慟哭の空 作:仙儒
最高にハイってやつだぜ! そのテンションでネウロイの巣一つをミーティアのビームソードで真っ二つにしてやった。後悔している。確か、種運命で廃墟コロニー真っ二つにしていたけど、威力どの位出るかな? その確認でやったらあっさりと斬れてしまった物だからこれからは使わないように心がけようと思いました。
おかげで、カールスラント政府から勲章と言う名の勧誘が五月蠅いし、扶桑からも階級いい加減上がれと中将の階級章が送られて来た。送り返そうとしたんだけど、北郷長官から頼むと言われて渋々受け取った。あの人には色々世話になってるし、仕方が無いか。
因みにスエズ運河攻略戦の武功で新たな艦が何隻かザラ艦隊に加わった…、らしい。何でもご褒美貰う前に俺が此方に来てしまったのだとかなんとか。
軍艦貰えるのは嬉しいんだけど、常に付きっ切りと言うわけにはいかないので、俺としては今ある戦力を強化しておきたいところ。長門とか運用していてわかったんだけど、やはり、艦砲射撃するにはもっと大きな主砲が欲しい。余り大艦巨砲主義をこじらせてもいけないけど、飛距離があるに越したことは無い。それでバランス取れないとか言うおバカなのは無しで。せめて手数は欲しいところ。41cm連装砲を41cm三連装砲にできないかね? 今の技術であれば出来ると思うんだよね。大和作ってる位だし。
後、空母も欲しいけど、パイロットとウィッチ達をどこから引っ張って来るかと言う所で引っかかって保留。パイロット育てるのに4,5年かかるし、ウィッチ達は慢性的に人手不足だ。未熟なまま戦場に出して死なせるわけにはいかない。
そう考えると、加賀に集められた人材は本当に凄かったんだな。流石は一航戦のやべぇ方。何がやべぇかって、練度がやべぇ。よくかき集めて来たな。これだけの数を。
ふと思ったんだけど、一つの部隊に中将が2人も居て良いのかね?
まぁ、少将が2人の時点で可笑しかったんだけどさ。
章香に関して言えば扶桑に戻れば少将の位貰えるみたいだし。
そう思いながらアドルフィーネこと、フィーネと章香に買って来た着物を渡しながら思う。
ノックの音が聞こえた。
此処に人が来るなんて珍しいな。そう思いながら「入ってくれ」と声を返す。
そうすると、二人の人物が入って来る。
一人は顔に大きな傷がある女性。もう一人は銀髪の女性だ。
「ルーデル大尉であります」
「同じく副官のアーデルハイド少尉です」
そう言って敬礼する二人。
何の用だろうか? ジャスティスの念話によると、二人ともカールスラントの軍人みたいだけど、フィーネに用があるのかね?
もしそうなら、今、着物の着付け中でしばらくこれそうにない。
その前に、
「ルーデル大尉、こっちに来てくれ」
ルーデル大尉が首を傾げながら此方に歩いて来る。
近くに来たルーデル大尉の顔に右手を向ける。緑色に光っているその手に警戒して、「何を!」と声をあげるルーデル大尉。
「傷の治療だ。女の子の顔に傷があるのは良くないだろう。ましてや、美人なんだから…、ほら、綺麗に治った」
そう言って顔を副官のアーデルハイド少尉に向ける。
アーデルハイド少尉は信じられない物を見たと言う顔をしている。
本人は相変わらず首を傾げているので、手鏡を渡してあげると驚いていた。
さて、やることはやったし、後はフィーネが来るのを待って貰うだけだ。
そう思ってソファーに座るように促そうとしたら相手から話しかけて来た。
何でも今日500に来たのは、500に入隊希望だからだそうだ。一応面接まがいな質問をしてみたら、この部隊に入れば、ネウロイを大量に屠れるからだと答えた。
あ、こいつやべぇ奴だ。
で、そこまでして、何がしたいんだと尋ねてみたら世界平和のためなんだと。
