よーし、生きて帰ろう!
───How do you like fate?───
場所はアメリカ西海岸はシアトル。時代は1783年。アメリカは独立戦争の真っ最中。
「おはようございま―す」
「おはようございます、先輩」
「うーっす、大将」
「お、おう、おはよう」
そんな中で軽い声が響く。それぞれライダースーツに着替えた藤丸、マシュ、金時、モーさんのカルデアの四人。
後ろには黒いワンボックスカーが止まっており、何故かつけ髭を着けたダヴィンチちゃん。カメラを回しているゲオルギウス先生がいた。
「えー、只今、朝の5時半です。動物は一匹も出ません」
「そりゃあ、ガンガンにエンジン入れて音が出てってからよ。そりゃあ、動物も出ねぇよ」
呆れたように言うライダースーツに身を纏った坂田金時。
それを無視して藤丸は今回の旅の主旨を発表する。
「今回の旅の主旨を発表しますっ!!
ここシアトルからホワイトハウスに向かい、そこにいるクー・フーリンにバイクで特攻かましますっ!!以上!!」
オーっと力のない拍手を藤丸以外の三人はする。
「マスター、ルートはどうすんだよー?」
すると藤丸はアメリカ大陸の地図を出すと指を指して行き先を示す。
「先ずはシアトルを出て、南下してサンフランシスコを目指します。
そこから東に向かいワシントンDCのホワイトハウスに向かうと。
本当なら現代のアメリカでしたかったよ!マリナーズ見たかったよ!でもな、ノリ的に独立戦争時の方がいいかなって!」
「俺は現代のアメリカ行きたかったけどよー、ニューヨークヤンキースを見たかったぜ……」
金時が溜め息をつく。マシュが地図を見て首を傾げている。
「独立戦争時ってアメリカは何があるんでしょうか?」
「ちょうど83年が終戦だろ?パリ条約が決まったのもこれぐらいじゃなかったっけ?」
「モードレットさん、詳しいですね……」
「調べた。なぁなぁ、マスター、行くならイギリスにしないか。
オレの故郷だし。スコッチ飲みに行こうぜ」
「オレとマシュは未成年者な。まぁ、それは次行こうか。
イギリス料理まずいまずいって言われるけど美味しいものは美味しいからな。だが、ウナギのゼリー寄せ、てめえはダメだ」
「調理の仕方の問題だとわたしは思うんですよね……一度、エミヤ氏がイギリス人の名誉の為に、あれは日本人には合わないと言っておられましたが」
「俺っちは本場のイギリス人も不味いって言ってたの聞いた事あんだけどよ」
「うん、ぷるぷるのゼラチンの中にウナギがごろごろ入っててさ。
口に含んだら、なんか一応香辛料とか入ってるんだろうけど生臭く感じるんだよ……」
藤丸がガタガタと震え始める。そこまで不味かったのか、ウナギのゼリー寄せ。
「なんか、ぐだぐだしてんな。大将早く行こうぜ?兵隊に絡まれたら厄介だぜ?」
「一応、認識阻害はかけてもらってるし大丈夫だとは思うけど。ま、そだね。行こうか」
それぞれがバイクに向かい跨がる。マシュはスーパーカブで半ヘルとゴーグルを被る。藤丸も同じようにヘルメットを被ってゴーグルを装着する。二人のサーヴァントはしていない。
「おお、マスター、なかなかイカしたヘルメットじゃねぇか」
「今回の為に新調した。ゴーグル付けないといけないのが億劫だけどー」
「オレもオフ車にすればよかったかなぁ………この父上の乗ってたバイクもいいしなぁ」
「なんというか、ホントにツーリングですね……まさかのサブミッションが人理救済とか誰も思わないのでは………」
実際にノリがツーリングである。最終的には黒化したクー・フーリンと最古のケルトビッチ、メイヴを倒しにいくのは変わらないのだが……既に彼らはカルデアの連中からしてみれば付け合わせのピクルスのような扱いだった。
