Fate/どうでしょう?   作:頭が米騒動

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ぐだぐだ本能寺復刻おめ。今回はおき太とノッブ回。


人間の夢の跡ですね……

  ───How do you like fate?───

 

2017年 某日 京都駅。

 

「いやぁ、着いた着いた、京都駅」

 

京都駅に着いたカルデアご一行。

京都駅前は観光客でごった返す中、カルデアの一行は目立っていた。

イケメンと美人の率の高さ。しかも、本格的なカメラを担いでいるゲオルギウスのせいで外国のTVか、と勘違いされる始末。

ノッブこと織田信長とカルデアのマスター、藤丸立香は遠い目をしていた。

 

「いやぁ、目立っとりますな……」

 

「うむ、儂とマスターはともかく、この色物の多さよ……」

 

「あれ?沖田さんも日本人ですよっ?!」

 

「「いや、髪が桜色の日本人っていませんし………」」

 

ノッブと藤丸は沖田から目を反らす。

 

「それスッゴい、今さらじゃないですかーっ?!コフッ?!」

 

「医者ーっ?!」

 

血を吹いたおき太に周りがどよめく。

 

 

 

「その、今さらなんですが、わたしたち魔術の秘匿って大丈夫なんでしょうか?」

 

「今さら無理じゃね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところかわって京都駅地下鉄地下街の珈琲屋。

 

「しかし、京の都も様変りしましたね……何度か来たことがありますが、まさか地下に商店が出来るとは」

 

「確かに。空を見ることは出来ませんが、このように菓子も食べれて服も見れますからねぇ」

 

「っていうか小太郎、京都来たことあるんだ?」

 

「ええ、生前にですが。そう言えば、前田利益殿も当時は京住まいでしたね」

 

「ん?慶次郎の奴がどうかしたのか?」

 

話を聞いていたノッブが首を傾げる。誰か分からない藤丸は首を傾げる。

 

「ああ、前田慶次と言えば主殿はわかりますか?前田殿は信長殿の部下の子供で、前田殿はある時前田家を出奔されて京で浪人をされていたんです」

 

「ほー、利家も苦労したじゃろうなー。あれは天に愛された男じゃったし」

 

しみじみと珈琲を飲むノッブ。

 

「へぇ、あの前田慶次かぁ」

 

二人の話に藤丸は珈琲を飲みながら感心する。

流石、戦国時代を生きてきた二人の話には実感が籠っている。

歴史愛好家や学者たちに取っては垂涎の話ではないだろうか?

 

「はー、前田慶次ですかぁ、槍の名手とは聞いたことはありますがノッブが誉めるってそれほどですか」

 

「あれこそ天賦の才と言えたろうよ。武にしかり教養にしかり。いや、違うの。あ奴の生き方こそ天に愛されていた。自由に生き、自由に死ぬ。言葉にすれば簡単ではあるが生きていれば何かしら柵があり実践するのは難しい」

 

儂じゃってそうじゃったからの、と言葉を紡ぐ。

 

「戦であれば誰もが死に物狂いで戦う。銃弾や弓矢が飛び交い、足軽達が槍を振るう。将は策に裏切り何でもありよ。そんな激動の時代を生き抜くというのは生半可なものではない」

 

「ええ、あの方は最終的に上杉家に仕官しますが、長谷堂城の戦いでの撤退戦で殿を務め見事に生き残っています。そこからは米沢で和歌を書きながら悠々自適に過ごされたと」

 

「ふ、あ奴らしい」

 

小太郎の言葉に少しだけしんみりしたノッブ。

すると目を細めて藤丸を見たノッブは優しく微笑み、藤丸の額に指をおく。

 

「話をしていて気づいたが、少しだけあ奴にマスターは似とるかもしれんの。世界の危機という規模ではないが、あれは戦においても人と人の繋がりは忘れん男じゃった。敵であろうと味方であろうとも」

 

いつもと違うノッブに少しドキッとしてしまう藤丸。

 

「まぁ、まだあ奴に比べると漢振りが足りんがのっ!」

 

「………はいはい」

 