まぁ、二人ともかなりの実力者なのは階級から察していたし、一応ジャスティスが質問の間に情報を集めてくれた。カールスラントの中でも上位に入る実力の持ち主だけど、その力ゆえに反ウィッチ派の上層部に睨まれて、出撃停止命令が出ていたんだと。流石に、カールスラント退却戦と言う重大作戦だったために参加できたみたいだけど。
確かに前線で戦いたいなら俺達ファントム・スイープ隊…、じゃなかった、500部隊、通称赤枝ウィッチーズが一番だ。元々自由に動ける
ただ、その最前線を駆け回ってるのって俺だけなんだよね。章香もフィーネも滅多に前線には出ないし。
戦力が増えるのは良いんだけど、この部隊に入ったら、多分、戦場に連れてけ連れてけと五月蠅いんだろうな。
何でだろう、苦労する未来しか見えない。
作戦の後、また出撃停止命令が下り、仕方が無いので牛乳を飲みながら待機していた。
思い出すのは赤羽の英雄、アスラン・ザラのこと。最早芸術と言っても過言ではない見事な爆撃。ネウロイ相手に引くどころか、一人で突っ込んでいく度胸。どれをとっても完璧と言えた。あれで男と言うのだから世の中わからない物だ。
「アーデルハイド、やはり500に出向くぞ、準備しろ」
「そう言いだすと思いました」
そう言うと、残っていた牛乳を一気に飲み干す。
500部隊の所属する基地に着き、指令室の前で一旦息を付き、ノックをする。
すると、通信機越しに聞いたことがある声が返って来た。その声に私は思わずに唇を吊り上げる。
入って一応の上官への礼儀は通しとく。挑発して実力を試しても良いのだが、実力は戦場で確認済み。何よりも隙がありそうで無い。
その後、顔の傷を治して貰ったりした。まさか、これほどの治癒魔法の使い手でもあったのかと驚きもしたが、本命はそれでは無い。
500に入れて欲しい。此処でならば前線で戦える。そうすることが、世界平和への一番の近道なのだ。何が何でも入れて貰う。
そう思い話しているとあっさりと「わかった」と答えが返って来たことに拍子抜けする。
「今、カールスラント国境付近でネウロイが暴れ出したと情報が入った。君たちの実力が見たい。悪いが、5分で戦闘準備をしてくれ」
そう言われる。
何時、そんな情報を手に入れたのか、本当にネウロイが出たのか疑問だったが、とにかく言われた通りに準備した。もしもの時のためにストライカーユニットを持ってきておいて正解だったな。
現場についてみると、地上をネウロイが闊歩していた。空には大型のネウロイも何体か見えた。
ネウロイからの攻撃が来る。
この位の攻撃、大したことは無いがいかんせん数が多い。
大型ネウロイから小型のネウロイが無尽蔵に生み出されていた。
地上からの砲撃も鬱陶しい。倒しても倒してもきりが無い。そんな時、鷹を思わせる飛行物体が小型ネウロイを撃破しつつ、大型ネウロイを真っ二つにしていく。
「最初の威勢はどうした? もう降参か?」
そう声が聞こえた時、安心感が私を支配する。
「黙れ。今日は一番搾りの牛乳を飲んでいないのだ。飲んでいたら後10…、いや、20は落としているぞ」
そう言ってはっとなる。一応上官でこれから部隊に入れて貰おうとしている人物に素で答えてしまった。
しかし、相手は気にした様子はなく、「そうか、そいつは頼もしいな」と返してくる。
「アスランだ。"これから"よろしく頼む」
その答えに満足して敵に集中する。
その後はとても戦いやすかった。即席の連帯とは思えないほどに。
これだ。これ。
私はこれを求めていたんだ。
自分と同格かそれ以上の者を。
その興奮と高揚感。
指示出しも完璧。そんなことを考えて居たら少し濡れた。
やはり、世界平和には彼が必要だ。
ピンク色の剣で次々に敵を斬り捨て、ストライカーユニットでは考えられないくらい早く動く彼の背中に手を伸ばす。
何時か、何時の日かその背中に追いつき、肩を並べる。その日が来たら…、
お前の全てを貰うぞ、アスラン。
アスラン「何か知らないが、寒気が…」