友達料と逃亡生活   作:マイナルー

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17 『終わる世界に』

 眼前は鬱蒼と生い茂った木々が生え揃い、足元は冒険者たちに踏み固められた大地に湿り気を感じる。

 あまりにも見慣れた森の奥深く、ナツキ・スバルはただ黙って待機する。幾度となく重ねた戦いの時を待つ。

 相も変わらず悪い目つきは、初対面の人が見れば、よほどの不機嫌か寝不足を予想するだろう。

 もちろん、そんなことはない。昨日は安堵感を抱いて眠ることが出来た。

 背中に触れる藁の感触も、仔馬や他の冒険者の立てるいびきの音も、嫌というほど嗅いだ馬糞の異臭も、もうとっくに慣れたものだ。駆け出し冒険者が泊まる馬小屋で毛布にくるまって眠るのは、この世界に来てから幾度となく続けてきたナツキ・スバルの就寝体勢である。

 とはいえ、別に宿代をケチってまで少しでも資金を切り詰めようというわけではない。

 スバルが必要とした魔道具は高価な分、どうしても余剰分は出るし、その余剰分でも余裕で宿代程度賄えるだろう。そもそも、その程度の額をケチってコンディションの低下を招くなど愚の骨頂である。

 単純に、今のスバルには、馬小屋が最も安心して眠れる場所というだけだ。

 ふかふかのベッドでぐっすり眠ると、どうしても見てしまうから。

 紫紺の瞳で現実を拒絶し、銀鈴の声音で壊れた熱情を打ち鳴らす、愛しき少女を。

 己の役割に自負と責任を抱き、失望と摩耗の果てに終焉を望んだ、待ちぼうけの司書を。

 虐殺を、惨劇を、凶行を、貪食を、夢に見てしまうから。

「――――――――ダメだ」

 今はそれを考えてはいけない。

 脳裏によぎったそれらの光景を、頭を振って追い出した。

 代わりに思い返すのは、以前のループで小耳に挟んだ、勇敢な冒険者の話。今考えるべき、不屈の心を持った魔女の話だ。

 

 かつて、『氷の魔女』と呼ばれた冒険者がいた。

 生真面目な性格で、常に張り詰めた表情を作り、絶大なる魔力を誇り、武闘派でありながらいつもパーティメンバーの中で冷静であるように心がけていたアークウィザード。

 魔王軍からも多大なる懸賞金をかけられ、命を狙われていた彼女は、ある時恐るべき存在と出会った。

 彼の者は、魔王軍幹部にして、地獄の公爵を務める大悪魔。

 人類はおろか、魔王すら上回る強大な力を持った別次元の存在。

 本来ならば、魔王軍幹部程度の枠に収まるものではない。人類の存亡ではなく、世界の終末を賭けて神々と戦うような、そんな桁違いの化物だ。

 だが、そんな規格外を相手にしてなお、『氷の魔女』は決して折れなかった。

 大悪魔の絶大なる力に何度も打ちのめされた。あらゆる魔法は通じず、どんな作戦も見通され、奴に傷一つつけることすら敵わない。

 その幾度となく繰り返した敗北に、『氷の魔女』の誇りはズタボロにされていく。

 だが、心に大きな傷を負ってなお、その瞳に宿る闘志は消えなかったという。

 

 ナツキ・スバルがその話を聞いたのは一度だけ。

 習得スキルの幅を広げられないかと、アクセルから離れて別の街へと進んだループのことである。

 その街で得られたスキルはなく、戦闘に役立ちそうな話も聞けなかった。

 結局彼女がその大悪魔に勝利できたかは知らない。

 そもそも、噂は噂。単に尾ひれがついただけなのかもしれない。

 それでも。

 自分の主に似た異名を持つ『氷の魔女』。会った事のない彼女の不屈の精神だけは、心に刻んでおこうと思った。

 

 

「――――――――来た」

 敵感知スキルに反応を感じ、スバルは足下に手を当てる。

 スバルはこのループ、エンシェントドラゴンとの遭遇を避けつつ強力なモンスターを狩り続けてきた。自身の強化のため。そして、エンシェントドラゴンのパワーアップを可能な限り減らすため。

