慟哭の空 作:仙儒
第十二航空飛行隊(ザラ隊)が発足してから一年が経過した。
このころには、世界中がアスランの存在を認識していた。
因みに、扶桑の紅き翼、深紅の鬼神、他にも色々と呼ばれているが中二病溢れるな名前なのでそこは割愛しよう。
撃墜スコア数はかなりの数。
また、戦場で歌を歌う事が多いからか、ラジオに雑誌にと引っ張りだこだったりする。
アスラン自身はやりたくないが、軍の人気取りとして、宣伝塔としての役割をわかっているため、渋々了承している。
ラジオでは歌声を、雑誌ではその完成された美を惜しむ事無く発揮し、世の女性、子供から老人まで幅広い人々の心を掴み、世界各国でザラ派と言う一種の宗教じみた人々が存在するほどだ。
世論も彼がやる事成す事全てに対して追い風となっている。
幸い、アスラン・ザラは政治的な関与をしないために暴動がおこることはないが。
扶桑国はアスランの思惑通り世論を味方につけ、政治的、軍事的発言権を強めている。
まぁ、アスランに見限りを付けられないように軍部はアスランは一階級昇進したりと色々手を焼いているようだが……、
私が思うに特にアスランは階級に対してこだわりを持っていない。
故のワンマンアーミーのライセンスなのだろうけど。
で、
「今度は何ですか? 北郷中将」
呆れた顔で此方を見て来るアスラン・ザラ大佐。
「ごめんなさい。軍部もあなたに抜けて欲しくないのよ、そこのところをわかって頂戴」
その手には、本来二階級分昇進する筈だった命令書があった。
本人曰く、二階級昇進は縁起が悪いのと、この短期間での昇進に続く昇進何て聞いたことないぞ。との事。
私はそうは思わないけどね。むしろ今の階級のままにしておくと、連合国側からの世論や圧力が怖い。
人類はネウロイに、今まで散々煮え湯を飲まされてきた。それを一人で覆す武功を幾つも重ねて居れば、階級の方からアスランを迎えに来る。
加えて、新型魔道徹甲弾の開発や、最新鋭のストライカーユニットの欠点を上げ、それを克服するための技術提供。
更なる発展型の定理等上げればキリがない位軍部に貢献している。
私の判断は正しかった。無理を通したかいがあると言う物。
ああ、私が後20歳若ければ私の物にしたかったのだが…、こればかりはしょうがない。
俺、
え? ルビが違う? 知らんがな。
ええい、メタイとかそんなん知らんがな。俺だってやるつもりは無かったんだよ。
ただ、いつもあんまり喋らないセイバーが戦闘になる度に「今日は何歌いますか?」ってBGM流してくれるから歌ってを繰り返していたら幾つかは軍歌として流れる始末。
セイバーに問い詰めたら、ウィッチ達や兵士たちの士気向上に繋がれば俺への負担が少しでも減ると思ってやっていた。何て言われたら流石に何も言い返せない。
俺の姿がバレて、介入するごとに歌って居たら、歌王なんて呼ばれるようになった。
歌姫だったらわかるけど、歌王って何さ。ごろ悪いことこの上ない。
…、成る程。歌を歌おうと、歌王がかかっているのか。傑作、傑作、面白いね。
何てなると思います? どう考えても面白くないし。
滑った感がパナイ。
つーかポジション的に違うだろ。何、俺ラクスのポジションなの?
まぁ、いいや。
そんなこんなで軍人としての仕事よりもラジオで歌歌ったり士気向上の為に歌ったりと忙しい。
何かレコードの売れ行きもかなりの物だとか。
無論、その間にネウロイが出たら、ネウロイ退治の方を優先している。そこは間違っちゃいけない。
そう考えているうちに北郷中将から昇進命令書が来ていた。
一度蹴った覚えがあるんだが、どうしてだろう?
そもそも二階級昇進は縁起悪くね? もしかして殺す気満々だったりします? 扶桑軍。
俺なりに尽くしてはいるつもりなんだけどな。やはりライセンスのせいか?
まぁ、こんな死亡フラグをへし折るために昇進命令蹴っ飛ばしたら人事部や軍上層部から泣きつかれたので、嫌々一階級昇進ならと落としどころを付けたんだが、この前のアフリカ戦線で活躍したのがだめだったのか、もう一度昇進命令が来た。
扶桑軍も世論に対して敏感になっている。それが世界初の男性軍人であり、男性初のウィッチでもあるのだ。
そして、扶桑軍とて体面と言う物がある。
組織って面倒くさいな。いや、組織に関しての面倒事と言うのはアスランの中でもかなりあったみたいだが。
特に人付き合いが得意ではないアスランは人一倍苦労していたようだ。
最も、最初の方はキラの事で頭が一杯で突っ走っていただけだが。故に孤立していたんだよな。
そう言えば扶桑軍には准将と言う階級が無かったから、少将になるのか?
どちらにせよ蹴るつもりでいるんだが…、
それを告げると、やっぱりだめ? 何て返ってくる。
当たり前だ、将官クラスになれば、そうやすやすと前線に出れなくなる。
嫌、一人総司令官なのに最前線で戦っていたバカがいたな。
誰とはあえて言わないが。
「で、本題なんだけど貴方幾つかしら?」
何だ? 藪から棒に。
前の世界では15歳だったが、概念もどきになってからは何年たったかわからない。
身長から考えると18歳だと思うんだが。あれから1年経ったわけだから、19か?
「一応19です」
どうでもいいが、コーディネーターは15歳で成人だ。
「なら、そろそろ身を固めても良い頃だと思うのよ。どう? 家の章香何て」
そう言いながら、何時取ったんだよとツッコミを入れたくなるお見合い写真を出される。写真からどこか気合が入っているような顔してるが、柄にもなく緊張したのだろうか?
「そう言うのは章香が決める事でしょう。失礼ですが親がどうこう口出しするものでもないでしょう」
まだ、恋愛結婚と言うのは稀な時代だ。お見合い結婚が主流なのはわかっている。
だから、せめて、結婚するならば親の意見ではなく、お互いの納得、同意のもとでしたい。
そう言ってんのにこのタヌキはことあるごとに、章香と俺をくっつけたがる。
「どうかしらね? 一応言っとくけど北郷の女は一度食いついたら離さないのよ」
「?」
「わからないならいいわ、まぁ、決めかねているんなら取り敢えず、章香と結婚したら? どこの国でも男は貴重だから重婚が許されているわけだし」
いや、そう言うがな。ちょっと付き合う位の軽さで結婚とかできないだろ。
そこ! ヘタレとか言うな。