蒼が導く幻想の旅路~東方蒼幻録~   作:wingurd

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長い期間更新できないで申し訳ありませんでした。
約1年の間ずっと更新が止まってしまっていました。
仕事のストレスと過労により体を壊してしまい、約3ヶ月の間入院、前の仕事は既に退職し、新しい仕事を探すために就職活動をしており、全く更新出来ませんでしたが、仕事が見つかり時間も出来た為、更新を再開しようと思います。
未だに第一の異変すら終らないまま更新停止になど出来ないと再び筆を執りました。

状況は対紫戦の途中ですが、元々二話で作る予定を変更し、三話構成にします。
久々の更新で最初から長文は、読みにくい上に話も纏まらない可能性があるので、一旦区切りをつけます。
尚、今回の話でオリジナル主人公の後日覚醒能力を解禁。
覚醒能力を使っての戦闘は次回からになります。

では、長期間更新を停止していましたが、異変パート9話をお楽しみください。


幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part9

再会した二人は少しの間談笑する。

取り戻した記憶では、彼女はこういった性格。

所謂、ツンデレタイプだ。

デレた所を見たことはないが、先程のラグナに向けた言葉と態度で容易に想像できる。

思い出した記憶に加え、記憶と変わらない彼女の姿や態度から、ショウの顔には自然と笑みが浮かんでいた。

 

ショウ

「・・・ずいぶん懐かしい感じだな。相変わらずみたいで安心したよ。やっぱりお前はそういうキャラじゃないと落ち着かない。」

 

レイチェル

「何を笑っているの?・・・貴方まさか、私の事を馬鹿にしているのかしら?何なら、今ここで消し炭にするわよ?」

 

ショウ

「悪い悪い。安心したらついな。不快にさせたなら謝るよ。さて、談笑はここまでにするか。」

 

ジト目になったレイチェルに謝罪しながら、ショウは表情を真剣なものに変える。

 

ショウ

「レイチェル。会って早々で悪いが、質問をいくつか聞いて欲しい。頼めるか?」

 

レイチェル

「構わないわ。もともとそのつもりよ。で、何が聞きたいの?」

 

ショウは静かに語り始める。

自身の記憶の断片を繋ぎ合わせ、今に至るまでの経緯を。

そして、その断片に足りない部分を補うための質問も合わせて尋ねていった。

それらに対して、レイチェルは知っている限りを話していく。

しかし―――

 

ショウ

「――――という訳なんだ。で、一番確かめたいのは俺の最後の記憶について。思い出せないが、誰かを守るために暴走したラグナと戦った所を最後に記憶が途切れている。あの後、一体何があったんだ?」

 

レイチェル

「・・・まあ、それを聞くわよね。ラグナから■■■と■■を守ろうとしたときのことよね?」

 

ショウ

「・・・?すまない。今、何て言った?多分人の名前だと思うが、よく聞き取れなかったんだが?」

 

レイチェル

「・・・やっぱり、か。この空間は貴方の記憶領域に干渉して構築しているのよ。つまり、貴方が思い出していない人物や出来事について話しても、貴方は認識できない。私が言った言葉の一部が聞き取れないのはその為よ。新しく聞いたことなら、理解出来るけどね。」

 

レイチェルが語った内容の一部が聞き取れなかったため再度確認したが、どうやら取り戻していない記憶については何度聞いても、ショウ自身が認識できないため聞き取れないらしい。

 

ショウ

「・・・そうか。なら、今理解出来るのは、ラグナとレイチェルの二人に関することだけか・・・。なら、ラグナはどうなった?」

 

レイチェル

「ラグナも行方不明になったわ。貴方と一緒にね。貴方はその時、今いる世界に来たと考えられるけど。」

 

ショウ

「な!?俺だけじゃなく、ラグナも行方不明!?」

 

