我ら、八ツ橋高校科学研究部!   作:ぺんたこー

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今日も授業が終わり、夢見る放課後が始まる。

勇にとっては部活動こそが学校に行く唯一の意味であった。

この廊下の先に部室がある。勇の歩く速さが上がった。

部室の前につくと、科学研究部と書かれた紙が貼ってあるドアを開けた。

「ちわーっす!」

挨拶をしながら部屋に入る。

部屋の中には様々な機材がところ狭しと並んでいた。そんな部屋の一角で金属が切れるような騒音と共に火花を散らしながら、何かを加工している少年がいた。誰かが来たことに気がつくと作業していた手を止めゴーグルを外し、ドアの方に視線をやる。

「なんだお前か…そうだ、昨日はご苦労だったな。」

そう言うとゴーグルを付け直し作業を再開した。

「おいおい、もうちょい何かねーのかよ?」

しかし勇の声は作業音にかき消されてしまった。

かろうじて空いていた机の上のスペースにスクールバッグを置き、奥にある更衣室へ向かう。

更衣室に着くと南古都勇と書かれた紙が貼ってあるロッカーを開けた。中には色々なものが無造作に入っていたが、勇はその中から迷うことなく一着の白衣を引っ張りだすと学ランを脱いで代わりに投げ入れ、更衣室を後にした。

慣れた手つきで白衣を羽織るとまだ作業をしている少年に声をかけた。

「そうだ!昨日の報酬はどこだ?」

作業をしている手を止める様子はなかった。

勇は察した。

「…まさか、また部費になったのか?おい!ウソだよな?」

勇は全力で自問自答を繰り返す。

「嫌だよぉ…なんで毎回部費になるんだよぉ」

壁に頭を何度もぶつける。ガンガンと鈍い音が鳴っているが勇は気にしない。

ガンガン…ガンガン…

「ゔゔ…おい!駆我ぁー!聞いくれよー!」

「お前はどうすれば静かになるのだ?」

駆我と呼ばれた少年は、作業していた手を止めゴーグルを外した。

「いい加減ムカつくぞ、全く…これでも食らってろ。」

駆我が銃のような形をしたモノを勇に向けた。

ギュイィィィィン

起動音がすると、勇が『何か』に押さえられたように壁に張り付く。

「ごぉお!?おぉおぉあぉあぉぉぁあ!」

もはや何を言っているのか分からない。

駆我が作業を再開しようとゴーグルを付けると勢いよくドアが開いた。

「しつれいしまーす!」

そこには緑色のオーバーオールを着た少女が腕を組んでいた。

「ここがゆうさんの言ってた科学研究部?なんか思ってたより…」

壁に張り付いた勇を見つけた少女、奈々は言葉を詰まらせる。

「…ゆうさん何してるの?」

「お前は誰だ?なぜドアを開けてから挨拶をする!」

勇は思った。ー つっこむところそこかよ! ーと。

奈々は駆我を見る。

「…!…もしかしてあなたが駆我(くが) かかりさん?」

「…ああ、そうだが?」

「すっごーーい!目の下にくまがあって、すっごく猫背で、えーっと…そう!アホ毛がぴょんってしてるー!ゆうさんの言ってた通りだー!」

奈々が言い終わった瞬間、勇がさらに強く『何か』押されて苦しそうにもがいている。

それを見た奈々が目を光らせた。

「すっごーーい!それってもしかして重力の向き変えるやつ?初めて見た!」

喜んでいる奈々を見て、駆我が呆然としている。

「お前…!これのすごさが分かるのか!」

「うん!だって地球の力をねじ曲げてるんでしょ?こんなのお金と時間と技術がすごくかかるに決まってるじゃん!」

「そうだろう!時間すごくかかるに決まっている!…しかーし!私は違う!」

奈々は首を傾げる。そのとき勇の方向に向いていた重力が元に戻り、身体が壁から床へ滑り落ちるが二人は気づかない。

「そう!私はこれを一日で作ったのだ!たった一日だ!どうだ、すごいだろう?」

「…!?うそでしょ、すごい!」

二人の会話は盛り上がる。

「あのー…俺のこと忘れてません?」

「おっと…もう電池が切れたか……チッ」

駆我は明らかに不機嫌な顔をしながら手に持っていた銃のような形をしたモノをコードにつなぐ。

「それ充電式なの?」

「そうだ…重力をねじ曲げるくらいだからな…一日充電して使えるのは40秒くらいだ。この効率の悪さから実戦での使用はキケンだとみなされボツになった。今思うともったいないな。」

「……それ、もう使わないの?」

「…?多分使わないと思うが…どうした?」

「もらってもいい?」

「こんなモノがほしいのか?お前も物好きだな…いいぞ、くれてやる!どうせ量産できるしな」

「やったぁ」

「だが悪用するんじゃないぞ。もし悪用したら…」

「殺されちゃうーなんてね!」

にっしっしとイタズラな笑みを浮かべる奈々を横目に駆我は驚いた。奈々の口から予想外の言葉が飛び出したからだ。

「お前…なにものだ?」

「私?…私は水平奈々!この学校に転校してきたの!まだ手続きが残ってるけど明日からみんなと一緒に勉強するよ?」

床でのびていた勇は思った。ー 昼休みに見たメールはこういう意味だったのか… ーと。

「あと、この科学研究部に入部するつもりだよ!」

駆我の頭の上に「!?」が浮かんだ。




こんにちは、ぺんたこーです。
読んでいただきありがとうございます。
今回は、一つ科学道具が出てきました。それはなんと重力の向きを変えしまうのです!勇は押されるだけで済みましたが、もっと出力を上げれば人を潰すことだって出来てしまうとても危ない道具です。奈々はこれをどうするのでしょうか?今後の活躍に期待して下さい!
それではまた、次のあとがきで会いましょう!

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