蒼が導く幻想の旅路~東方蒼幻録~   作:wingurd

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お待たせしてしまい申し訳ありません。
更新まで約3ヶ月、仕事の都合もあり時間がかかってしまいました。

対紫戦前半です。
今回で、ショウのラストスペルカード以外の全ての技、スペルカードが判明します。
詳細は異変パート終了後に資料集に載せますのでお待ち下さい。

今回の話の最後にブレイブルーキャラがショウの記憶以外で初登場しますが、正確には登場ではなく介入ですので、初めて幻想入りしてブレイブルーキャラが登場するのはもう少し先になります。

では、前書きはここまでにして本編を始めます。
お楽しみ下さい。


幻蒼異変 第一章 《conviction resonance》part8

紅魔館の庭から響く轟音。

ショウと紫の二人による戦闘は苛烈を極めていた。

 

だが、内容は一方的なものだった。

怒号のような咆哮をあげながら攻撃を繰り返すショウに対して、怯えたような顔をしつつ攻撃を避け続ける紫。

まさに蹂躙だった。

 

ショウ

「くたばれ!!『バニッシュ・ゲイザー』!!」

 

「く!?当たるわけには!」

 

ショウの左手から放たれた黒いレーザーを間一髪で回避する紫。

その額には汗がにじむ。

 

ショウ

「逃がすか!闇牙『キリングラッシュファング』!!」

 

回避する紫を逃がさないため、追尾する特性のスペルを発動する。

 

「ちっ!次から次へと!調子に乗らないで!罔両『八雲紫の神隠し』!」

 

対する紫もスペルを発動。

発動と同時に紫の姿が歪み、ショウの眼前から姿を消した。

 

ショウ

「・・・・・・子供騙しだな。」

 

ぼそりと呟くショウ。

次の瞬間、ショウの隣の空間が歪み、歪みから大量の弾幕が放たれる。

はずだった・・・

 

ショウ

「見えてんだよ!『レイジングアベンジャー』!!『クライシスアサルト』!!落ちやがれ !!」

 

叫ぶと同時に、ショウは上に跳躍しながら剣を振り抜く。

振り抜いた瞬間、剣の周囲から強烈な衝撃波が発生し、弾幕と共に空間から弾き飛ばされる紫。

更に、弾き飛ばされた紫に対し、体を反転させ蹴りを2発打ち込んだ後、魔素を纏わせた肘を打ち込み下に弾き飛ばす。

 

「な!?」

 

弾き飛ばされた紫は、体勢を建て直しながら起こった事実が信じられないと言った顔をする。

本来なら、接近したショウの虚を突き、大量の弾幕を浴びせるはずだったが、直後にショウが放った衝撃波が弾幕だけでなく、スペルの能力で隠れていたはずの自分すらも弾き飛ばすなど、紫はまったく想像していなかった。

しかしショウの攻撃は、紫に思考を巡らせる時間を与えない。

 

ショウ

「喰いちぎれ!闇牙!!」

 

驚愕していた紫の周囲には、先程紫がスペルを発動した後、対象を見失い霧に形を変えていたスペルが再度弾幕を形成して肉薄していた。

 

「この・・・!境符『四重結界』!」

 

咄嗟に結界を張るスペルを使い、接近していた弾幕を防ぐ。

 

ショウ

「・・・空間転移に結界、か。存外器用だな?殺しきるには多少の工夫は必要になるか。」

 

攻撃が防がれたにも関わらず、ショウの思考は冷静だった。

ただ、その冷静な思考は、必ず相手を殺す必殺の意思によるもの。

殺意だけは欠片も消えていなかった。

だがショウは、思考の片隅に僅かな違和感を感じていた。

 

ショウ

(だが・・・、何だ?あの女がスペルで姿を消したのを見てから、何かが頭に引っ掛かる・・・。無くした記憶に関係しているのか?まあ、今は関係ない。こいつを始末してから、改めて考えるか。)

 