レイチェルの口から衝撃の事実を告げられる。

一番最後の記憶はラグナと戦っていたこと。

その後、自身だけでなくラグナの消息も分からなくなったとのことだった。

 

レイチェル

「今の現状は、■■■■■■が■■■■■■を媒介に誕生させた『エンブリオ』が空中に漂っている状態。あと、■■■■■■■■も現れて、今は私のツクヨミユニットで守っている。■■は重症で今だベッドから動けないわ。■■■も怪我はしてるけど、動けないほどじゃない。■■■と■■■■は現在も貴方とラグナを探しているわ。まあ、こんなところかしら。」

 

レイチェルの言葉の内、自身の過去に関わる単語は聞き取れないが、大体の状況は理解できた。

また、味方と思われる二人の人物が怪我をしており、誰かがショウとラグナを捜索してくれているようだ。

ただ、初耳な単語もあった。

 

ショウ

「大体わかった。ただ、聞いたことがない単語があったな?『エンブリオ』って言ったか?聞き取れない訳じゃないから、本当に初耳のはずだが・・・、その『エンブリオ』ってのは何なんだ?」

 

レイチェル

「・・・『エンブリオ』についての説明は難しいから、これだけを覚えておけば良いわ。『エンブリオ』は真なるブレイブルー、『蒼炎の書』を産み出すためのものよ。」

 

ショウ

「真なるブレイブルー・・・か。そうだったな。ラグナのブレイブルーは模造品だったか。その元となったのが、『蒼炎の書』・・・て事か。なるほどね。後、もう一個聞きたい事がある―――」

 

レイチェルの説明を受け、ある程度は納得できた。

追加で質問をしようとしたショウだったが・・・

 

レイチェル

「・・・一つ聞いても良いかしら?」

 

ショウ

「ん?質問か?今の俺に答えられる事は少ないぞ?それでも良いなら構わないが・・・。」

 

レイチェルからの質問に遮られた。

記憶がない今の状態じゃ大した回答もできないとは思うが・・・。

 

レイチェル

「なら、聞くわ。・・・何故、貴方から蒼の力を感じるのかしら?強くはないから、欠片みたいなものだと思うけど、間違いなく蒼の力を感じる。どういう事かしら?」

 

ショウ

「・・・は?俺から、蒼の力を感じる?そんな馬鹿なことある訳・・・・・・いや、確かにあったわ、可能性が一個だけ。」

 

レイチェルからの質問は、ショウの体から蒼の力を感じるとの内容だった。

そんなはずないと突っぱねるつもりだったショウだが、改めて思い返せば、一つだけ可能性がある出来事があった。

 

ショウ

「この世界にスカーレットていう吸血鬼の姉妹が居るんだが、その姉妹の妹の方が何者かに持ち込まれた蒼の欠片を取り込んで暴走したんだ。その欠片を俺が魔素で砕いた。もしかしたら、その時に蒼の欠片を体内に取り込んだ可能性がある。」

 

レイチェル

「・・・ちょっと待ちなさい。聞き捨てならない内容が幾つかあったわよ?今貴方、スカーレット姉妹って言ったわよね?それに、蒼の欠片が何者かに持ち込まれたですって?どういう事よ?説明なさい!」

 

ショウの答えを聞いたレイチェルは、彼女らしからぬ大声をあげる。

 

ショウ

「確かに言ったな。順番に説明してやるから少し落ち着け。この世界には先程言った通り、スカーレットっていう姉妹がいる。姉はレミリア・スカーレット、妹はフランドール・スカーレットだ。予想はしていたが、やはり知り合いか。」

 

レイチェル

「ええ。彼女達は私の古い友人よ。かれこれ500年以上前のね。でも、彼女達は知り合ってから直ぐに行方不明になったわ。既に死んでいるものとばかり思っていたけど、生きていたのね。」

 

