

 

 固まりは出来つつありながら、装者達は、

 

「クリスちゃん………」

 

 クリスがむしろ雨に突撃して弾幕を張ったが、ほぼ直撃して落ちて、翼の方は、

 

『翼あぁぁぁぁぁ、返事しろっ、翼!!!』

 

 翼はその場に動かず、通信機から奏の叫び声だけが響く。

 

「つば、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 立ち上がろうとしたとき、片足に激痛が走る。黒と紅の泥の剣が、突き刺さっていた。

 

「あっっっ、ぐっ………アス、カ………」

 

「どうやら、これで終わりのようだな。まさかたった一人でカ・ディンギルの大変わりできる、それだけでなく、未知の力を解放するとはな」

 

 静かに見下ろすのは、先史文明の巫女である、彼女だけだった。

 

「………了子さん………」

 

「もうすぐだ、もうすぐバラルの呪詛をうち破れる、これで終わりだ、やっと、私の悲願が叶う!!」

 

 悪竜と化したアスカは静かに剣を構え、響へ近づいていく。

 

「アスカっ、アスカお願いっ。お願い、アスカっ」

 

「無駄だ、完全に意識は聖遺物に奪われ、私と言う制御下にある。龍崎アスカはもはやただの人形だ。なんなら、私の下に就くのなら、お前の言うとおりに動かしてやろうか?」

 

 そんなことを言われながら、響は叫ぶ。

 

「アス」

 

 その時、振るわれたデュランダルは紅い血しぶきを舞い散らす。片腕の装甲が剥がれた。

 

 剣が掠めただけで血が流れ、そのまま地面に叩き付けられ転がる。それでも悪竜の眼光は鋭く、響を見つめる。

 

「アス、カ………」

 

 響の眼前には、悪竜に成り、全身から血を流す幼なじみ。

 

「………いや………」

 

 そのまま静かに剣を掲げ、

 

「こんなの………いやだよ………アスカ………アスカァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 

 

 

 

 

 大学のキャンバス、スマホをいじりながら、外を見る。

 

「おーい、またFGOやってんのか?」

「いいだろ、好きなんだから」

「おま、ゲームするか剣道してるか、勉強してるかだな」

「そんなんだろ? 大学生ってのは」

 

 そんなたわい話をしながら、はあとため息をつく。

 

「ん?」

「どったの?」

「いや、なーんか呼ばれた気がしたけど………気のせいだよな?」

 

 そう言いながら、一度止めてから、窓の外を見る。その様子に、

 

「そう言えば、お前、同期の奴から色々一悶着あったろ? いいのか」

「少し間置くよ、あれは………自分が悪いって」

 

 そう言いながら、立ち上がり、帰る支度をする。

 

 同期と別れ、静かに帰る。

 

 いつもの通学路、この時間はいつも通っているが、通っているという実感は無い。

 

 早く帰り、ゲームするか、予習するか、食事の下ごしらえするか、剣を振るうか。

 

「機械人間か………」

 

 できること、やれること、したいことをする日々。別段困ることもない、何も気にする必要は無い。ただ淡々と過ごす自分が強く、熱心に前に進む者に取っては不愉快だったのだろう。

 

 ただのヒートアップした結果だ。気にせず歩きながら、道路で止まる。信号が赤だった。

 

「お母さ~んっ」

 

「信号赤よっ、少し待ちなさいっ」

 

 向こう側に母親がいる子供、それを横目で見て、すぐに信号を見る。もうすぐ変わるだろう。

 

(そう言えば今度誰育てよう、イベントに備えてアストルフォ育てるか、だいたいの条件をクリアーすらから助かるんだよな、弱いけど、そこはサポートとして誰使おうかな………)

 

 などと考える。いつもそうだ、いつも、現実を見ながら見ていない。

 

 何かを考えて、考えないようにしている。それか、全く考えないようにしている。

 

 と、信号が変わった。一歩前へ、

 

(で………で)

 

 その時、真横を見た。ブレーキをかける、と思ったが、

 

(………は………………)

 

 世界が止まった、こいつ、このスピードで止めてない。片手で通話してる、こちらを見てない、ってか、まずい。

 

 マジか? このまま跳べば避けられる。跳ぶしかない。

 

 と、隣から誰か声があったのを思い出す。

 

 そして世界が反転した。

 

 

 

「おいっ、ひき逃げだっ!! 救急車っ、早くしろっ」

「き、君大丈夫か!?」

「ひ、ひでぇ血が」

 

 なんかすっげぇ痛い通り越してる気がする。意識おかしくねぇ?