 もちろん、エンシェントドラゴンも、自身の強化をすべく、片っ端からモンスターを殺し尽くしてきただろう。結果として、森のモンスターはかなり減少している。

 まして、単独で活動している強力なモンスターが高速で接近しているとなれば、まず間違いない。

 スバルが足下に魔力を込め終わった直後、あたりに鋭い警報音が鳴り響いた。

 特定の木に仕掛けたロープが切断されると、それに繋がった警報の罠が作動する。スバルが予め仕掛けておいた、空間偽装中の竜の位置を把握するための罠だ。

 それを合図とするように、スバルは口の中で小さく呪文を唱えながら、懐から小さな魔力宝珠(マナタイト)を取り出すと、頭の中で身体のスイッチを次々と入れていく。

 高価な宝珠と引き換えに得た、莫大な魔力で支援魔法を発動させ、自身の速度を可能な限り強化。さらに本来盗賊の持つ逃走スキルを発動させる。

 身体能力を一気に向上させて、エンシェントドラゴンに背を向ける。そして、千里眼スキルの宿る黒瞳でルートを確認しながら、大地を蹴った。

 時には障害物を斜めから飛び越え、時には飛び出た岩から岩への移動。跳躍と体重移動を利用した、速度を殺さない移動技法パルクールだ。

 かつて日本でテレビ越しに見ていた、技術の一端を用いながら、スバルは頭の中でマップを広げる。

 ――――直後。

 スバルの背中に強い殺気が、『死』の前兆が走る。続いて、背後の空気が強く振動するのを感じた。

 とっさに右方向へと身体を転がすと、直後に闇色の稲妻が、先程までスバルのいた空間に突き刺さる。

「空間偽装や攻撃魔法が使える程度には力を蓄えてるってか…………なら!」

 スバルは追撃が来る前に懐に手を入れると、魔法を封じられた巻き物(スクロール)を大きく開き、叫んだ。

「『ファイヤーボール』!」

 その叫びと共に、スバルの眼前から灼熱の火球が現出した。

 人はおろか、岩をも焦がしそうなその光球。それはスバルから離れるようにまっすぐ飛んでいったかと思うと、空間がぐにゃりとねじ曲がり、続いて光球があっさりと霧散した。

 残ったのは、姿を現した竜の姿。

 スバルの狩り(レベリング)のせいで森から強力なモンスターが減ったからか、そのサイズは過去のループより幾分か小さかった。

 エンシェントドラゴンの持つ魔法無効化能力。

 周囲の空間の魔法を無力化するそれは、スクロールから発動させたものであろうと問答無用で消し去った。

 スバルの思惑通りに。

 エンシェントドラゴンの魔法無効化能力は、竜自身の魔法すら対象とする。

 おそらく竜の空間偽装能力は、精度の高い光の屈折と消音魔法を組み合わせたものだ。

 竜が時折姿を現してきた理由も、攻撃を防ぐためにそれらの魔法を解除せざるを得なかったと考えれば辻褄が合う。

 この逃走で目指すべき地点は二つ。どちらから行こうと距離に差はない。

 スバルは転がった勢いを殺さぬように、進行方向にあるポイントを目指して駆け出した。

 竜から背を向け、スバルの足はどんどん木の密集した領域へと向かう。

 敵はこちらが魔法を撃ってこないと判断したのか、魔法無効化を解除。竜が乱射している魔法が、予め木に仕掛けた魔道具と対消滅する音が背後で鳴り響いた。

 理想的な展開よりも、距離が近すぎる。

 単純な魔法攻撃自体は、密集した木に仕掛けた魔法剣や魔道具である程度誘爆させられるし、再び巻き物(スクロール)で敵の無効化を誘発してもいい。だが、単純な突撃を続けられれば、この距離では竜から逃げ切る自信がない。

 とはいえ、なんとか足止めしながら全力疾走して距離を取ろうとしても、いずれ局地地震で動きを止められるのは実証済みだ。

 ここは、魔法攻撃の射程距離圏内で、敵の魔法を凌ぎながら、敵が対処できないような手段で距離を取らなければならない。

 そう考えた刹那。スバルが踏み入れようとしていた大地が一瞬にして、黒い泥水に溢れた沼地へと変化した。

「ちっ……!」

 舌打ちひとつ、スバルは腰に用意していた鞭を握りしめ、力いっぱい振るう。

 鞭の先端は風を切りながら進み、青葉揃い生い茂る大樹の幹へと巻き付いた。

 スバルはそのまま巻きつけた鞭をしっかりと握りしめて、勢いを殺さないように身体を制御する。跳躍によって宙に浮いていたスバルの肉体は、大樹を支点として空中でぐるりと旋回した。