ショウ

「その事について詳しくは知らないが、レミリアから聞いた話を考えると恐らく、行方不明になったのはこっちの世界にやって来たからだ。話の内容と時期が一致する。レミリアは約500年程前に、能力制御ができずに暴走するフランを幽閉したと言っていたが、それはこちらの世界に来て直ぐの事と言っていたから多分間違いない。」

 

レイチェル

「幽閉・・・。まったく、馬鹿な子ね。手立てはないのに、諦めることだけは死んでも嫌だと宣っただけはあるわ。」

 

ショウ

「そう言ってやるな。フランは取り込んだ蒼の欠片により精神の暴走を強めた上に、欠片から魔素を取り込んでしまい精神汚染を引き起こしていたが、俺が欠片を砕いた事で今は安定してる。それに、不幸中の幸いとでも言うのか、フランの能力はレミリアの話で聞いた時よりもかなり安定してるんだ。蒼の欠片の力でな。」

 

レイチェル

「・・・どういう事かしら?」

 

ショウはレイチェルに語る。

フランの能力は、レイチェルが知り合った時よりも安定していると。

そして、その要因になったのは、暴走の元凶でもある蒼の欠片の力だと。

 

ショウ

「レミリアとフランが持っている力については知っているな?」

 

レイチェル

「ええ。レミリアが運命操作、フランが絶対破壊の能力だったわね。」

 

ショウ

「その通りだ。そして、二人の能力には共通点がある。レミリアは近しい運命を自身の能力が干渉出来る程度に改変する力。フランは破壊限定だが、干渉する物に制限はなく、強制的に破壊する力。この差が能力制御の難易度の差になっている。そして、能力行使の過程でどちらも対象の運命、因果に干渉する。これ、どこかで聞いたことないか?」

 

レイチェル

「・・・事象干渉ね。」

 

ショウ

「正解だ。力の強弱、導かれる結果は限定的だが、彼女達の能力は、どちらも事象干渉に酷似している。なら、蒼の欠片の力を吸収したならば、能力制御が安定してるのも納得できることだ。」

 

ショウの語った内容は、レミリアとフランの能力はどちらも限定的な事象干渉に酷似していると言うもの。

そして、蒼の力を一時的とはいえ取り込んだフランの能力は、より事象干渉の力に近づいた物へと変質した。

当然、能力の安定した使用の為に多少の訓練は必要になるが、フランはもう自身の能力による暴走の可能性はかなり低くなっていたのだ。

 

レイチェル

「・・・フランが欠片とはいえ蒼に触れた、か。かつての友人として思うなら心配ではあるけど、暴走の可能性がほとんど無くなったというのは確かに嬉しい事ね。フランは私を姉のように慕ってくれた可愛らしい子だったから。それについては礼を言うわ。・・・最後に聞かせてちょうだい。蒼の欠片が何者かに持ち込まれたというのはどういう事かしら?」

 

旧友を救ってくれたことに対してレイチェルは素直に感謝の意を示した。

そして、最も確認しなければならない事について質問する。

蒼の欠片が何者かに持ち込まれた件についてだ。

質問を受けたショウは、神妙な表情を浮かべながら語り始める。

 

ショウ

「・・・・・・わかった。先程言ったが、レミリアとフランがこの世界にやって来たのはおよそ500年前で、直ぐにフランは地下室へと幽閉された。フランは今日に至るまでの間、一度も外へ出ていないらしいが、フランの話だと、蒼の欠片はフランの部屋に落ちており、見つけたのは最近の事だそうだ。」

 

レイチェル

「・・・そういうことね。つまり・・・。」

 

ショウ

「ああ・・・。フランの部屋は完全に密室だった。しかも、最初からあったという説も否定される以上、残る可能性は、何者かが意図的にフランの幽閉された部屋に持ち込んだ以外にあり得ない。にわかには信じがたいがな・・・。一体何のために・・・!?」

 

レイチェルに可能性の説明をした後、何故持ち込まれたのかを思案していたショウだが、突如強烈な目眩に襲われバランスを崩す。

 