 

 声出ねし、やべ、死ぬなこれ。

 

 ………別にいいか。

 

 何かしたい訳でも無い、夢も何もなかった。

 

 夢ってなんだっけ? ってか、なんだろう。何か忘れてる。

 

 ゲームのイベント? 剣道部の指導役の変わり? ああそうだ。

 

「こ………ども………ぶじ?」

 

 その時、オッサンがどいてくれた時、子供がいた。何か聞こえる、心配そうに涙目だが、無事そうだ。

 

「ぶじで………よかっ………」

 

 近くに来たとき、ただそう呟いた。それだけだ………なんか呼吸できない。ダメだな………

 

 視界が暗くなる、その時、ゲーム画面の携帯を見た。それを見て、心配して泣きそうな子供にどうすればいいか分からなかった。

 

 先ほどまで考えてたからか、ただ印象が深かったからか、あの英雄が過ぎり、そのまねごとをして、微笑んだ。

 

 笑い方って、こんなんでよかったか?

 

 

 

 

 

 

 

「………先生、患者の意識がっ」

 

 そう言って看護士が叫んだが、意識が虚ろ。身体が痛い、いつ死んでもおかしくない気がする。

 

 苦しいとかも分からない、やっぱり機械なんだろう。

 

「………このバカ孫」

 

 じっちゃんが先生と共にはいるが、その顔は暗い。

 

 ああ死んじゃうのかと理解した。

 

「ごめ………先、いく………」

「………」

 

 なんか夢を見てた気がする。可愛い幼なじみとか、ドジな先輩とか、姉御な人とか、ツンデレな子とか、おい、女子度高いな。他いない?

 

 そんで、なんかしてた気がするが………ま、いいか。

 

 結局一人だ。ああいいさ。

 

 一人だ、結局。一人でいいさ。

 

「先輩っ」

 

 そう言って、流れ込むように後輩や同期が入る。先生が招き入れた。

 

「ふざけんなよっ、俺はまだ謝ってねぇんだぞっ。死ぬんじゃねぇよ!!」

「先輩、俺、俺………」

「全く、子供救うって、ゲーム好き極まりだな………バカ野郎………」

 

 ………何が起きてる?

 

 なんでみんないる?

 

 自分は一人だ。ただ逃げていた人生だった。

 

 そうだ、真っ白が嫌で逃げていただけだ。本心なんて、無かった。

 

「………これがお前の人生で得た物だ」

 

 じっちゃんが涙目でそう言う。この人が泣いた所は見たことない。自分のために、涙を押し殺していた人なのに………

 

「お前は心を閉ざしていた、だけどな、それでもお前がしたことに間違いはない」

「お兄さんっ」

 

 その時、知らない親子が入る。

 

 あの時の子は、頭にネット?みたいなもんつけている。頭ケガしたのか、悪いことしたな。

 

「お兄さん大丈夫? お兄さん」

「………ごめんなさい、貴方のおかげで、娘は娘は」

 

 涙ながら喋る母親は、娘が自分の身体に触れないようにたしなめながら、その様子を見ている。もう助からないと知っている。

 

 子供の方には、言えないな。

 

「お兄さん、今度お礼したいの、けどすぐにお家に帰れないんだっ。お兄さん、また会える?」

 

 それにみんな顔が曇る。やめい、バレるだろ。

 

 ………

 

「………ごめ、んね………おにい、さん………少しねむい………んだ………」

 

 言葉喋るのに、ここまで力使うんかい。

 

「そうなの………」

 

 顔が沈む少女に、静かに、

 

「ご、めんね………だけど………君は、げんきになっ、てね………」

 

 いまのはよく言えた。

 

「うん、元気になるよ♪」

 

 その顔を見たとき、俺………オレは思い出した。

 

「………ああ………」

 

 こっちの身体は動かない。構わない、こっちは終わった。

 

 だけど、

 

「じっ、ちゃ………」

「………」

 

 だけどっ、

 

「あたらしい、じんせい………だいじな、もん、まも、るよ………」

「………気を付けろよ、お前は、いつも変なミスをするからな」

 

 穏やかな声だった………

 

「………はい………」

 

 そしてオレは意識が途切れた。

 

 

 

 ――立花響

 

「………アスカ」

 

 その時、アスカが止まった。

 

 辺りから、校歌が流れる。リディアンの歌、この歌は、

 

「なんだこの歌は、不愉快なっ。悪竜っ」

 

 鎖を引き延ばす了子さん、だけど、鎖はびくともしない。

 

「なに?」

 

 アスカは静かにしていた。いつの間にか、絶唱の雑音が消えて………

 

 その目から、涙が流れ、私の頬に伝わった。

 

「………アスカ」

 

 

 

 ――???

