獣殺しの人間性 ——修羅吸魂—— 作:AM/RFA-222
どうも。作者です。
あらすじに注意書きを追加しました。
こんなの僕の知ってる人修羅じゃない! 嫌い! 低評価!!
と言った物が一番傷つきますので、拒否反応が出ればブラウザバックのみして頂くと助かります。(無理にとは言っていない)
まあ、こんな駄文を読む人なんて少ないとは思いますが。
そんな事はともかく。
本編、どうぞ。
日曜日。午前10時半。
現在俺は、揺れる揺れる縦長の電気式直方体の中にて、外の景観を眺めていた。
詰まる所、電車の中で暇を持て余していたのだ。
——ブルルッ ブルルッ
懐から小さな振動音がなり、俺の鍛えたふとももを刺激をする。ちょっとしたマッサージのようで気持ちいいが、無視を決め込む訳にも行かないだろう。
名残惜しいふとももを無視して、懐からスマホを取り出す。
やはり電話が来ていたようだ。差し出し人は勇だった。やはり少し遅れていることに対する催促だろうか。
嫌々ながら、電話を繋げる。
スマホの発生器から最初に聞こえてきたのは、予想通り罵声だった。
『おいシン! お前今どこいんだよ、俺たちもう代々木公園着いちゃったぞ』
どうやら出遅れた自分とは違い、彼らは既に代々木公園についてしまったらしい。
俺も電車に乗り遅れ無ければ遅れる事はなかった。全ては電車が行ってしまったのが悪いのだ。俺は悪くない。
ああ、それと強いて言うならば駅の前にあった露天商に寄ったせいか。
露天商のじいさんが俺にレプリカ銃を買ってくれって言うもんだからつい買ってしまったが……なんなんだ、コイツは。
アサルトライフルっぽいが肝心のマガジンに弾丸を入れる機構がない。入れれないのではなく、機構がないのだ。
マガジンは数本貰ったが……マガジンに火の模様や葉っぱの模様がついていたりと、よく分からないものだ。
しかもこれで2万したからな。俺が株をやってなかったら絶対に買ってなかったよ。
『まあ、とりあえず早く来いよ! あと数十分は待つけど、なんか代々木公園は閉鎖されてるようだし、もう少ししたら出るからな!』
「ああ、分かった。出来るだけ早く着くように努める」
『よし、分かった。早く来いよな!』
そこで電話は切れてしまった。
しかし……代々木公園が閉鎖、か。
何があったのだろうか。もしかして殺人事件でもあったか?
……まあ、着いてみれば分かることだろう。新宿に着いたら適当な奴に聞いてみるか。
——代々木公園〜
代々木公園〜
そうこうしている内に、目的地に着いたようだ。千晶達と合流出来るよう、ちょっと走るか。
俺は荷物を纏めて、電車を降りた。
■
新宿、代々木公園駅の、地下ターミナル。
俺は数時間の長旅の末、友が待つ彼の地へと、やっとの事で辿り着いたのだ。
「さて、それじゃあ早速代々木公園へ……っと、その前に」
喉が乾いたので、自販機にて適当なジュースを買うことにした。
この代々木公園駅の設置されている自販機だが、ラインナップが面白く、俺もちょくちょく買っている。
コーラやお茶などの普通のメニューもあるが、それはごく僅かの物しかない。
それよりも多くの異色のメニューが多く存在する。俺も何本か買ってみたが、正直言って当たり外れが多い。
『グレートなハチミツ緑茶』……普通の緑茶に苦味と、ハチミツの極端な甘みを足した珍味。後々吐き気がこみ上げてくる。
『ゲキニガカレージュース』……タイトル通り。カレー味が仄かに香るような感じだが、それ以前に虫の脚などが浮かんでいて、飲む気にすらならない。
『真っ白ソーダ』……これは美味しい。本当に美味しい。感じとしてはカルピスだが、カルピスのちょっとした違和感を取り除いて、非常なマイルド飲み心地に仕上がっている。更に缶下部にあるレバーを引かなければ、炭酸も出ない為、炭酸嫌いにも人気のある一品。
他にも飲んでみた物が色々あるが……今回は割愛しよう。
時間が惜しい。ちゃっちゃと買って、ちゃっちゃと行こう。
200円入れて、ど真ん中にあった『河童の膝握り』という謎のジュースを購入した。
どんな味か分からないが、飲んでみないと分からないだろう。
——ガコンッ!