ショウ

「な、何だ?視界が・・・霞む・・・!?」

 

レイチェル

「・・・どうやら、もうすぐ時間切れのようね。」

 

ショウ

「時間切れ・・・だって?どういう事だ!?」

 

ショウの疑問にレイチェルは、間もなく時間切れだと答える。

時間切れとはどういう事か尋ねるショウ。

 

レイチェル

「先程伝えた通り、この空間は貴方の記憶領域に干渉して構築しているのだけれど、これ、かなり力業なのよ。長時間安定した状態で展開することができないの。しかも、一度でも閉じてしまえば、二度と構築することはできないでしょうね。」

 

ショウ

「・・・・・・そうか。いや、これだけ情報が得られれば十分か。ありがとうレイチェル。助かった。わざわざすまなかったな。」

 

レイチェル

「別に構わないわよ。私も知らなければならない情報が手に入ったし、礼を言うならお互い様よ。・・・もう時間はないか。最後に一つだけ忠告しておくわ。」

 

レイチェルの説明に落胆しながらも、そこまでの無理をさせてしまったことに責任を感じ、謝罪と感謝を述べるショウ。

それを受けたレイチェルもお互い様と礼を述べた。

そして、最後に一つだけ忠告があると語る。

 

レイチェル

「貴方が得た蒼の欠片の力だけど、その力の殆どは失われてしまっているわ。かろうじて出来ているのは、元となる力がある私たちの世界と、今貴方がいる世界を繋ぐことぐらいよ。当然、根源の力である蒼の力は、その殆どが失われてしまっても、強大な力ではあるけれどね。いわば、『方向性を失った力』の塊ね。まず役にはたたないわ。」

 

ショウ

「『方向性を失った力』か・・・待てよ?・・・それなら、力に出来るかもしれない!未だに決まってない最後のカードなら!」

 

レイチェルの忠告を聞き、何かを閃いたショウ。

その頭には、親友とも呼べる少女の言葉が浮かぶ。

 

魔理沙

《スペルカードは、自分の能力にある程度の方向性を付けるものだぜ。》

 

ショウ

(今の蒼の欠片の力に出来る事は、俺たちの元の世界と幻想郷を繋ぐこと。そして、スペルカードは自分の能力にある程度の方向性を付けるもの。ならば!)

 

ショウは自分の懐から、左手で白紙のスペルカードを取り出し、目を閉じる。

 

ショウ

(蒼の欠片の力を・・・境界、そして、世界を繋ぐ力を・・・スペルカードに!!)

 

自分の中に眠る蒼の欠片の力を、自らが思い描く力の形に変えるため、ショウは意識を集中させる。

やがて、ショウの左手から透き通るような蒼の光があふれ、その光は左手に握られていたスペルカードへと集まっていく。

光が止むと、握られていたスペルカードには、淡く揺らめく蒼炎が描かれていた。

 

ショウ

「・・・ふー。よし!上手くいった!」

 

レイチェル

「これは・・・?ショウ、一体何をしたの?」

 

スペルカードを確認したショウは絵柄が浮かび上がっているのを確認し、深く息を吐き安堵の表情を浮かべた。

その姿を見たレイチェルはショウに尋ねる。

 

ショウ

「さっきのレイチェルの言葉で閃いたんだ。今俺が持っているカードはスペルカードと言って、この世界に流通している攻撃手段の一つなんだが、このカードの力は、『自分の能力にある程度の方向性を付けるもの』だ。今の蒼の欠片は『方向性を失った力』であるなら、スペルカードの能力なら、蒼の欠片の力に方向性を付与し、自分の能力として使えるかもと思ってな。」

 