 その勢いのまま太枝に掴まると、軽業師のような器用さで身体を太枝の上に持ってくる。

 大樹の幹から鞭を外し、そのまま次の樹へと移ろうと、再び跳躍した。

「――――――――!」

 そんなスバルの背中に投げつけられる、竜の咆哮。

 直後、移動先の樹が根を張る大地が崩れ、そのまま土で構成された巨大なゴーレムへと姿を変えていく。

「くっ…………!」

 空中で求められる瞬時の判断。

 移動先の樹が根から崩れた光景を見て、スバルの黒瞳は何かを探し求めて動き、やがてひとつの木に止まったフクロウのような生物を映した。

「『バインド』ーッ!」

 その言葉と共に、盗賊職が使用する拘束用のスキルが発動する。かつてクリスがスバルたちを捕えた時に使用したのと同じ力。

 スバルの体内から大量の魔力が失われ、鞭はロープのように対象を捕縛するべく、フクロウ(仮)へと向かって飛んでいく。

 その鞭にしがみつくスバルの身体も必然的に引っ張られ飛翔。スバルを待ち構えていた土人形の拳は空を切った。

 そのまま鞭は、慌てて飛び立とうとするフクロウ(仮)を捕らえ、がんじがらめに拘束した。

 もちろん、スバルも一緒に拘束される、なんて間抜けはしていない。頃合いを見て鞭から手を離し、重力に従い大地に落下している。膝の関節を曲げて、身体を深く沈み込ませることで着地の衝撃を散らし、背後を振り向いた。

 視界に映ったのは、こちらを見据えて牙を剥き出しにして口を開ける竜の姿。

「くっ…………!」

 魔法を予感したスバルは再び懐に手を突っ込み、巻き物(スクロール)を大きく開いて、

「『リフレクト』!」

 次の瞬間、闇色の雷撃は、放った竜自身の顔に直撃していた。

「はっ、ざまあみろ……!」

 一つ間違っていれば死、つまりやり直す羽目になっていたが、今回は予想以上にうまくいった。

 これで向こうも警戒し、そうそう魔法を放つことができないだろう。

 そう確信したスバルは、あと少しの位置にある目的地にまで一気に走り抜けようと身体を動かし。

 その瞬間、突如として両脚に熱が走った。

「なっ…………!?」

 それが痛みであると理解する前に、虚をつかれたスバルの身体はバランスを崩し転倒。衝突した地面と額が火花を散らせ、視界が白熱する。

 痛みを無視し、スバルは数秒で取り戻した視力で自身の脚に起きた異変を確認する。

 そこにあったのは、スバルの両脚をまとめて貫く、松葉色をした竜尾だった。

「尻尾が、伸び…………!?」

 尾の存在を忘れていたわけではない。過去のループでも、竜尾でスバルを拘束してきたことはあった。だが、その竜尾が伸縮し、こちらを襲ってくるようなケースは初めてだ。

 まだ検証が足りなかったのか。竜はスバルの行動に脅威を感じ、これまで隠してきた攻撃を使ったのか。

 両脚から溢れ出す血が松葉色の竜尾を赤く染める。

 動くたびに痛覚が揺さぶられ、肉が抉られているという実感を味わう。

「クッソ…………ここまで来て、諦めて、たまるか…………!」

 竜尾が脅かすのはスバルの血肉だけではない。

 スバルが全身に纏う濃密な魔女の臭気を吸い上げ、エンシェントドラゴンはますます凶暴に暴れ狂うだろう。

 どんな手段を取っても。

 たとえ脚を切り落としてでも、これから逃れなければ――。

 

「うおらああああああああああああああああああああああああああああああぁっ!」

 刹那。

 スバルの黒瞳に映ったのは、切り倒された巨木を武器にして、竜尾に殴り掛かる悪魔の姿だった。

「ホースト…………!?」

 大雑把に切断した丸太のような巨木を、まるで刃先が潰れた斧か鉈のように、ただ力任せに竜尾を押し潰す。

「オラァ! ぼさっとしてんじゃねえぞ!」

「あ、ああ……っ……」

 突然のホーストの手助けで生じた驚愕、それをねじ伏せてスバルは状態を確認する。そして竜尾が切断されたとみるや、スバルは自身の脚に残った先端部を取ることもせず、痛みを無視して跳躍した。

「ぐ、おぉおぉおぉお!」

 顔から突っ込むような無様な着地によって、前方に伸ばした手が触れたのは、目指していた地点の一つ。

 そこに設置しておいた魔道具に手を当て、魔力を込め、注入する。

「さっきバインドで魔力を使っちまったのが不安だが…………」

 スバルは魔力の注入を終えると、穴の空いた両脚に手を当てた。

 残った魔力によるヒールでは、鎮痛程度の効果しかあるまい。

 マナタイトの予備はまだある。だが、それは最後の地点に注入する魔力として使うべきだ。

 スバルの傷は、手持ちの魔力と気力で補うしかない。

 脚を引きずってでも最後の地点に到達しなければ――――そう考え、最後の目的地の方向へと目を向けた時。

 そこに光が立ち昇っているのが見えた。

「……………………は?」

 否、そこだけではない。

 スバルがエンシェントドラゴンと遭遇した地点。攻撃をごまかしながら魔力を注いだ現在地。その三つの地点から、同時に光が立ち昇る。

「な、なんだ!?」

 ホーストが慌てた様子で光の退避した直後、はるか上空にて一つの点で結ばれ、エンシェントドラゴンを包み込む、三角錐状の巨大な結界ができあがった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 それは、『氷の魔女』がかつて使った魔道具。