現にカルデアスタッフの殆どがポテトチップスを食べ、コーラを飲みながら、ゲオルギウスから送られてくる映像を見ていた。
「んじゃ、出発しまーす。ダヴィンチちゃんもよろしくー」
「はいはーい、いい映像を撮るから任せといてー」
後ろのワンボックスから手を振るダヴィンチちゃん。ゲオルギウスはカメラに自分の声が入らないようにサムズアップで返す。
「先輩、ゲオルギウス先生は一体、何を目指しているんでしょうか……?」
「……カメラマンじゃないかなぁ?ところでマシュは大丈夫?今回、バイクは初めてでしょ?」
「はいっ!講習はちゃんと受けましたし、練習もしましたっ!皆さんの足を引っ張るような事はありませんっ!」
グッと手を握って、意思を表明するマシュ。それに藤丸は頷くとバイクのアクセルを握ってゆっくりと発進していく。
ゆったりとした旅が始まった。
マシュのスーパーカブに全員が合わせてる為に非常にゆっくりである。
「~~~~~♪」
藤丸に至っては歌いながらの走行。まだ1783年のアメリカは舗装が完備されていない。オフロードバイクに乗ってる藤丸はノリノリで走っている。
「大将、ノリノリじゃねぇかよ」
笑いながら、ベアー号を駆る金時。彼のバイクも荒れ地ながら颯爽と走っている。
「なんだこれ、くっそ、走りづれぇ!」
荒れ地を走りづらいバイクで走っているわりに笑いながら走るモードレット。モードレットは後ろのマシュに声をかける。
「おーい、マシュー?大丈夫かー?」
スーパーカブで悪路を走るマシュは、三人からはかなり遅れているものの、何とか三人に着いていっていた。ちなみにマシュの後ろからダヴィンチちゃんたちが着いてきている。
『安心したまえ、マシュは後ろからわたしたちが見ているよ。ランスロット卿からも言われてるしね』
インカムからダヴィンチちゃんの声が聞こえる。
「わかりました、あの穀潰しには後で城ぶつけておきます」
「ランスロット卿ェ……」
カルデアで映像を見ていたランスロットは四つん這いに落ち込んでいた。
周りの景色はゆったりと変わっていく。
マスターと金時、モーさんの三人は時折、道からそれて飛べそうな崖から「ヒャッハーっ!!」と叫びながら飛びおりて遊んだりする。
マシュはそれをお茶を飲みながら見ている。
目玉の化け物、ゲイザーが現れた際は大変だった。
全員が離脱を考えていたのに、藤丸が「ライダーブレイクっ!」と叫びながら突貫。目玉を突き抜けて出てきた時は全員が驚いた。ダヴィンチちゃんだけは爆笑していたが。
そして、事件は起きる。
一行は順調にアメリカを横断していたが、途中で大量の機械兵がが現れた。
流石に大量の機械兵を相手にするのは面倒だったので迂回しようとエンジンを止めて、地図を再確認。
ルートを決めて、全員が出発しようとエンジンをかけてそれぞれがバイクを発進しようした時。
「あれ、エンジンが…………」
カチッカチッとマシュがエンジンをかけようとするがかからない。
三人が出発しているのを見たマシュは焦ってエンジンをかけていく。漸くエンジンがかかったが急いで追い付こうと発車した。だが、バイクは動かない。
「えっ?ひゃぁぁぁぁぁあっ?!」
ニュートラルに入っていたのか、マシュはスロットルを回してギアを慌てて変えたせいか、バイクはウィリーして検討違いの方にいってしまう。
その検討違いの方向には、一人の哀れな機械兵がいた。
機械兵がマシュのバイクに当たり、吹っ飛んだ。
マシュはその時のことをこう語る。
「スロットル回しても動かないから、アレッと思ってギア変えたら、もうウィリーですよ」
時系列?そんなことはわからない。