慟哭の空 作:仙儒
軍上層部では激しい口論になっていた。
ここ最近はこんなピリピリしてばかりだ。
理由はシンプル。
ザラ隊解散後の彼を誰の管轄下に置くかだ。
最も、最近は扶桑近海でのネウロイ討伐初の反攻作戦に加え、第二弾作戦であるウラル山脈攻略作戦での武功で彼は少将に階級が上がるので、誰かの管轄下に入ることは無いだろうが。
それにそのためのワンマンアーミーのライセンスだし。
彼を軍部へと入れたのは私なので、私預りだと思われがちだが、彼はワンマンアーミーのライセンスを持っているので、作戦も彼が気に食わないならば、彼は作戦に参加しないだろう。
私は彼のたてた作戦を決行していたからこそ、彼は私の作戦に参加していてくれたのだ。
正直、扶桑近海の作戦は拒否されても文句は言えなかったのだが、彼の義理堅さに救われた。
だが、流石の彼も二度目は無いと告げた。
まぁ、彼の話はこれくらいにしておこう。
現状を把握する。
扶桑海軍と扶桑陸軍の激しいぶつかり合いだ。
陸軍と海軍の仲の悪さは今に始まった話ではない。
何かと陸軍は裏方に回されて海軍より評価されにくいのが現状だ。
それに、軍の宣伝塔である彼は男と言うだけで注目を集めるのに、世界的に有名な英雄でもある。
そのため、彼に憧れて海軍に入る者が続出しているのだ。その結果、ただでさえ入る人員が少ないのに、その少数すら海軍に取られて、陸軍も堪忍袋の緒が切れたという所だろう。
ただ単に羨ましいと言うのが本音だろうが、確かに志願者が少なすぎることは陸軍にとって死活問題なのは確かだ。
だが、だからと言って男と言うオアシスを譲る気はさらさらない。
彼はもう扶桑海軍に無くてはならない柱なのだ。
入りたての連合軍で扶桑軍が強い発言権を持てているのも彼が居るから。
一部では護るべき男を戦場に出すなんて、恥知らずもその辺にしなさいと言う声も存在するが、所詮、負け犬の遠吠えという奴だ。
…、本音を言うと、彼には戦場に立ってほしくない。
女にとって男性とは護るべきものなのだ。此方にも女としてのプライドもある。
だが、
プライドでネウロイを倒すことはできない。戦場では勇敢な者から先に死んで逝き、無能ばかりが残り、踏ん反り返る。
それは、軍の上層部を見れば明らかであった。
頭にあるのは、自身の保身と男の事だけ。正直嫌になる。
これでも、人々を護ると軍服をまとった誇りがこの身にはあるのだ。
最近、写真ブームがこのザラ隊ではおこっていた。
暇つぶしにカラーの使い捨てカメラを造って、部隊員全員で写真を撮り、できた写真を皆に配ったのが事の始まり。
初めて見るカラー写真に皆が大はしゃぎ、今に至る。
ザラ隊の解散が近いからか、やたらとカラー写真でのツーショットをねだられた。
別に断る理由が無いので隊員全員と、観戦武官の人達全員とツーショット写真を撮った。なんだか学校の卒業式思い出すな。
そんなこんなで、各々が使い捨てのカメラを持っている。
部隊の思い出になればと思って色々な写真を撮った。
章香の訓練でグロッキーになってる皆の写真とか、はしと茶碗持ちながら寝ているシュールな写真とか。
因みに各々が撮って、それを俺にわざわざ現像しに来なくていいように、現像するための機械は廊下に置いてあり、使い方も教えた.
初日なんか、列ができて大変だったな。インク切れ起こしたりして。
部隊員全員に大師匠から集合命令があって、行ってみれば、写真撮影だった。
大師匠が記念に撮っておきたかったのだそうだ。
そうしてみたのは、雑誌や新聞記者が持っているのとは比にならないくらい小さな物だった。
一枚とった後、直ぐに隊長室に戻り、10分と経たないうちに戻って来た大師匠が配った物にその場にいた者も皆が驚いた。
私達の知っている白黒写真じゃなく、服の色もついている一枚の絵のような感じだけど、そこに映り込んでいるのは、紛れもない自分達の写真だった。
上手く言葉にできないけど、それだけこのカラー写真は私達にとって、衝撃的だった。
その写真機を部隊員全員分と、観戦武官の人全員に渡していた。
最初は何を撮るかで悩んだものだ。
そんなある日。
観戦武官の一人、魔眼の師匠から面白半分で渡された写真に一度目は鼻血を出して昇天し、二度目は鼻血を出しながらトイレにかけて行った。
その写真には風呂上がりの大師匠の上半身だけだが、映っていて、鍛え上げられたその肉体美に目がどうしても行ってしまう。
この世界の男子と言うのは余り外に出て歩いたりしないため、いわゆる、もやしと言われるひょろりとした体つきが一般的だ。
そのために、アスランの無駄のない鍛え上げられた体付きは女に衝撃と、刺激を与えた。