 話によると、彼女は仲間の救援に行くため、三つの魔道具に魔力を込めて結界を作り出し、当時交戦中だった地獄の公爵を一時的に無力化したという。

 神々に匹敵する、大悪魔すら逃れられないというこの結界。魔力の補給を必要とすること、注ぎ込んだ魔力は発動せずに置くと霧散すること、展開する三つの地点に置く必要があるなどの欠点はあるが、それを差し引いても強力な魔道具だ。

 何故駆け出しの街(アクセル)にこんなものがあったのかは不明だが――――話半分だとしても、エンシェントドラゴンにぶつけるには十分な期待ができた。

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 最後の地点に魔力を注ぎ込んだ記憶はない。

 何かの間違いで、通りすがりの誰かが魔力を注ぎ込んだのだろうか。

「いや、それはどうでもいい……」

 何故発動したのかはわからないが、これを活かさないわけにはいくまい。

 スバルの目的は、エンシェントドラゴンを一時的に閉じ込めるのではなく、休眠あるいは死にまで追いやることなのだから。

「…………来いよ、『見えざる手』…………!」

 スバルの胸部から現出した不可視の魔手は、そのまままっすぐと結界に向かって伸び――――結界をすり抜けて、そのまま直進する。

 かつてクリスに囚われた時、椅子の背を貫通してゆんゆんに触れたように。

 間にある障害物をすべて透過して、不可視の魔手は目的のものにたどり着く。

 そして、予め隠れるように設置しておいたワイヤーを握ると、スバルは小さくつぶやいた。

「――――『バインド』」

 スバルの手から、マナタイトが消える。

 不可視の魔手越しに、再びバインドのスキルをワイヤーに発動。鋼線は生き物のように動き始め、宙で弧を描いてエンシェントドラゴンの巨体へと急接近。

 ワイヤーは同じワイヤーで幾度となく継ぎ足されており、エンシェントドラゴンの巨体を拘束するに足る長さを持っている。

 鋼線はそのまま竜の胴体へと巻き付いた。

 その拘束は、浅い。偶然か、竜自身が回避したのか、ワイヤーが捕らえたのはあくまで胴体部。

 獲物を切り裂く爪も、咆哮という詠唱を紡ぐ顎も、スバルを容易く踏み潰す脚も、まるで拘束できてはいない。

 折りたたまれた翼の動きは阻害されているものの、それもわずかな詠唱で容易く破られるだろう。

 だが。

「――――こいつで十分だ」

 スバルのつぶやいた声、それに呼応するかのように、あたり一帯に音が響く。

 きゅうきゅう、きゅうきゅうと。

 どこかで聞いた音が。

 かつて耳に残響した音が。

 かつて少女の、そして自身の命を奪った音が。

 鋼線のところどころに、外れないよう丁寧に縫い付けられた一撃ウサギ、その数六羽。

 その鳴き声が、辺りに響き渡った。

 ワイヤーがエンシェントドラゴンの胴体を絞めている以上、鋼線と繋がっている一撃ウサギは、必然的に竜の全身との接触を余儀なくされる。

「――――――――――――!」

 エンシェントドラゴンの侵食(ドレイン)が作動し、一撃ウサギの生命力が失われていく。

 同時に、起こるのは(経験値)の徴収。エンシェントドラゴンの皮膚へと、一撃ウサギの身体が沈むように溶けるように一体化していく。

「きゅぅ……………………ぎゅっ……!」

 その生命の灯火が消える瞬間。

 全身がエンシェントドラゴンの体内へと、消えた瞬間。

 一撃ウサギの身体に着けられていたペンダントが、光を放つ。

 次の瞬間。

 エンシェントドラゴンの体内から、閃光と轟音が鳴り響いた。

 

 とある紅魔族が作ったペンダント。

 コンセプトは、「最後の時には、命を賭けて大切な人を守れるように……」。

 身につけた者が瀕死の重傷を負った時、最後の生命を燃やして大爆発を起こす効果を持つ。

 死の間際の大爆発で敵を撃ち倒し、共にいる仲間や恋人を守る。それが製作者の狙いなのだろう。

 作動条件はシンプルで、「着用者が死に瀕する」のみ。大切な人がそばにいるかどうかも、まして着用者が人であるかどうかもは関係ない。それは、スバル自身が以前のループでモンスターを使用して実験することで確認している。