笑うノッブの言葉に苦笑しながら藤丸は相槌を返す。

少しだけ、少しだけではあるが藤丸は織田信長という人物が見えたような気がした。

日の本という国に革新を求めた魔王。比叡山を焼き討ち、数多の大名を倒し天下統一を目前にして腹心の部下に討たれた彼女。

彼女は未来を見据えていただけだ。それに周りがついて行けなかった。

だけど彼女は人を蔑ろにしていた訳ではなかったのだろう。それが周りに伝わりにくかっただけで。

 

「あと因みにこれはテストに出るからのー」

 

「何のっ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

珈琲を飲み、昼食にしようと地下街を探索する一行。

 

「何処でご飯食べようか?」

 

「エミヤ先輩曰く、京都駅隣のデパートのデパ地下も一見の価値ありとおっしゃられていました」

 

「………彼は一体何の英霊なんでしょうか?」

 

マシュの言葉に藤丸の後ろにピトッとくっついている静謐のハサンが言葉を漏らす。

 

「………もうホントにわかんねぇな」

 

ハサンの言葉に何も言えない藤丸。

 

「しっかし、デパ地下かぁ、買わないって思いつつも何かスッゴい買いそうな予感するんだよなぁ……」

 

「ああ、何となくわかるよ、それは。何なんだろうね、デパ地下という響きだけで旨そうな予感がするもんね……恐らく買っちゃうよね」

 

ダヴィンチちゃんも藤丸の言葉に頷く。

 

「試食ありますって食べた時に、予想外の旨さと食べたら買わなきゃいけないっていう、なんだろ、あの感情」

 

「わかる、すっごいわかる。あと勧めてくれた人の為に買いたいなぁっていう変な心理働くよね……」

 

何故か藤丸とダヴィンチちゃんのデパ地下あるあるが咲き乱れる。

 

「あの……ご飯どうしましょう?」

 

「「あ……」」

 

盛り上がっていた二人は冷静になり、どうしよっかという空気になる。

 

「うーん、適当な洋食屋さん入る?」

 

「そうしましょうか…………」

 

結局は、近くにあった洋食屋さんに入り、洋食を食べることに。

ハサンに関しては出身が中東地方もあり、食文化と宗教の違いによって食べれるものが限られてくる。

 

「申し訳ありません……」

 

「いや、しょうがないよ。宗教とか大変だからさ」

 

ハサンの食べれるものを店員と話ながら決めていく。

頬を染めて、藤丸の隣にピトッとくっつく様に店員が青筋を浮かべていたのはしょうがないと思う。

それに膨れるマシュに苦笑いを浮かべる小太郎。

 

「しっかし、南蛮の昼食とは日本の食文化も変わったものじゃの」

 

「戦後の日本はアメリカの肉食主義とかパン食にさらされてしまった感はあるけど、そこから日本らしさは取り戻しつつあるとは思うよ」

 

「と、言いますと?」

 

「いや、洋食ってさ。確かに西洋料理のことでもあるんだけど日本で独自に発展した西洋風の料理を指す場合もあるんだよね」

 

藤丸がお冷やを飲みながらおき太に説明する。

 

「独自に発展した、ですか?」

 

「例えば、ナポリタンとか。これ作ったの日本人でナポリタンとか謳っているけどイタリアにないらしいし」

 

「え、そうなんですか?ナポリタンって書いてあるからイタリアのものじゃないんですか」  

 

「皆さん、勘違いしやすいのかと。わたしも先輩がナポリタンを頼まれているのを見て、えっ?と思いましたし」

 

「エミヤが日本の英霊じゃなきゃわからなかったろうなー……」

 

苦笑しながらお冷やをすする藤丸。

 

「ふむ、新たな物に興味がなければ何事も発展はせぬよ。しかし、日本人の新しい物好きも今に始まったことじゃないしのー」

 

「ノッブはそのパイオニアですもんね……」

 

料理を待ちながらノッブは語る。

 

「お待たせしましたー」

 

料理が運ばれてくれば全員が料理に手を着けながら話を進めていく。

 

「そう言えば、京の都が衰退したとされる理由を主殿はご存知ですか?」

 

「ん?どういうこと?」

 

