気合い入れて行くぜッ。
それは夕暮れの中だった。
私は倒れ、奏さんは血を流している。
周りにはノイズが蠢く。私はここで死ぬのかな?
そう思っていた。あの人、奏さんが歌を歌うその瞬間まで………
「!? ダメだっ」
それは見たこともない鳥の頭を持つ、獅子のような、メカメカしい生き物?のようなものに乗った、一人の少女。
「そのままじゃ死んじゃうっ。くっそ、頼む!! 諦めない、まだ諦めない!!」
その少女の胸の宝石から、一冊の本が現れる。それに、驚きながらも、これかッ!?と叫び、それを広げ、光が放たれ、ページが奏さんを包み込む。
「君は」
「まだ助ける人達はいるんだっ、まだまだ戦う。まだ助ける、まだ救える。まだ諦めない!! まだ生きてるんだっ、諦めてたまるか!!」
その少女の声が響くと共に、生き物も吼えて、空高く飛ぶ。
それが最後であり、私が遭遇した事件。聖少女事件の一端である。
「あれから二年か………」
「響、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ未来♪」
私の名前は立花響、彼女は幼なじみの小日向未来。大切な友人で、私にとって日向のように暖かい友人。同じ私立リディアン学院に通う、ピアノの音楽家を目指している。
そして、待ち合わせの場所で、静かにスマホをいじる幼なじみがいた。
「ん? やっと来た、二人とも」
そう言って、ピンクの髪、短髪で、男物を好んで着る幼なじみが近づく。近くの学園で一人暮らしで通う、幼なじみの一人だ。
いまも男性服、ボーイッシュな服装だが、可愛らしい女の子。大切な友人だ。
「それで、今日はどうする?」
「ん~私は少し、音楽関係かな? 新作のアーティストさんが最近話題だし、響は?」
「あっ、下着買おうかな? 少しサイズがきつくって」
その時、ボーイッシュな幼なじみがこけそうになる。危ないな。
「ちょ、アスカ、どうしたの?」
「どうしたじゃないよ響っ、オレを連れてランジェリーショップ行く気か!?」
「問題ないよ~」
「あるだろぉぉぉぉぉぉ」
そしていつもいつも、同じ事を叫ぶ、幼なじみ、
「オレは、男だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
龍崎アスカ、可愛らしい、私とそう背丈の変わらない、男性と言い張る可愛い女の子だ。確かに生物学的には性別は男性だけど、女の子だ。
これは私、立花響を始めとした人達と、彼女、龍崎アスカの、物語………
「響、いい顔してもアスカの性別は変わらないからね」
「えっダメ」
「ダメだよっ」
――龍崎アスカ
龍崎アスカ、とある共学の学園に通う、普通の男子生徒である。
だが実際は違う。
俺は簡単に言えば、転生者である。
「響はなんでオレを男としてみないんだよ。園児の時に知ってるだろ」
「認めないよ私っ」
「いい顔でもう………」
………話が逸れた、オレは転生者。つまり、死んで、生まれたら、前世の記憶持ちと言う、とんでもねぇ設定があるんだ。
赤ん坊の頃は黒歴史だ、母親もいまも若くてね、当時から記憶あるって知られたらなに言われるか分からない。ってか、終わる。あの母にバレれば終わる。
オレは時折ウインドに映る自分を見る。これが自分? 違うと思いたいが違わない。
オレの前の世界、前世では、とあるゲームシリーズ、英雄のゲームがある。
その名は簡単に言えば『Fate/シリーズ』と言う。
このシリーズは色々な言い回しがあるが、悪いが自分はそこまで深くない。ただ、この作品で出てくるキャラクターは好きな者がいる。ほとんどの人間そうだろう。
ただ住みたい世界と言われれば大多数ノーと言えるほど、人の命が紙より軽く消し飛ぶ世界。それがFate/だ。
その中で、スマホゲームや、外伝とも言えるスピンオフで活躍した英雄がいる。
その名はアストルフォ。現在のオレの姿、声の元だろう。彼は三つ編みしてたが、オレはぶった切ってるよ。オレ男だからね。
彼も男だが、なんか失恋した仲間のために女装したらしい逸話から、女の子の姿であり、本人も可愛い物好きだからと言う理由から続けている。ちなみに理性が蒸発しているため、そう言う辺りは自分と違うのだろう。
神様転生だったら、オレは容姿に関してお任せを選ぼう。だがこれは無いだろ。確かに好きなキャラだ、だが成りたい訳じゃない。
そして周りからは女の子としか見られないのは、悲しいんだ。
男からナンパや、変な目で見られたりするし、女子からもだ。オレの理性は蒸発では無く崩壊しそうだ。
だけど耐えてやる。なんで前世の記憶持ちで生きてるか知らないが、オレは二度目の人生をまっとうに生きる。
(前の世界も普通に生きてたし、できることはしよう。せめて姿は似てるんだ、彼のいいところくらいは引き継ぐ気で生きてやる)
そんなことを思う中、
「んでさあ、アスカはどれ着る?」
「アスカなら、白のワンピースより、こっちの………」
「着ないからな二人とも」
ちなみにこの世界はノイズと言う、オレの世界にはいない物騒なもんがいるし、それに対処する力がある。
そう考えると、
「ん? 悪い、少しバイト先から呼び出し」
「え~まだ着せてないよ」
「頼むから店内とかで暴走しないでくれ」
「響、アスカが可哀想だから」
「あっ、うん。わかったよ………」
