我ら、八ツ橋高校科学研究部!   作:ぺんたこー

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「みんなぁ!おっはよぉ!」

 高らかな挨拶とともにドアが開き、ロングストレートな髪の少女が入ってくる。

「部長、おはようございまーす。」

「…!?…部長!なぜ昼に朝の挨拶をするのですか!」

「ぶちょー?」

 部長と呼ばれた少女は聞き慣れない声に違和感を感じる。

「…えぇとぉ…あなた誰?」

「俺か?」

「勇じゃない。そこの…緑色のオーバーオール着てる子。」

 きょろきょろ辺りを見回した後、自分の服を見てようやく気づく。

「あっ!私か。私は水平奈々!」

「なぜここにいるの?」

 部長がすかさず問い返す。

「え?…あっ…入部希望です!」

 部長の頭の上に「!」が浮かぶ。

「ちなみに俺の推薦です。」

 部長の頭の上に「?」が浮かぶ。

「な…な…なっ!?」

 部長の思考回路が停止して[ERROR]を示す。

「部長。大丈夫ですか?」

 駆我の呼びかけでやっと脳が再起動する。

「部長。こいつ、見た目はただのちびすけですが能力は相当のものですよ。今すぐ入部試験をするべきです。」

「にゅーぶしけん?」

「駆我がそんなこと言うなんて…こんな幼女相手に入部試験が成り立つの?」

「心配しなくても大丈夫ですって。奈々が作ったスキルめっちゃすごかったんですから!」

 部長は腕を組み、考えはじめた。考えながら更衣室へと向かう。数分して部長が戻ってくるが、先ほどまでの部長とはかなり雰囲気が違った。

 服はセーラー服から白衣に変わり、顔には変な化面をつけていた。そして喋り方に特徴がある。

「よし!よいであろう。ではこれより、入部試験を行う!」

 勇と駆我が拍手や口笛で盛り上げる。

 奈々は思った。ー この部活、大丈夫かな… ーと。

「内容は簡単だ。今から言うお題を明日までにクリアする。それだけじゃ。」

 不思議そうな顔をしている奈々の耳元で勇がささやく。

「簡単って言ってるけどだいたいの入部希望者はここで落ちるぞ〜。さらにこれの後、面接まであるからなんか考えとけよ!」

「それではお題を発表する。」

 部長が合図をすると駆我がPCを操作し、ドラムロールの音を流す。

「お題は……明日までに、スキルを一つ作ってくる!」

 今までノリノリだった勇と駆我の顔が冷水をかけられたかのように凍り付く。

「部長…ちょっと難しすぎませんか?」

「あぁ…俺もそう思う。」

「どうした?諸君。こやつはスゴいのあろう?資金はいくらでも出す。まぁ、せいぜいがんばるのじゃ!」

 二人は言葉を失う。

「ちなみに『スキル』とは何か知っておるか?」

「それぐらい知ってるよ!スキルは科学武器の『隠語』でしょ!」

「ほぉ、さすがに知っておったか。」

「そんなことより、お金はいくらでも出してくれるんでしょ?」

「うむ、そうじゃが?」

「どんなスキルを作ってもいいんでしょ?」

「そうじゃが…あえて言うなら人間一人を余裕で殺せるくらいの威力は欲しいのぅ」

 その返事を聞いて奈々は左手を腰にあて、右手で部長を指差した。

「材料調達に2時間。道具収集に1時間。スキル作成に2時間。これで充分よ!」

 場にいた三人が目を見開いて奈々を見る。

「あれ?聞こえなかった?」

 そう言うと奈々は右手の指をすべて開いた。

「合計5時間で充分よ!」

 

 5時間後、奈々は本当に作ってきた。背中には奈々の体に対しては少し大きめのリュックサックを背負っている。

「さぁ!みんな集まった?」

 時刻は21時、さすがに学校は使えないそうなのでこの前の公園に来た。

「っと、その前に…ねぇゆうさん!昨日の夜の死体はどうしたの?」

「アレなら駆我に頼んで片付けてもらったぞ?」

「そう…」

 奈々はどこか寂しげに答える。

「夜中に電話がかかってくるんだぞ?本当にうっとおしい」

 駆我が愚痴を言い始める。しかしあることに気づき、真剣な顔で奈々を見た。

「…?!お前……見てたのか?」

 奈々がうなずく。

 駆我はあのときなぜ、自分が言おうとしていたことが奈々に言い当てられたのか理解した。

「そうか…どうりでお前が傷だらけだったわけだ…」

 駆我の勇を見る目が変わる。

「とーにーかーく!私の作ったスキル、見てよね!」

 そう言うと奈々は背負っていたリュックサックからサイズの機械を取り出す。

「なんだそれ?あれか?握力計るやつか?」

「ちっがーーーう」

「ではそれはなんなのだ?」

「よくぞ聞いてくれました!見ててね!」

 奈々は機械を持つとレバーを引く。すると先端についている、4本のツメのようなものが風を裂いて勢いよく閉じる。

「どう?」

 みんな、何と言えばいいのか分からない。

「…えーっと これ何?」

「名付けて!『びりりん』だよ!」

 ますます何と言えばいいのか分からない。

「ところで、これのどこに殺傷能力があるのじゃ?」

ー部長!喋ってくれたのはうれしいけどスゴくヒドイ事言ってる!ー

 奈々は、待ってました!と言わんばかりに胸を張る。

「いくよ?」

 持っている機械、命名びりりんの側面についたボタンを押す。

ー バヂバヂッ ー

 すると4本のツメが付け根の辺りから熱が伝わるように激しく光る。

「これで掴んででバチバチっとすれば、だいたいのものは真っ黒焦げだよ!」

 部長は思う。

ー こやつ、思っとる以上にやりおるのぅ ー

 駆我は思う。

ー このチビすけ、やはりスゴい ー

 勇は思う。

ー 俺の朝ご飯と同レベルだ! ー

「ねっ?スゴいでしょ〜」

 奈々は手に持っているスキルを見せつけるように構えて、空いている左手を腰に当てて胸を張る。

「うむ、確かにスゴいが…ちとネーミングセンスに欠けておるのぅ」

「…えっ!?部長!つっこむところそこですか?」

「やはりそうですよね。ちびすけ。漢字で『雷牙(らいが)』というのはどうだ?」

「いやいや、もっとこう英語でかっこ良く『グラブショッカー』とかどうじゃ?」

 名前を決める話し合いの中、勇はひとりこう思う。

ー みんなネーミングセンスが無さすぎる ーと。

「まぁ、とりあえず合格じゃな。」

 3人の会話が弾む中、どさくさにまぎれて部長が言った。

ー 今サラッと重要なことを言った気がする。 ー

 勇はもう、話に入れなかった。




こんにちは。ぺんたこーです。
読んでいただきありがとうございます。
今回は奈々の入部試験です。まぁ、余裕でクリアしましたね(汗。
そんな奈々にこれからも期待してください!
それでは、また次のあとがきでお会いしましょう!

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