 

「おはよう」

 

 そう言うのは女の子の格好をした英雄アストルフォ。

 

「おはよう」

 

 そう言ったのはオレこと、アストルフォの姿に似たオレだ。

 

「んじゃ、色々ありがとな」

「ん~ボクはなにもしてないんだよね~全部君が引き寄せ、つかみ取ったものだから。だけどこれだけは言える、大変だよ」

 

 真剣に尋ねられたが、その額にデコピンする。

 

「誰に言ってるんだよ。アストルフォ………みんなに借りたもんあるし、なにより、あっちでも向こうでもオレは一人じゃないんだ。だから平気だよ」

 

 そう言われ、アストルフォは嬉しそうに微笑んだ。

 

「うんっ♪♪ ボクはここから応援するよアスカ♪ みんなの傷も治ってるから(・・・・・・・・・・・・)、心配しないでねっ」

「おう」

 

 そして歩き出すとき、

 

「これ持ってけ」

 

 そう言って、背後から投げ渡された剣を受け取る。それを見つめながら、次にその場にいる人達に、アストルフォ含めた人達に頭を下げる。

 

「ありがとうございます」

「礼はいい、ってか、それはお前の方がいいらしい」

 

 そう言われ、少し驚く。そしてフンっと言って、鎧姿の彼の騎士はもう興味なさそうにしていた。それと共に一人、大柄の男が現れ、静かに頭を下げた。

 

「バルムンクを頼む」

「はい、あっ、電気の恩恵ありがとうございますっ」

「………」

 

 大柄の男の背中から顔を出して、彼女は頷いてくれた。

 

 そして静かに、聞こえ出す歌の道を歩く。

 

「………」

 

 そしてその先に俺がいて、片手を上げていたため、その手を叩く。景気いい音だ。

 

「んじゃ、頼む」

「ああ、やってやるさ。今度は、龍崎アスカとしてっ」

 

 

 

 ――???

 

 誰かと誰かが手をたたき合ったような音が鳴り響き、球体が壊れ始めた。それと共に鎖を引きちぎる。

 

「悪い………少し死んでた」

「あす………か………」

 

 その様子に顔を歪める了子さん。ノイズを放つが、デュランダルを投げて吹き飛ばす。いつの間にかシンフォギアが、黒いギアが消えていく。

 

「バカなっ、なぜ、なんでだ!?」

 

「………未来達のおかげだ、後は、響達かな?」

 

 静かに歌を聴きながら、響に手を差し出す。その手を握り合わす二人。

 

 光が高まり、二人の身体は光り輝く。

 

「響、オレ達はまだ立ち上がれる、戦える、いけるか?」

「………うんっ」

 

 輝きが強まる、その光と共に朝日が昇る。

 

 それは四つの光。

 

「………傷は癒えた………なら、まだ飛べるッ」

 

『翼ッ』

 

「ったく、テメェ後で覚えてろよッ」

 

 そう言いながら、二人も立ち上がり、光が周りに展開されていた。

 

「そんなバカな!? その力はなんだ、何を持って戦う、何を纏う!? その力は私が作った物か!? お前達が纏うそれは………なんだッ!!?」

 

 

 

「「シンフォギアァァァァァァァァァァァア!!!」」

 

 

 

 その時、四つの光が空へと立ち上る。

 

 その中で異質なシンフォギアは一つある。

 

 一つは悪竜を討ち、魔剣へと昇華した剣。

 

 一つは如何なる銀よりも眩い銀の剣。

 

 そして機械のようなヒポグリフに、槍がついた幻獣を従えた、一人の華麗な女騎士。

 

 もう完全に彼だと思う、髪の伸びたがもう迷わない。

 

「行くぜっ」

 

 真の聖遺物装者として、彼はいま武器を構えた。




複数の宝具使用、そして覚醒するアスカ達。

覚醒したアスカは完全に見た目はアストルフォで、髪型も同じになりました。メインカラーはもちろんピンクと銀。

スーツ描写は細かく無いですが、性別は完全に配慮されず、見た目にあった物で、二つの剣を持っている剣士。

次回決着。

お読みいただきありがとうございます。

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