 

 熱気が吹き出し、内部から竜の鱗を食い破る。

 竜皮から立ち昇り、余波で岩をも砕くその焔は、まるで咆哮のようだった。

 爆焔と同時に巻き起こった衝撃は竜の皮膚を貫いていく。その拍子に砕けた鱗の破片も勢い良く吹き飛ぶが、結界の壁に阻まれてスバルの元には届かない。

 結界の内部でなければ、どれだけの被害を生んだかわからない、爆焔の洗礼。

 だが。

「――――――――ダメだ。足りねえ」

 それでも、最古の竜は、死を受け入れようとしなかった。

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 地獄の公爵すら封じ込めるという閉鎖空間に誘い込んだ。

 数多のループの中で、足りない頭で考えた最強の罠を用意した。

 スバルの用意し得る最高威力の爆弾を、敵の体内から叩き込んだ。

 だが、それでも足りない。

 最低でも、竜を休眠にまで追い込むだけのダメージを与える必要があるのに、それでも足りない。

 スバルは自身でも気づかぬうちに、握りしめた拳に血を滴らせる。

 これ以上、どうすればいいのか。

 ホーストはそんなスバルの言葉に首を傾げて、話しかけてきた。

「おい、お前。何が足りねえんだ?」

「決まってるだろ……。エンシェントドラゴンを倒すには、全然ダメージが足りてねえ。できれば完全に殺しておきたいってのに、休眠状態にすらできてねえんだ」

 竜の傷は大きい。だが、決して死に体ではない。

 この結界は内部からの攻撃を完全に遮断するが、外部から内部への攻撃もまた遮断する。

 先の『見えざる手』では、竜にまともなダメージを与えられないし、元々スバルが森に仕掛けていた罠は、大半が防御用だ。

 つまり、ここから追撃することはできない。

 このまま放置していれば、竜はやがて回復魔法を使って傷を癒やすだろう。元の木阿弥だ。

「でも、あの結界から出てこれねえんだよな? あの結界はどのくらい持つんだ?」

「本来なら、ひと月は持つらしいんだが……正直怪しいところだな。中古だし」

 何年も昔の魔道具だ。

 ひと月どころか半月、いや、一週間持てばいいほうかもしれない。

「なあ。俺様は、お前は十分よくやったと思うぜ? そりゃ、あいつを殺せやしなかったが……そんな弱い肉体を使ってよう、大健闘だろ」

 肩を落とすスバルを慰めるように、ホーストはあえて明るい声で話しかけてくる。

「頑張ったとか、よくやったとか…………そんなの言い訳にもならねえ。最高の結果を出さなきゃ、意味なんてないんだよ…………!」

「最高の結果って…………俺様がお前の立場なら、このまま主と一緒にトンズラこけば十分だと思うぜ?」

 確かに、今のままなら逃げることはできるだろう。

 ゆんゆんに、めぐみんに。

 街の皆に声をかけて、全員を逃がすことはできるかもしれない。この結界に包まれた竜を見れば、いくらなんでも嘘だとは思うまい。

 だが、その先に何がある。ここで生活しているのは冒険者だけではないのだ。

 命だけ拾って、命以外の全てを置いてきて、残ったものはその身一つ。

 生活が破綻し、野垂れ死ぬ人も出るだろう。

 時間経過とともにエンシェントドラゴンが解き放たれ、それに殺される者も世界のどこかに出るだろう。

 それで、助けたと言えるのか。

 それで、誰に胸を張って生きられるのか。

「なら、お前は逃げずにこいつを倒せるまで挑むつもりかよ?」

「ああ、俺にはそれしか――――――――がっ!」

 スバルが答えると同時、ホーストが自身の拳をスバルの鳩尾にめり込ませた。

 意識が消し飛びそうな衝撃が身体を貫き、胃液がわずかに逆流する。

 下唇に歯を食い込ませてなんとか意識を保つも、次の瞬間には全身を浮遊感が支配し、続いて背中に硬い感触が叩きつけられる。

 それが身体を木に押し付けられた感触だと気がつくと、今度は首に硬い感触を感じた。

 ホーストの手だ。

「ウォルバク様を人質にするやり方はともかく、あいつを倒そうっていうお前個人の心意気は嫌いじゃねえ」

 淡々とした声色ながら、その言葉に嘘は感じられない。

 スバルの無謀な戦いに対して、本気でわずかながらの敬意を感じているようだった。

「だがな、もう無理だ。人間の身体のままでも、漏れ出る瘴気はさっき刺された時に、きっちり吸収されてたからな。お前がこれ以上無謀な戦いを続けたら、エンシェントドラゴンがどんな化物になるかわかったもんじゃねえ。最悪、逃げることもできなくなっちまうかもだ」