渋々戻す響を見ながら、悪いと言って、バイト先に出向く。
二人に秘密にするのは、少し心苦しいな。
――立花響
「少し悪いことしたかな? アスカが嫌がらないからって、いつも悪いね」
「そう思うなら、アスカのこと男性として見たらどうなの?」
私達が話し合うが、頭の中でアスカを思い出す。
………何故か、リディアンの制服を着ているアスカが目に浮かぶ。
私は額に手を当てる。
「ごめん、少し重傷だわ私………」
「………私も………」
小さい頃、幼稚園児からの幼なじみ、お風呂もその時入っているから、分かってるんだけど………
「そう言えば響、リディアン音楽院で、最近噂になってる話知ってる?」
「あああの?」
最近、ピンク色の髪をした、女子生徒が姿をたびたび見せると言う、謎の噂。
曰く、かなり可愛いらしい。
同姓の中で見た人も、恋しそうになるくらいに可愛いらしい。
「だけど、ピンク色の髪って珍しいから、分かるよね?」
「うん、アスカとおばさんもピンクだけど、あれならね………」
そう言いながら、最近バイトが忙しい幼なじみの顔を思い出す。
――???
私立リディアン音楽院、その地下施設。
ここは日本政府のとある特別な組織、特異災厄対策機動部の本拠地である。
「お、来たかアスカ」
「ごめんなさい、後れた」
「いや、君の場合構わない。着替えるのにもな………」
風鳴弦十郎、この組織を纏める司令官。何故かYシャツネクタイで、いつもこの姿に心痛めてくれている人だ。
「龍崎アスカ、二課に着任しました。連絡では、ノイズ反応が僅かにあったそうですね」
「ああ、だから念のため、装者は待機だアスカ」
そう言いながら、アスカの姿をよく見ている女性。19歳で、主にアスカのサポートとして活躍する、元装者。天羽奏。
「奏、見るのはやめてやれ。龍崎は着たくて着ている訳じゃないんだ」
そう言ったのは、天羽々斬の装者、風鳴翼。国民アイドルでありながら、装者として二課に所属する先輩。
アスカのことを鋭い目で見るが、悪気が無いのは分かっているので黙り込む。
「ところで、アスカちゃんは下どうしてるの? 結構短いのだけど」
「ひゃうっ!?」
スカートの中に手を入れられ、スカートを抑えるアスカ。彼はいま、リディアン音楽院の女生徒の服、これなら見られてもおかしくないとなり、着る羽目になっていた。
その悲鳴に、唇を舐め、獲物を狙う目になるのは、とある専門学者、櫻井了子。本人曰くできる女。
「本当に女の子かどうか、やっぱり調べないといけないわね………」
「なんでだよ!? オレがここに来たとき、さんざん見たじゃないか!?」
涙目で緒川さんの後ろに隠れるが、同じ目つきなのは奏もであり、二人の様子にため息をつく翼。
司令官である弦十郎も、少し目頭を押さえる。
「ま、この調子で今日終わってくれればいいがな」
「それはそうですけど………」
「その時、アスカのファッションショーやろうか」
「なんでだよ!?」
そう言いながら、ソファに座るアスカ。オペレーターの友里あおいさんが苦笑しながら飲み物を渡してくれたりする。
藤崇もモニタリングしながらその様子を見て、
「正直、アスカくんここに来て、女性仕草が自然に出来るようになりましたよね」
ソファに座る際など、短いスカートでの対処は、嫌でも身に付く。軽い肌のケア(周りがうるさい)もできる。
飲み物の受け取りも、男子と言うより、女子だ。
「………殴るよ」
「藤尭さん、セクハラです」
そんな事を話しながら、本当に何もないことを祈る。
「そう言えば、今日翼さんの新曲発売日だな………」
――龍崎アスカ
その時は唐突だった。アラームが鳴り響き、バカなことをしていた面々も真面目になる。
「状況は」
「ノイズ多数反応あり、現在避難警報発令。装者の方はすぐに出れます。陸路をお願いします」
「アスカ、翼両名はただちに各自の移動、ただちに現場へ急げっ」
「「了解っ」」
車の中に急いで乗り込む、翼さんが隣にいるが、いまはいい。ペンダントと、周りの地形の把握を、奏さんが始める。
パソコンを操作しながら、ああくそと呟く。
「ヒポグリフは狭いから使いそうにない、翼、お前が前で。アスカは翼の援護」
「大群なら槍でバランスを崩します、翼さんは」
「任せろ」
車が急いで走る中、インカムから藤崇さんの悲鳴が聞こえる。
「? おいどうした!?」
『聖遺物っ、フォニックゲインの反応………これは、ガングニール!?』
「は、はあ!?」
「!」
「ガングニールって、確か、オレが奏さんの素質と共に」
そう、オレが持つ力の一つ。その力で、彼女の力その物である、素質を代償に、彼女の一命を取り留めた。
その所為で、彼女は少なくとも、前のように戦える事が出来なくなった。それ自体、ガングニールと言う聖遺物が無いのだから当たり前だ。
それが、
「これって」
「ともかく現場へ急ぐぞ」
『お願いしますっ、いまモニターでノイズ他、数名の避難民もいます』
「一番の急がなきゃいけない情報じゃないかっ」
「ちっ、ここからヒポグリフは!? こいつだけでも行かせるっ」
『少し………問題ないですっ、ヒポグリフ使用可能!!』
「よし、行けアスカっ」
「ああっ」
窓を開け、走行する車から身を乗り出し、スカートを気にせず、車の上に移動する。
「って、短パンか!?」
「どこを見てるんだよぉぉぉぉぉぉっ」
短めの短パンだよ、悪いか!?
