Fate/どうでしょう?   作:頭が米騒動

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ようやくリップ一枚当りー。


ところで君ら何やってんだ?

 ──How do you like fate?──

 

 

 

 これはカルデア一行が京都に来る前の話である。

 

 カルデア地下格納庫にて()()()()を見上げるマシュ。

 その横には土下座して座っている藤丸、テスラ、エジソンの三人。それを見ていたエレナ女史はため息を吐く。

 

「先輩、これは一体、何なのでしょうか?」

 

 マシュの震える声がカルデアの地下格納庫に響く。

 この地下格納庫は土下座している三人とそれに悪のりしたスタッフたちの手により()()()作られたものである。

 

 マシュの見上げる先にあったのは巨大な鉄の巨人。

 それはどう見ても、異端のキャスター、チャールズ・バベッジを一回り、いや二回りは大きくしたもの。

 

「………バベッジです」

 

「Mr.バベッジがこんなに大きくはなかったはずですよね?」

 

 マシュに睨まれ、三人は視線を反らす。

 

「お、落ち着きたまえ、レディ」

 

「そ、その通りだ。それにこれは科学の発展にとても重要な……」

 

「お二人は黙っていてください」

 

「「アッ、ハイ」」

 

 マシュの剣幕にテスラ、エジソンは黙る。怒る乙女には流石の科学者も弱かった。

 

「で、先輩、どういうことなんですか?」

 

「巨大ロボに乗るのが子供の頃の夢だったんです……」

 

「それで、どうやってこう…………まさか、先輩、聖杯を使ったんですか?!」

 

「既に種火周回でlevel100カンストしております……」

 

「なにやってるんですか、もーっ!」

 

「バベッジがカッコいいから、これは仕方ないんや……」

 

「大事な聖杯を何に使ってるんですかーっ!

 せめて、宝具的にアステリオスさんか、アーラシュさんに使って上げてくださいっ!」

 

「それはいっぱいいる平行世界の俺がやってるし……ねぇ?」

 

 科学者二人と「ねぇー?」と首をかしげる藤丸。

 

「先輩はメタ発言を控えてくださいっ!

 あと科学者組の方は仲良く首を傾げないでくださいっ!」

 

 マシュの剣幕にシュンっとする三人。

 それを見ていたエレナ女史が助け船に入る。

 

「まぁまぁ、科学者なんて夢見るのがデフォルトみたいなもんだから怒ってもしょうがないわよ、マシュ。

 それよりもマシュは仲間外れで寂しかったんだよね?」

 

 辛辣な言葉を言いながら、よしよしとマシュを抱き締めるエレナ女史。うぅ、とエレナ女史に抱き締められ、顔を赤らめるマシュ。藤丸はカシャッとその二人の様子を写真に収める。

 エジソンは「これが……バブみ…っ!」とあの顔で唸っており、テスラはうんうんと頷いていた。

 

 三人への説教が再開されたのはそれは当然と言えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、時は戻り、藤丸が高層ビルから飛び降りたところに戻る。

 

「うぉぉぉおぉぉぉおっ?!?!」

 

 高層ビルからのダイブ。ロープさえないままの落下(バンジー)。このままだと藤丸は潰れたトマトになってしまう。

 落ちる藤丸は声の限り、その名を叫ぶ。

 

「来いっ!!バベッジィーっ!!」

 

 それは空想、夢想、理想の成れの果て。この世界にあり得た一つの可能性。

 それが今、ここに藤丸の手により顕現した。

 

『その言葉、承認した』

 

 地面を割り、出てきたのは巨大な鋼鉄の(かいな)

 藤丸をその手に乗せ、全体像が地面を砕きながら現れる。

 見える灰色の鋼鉄の巨体。その身体から噴き出す蒸気の熱量足るや。

 

『我はひとたび死して、空想世界と共に在る者』

 

 蒸気を放つ鋼鉄の巨神。

 その名は。

 

『我が名は蒸気王っ!!』

 

 蒸気王、チャールズ・バベッジ。

 