自身が感じている違和感が何なのかはわからない。

だが今は、ただ目の前にいる敵を殺すことしか頭にはない。

違和感を振り払い、再び剣を構える。

 

ショウ

「時間はかかるが仕方ないか。少しずつ、なぶり殺しにしてやる!」

 

魔素を放出させながら、再び紫に切りかかるショウ。

その姿は正に、復讐に燃える鬼だった。

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

~紅魔館 客人用寝室(現在は永琳の処置室)~

 

永琳

「・・・ふう。これで良いわね。粗方終わったわよ。」

 

魔理沙

「助かったぜ、永琳。しかし、紫の奴!一体どういうつもりだ!?霊夢達にまで攻撃を加えるなんて!」

 

フラン

「お兄ちゃん・・・大丈夫かな?」

 

紫の攻撃で気絶していた3人の応急処置が永琳によって行われていたが、たった今終わった。

一安心した魔理沙は紫の暴挙に憤慨し、フランは残っているショウを心配している。

そんな二人を見ていた永琳は、庭で起きた事を聞いて、処置をしながら考えていた事を魔理沙達に話し始めた。

 

永琳

「・・・恐らくで良いなら、私の見解を話すけど、構わないかしら?」

 

魔理沙

「・・・ああ。頼む。」

 

永琳

「多分だけど、ショウの能力を危険視してるんじゃないかしら?彼の力は知ってるでしょ?」

 

魔理沙

「確かに知ってるけどさ、それがどうしたんだぜ?」

 

永琳

「・・・フランちゃんを昨日診察したけど、精神疲労が原因で倒れたのは間違いないわ。だけど、一部肉体の治療も施したのよ。でも、外傷はほとんどなかった。流石に吸血鬼だけあって再生能力が高く、処置する必要は無かったのよ。」

 

魔理沙

「まあ、そうだよな。・・・あれ?おかしくないか?肉体の治療もしたんだよな?なら、何を治療したんだ?」

 

永琳が言うには、フランの治療の大半は精神疲労回復に費やされたが、一部肉体の治療も施したとのこと。

しかし、それだと先程の永琳の言葉に矛盾が生じる。

外傷がない人物に対して施した肉体の治療とは何なのか尋ねる魔理沙。

魔理沙の問いに対して、一呼吸置いてから永琳は口を開いた。

 

永琳

「・・・細胞の劣化よ。吸血鬼の寿命じゃあり得ないほどに劣化していた。まあ、吸血鬼だったからそれほど影響は無く、治療は簡単だったけど。」

 

魔理沙

「は?細胞の・・・劣化だって?」

 

永琳

「件の彼から聞いた話を考えると、彼やフランちゃんが使っていた魔素は、かなり危険性が高い代物だと推察出来る。なら、妖怪の賢者が命を狙う理由は充分にあると思うわよ?その魔素を彼は自在にコントロール出来る。だったら、良からぬ事に使う可能性はゼロじゃないと言える。」

 

魔理沙

「ふざけんな!!ショウはそんな奴じゃない!私やアリス、レミリアやフランだってあいつは助けた!私やアリスならまだ付き合いがあるから分かるけど、レミリアやフランは最初は敵として出会ったんだ!それでもあいつは助けた!あんなにボロボロになってまでだ!そんな奴が、殺されなきゃならないような悪い奴な訳があるかよ!」

 

永琳の考えは、ショウがこの世界に害をなす存在だから狙われたといったもの。

その考えに対し、魔理沙は怒りを爆発させて否定した。

だが、永琳は続けて話す。

 

永琳

「ええ。私も同じ意見よ。彼は絶対に違うと断言できる。でもね?彼と同じ力を使ったフランちゃんに細胞の劣化が発生したのは事実。魔素の危険性は否定されていないのよ。ならば、悲劇が起こる前に元凶を消そうとする行動をとるのも理解できる。彼女のように、この世界に深い愛情を持っている人物なら尚更よ。」

 