 当然、ホーストは『死に戻り』のことなど知りはしない。

 以前の接触で、ホーストはスバルを”ドレイン避けのため、人間に憑依した悪魔”と考えているだけだ。

 故に、スバルがこれ以上向かっても竜の養分となるだけだと考えているのだろう。

「せっかく(あいつ)が閉じ込められてくれたんだ。その間に、こっちはウォルバク様を探して避難させてもらう。お前には無茶できないよう、その肉体を滅ぼさせてもらう。《残機》を減らして、地獄(むこう)で待ってろ」

 その身体の元の持ち主には悪いがな。

 そう続けて、ホーストは首にかけた手に力を込め始めた。

 スバルは抗議や弁解の言葉を紡ごうと口を開き、

「やめ……………………やるなら、焼死がいい」

「…………は?」

 口から出てきたのは死のリクエストだった。

「だから、焼死だよ。できるだけ苦しい死に方がしたいんだ。『次』の時に、この悔しさを忘れないために」

 今回も失敗した自身への罰のために。

 ホーストはしばし呆然とすると、呆れたような声で、

「お前、変な奴だなぁ。その身体の持ち主がかわいそうだと思わねえのかよ」

「いいんだよ。どうせ離れられない身体だからな、どう死のうと構わねえだろ」

 このまま足掻けば、セーブポイントの自動更新すらあり得る。

 それよりも、もう一度戦術の再検討をして最初から挑み直したほうがいいだろう。

 最適な状況作りには手間もかかるだろうが、それは大した問題ではない。

「『インフェルノ』!」

 やがてホーストが両手を振り下ろし、最高クラスの炎の魔法を放つ。いかにコントロールされているのか、炎は生き物のように動き、スバルの周囲を取り囲んだ。

 徐々に大きくなる炎に取り囲まれて死ぬか、自ら炎に身を投げて死ぬか。

 なんとなく前者の方が苦しい気がする。

 スバルは『死に戻り』装置の役目を引き受けてくれたホーストに感謝の念を抱き、すぐに来る死に備えて、ゆっくりと目蓋を閉じた。

 今回も守れなかった、この終わる世界に――――――――

 

 

「『祝福を(ブレッシング)』!」

 

 

 水色の髪をした少女が放った光が視界を染め、そのままスバルの意識は白濁した。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 アクアの放った光が、炎に囲まれた男を包んだ瞬間。

「お、お、っとと!」

 突如局地的な地震が起きて、冒険者にして日本からの転生者、佐藤カズマは足をもたつかせた。

 地震は震度に反比例するようにわずかな時間で収まったが、その震動はいくつかの大樹を傾け、炎の中に倒していく。

 炎に包まれた大樹、その幹につけてあった魔道具らしき何かが光を放ち、炎をたちまちのうちに消し去ってしまった。

 男の無事を確認すると、アクアはさらに魔法を放った。

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 凶悪なフォルムをした悪魔に白い光が向かうが、悪魔の軽やかなバックジャンプで回避されてしまう。