ともかく、静かにペンダントを掴み、そして、
「~~~~~♪」
歌を歌う、それは聖詠。
その瞬間、光が自分を包み込み、身体に機械を纏い、そして相棒と共に飛翔する。
――立花響
訳が分からない、突然身体が光ったと思ったら、姿が変わっている。
ノイズに触れても平気で、戦えると思ったけど、重くなって、動けない。
「!?」
そんな私に、ノイズが向かってくる。
だけど、
「させないっ」
一本の槍、それが地面に刺さると共に、周りにいるノイズは消し飛び、何体か転倒した。その槍に立つ後ろ姿に、私の胸が鼓動する。
あの人は………
「あのと………って」
よく見る、見た、その時、翼さんも空から現れた。
「アスカ!?」
「いまは何も聞くなっ、こっちも聞きたいことが山盛りだっ」
「行くぞアスカっ、貴方はその子を守りなさい!!」
後ろに乗せていた翼さんもシンフォギアを纏い、オレ達は戦場を駆ける。
『~~~♪』
――立花響
アスカがあの少女のような格好、ってかアスカだ。アスカだった。
いまはスカートのようなフリフリを腰に巻き付け、左右にリボンのようなメカっぽい物をつけている。
ピンクと深紅色の紅、それと黒が混じった自分に似たような服?を着ている。
いまは両刃の剣を握って、槍と二刀流でノイズを倒していた。
『~~~♪』
身体をスケートのように回ると、スカートとマントが刃のようにノイズを切り裂き、滑るように地面を移動する。
槍も、剣も振るいながら、ノイズが凄い数で迫るけど、本を取りだし、それを広げたら、ページの紙が舞って、ノイズを包んで吹き飛ばした。
翼さんも同じように、歌いながらノイズを倒す。
「………すごい………」
最後にアスカが槍を地面に刺すと、衝撃波のようなものが広がり、ノイズが体勢を崩すと共に、翼さんがフュニッシュを決めた………
「大丈夫?」
そう言って、私の側の女の子に話しかける。
胸の辺りに、紅い色の宝石を輝かせた、スーツの、可憐な戦士がいた。
「うん、このお姉ちゃんが守ってくれたの♪」
「………」
私はその言葉を聞いて、少し驚く。私はそんなに凄いことは、
「そうか、凄いね。よくやった響、諦めずにいてくれて」
「アスカ………」
そう言い、アスカも微笑む。
「うん、ありがと、お姉ちゃん、ピンクのお姉ちゃん♪」
そして固まった。
さすがに少女の前にいつものように文句もなにも言わず、可憐な少女は、
「うん、ありがとね♪」
必死にウインクして、女の子のフリをしていた………
龍崎アスカ、現在アストルフォと見た目変わらないです。
ただアストルフォよりも武の才能があり、すぐにシンフォギアを纏い、ただ身体が動くままに動いて戦えました。その時、自分が歌っていたことにも気づかずに。
足は空気のようなエネルギーで地面などを滑ることが可能、空を飛ぶことはできない。せいぜい少し浮く程度。
ポンチョのようなマント、手を覆うグローブに、所々に色の違う宝石が埋め込まれている。そこから複数のアームドギアが出てくる。
スカートでありふりふり、ポンチョらは伸び縮みして、刃になる。その際、スケートのように回るから、『スピニングダンサー』と名付けられた。
胸のふくらみは無いはずだが、宝石と装甲の所為で、微妙にあるように見える。
スパッツのようなものがスカートの中にあるため、気にせず大立ち回りする。
お読みいただき、ありがとうございます。