魔理沙

「―――くそ!!早く紫を止めないと!!ショウがそんな奴じゃないって教えれば――」

 

永琳

「・・・・・・無理よ。聞く耳を持ちはしないわ。」

 

魔理沙

「な!?どうして!?」

 

永琳

「わからない?話を聞く気があるなら、霊夢やレミリア達にいきなり攻撃を加えたりはしないわ。恐らく、彼が戦っているところを一部見ているはずよ。なら、彼の性格が正しいものであるのはわかるはず。それなのに、実力行使に出たなら、仮に意図せずとも、偶然、この世界にとって致命的な出来事が発生しないとは断言できないと考えていると思う。事実彼は、自分の能力は一歩間違えると、自分自身が災厄になる可能性があると言っていた。これはもう、貴方一人の意見で変わる領域の話じゃないのよ。」

 

永琳の意見に言葉を失う魔理沙。

その意見にはしっかりと筋が通っている。

だからこそ、納得できないにも関わらず沈黙するしかなかった。

 

フラン

「・・・そんなの関係ないよ。」

 

魔理沙

「え?」

 

自分に出来ることはないと諦めかけていた魔理沙の耳に、フランの声が届く。

 

フラン

「それが正しいなら、私は殺されなきゃいけなかった。お姉様は私を見捨てずにいてくれたし、お兄ちゃんは私を救ってくれた。私は暴走していて、周りの人をたくさん傷つけたのに。だったら、もしかしたら危ないからって殺しちゃうなんておかしいよ!」

 

魔理沙

「フラン・・・。」

 

フラン

「お兄ちゃんが、死んだ方がいい人なはずない!私は、死んで欲しくない!一緒にいて欲しいんだ!」

 

そう叫んだフランは、魔理沙や永琳の制止を聞かず部屋を飛び出した。

恐らく、ショウの所へ向かったのだろう。

 

魔理沙

「・・・私も行く。フランの言うとおりだ。客観的な意見なんて私には関係ない。私もショウには生きていて欲しい。それだけで、助けに行く理由には充分だぜ!永琳!霊夢達を頼んだぜ!」

 

魔理沙もフランの後を追って部屋を出ていった。

残った永琳は、未だベッドに寝ている霊夢達に視線を向け、一人呟く。

 

永琳

「・・・改めて思えば、本当に不思議な人ね。こっちの世界に来てから全然日が経ってないのに、もうあそこまで信頼されてるなんて。彼のような外来人は、今まで一人もいなかった。フフ、興味深いわね・・・。さて!私は私に出来ることをしましょうか!」

 

気合いを入れ直した永琳は、治療を再開した。

淀みなく治療を施していく。

しかしこのとき、永琳は気付かなかった。

本来ならまだ寝ていたはずの人物が、たった一人だけいなくなっていたのを・・・

 

???

「・・・・・・ショウ。死なせは、しない・・・!」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

ショウ

「そこだ!『ディザスターストリーム』!!」

 

「させないわ!境符『二次元と三次元の境界』!!」

 

ショウが地面に剣を突き刺すとショウの周囲から嵐のように渦巻いた魔素が発生し、紫に襲いかかる。

ショウの技が紫に肉薄すれば、紫も自分のスペルで周囲を凪ぎ払い、スペルの弾幕をショウへと飛ばす。

 

ショウ

「当たるかよ!飛翔撃『アカシックブレイバー』!!」

 

ショウは転移型スペルでその場から消える。

 

「な!?私と同じ能力を使えるの!?」

 

ショウ

(転移!弾幕!次の座標認識!奴の周囲を弾幕で埋め尽くす!)