 アクアの放った白い炎は、倒れ伏した男に命中するだけの結果に終わった。

「な……ナツキさん!」

 気を失った様子で静かに倒れ伏した男の名を呼び、カズマと同行していたゆんゆんは一瞬だけ逡巡する。

 彼女は自身の首に巻いた包帯に触れて、意を決したように駆け寄った。それに、カズマと同行していた最後の一人、ゆんゆんの友人ことめぐみんも続く。

 おそらくはあの男がナツキ・スバル。ゆんゆんの言っていた、元パーティメンバーだろう。

 見ると、スバルと悪魔から少し離れた位置に、結界らしき何かで遮断された巨大な竜が一頭。スバルはあれと戦っていたのだろうか。

 大きな傷を負いながらも凶悪なそうな面構えは見える。ひょっとして、先程の地震は結界を壊そうとして、あの竜が起こしたのかもしれない。

 あれと一人で戦うなど無謀すぎる行動に見えるが、名前からして何かの転生特典をもらったチート持ちなのだろうか。

 少なくとも自分なら絶対にやろうと思わない。

「おいこらアクア! 何思いっきり人巻き込んでんだよ、死んだらどうすんだ!」

 冒険者の命は自己責任なんて言葉を聞いたが、だからといって後味が悪すぎる。

 まして今回の相手――ナツキ・スバルは、パーティメンバーのアクアが毎日たかっていた少女の関係者だ。

 アクアが持って帰ってきていたお土産を、そうと知らずにありがたく頂いていたカズマとしても、ゆんゆんは迷惑をかけた恩人に等しい。

 ならば、彼女が助けようとしているナツキ・スバルも、死なせるわけにはいかない。

 だが、カズマに叱りつけられたアクアは悪びれた様子もなく、

「何言ってんの。今使ったのは悪魔祓いの魔法よ? 人間には全然害がないんだから。むしろ臭いのを消してあげる分、感謝してほしいくらいなんですけど」

 そう堂々と胸を張って答えた。

 一方、その様子を見た悪魔は、ガラス玉のような無機質な瞳を怒りに染める。

「クッソ…………いきなり何してくんだこのアマ!」

 そんな、殺気すら孕んだ視線を向けてくる悪魔に、カズマの全身が本能的に総毛立つが、アクアはそんな悪魔の視線に怯む様子一つ見せない。

「うっわー、何かと思ったら人間の感情をすすってかろうじて生きてる寄生虫じゃないですかー! 何するんだって、あんたゴキブリ殺す人に『害虫でも生きてるんだから殺さないで』とか言っちゃうタイプなんですか? バカじゃないのプークスクス!」

「おいアクア、お前大丈夫なのか? アレ、明らかにめちゃくちゃ強そうだぞ?」

 全力で煽っていくアクアに、カズマはおそるおそる問いかける。

 あの悪魔、コウモリのような羽といい、やたらと禍々しい角といい、明らかに駆け出しの街にそぐわない。

 ああいうのは、こう、ラストダンジョンとかにいるタイプだろう。

 最近異世界に来て以来、一度も実戦をしていないカズマにとっては、絶望的な敵にしか見えない。

「カズマ。この私を誰だと思ってるの? いくらこっちに来て力が落ちてるって言っても、この尊くて清らかな私がこんな害虫程度に負けるわけないじゃない。むしろ、こんな邪悪なのが近くに潜んでいたのに気づかないなんて、女神の名折れだわ!」

 そう続けて、透き通るような白い手をまっすぐ突き出すと、

「『セイクリッド・エクソシズム』!」

 再び破魔魔法をぶっ放した。

 その白い炎は悪魔の腕を掠め、一部がボロリと土のように崩れる。

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

「ちょっとあんた、ちょこまか避けてないでとっとと消し飛びなさいよ!」

「嘘だろ、おい! なんでこんなところにこんな極悪な破魔魔法の使い手が、この街にいるんだよ!?」

 バカの一つ覚えのように破魔魔法を連発するアクアと、それから必死で逃げ回っている悪魔。

「カズマカズマ、ここは加勢をしたほうがいいのではないでしょうか?」

 気を失ったスバルの身体を背負ったカズマに、めぐみんが声をかけてくる。

「そうは言うけどなあ…………」

 …………自分たちはこのまま逃げたほうがいいんじゃないか?

 カズマの脳裏に、そんな考えが頭をよぎる。

 一見したところアクアが完全に優勢で、悪魔はなんとか避けているだけのように見える。

 カズマが何かしても、余計なことになるだけではないだろうか。

 ここに来る前に、スバルについての聞き込みで寄った『ウィズ魔道具店』に戻って、魔道具でも持ってくれば別かもしれないが。

 まあカズマはともかく、この二人は凄腕の魔法使いだと聞いている。何かできることもあるかもしれない。

「めぐみん、お前確か最強の魔法を使えるとか言ってたよな? それ使ったら、あの悪魔を仕留められるか?」

「我が爆裂魔法は最強魔法です。確かにあれほどの上位悪魔となれば、一撃で仕留められるかはわかりませんが、大ダメージを与えることはできるでしょう」

 めぐみんの自信と確信に満ち溢れた頼もしい言葉。

 大ダメージを与えれば、アクアの破魔魔法も直撃するだろう。

「そっか、ならそれを……」

「ちょっとめぐみん!? あんた、ここであんなのぶっ放したらただじゃすまないわよ!?」

 すぐにそれを使わせようとしたカズマとめぐみんの間に、スバルに視線を送っていたゆんゆんが慌てて割って入ってきた。

「こんなところで撃ったら、私達やアクアさんも絶対巻き込まれるわ! それに爆裂魔法なんて使おうとしたら、魔力で察知されて絶対見つかるわよ。見つからずに撃てても、最悪そこの結界が壊れて、あのドラゴンまで動き始めるんじゃ……」

「ですがゆんゆん、あなたの魔法を当てた程度では倒せないでしょう。爆裂魔法なら効果範囲も威力も折り紙付きです、今はそれしか…………」

「だからって、皆死んだら元も子もないでしょう!?」

 目の前で言い合う二人の会話を聞いて、カズマは頭を回転させる。

「…………………二人とも、ちょっと聞いてくれ。単純な作戦だけど、やらないよりはマシだろ」

 

 