 マスターの危機を救わんがため、その鋼鉄の巨神は吠えた。

 

 

 思わず、ビルの屋上で戦っていたゴルゴーン、邪ンヌ、マルタの三人の手が止まる。

 ゆっくりとせり上がってくるバベッジの手の上で、藤丸が腕を組み仁王立ちしているのが三人には見えた。

 

『Oh、まさかのガ○ナ立ちネー』

 

 どこぞの神様の声が聞こえた気がするがそこは無視。

 

「三人とも、覚悟は出来ているよな?」

 

 にっこりと笑う藤丸に冷や汗をかく三人。

 マルタは思わず、藤丸に弁明するのだが。

 

「ちょっ、わたしは止めに来たんだけど?!」

 

「二人の言葉にキレた時点で姐さんもギルティ!」

 

 藤丸の言葉にぐうの音も出ないマルタはうなだれた。

 

「行くぞ、バベッジ。宝具展開(ショータイム)だ………っ!!」

 

 藤丸のその言葉にバベッジの目が紅く光る。

 

『了解した。

 蒸気圧最大、ディファレンスエンジン開放っ!!』

 

 唸りをあげる鋼鉄の巨神。

 開放された蒸気機関から発せられる熱量はさらに増していく。

 鳴動する地面。上昇のために吹き上がる蒸気。

 

『見果てぬ夢を今ここに……っ!!』

 

 彼の持つ、まるでドリルのようなステッキはゆっくりと、だが、次第に高速回転を始め、まさに台風の如し。

 それは果たせなかった彼の夢の結晶。チャールズ・バベッジの渇望。

 彼はこの一撃にその全てを込める。

 

 

『我が空想、我が理想、我が夢想っ!!

 ───絢爛なりし灰燼世界(ディメンジョン・オブ・スチーム)っ!!』

 

 

 放たれた一撃は三人を巻き込んで高層ビルの屋上をぶっ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということがあったんだ」

 

「な、なにやってるんですかーっ!!」

 

 藤丸は合流したマシュに怒られた。

 怒られているのも気にせず、ずずーっとコーヒーを飲んでいる藤丸。

 今、藤丸とマシュは二人っきりでカフェでお茶をしている。他のサーヴァントは気をきかせて買い物中である。

 

「サーヴァントの三人とビルはどうなったんですか?」

 

「三人は他のサーヴァントたちに連行、カルデアに強制送還。

 ビルに関しては、人も避難させてたし有難いことに売り手の着いてないビルみたいで時計塔にお金払わしてカルデアで買いました」

 

「ホントに何してるんですか……でも、よく時計塔に払わせられましたね」

 

 マシュの疑問に藤丸は顔をあげる。

 

「うちのカルデアにいるじゃん、口の上手いセイバーがさ」

 

 その言葉にマシュは赤くふくよかなセイバーを思い出した。

 

「カエサルさんですか?よく交渉を引き受けてもらいましたね?」

 

「俺もカードは切ったからさ」

 

 藤丸の苦笑いにマシュは首を傾げた。カードとは一体、何なのだろうか?

 それを話すつもりはないのだろう、藤丸はそれについてマシュには語らなかった。

 

 

 

 

 

 

 時間はまた逆戻る。 

 

『藤丸くん、流石に時計塔から苦情来たんだけど………』

 

 カルデアのスタッフからの通信。

 少しばかり青ざめたスタッフの顔色にあちゃーっと顔を覆う藤丸。

 

「んー、ごめん。カエサルと()()()()()()()()を呼んでもらっていい?」

 

『カエサルと……()()モリアーティ教授?』

 

「そ、あのモリアーティ教授」

 

 藤丸の言葉にスタッフは首を傾げる。

 交渉ごとのプロフェッショナルであるカエサルはわかるのだが、何故モリアーティ教授を呼ぶのか。彼が天才的な犯罪者にて数学者であるのは知っているが。

 

『呼ばれて、私が来たっ!ということで何か用かね』

 