 

スペルの能力で空間転移を繰り返し、その都度弾幕を放つ。

瞬く間に紫の周囲を弾幕で埋め尽くした。

 

「く!なめるな!境界『魅力的な四重結界』」

 

周囲から飛来する弾幕をスペルで防ぐ。

戦いは一進一退の様相を見せているが、徐々にショウが押していく展開になり始めた。

怒涛の連続攻撃で紫に反撃の隙を与えない。

 

ショウ

「そろそろ仕留めるか。切り刻め!葬刃『クリムゾンクロス』!!」

 

「!?」

 

頃合いだと見たショウは、懐からカードを取り出し宣言する。

すると、空中に無数の赤い十字架のような弾幕が現れたが、特に動きもせず滞空したままだった。

 

「・・・?なにも、来ない?」

 

紫は発動されたスペルに対し身構えていたが、特に何も起こらないことに疑問を浮かべていた。

しかし、油断していた次の瞬間―――

 

シュン

 

「!?不味い!!」

 

風切り音が耳に届くと同時に頭を下げる。

すると、先程まであった頭の位置を何かが凄まじい速度で通り過ぎた。

 

ショウ

「よく避けたな。だが・・・もう遅い。これでチェックメイトだ、八雲紫。」

 

「!?まさか、貴方の狙いは!?」

 

ショウのスペルによる赤い十字架のような弾幕が紫の周囲を囲んでおり、そこから無数の赤いレーザーが大量に放たれる。

速度は凄まじく、避けられる隙間もほぼない。

加えて、ショウ自らも紫に接近する。

 

ショウ

「これで逃げ場はない。お前は直接ぶった切る!!術式・・・解放!黒獣解放『リベレイト・ザ・ビースト』!!」

 

接近するショウはオーバードライブを発動。

体から大量に魔素を放出し、それを剣へ集約していく。

更に、周囲には赤いレーザーが飛び交い逃げ道を塞いでいた。

回避は不可能に近い状態であり、状況はショウの言うとおり詰んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただしそれは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相手が並の相手であった場合に限ることだった・・・

 

「・・・ようやく、餌に掛かったわね。待っていたのよ?あなたが直接、私に向かってくる瞬間を・・・ね!!」

 

紫から発せられた言葉がショウの耳に届くと同時に、紫の周囲の空間が歪む。

その瞬間、スペルのレーザーが一斉に紫へと向かっていった。

 

ショウ

「これは・・・?このスペルにホーミング機能はない筈だ。何で、向きを変えて・・・?」

 

「さあ・・・逆チェックメイトよ。」

 

向きを変えたレーザーは一直線に紫へ向かうが、紫には一発も当たっていない。

何かに阻まれているように紫の目の前で消滅している。

そして・・・

 

シュン

 

ショウ

「!?」

 

状況に困惑していたショウだが、直後に後方から聞こえる風切り音に反応し、横へ飛ぶ。

そこには、先程まで紫に向かっていたのと同じ、『赤いレーザー』がショウの横を通過していた。

 

ショウ

「そんな馬鹿な!?これは、俺のスペルの!?」

 

間一髪で回避したショウの周囲には、先程までの紫の状態を再現するかのように赤いレーザーが飛び交い、ショウの逃げ道を塞いでいた。

 

ショウ

「くそ!!八雲紫!何をしやがった!!」

 

「フフ・・・改めて自己紹介をしておこうかしら?私は八雲紫。『境界を操る程度の能力』を持つスキマ妖怪よ。さて、種明かしをしてあげる。貴方のスペルの境界を操作し私の支配下に置いて、私に向かってくるように細工したの。後は、それを私のスキマを通して貴方に向けるように配置し周囲を囲んだだけよ。何も難しいことはしていないわ。そのまま貴方に向けても良いんだけど、貴方なら射線から軌道を読み回避しそうだからね。」

 

ショウ

「俺のスペルを・・・支配下に置いた、だと?」

 

紫はショウのスペルを逆に支配し、ショウの逃げ道を塞いでいた。

その事実に驚愕していたショウに紫から非情な宣告が告げられる。

 

「さあ、フィナーレよ。紫奥義『弾幕結界』。周囲を囲むレーザーに加えて、四方八方から飛来する大量の弾幕。逃げることも耐えることも不可能よ。」

 