 

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

「『ライト・オブ・リフレクション』ッ!」

「『セイクリッド・スペルブレイク』ッ!」

 アクアが何か叫ぶと、その姿が今にも消えそうになっていた悪魔が、まるで逆再生するかのように現れた。

「嘘だろ、おい……!」

「この私の前から逃げられるとは思わないことね! さあ、さっさと諦めて消滅しなさい!」

 戦闘は相変わらずアクアが優勢だった。

 破魔魔法は既に悪魔の翼の一部を消し去っており、その飛行能力を奪っている。

 悪魔が何か魔法を使っても、その魔法を簡単に消し去ってしまう。

 カズマがこの世界に引きずり込んで以来ろくなことをしていなかったが、腐っても神らしい。

 なら、こっちも出来る限りのサポートをすることにしよう。

「めぐみん、頼んだぞ」

「はい。――――黒より黒く、闇より暗き漆黒に……」

 彼女が詠唱を開始すると、周囲の空気が振動するのがわかった。

 全身から魔力をみなぎらせる彼女の額からは幾筋もの汗が流れ、多大な集中力を必要としていることが伝わってくる。

「!?」

 そんなめぐみんの魔力に反応し、劇的な反応を見せたものが二つ。

 一つはドラゴン。

 よほど恐ろしく思ったのか、自分の傷もお構いなしに結界を壊そうとぶつかっては足掻いている。

 …………というか壊れやしないだろうな、あれ。

 もう一つの反応は悪魔。

 アクアの破魔魔法を回避した直後、彼はカズマとめぐみん(と、背負ったスバル)の方へ向かって走り始めた。

 魔法を使わないのは、アクアに散々無効化されたからだろう。

「冗談じゃねえぞ、オイ! そんなもんぶっ放されたら……!」

「『ライトニング』ーッ!」

 悪魔にとっては突然としかいいようのないタイミング。

 言葉と共に、木陰から現れたゆんゆん、彼女の放った一条の雷撃が、悪魔の行く手を阻むように襲いかかる。

 しかし。

 ゆんゆんの魔法に気づいていたはずの悪魔は、敢えてその雷へと高速で突撃していった。

「『セイクリッド・エクソシズム』!」

 アクアの放った白い炎が、悪魔に襲いかかる。

「ぐっ…………いってえなあああああああぁっ!」

 だが、白い炎はわずかに遅かった。

 全身を雷撃に貫かせ、火花を身体から散らしながらも、そのまま動きを止めない悪魔は、すんでのところでアクアの放った白い炎をかわす。

「げっ!? マジかよ……」

 予想外の行動に、カズマの口から声が漏れた。

 確かに単純に考えるならば、破魔魔法と中級魔法では、どちらが危険かは考えるまでもない。

 だが、それは理屈だ。めぐみんの見せた凶悪な魔力を囮として、驚愕した直後、慌てて対処しようという時に、突如飛んできた攻撃。普通は反射的に回避か防御に移るはずだ。足を止めたところにアクアの破魔魔法が直撃すれば終わり。そういう作戦だったのだが。

 まさか、即座に的確な対応ができるとは思わなかった。

「『ライトニング』!」

 ゆんゆんがもう一度魔法を放つが、敵は追撃にも構わず、そのままこちらに向かって突っ込んでくる。

 これはまずい。

 アクアだけなら相性的に負けなさそうだが、こちらが死んだり人質にされたりしては元も子もない。

「おい、逃げるぞ!」

 カズマは一旦退却するべく、側にいるめぐみんの襟を強く引っ張った。

「あ――――」

 途中で詠唱を止めた魔力の制御に集中していたためか、めぐみんの頭が引っ張った拍子に大きく揺れる。

 急な動きについていけなかった帽子が頭から落ち、そこから姿を現したのは、額に十字の傷をつけた黒い猫。

 それを見た瞬間、悪魔の動きが一瞬止まった。 

 

「ウォルバク、さ――――――――!」

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!」

 白い炎はカズマ達ごと、腕を伸ばした悪魔を包み込んだ。

 

 

 悪魔は崩れつつある身体で、妙に人間臭い仕草を見せる。

「こりゃ《残機》が減っちまうなあ。一人で済めばいいが……。ああ…………ちくしょう。目の前に、いるってのによお」

 そう言って腕を上げて何かに触ろうとするが、肘から先が崩れたその腕は、何にも触れることができない。

「まあ、しょうがねえか…………。お前ら、事情はその男に聞いとけ。これからが大変だろうけどな…………」

 そう、視線だけで、カズマの背中にいるスバルを指すと。

「――――――――後は頼んだぜ」

 

 そんな言葉を残して、名も知らぬ悪魔は消えていった。


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