先程のレイチェルの言葉。

今の蒼の欠片は『方向性を失った力』の塊。

ならば、スペルカードの能力なら、蒼の欠片が持つ強大な力を、自らの力として使えるかもと思ったショウは、残っていた最後のスペルカードに蒼の欠片を移動させ、蒼の力を持つスペルカードへと変質させたのだ。

 

レイチェル

「・・・はあ、呆れたわね。まさか、蒼の力を自分の能力として使おうとするなんて。ただ、成功している以上、正しい解答かもしれないけど。」

 

ショウ

「使用してみないとわからないが、一応能力としては形になってるはずだ。理論上はな。いやー、良かった良かった。上手くいかなかったらと思うとゾッとするが、成功したなら問題なしだ。実際問題、制御できない強大な力なんかリスクにしかならない。俺の能力と一緒だ―――ぐ!?くそ・・・そろそろリミットか!?」

 

蒼のスペルカードの説明をしていたが、再び強烈な目眩を感じ、遂に膝をついてしまう。

どうやら限界らしい。

その姿を見たレイチェルは、ショウを見たままフワリと空中に浮かんでいく。

 

レイチェル

「ここまでね。ショウ、有意義な時間ではあったわ。疲れたけど。後、現実の時間は全く進んでいないわ。目を覚ませば気を失う前の状況そのままよ。確か、大ピンチのはずなのでしょう?」

 

ショウ

「―――あ、ああ。危機的状況だな。知ってるなら何とかして欲しいが、無意味な頼みかな?」

 

レイチェル

「ええ、もちろん。干渉は不可能よ。でも、もう心配の必要はないでしょう?」

 

ショウ

「まあ、な。力も心も、気を失う前とは、何もかも違う。心配は要らない。必ず勝つ!!」

 

レイチェルの皮肉に力強く答えるショウ。

その瞳にはもう、迷いも絶望もなかった。

その姿を見たレイチェルは、あの時ラグナに向けていた慈愛に満ちた表情を浮かべていた。

 

レイチェル

「頼もしいわね。なら、私は貴方を信じるわ。・・・ショウ・・・『絶対に諦めないで・・・最後の最後まで人として、ただの人間として足掻きなさい。醜くても良い、みっともなくても良いから。』」

 

ショウ

「!?レイチェル、お前・・・。」

 

レイチェル

「『・・・頑張って・・・ショウ・・・。』」

 

レイチェルはラグナに送った言葉をそのままショウに送り、その姿を消した。

静寂に包まれた純白の空間にショウは一人立ち尽くす。

その顔には、晴れやかな笑顔が浮かんでいた。

 

ショウ

「・・・フッ。アイツらしいな。俺がラグナの記憶を見てレイチェルを思い出したの知ってやがったな?全く、最高に性格が悪い。でも・・・最高のプレゼントだ。・・・ありがとう・・・レイチェル―――」

 

レイチェルへの皮肉と感謝の言葉と同時に、ショウの視界は再びホワイトアウトしていった・・・

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ

「―――・・・。」

 

ショウの意識が戻ると、眼前には、一度自分が膝をついた絶望が、変わらず視界を覆い尽くしていた。

 

ショウ

「・・・本当にそのままだな。だが・・・もう迷いも絶望も・・・無い!!!」

 

ショウは眼前の絶望だったものに力強く吠え、懐からカードを取り出す。

そのカードには『淡く揺らめく蒼炎』が描かれていた。

 

ショウ

「力を貸してもらうぞ、ラグナ。・・・紡いだ記憶を力に変える・・・。世界を繋げ!!」

 

ショウが持つスペルカードが蒼く輝く。

 

ショウ

「幻蒼符『ファンタジア・インストール』code:SoulEater《ソウルイーター》、共鳴解放《レゾナンスブレイズ》!!!」

 

かつて無いほどの力がショウの周囲で渦巻き、咆哮と共に弾ける。

その声を弾幕の檻の外から聞いていた紫は呆れたような表情を浮かべ、吐き捨てるように呟いた。

 

「・・・はあ、もう諦めなさい。いい加減しつこいわよ?貴方では私に勝てない。もう分かっているでしょう?貴方の力は私には通じな―――」

 

???