「かくかくしかしかでさ」

 

『なるほど、時計塔との交渉を私に任せたいと…………』

 

 それでわかるんだとカルデアスタッフは呆れている。

 カエサルは考えながらも人の悪い笑みを浮かべ、藤丸を見る。

 

『マスター、それを行うについて私に払う代価はあるのかね?』

 

「クレオパトラと行く世界一周の旅なんか如何かな?」

 

『ほほう、魅力的ではあるが代価としては足りない。

 どうせ、他にもやらせることがあるのだろう?』

 

「ご明察。

 ではこれはどうかな?」

 

 藤丸は顎を擦りながらカエサルを見る。

 

「──カエサリオンの召喚」

 

 その一言にカエサルの表情が凍る。

 スタッフが藤丸に叫ぶ。

 

『ま、待ってくれ、藤丸くん!

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()1()5()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……』

 

()()()()()()()()()()()()()()。いやはや、考えたものだね、マスターくん。それのためにワタシを呼んだのかネ?』

 

 モリアーティ教授はいつのまにかスタッフの後ろに髭を弄びながら立っていた。

 

「教授にもやってもらうことはあるんだけどね?」

 

『ふむ、まぁ、それはさておきだネ。

 カエサルくんの息子を召喚出来るかどうかについてだが、幻霊としてならば理論上は出来る。

 何せ血縁者が二人いるのと……これもまた大きな部分を占めるがこのカルデアにファラオに連なるものがいることだ』

 

 ラムセス2世ことオジマンディアス、ニトクリス、イスカンダル。ファラオとして名を残したこの三名がいることによりカエサリオンを召喚出来る確率は上がると藤丸は思っている。

 神祖ということもあるがロムルスに引かれ、過去、未来のローマ皇帝が現れたことがあった。召喚する媒体としては十分なものであると藤丸は推測していた。

 

「ということなんだけど、カエサル。

 これは代価としてはどうかな?」

 

 暫しの無言。

 カエサルの口が開く。

 

『ふむ、マスターも交渉術を覚えてきたということで及第点というところか』

 

「じゃあ?」

 

『ただ、召喚が成功すればその提案は私とクレオパトラにお釣りが来るレベルだ。そこの換算をすればひっきりなしの満点だったのだがね?』

 

「いやいや、カエサルの思っている以上に働いてもらうからさ」

 

 はっはっはっ、と笑う二人にカルデアスタッフは冷や汗を流す。

 この二人、一体何をしようと言うのか。いや、そういえば、忘れていたがモリアーティもいるのだ。

 スタッフは思った。この組合せはヤバイと。

 

『で、アラフィフのワタシは何をすればいいのかネ?

 幻霊召喚が出来るかどうか聞きたいがために呼んだだけではないだろう?』

 

「カルデアにちょっかいをかけてる連中に嫌がらせをお願いしたいんだけどさー?

 なんか良い案なーい?モリえもーん?」

 

『ふむ、よーし、ならばマスターくんのためにオジサン頑張っちゃうぞーっ!!

 マスターくん、燕青くんとアサシンの方のエミヤくんに百貌ちゃん借りるネっ!』

 

「殺さない程度でよろしくー」

 

 コイツら軽く何を決めてんだとカルデアスタッフは胃を押さえながらうなだれた。

 そして、ちょっかいをかけてきた時計塔の魔術師たちを哀れに思う日がくるとは思っていなかった。

 

 基本的に藤丸ははっちゃけ過ぎるところはあるが善人だ。

 困っている誰かを助けるし、優しさも兼ね備えている。

 ただ、敵には容赦はしない人間ではある。 

 

 

 

 カルデアスタッフは彼を敵に回した魔術師たちを哀れに思いながらも「ま、自業自得か」と考えるのを止めた。

 




次回はのんびり鴨川歩き旅。



ボツネタ。

「なぁ、マシュの盾とエジソンを媒介にしてこの人呼べないかな?」

「先輩、キャプテン・アメリカは恐らく呼べません……っ!」

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