ショウに向かって放たれる膨大とも言える弾幕。

逃げ道を塞がれ、周囲を埋め尽くしつつ向かってくる弾幕は、ショウに対して告げられる死刑宣告そのものだった。

 

ショウ

「クソ・・・が!こんな、所で・・・俺は!!!」

 

ショウは憤怒に燃えた目を紫へと向けているが、当の紫は感情を映さない瞳をショウに向け、ゆっくりと最後の言葉を告げる。

 

「では、悲運な外来人よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《サヨウナラ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

「ショウ!!!」

 

???

「お兄ちゃん!!!」

 

ショウ

「!?こ、この声は!?魔理沙と、フランか!?」

 

魔理沙

「させて、たまるか!!」

 

フラン

「お兄ちゃんは、殺させない!!」

 

魔理沙

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

フラン

「禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

ショウの耳に自分を呼ぶ声が届く。

ショウの視界は変わらず弾幕に埋め尽くされていたが、視界の端に虹色と深紅の閃光が煌めく。

同時に激しい炸裂音が響いた。

しかし、ショウの視界を埋め尽くす弾幕に変化はない。

 

魔理沙

「くそ!!多少は弾き飛ばせるけど、それ以上に弾幕が増える速度が速すぎる!このままじゃショウが!」

 

フラン

「そんな・・・お兄ちゃん!!逃げて!!」

 

ショウ

「魔理沙、フラン・・・。くそ!!諦めて・・・たまるか!!」

 

助けに来た二人だったが、事態が変わらない現実に悲しみの声を漏らす。

その声を聞き、ショウが咆哮をあげる。

そして、ショウは腕に大きな傷をつけ『左手』に手をかざした。

瞬く間にショウの左手が黒く濁っていく。

 

ショウ

「『左腕部限定・全拘束解放』!!『魔素収束・掌握術式構築展開』!!『コード―クライムアーク・超越解放《アンリミテッドブレイズ》』!!『目標捕捉・呀獣招来』!!諦めてたまるか!俺はまだ、何も取り戻していない!!!」

 

詠唱を終えたショウは、眼前に広がる弾幕に黒い左手をかざしながら疾走する。

そして・・・

 

ショウ

「命が消える最後の時まで、俺は・・・立ち止まるわけにはいかないんだ!!『カース・オブ・インフィニティ』!!」

 

かざした左手からどす黒い獣が無数に現れ、周囲を埋め尽くす弾幕に牙を向く。

 

ショウ

「全てを・・・喰らい尽くせえぇぇぇ!!!」

 

眼前を埋め尽くしていた弾幕が瞬く間に消されていく。

そして、遂に獣の牙が弾幕の檻を貫いた。

 

ショウ

「開いた!!これで―――」

 

「逃げられると思う?悪いけど、それはないわ。廃線『ぶらり廃駅下車の旅』」

 

ショウ

「な!?くそ!?」

 

ショウの正面にはレミリアや咲夜に使われたスペルが迫っていた。

咄嗟に反応し、持っていた剣で受け止めたが、先程の技で力を振り絞っていたため、受け止めきれず再び弾幕の檻の中に弾き飛ばされる。

 

ショウ

「ぐあ!?ぐっ・・・ちく、しょう・・・!」

 

開いた筈の視界は再び弾幕に埋め尽くされている。

もう、打つ手がない・・・

 

ショウ

(俺は・・・ここまで、なのか?もう、打つ手が・・・ない。)

 

ショウの体から力が抜けていく。

 

ショウ

(・・・ラグナ・・・)

 

不意にショウは、かつての戦友の事を思い出す。

 

ショウ

(・・・お前は・・・こんな絶望でも、諦めなかったのか?)

 

全世界から敵視される史上最高額の賞金首として、たった一人で戦い続けた戦友。

ラグナ・ザ・ブラッドエッジの人生は、戦いと共にある物だった。

なぜ彼が、過酷な戦いの中でいつまでも諦めずに戦えたのだろうか?

