ピロリロン!ピロリロン!
ケータイからメールの着信音がする。勇はベッドの上で布団にくるまり、耳を塞いでいた。今は朝の6時だ。多分朝の5時ごろからずっと鳴っている気がする。布団の中で勇は少し後悔していた。
「いやいやいや、確かにいつでも連絡しろとは言ったが普通こんな朝早くからするか?いやしないだろ!ということで俺はまだ寝る!悪く思うな、お昼になったら見てやるよ!」
そう言うと布団に深く潜り込み、もはや2度目ではない2度寝をした。
その後、目覚まし時計の音が鳴り響き、7時50分にようやく起きた。
「眠い…」
そういいながらベッドから起き上がるが転倒する。勇はだるそうにしながら自分の部屋を出た。階段を下りている途中、踏み外し5~6段滑り落ちた。
「いってぇ…今日は朝からひでぇ日だ…クソッ」
ふらふらとした足取りでリビングへ着くと誰かが声をかけてくる。
「あら勇ちゃんおはよう。どうしたの?ふらふらじゃない!」
「大丈夫だよ母さん。いつものことじゃんか。」
キッチンで料理をしている母に向かって返事をしながら食パンをトースターに入れる。
「今日はツイてないしやめとくか……いや、やってやる!」
そう言うと勇はリビングを出て階段を駆け上がった。後ろから母の声がする。
「ちょっと勇ちゃん!今日もこれやるの?いままで成功したことないじゃない!」
しかし勇は気にせず自分の部屋まで戻り、パジャマを脱ぎ捨ててクローゼットから制服を出し、着替えた。そしてベッドの隣にある勉強机にかかったスクールバッグを取ると、急いで部屋を出る。そのときタンスの角に小指をぶつけたが、目に浮かぶ涙をこらえながら急ぎ足でリビングに戻った。
勇は急いでトースターを開けるとそこには見事、真っ黒に焦げた食パンが「ドヤァァ!」と言わんばかりに黒煙をあげていた。
「……今日のは一段と黒いな。」
焦げたパンは勇の口に運ばれた。
「うっっえぇ〜、苦ッ何これ!?過去最大級だわ。」
「もう、パンが無駄だからやめてちょーだい。」
母があきれたという顔で言う。
「ちゃんと食ってるから無駄にはなってないだろ。っとやべぇ遅刻する!」
パンを食べながら時計を見ると針は8時を指していた。それに気づいた勇は残りのパンを胃に納め、顔を洗ってもろもろの準備を済ませ学校へ向かった。
電線に止まっている小鳥が鳴く。いつも通りの通学路にいつも通りの日の光が注ぐ。
「おーーーい!ちょっと待てよー!」
無視したいほどの大声でまわりの人の注目を浴びながら俺の数少ないお友達、同級生の
「おい!聞いてんのか?…お前だよ!おい!勇!聞けって!」
全力で無視したがあまりにもしつこいので一言だけ返事をしてしまった。
「うるさい。」
「なんだよもう、返事するならもっと早くしろよな!そうだ!今日はアレ、どうだった?」
「だまれ。」
「おー?その様子だと、また真っ黒焦げのパン食ってきたんだな?相変わらずだな!」
「うるせーそれが俺の日常だっつーの!それになぁちょーっと本気出せばいつでも最ッ高の焼き加減のパンを食えるっつーの!本気出せば余裕だっつーの!そもそも朝からあんなにメールが届くから全然眠れなくて調子狂っちまったんだよ!」
ついに全力で反論してしまった。今まで修樹に向いていた周りからの視線は勇に切り替わる。しかしこれは、いつもの事だ。
朝の通学路に声が響く。これが南古都 勇の日常が始まる合図だった。
勇たちはチャイムが鳴る数分前に門を通った。
ここは
「やっと着いた!もう!この地図読みにくすぎるよ〜」
手に持った紙切れを見ながらつぶやいた。
視線を上げるとこの前見たこともある人を見つけ、少女はその場でぴょんぴょん跳ねた。
「あっ!もしかしてあれゆうさんじゃない?」
緑色のオーバーオールを着た少女、水平 奈々はまわりの注目を集めない程度に叫んだ。
その直後学校のチャイムが鳴り、正門が閉じた。
今日も一日が始まる。
こんにちは、ぺんたこーです。たこではありません、ぺんたこーです。
今回は南古都 勇の朝、日常の始まりについて書かせていただきました。ちなみにこれは『響』と同じ日です。つまり勇は2時〜5時の3時間しか寝ていません。
まぁ、最高10日間徹夜したことがある彼なら(多分)大丈夫です。
しかし今回は全然、理系ホイホイしてないなぁと自分でも思いました。
次回は書けるようにがんばります!
第2話『鳴』読んでいただきありがとうございました。
また次回のあとがきでお会いしましょう!