「京都には巨椋池という場所があるんですが時の太閤秀吉が治水整備で弄くったせいで風水的に力の流れが大阪に行ったという説があります。明治頃に干拓地になり今は地名しか残ってません」

 

「へ、へぇ……」

 

「風水、ですか……確か江戸も風水都市と聞いていますが本当なのでしょうか?」

 

マシュが料理を食べながら小太郎に聞いてくる。

 

「確かに江戸城を中心に力が集まるように作られた都市と言われていますね。発案者は南光坊天海と言われる天台宗の僧です」

 

何か授業みたいだなぁ、とナポリタンをすする藤丸。

小太郎はマシュに当時の戦国時代とカルデアで調べた情報を吟味し教えている。

流石、忍者というべきか情報のインプットもアウトプットも上手かった。

 

「武蔵ちゃんも江戸時代の人間だから詳しいかな?」

 

ふと藤丸は気になったことを呟く。

 

「武蔵殿ですか………あの方の場合は少しややこしいかと……」

 

「いや、その前にあの宮本武蔵が女性という点について沖田さんは言及したいんですが……」

 

「儂が言える立場ではないが、お主が言うなし」

 

「アーサー王が女性の点で今更な話ではあるよ………私だってまさかこう言うキャラになるとは本人(レオナルド・ダ・ヴィンチ)すら想像出来なかっただろうね」

 

ダヴィンチちゃんのメタ発言に全員が顔を背ける。

 

「は、話を変えましょうか?」

 

「そ、そうですね」

 

怪しくなった空気を変えようとマシュが話を変えようとする。

 

「あー、武蔵ちゃんって結構ビックネームだけど他に有名な剣豪っていたの?」

 

「儂の生きていた頃じゃと塚原卜伝や上泉信綱かの」

 

「新撰組の皆は有名ですよー。ですが、芹沢だけはゆるしません。薩長連中も同じく」

 

目がキラッと光るおき太。

 

「ホントにお主薩長嫌いなんじゃな………」

 

「ええ、見つけたら斎藤さんのように悪、即、斬です!」

 

藤丸は言えなかった。島津といえば日本有数の大企業になっていることを藤丸は言えなかった。

言ったらどうなることやら……

 

「みんな強かったですよー。私ほどではないですが縮地はみんな出来てましたし。斎藤さんなんて一突きで相手の上半身が吹っ飛ぶ程でしたから」

 

「何で、お主ら戊辰戦争負けたんじゃ……」

 

「そこは多勢に無勢ですよね………私としては最後まで参加したかったんですが」

 

少しだけ寂しそうなおき太。

新撰組の天才剣士、沖田総司の願いは「最後まで戦い抜くこと」。

彼女の願いは藤丸の元で叶えられただろうか?

藤丸は彼女に問いかける。

 

「おき太はさ。オレの元で満足してる?」

 

藤丸の問いにおき太は考える。

自らの剣は主義主張なぞ知ったことではない。単なる殺人剣であるとおき太は思っている。

それを物怖じもせず指示し、自らの願いを叶えようとしてくれる彼には好意を持っていた。満足しないわけがない。

 

「そうですねぇ、新撰組の皆がいないのは寂しいですが………ええ、満足しています。生前は誰かの為に剣を振るうことなんて考えなかった私ですが、貴方の為に振るうのは悪くないと思っています」

 

他のサーヴァントもそうではないだろうかとおき太は思う。彼のお蔭で生前叶えられなかったことが叶えられた者がいるのだ。アーサー王と語り合えたモードレットしかり。

 

願いを叶えてくれるだけではない。彼はちゃんと自分を見てくれている。だからだろう自分が着いていこうと思えるのは。

 

おき太の屈託のない笑みに藤丸も笑みを返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントにこのマスター、人たらしじゃわ………かくいう儂も引き込まれた一人か。何とも因果なもんじゃなぁ……」

 

おき太の笑みを見た織田信長の呟きは誰に聞かれることなく京都の町を流れていった。

 

 

 




実は去年かおとどしの福袋でおき太を引いていた………。

あと感想の返信が十分に出来ず申し訳ない。感想はありがたく読まして頂いています。リアルに忙しくて感想まで頭が回らないのよさー。

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