何が、彼を支えていたのだろうか?

共にいた時間はそれほど長くはないが、彼の心の強さは、一種の羨望すら覚える程の物であった。

 

ショウ

(ほんの少しで良い・・・お前の強さを、覚悟を!・・・俺に・・・貸してくれ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???

《・・・絶対に諦めないで》

 

ショウ

(!?・・・な、なんだ!?)

 

ショウの頭の中に誰かの声が響く。

それは、慈愛に満ちた優しい声だった。

 

???

《最後の最後まで人として、ただの人間としてあがきなさい。醜くても良い、みっともなくても良いから・・・。》

 

ショウ

(・・・この声、聞いたことがあるような・・・)

 

???

《・・・頑張って・・・ラグナ・・・。》

 

ショウ

(ラグ、ナ・・・?俺じゃない・・・。これは、ラグナの・・・記憶か?)

 

ショウの頭の中に響く声は自身ではなく、ラグナに向けられた言葉だった。

 

ショウ

(・・・これが、あいつを支えていた言葉、なのか?)

 

ラグナに向けられた言葉ではあったが、その言葉は自分にも向けられているように感じるほどリアリティーを含んでいた。

そして、ショウの頭の中には自分に向けて手を伸ばし、頬に触れる少女の姿が映る。

 

ショウ

(!?まさ、か・・・)

 

その姿を見たショウの思考は加速する。

頭の中に見えた映像は、ショウの内から眠っていた記憶を呼び起こした。

 

ショウ

(思い・・・出した・・・。彼女は・・・。)

 

映像の中で自身を見つめる少女に向かって、その名を呼ぶ。

 

ショウ

「・・・レイ、チェル・・・。」

 

少女の名を呼んだ瞬間、ショウの視界は白く霞んでいき、ショウの意識が戻ると、ショウは周囲に何もない広大な白の空間に立っていた。

 

ショウ

(な、何だここは・・・?何も、ない・・・。)

 

自身の状況を把握できていないショウの背後から声が届く。

その声は、先程までと同じ声だったが、一つだけ違うことがあった。

 

???

「あら・・・?ようやく私の事を思い出したようね。まったく、私の事を忘れるなんて、大罪に値するわよ?」

 

込められていた感情は、慈愛ではなく、皮肉だった。

 

ショウ

「・・・悪かったよ。それと、久しぶり、かな?・・・レイチェル。」

 

その皮肉たっぷりの言葉に対しショウの抱いた感情は、言い様のない脱力感と、安心感だった。

 

レイチェル

「・・・ええ、そうね。お久しぶり、ショウ。」

 

新たな記憶を取り戻したショウ。

そして、この少女との邂逅がショウにもたらすものとは・・・

 

to be continue




異変第8パート終了です。
と、いうわけで介入したブレイブルーキャラは、みんな大好き姫様です。
尚、資料集で詳細に語りますが、各ブレイブルーキャラの記憶復元には東方キャラとの邂逅が必須と最初の頃に説明しました。
簡単に説明すると、今回レイチェル・アルカードの記憶復元に関わったキャラは、

1,レミリア&フラン(吸血鬼)

2,アリスの人形(ゴスロリ)

3,霊夢&紫(結界&空間転移)

です。

各東方キャラが持っている特徴、能力等が対応しているブレイブルーキャラの特徴と合致していて、それが一定数組合わさると解禁されます。
今後資料集を更新した際、解放条件の特徴は伏せたまま、解放条件になっている東方キャラの名前は載せておきます。
暇だったら、どのキャラが誰の解放条件か想像してみてくださると嬉しいです。

では、長々と駄文に付き合ってくださりありがとうございました。
今後も不定期に更新していきますので、よろしかったら続きを読んでいただけると作者冥利につきます。

かなりの時間を必要としますが、完結は必ずさせますので気長にお付き合いください。
ありがとうございました。

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