「・・・・・・『カーネージシザー』!!」

 

「―――いわ――!?」

 

紫がショウに対する皮肉を言い終わる直前、紫はかつてない程の殺気を感じとる。

そして、その殺気を認識した正にその時、凄まじい速度で肉薄し、上段から剣を振り下ろしてくる、『白髪』の男を視界が捉えた。

 

(な!?どうやって弾幕結界から!?しかも、この力・・・先程までとは比べ物にならない!?)

 

ギリギリで反応した紫は持っていた扇子で剣を受け止めたが、その剣から伝わる膂力は、先程まで戦っていた外来人の力を遥かに超えていた。

 

???

「・・・喰われろ!!!」

 

「そんな!?押し込まれ―――きゃあ!?」

 

受け止めたはずが、力で押し込まれて体勢を崩されると、眼前の白髪の男は体を回転させ、下から剣を振り抜いた。

振り抜いた剣先から黒い衝撃波が発生し、紫はかわせず直撃を受けかなり後方まで弾き飛ばされる。

 

「ぐ!?かはっ!?い、一体何が・・・!?」

 

???

「・・・・・・・・・」

 

かなりのダメージを受けた紫はたまらず空中で膝をつく。

顔をあげ、白髪の男を視界に捉えたとき、その異様な姿を目にした。

その姿は、先程まで戦っていた外来人そのものではあったが、細部が異なる。

頭髪は白髪、服は元の服の色が黒を基調としたものに変化し、上からは赤いジャケットのような物を羽織っていた。

そして、瞳は青と赤のオッドアイとなり、肩に担いでいる剣は白い刀身に赤と黒の装飾が施された、無骨と言える身の丈程ある大剣に変化していたのだ。

その異様な姿に戦慄していた紫に向かって、白髪の男が口を開いた。

 

???

「・・・さっきはよくもまあ、好き勝手にやってくれたな?オイ。だがな・・・もう仕舞いだ、八雲紫。てめえは許さねえ。俺がお前を終わらせる。もう・・・てめえの戯れ言は聞き飽きた!」

 

「・・・ショウ・ウィンガード・・・貴方のその姿は・・・?」

 

ショウ(code:SoulEater)

「行くぞ!!この・・・クソ野郎が!!!」

 

かつて自身がいた世界の戦友、ラグナ・ザ・ブラッドエッジの力と信念をその身に纏い、新たな力を手に入れたショウは、戦友と同じ、大切なものを守るために反逆の刃を振るう。

 

to be continue




異変パート第9話、お楽しみ頂けたでしょうか?

遂にオリジナル主人公の覚醒能力を書けました。
ご覧の通り、覚醒能力は取り戻した記憶を媒介に、蒼の力を使ってブレイブルー世界と幻想郷を繋ぎ合わせ、ショウ自身に一時的に媒介にした記憶の人物のドライブ能力をコピーする力です。
フラン戦の時、フランがソウルイーターの能力を使えたのは、一部は未だ明かせませんが、この蒼の欠片の力が原因の一つです。
これだとショウが強すぎじゃないかと思われますが、他の東方キャラにブレイブルー世界との接点をつくったり、ストーリーに絡ませる都合上、この能力だと書きやすいため、このような能力としました。(タグに主人公最強とあるしいいよね?)

では、仕事の合間に細々と更新していきますが、当初の予定と話の流れを変えようかなと思っています。
と、言うのも、入院している間や、就職活動中にまた幾つかのサイドストーリーやギャグシナリオの案を思い付いたので、その話を随所に入れられるように構成を変更しようかなと思います。

では、長期間更新できず申し訳ありませんでした。
また、ゆっくり更新していきますので長い目で見ていただけると嬉しいです。
ありがとうございました。

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