自販機下部にて何かが落ちる音が響く。
すぐさま俺はそれを拾い上げ、プルタブを開けようとしたが……途中でやめてしまった。
買った商品と全く違う商品が出てきたからだ。ラベルは何にもなし。勿論ラベルなしの飲み物なんぞ、見本にあるはずもない。
しかも、俺がこの飲み物を買うと同時に全商品売り切れ。全くもってふざけているとしか思えない。
本来であればクレームでもつけてやろうと思ったが、残念ながらそんな事をしている暇はない。せっせと急がなければならないのだ。
なんとも言えない気持ちを抑えながら、改札口の前を通り過ぎた。
その途中。改札口に常駐している駅員に声を掛けられた。
「やあ、お客さんももしかして、代々木公園目当てかい?」
最初話しかけられた時はビックリしたが、駅員の顔を見て気が抜けた。
なにやら、随分と暇そうにしているのだ。ペットボトルの水は既に底をついており、手にはオセロのアプリが開かれたスマホが握られている。
お客さんもというのが気になるが、とりあえずは答えておく事にした。
「ああ、一応ね」
それを聞いて駅員はため息を吐いた。
「そうですか……まあ、あんな事件が起こった後ですし、ヤジウマが増えるのも当然ですよね。
でも、それに反比例するように電車の利用が減るとなると……いささか不満になりますね。暇ったらありゃしませんよ」
一人で喋り出す駅員。どうやら彼は、随分とフレンドリーのようだ。
それはともかく、『あんな事件』とは一体、何なのだろうか?
「……あれ、もしかしてお客様、ご存知ないですか?」
「ああ、知らないな。友人から代々木公園が閉鎖されてるとは聞いていたが……何かあったのか?」
それを聞いて、ビックリするような表情をする駅員。
もしや、『あんな事件』とは周知の事実なのだろうか。
「そうですか……ええっとですねぇ、昨日、駅を出てすぐの代々木公園で暴動事件があったんです」
「暴動事件? どんな事件だったんだ?」
「ええと、サイバース社という会社が代々木の森を開拓すると言っていたのですが、それの反対派が暴動を起こしたという事件ですよ」
駅員が言うには、その事件では死傷者が多く、救急車やパトカーが一晩中鳴り響く程の騒ぎだったらしい。
しかしまあ、こんな事件を俺は知らなかったという事実に、片身が狭くなってしまうな。
俺はこの世界の事を、何も知ろうとしていないと言う事に、他ならないのだから。
「……っと、失礼しました。幾らヒマだとは言え、勤務中の私語はいけませんね。
では、行ってらっしゃいませ」
駅員は笑顔で手を振り、送り出そうとしてくれている。
仕事が減ると嘆いているとは、随分と仕事熱心だな。
そんな彼にプレゼントをあげよう。
「ありがとうございます。お仕事がんばってください。コレ、差し上げますよ」
「これはご丁寧に……って、なんですか、コレ?」
彼にあげたのは、さっきの自販機で出た謎の飲み物だ。本当は飲んでみたかったが、彼の仕事ぶりを評して、これを進呈したのだ。
「いや、ちょっとしたレア物でね。何十回に一回当たるかどうかの代物なんだ。あんたの仕事っぷりを見て、コレはやらなきゃ! って使命感を感じたんだ」
勿論、全て口からの出まかせである。何十回元々は俺が勝手に付け足した尾ひれでしかない。
まあ、レア物と聞いたら何となく特別視するだろうから、そう言ったのだが。
すると予想通り、駅員は顔を少し引きつらせながらも、礼を述べた。やはり俺の勝手論は通じたようだ。
駅員は俺が渡した缶ジュースを見ながら、あっ! と声を漏らす。
「そうだ、お客さん。せっかくだからコレ、貰って行ってくださいよ」
そう言って奥の部屋の方から円柱状の何かを渡してくる。
ジュースのように開ける所は無いし、振っても何かが入っているような音はしない。
なんなんだ、コレは?
「それが私もよく分からないんですよ。出勤前に外国人の子供にコレ渡されて。どうしようか迷ってた中で、お客さんが来たから、上げた方が良かったのかな〜、って」
ほうほう。つまり彼は得体の知れない何かを俺に渡したと。
舐めているのか?
「それはお客さんも一緒でしょう。私にこんな変なジュースを渡して。おあいこですよ」
……まあ、それもそうだな。ここは物々交換をしたと思って、割り切ろう。
そんな会話の後、俺は代々木公園駅を出た。話し込んで出て行った為、出るのが遅くなってしまったのが悔やまれる。
■
代々木公園。東口。
あれから数十分くらい歩いて、代々木公園の東口まで来た。途中西口も寄ったが、しまっているようで、入る事は出来なかった。ついでに言えば千晶達は居なかった。
もう病院に行ってしまったのかも、と思うが、希望は捨ててはいけない。それに裕子先生がいると言う新宿衛星病院に行く途中の道に東口はあるしな。寄って見て損はないと思う。
……タイムロスという点を除いて。
因みに、代々木公園であったと言う事件だが、
基本は駅員が言ったものと同じだ。あの情報の他に仕入れた情報と言えば、サイバース社の代表である、『氷川』が居なくなったと言うことだな。
それとあくまで噂の域を出ないが……『悪魔』が出たそうだ。
悪魔が代々木公園に出現し、殺しあったと。
ほかにもまあ、世界が丸くなるやら、氷川はカッコいいやら、娘が引きこもりやら、色々な話を聞いた。
あんまりためになる話が無くて、がっかりだぜ。
「チッ……公園をまるごと封鎖とはな。
現場写真の1枚も撮らせん気か。どうかしてるぜ、全く」
そんな事を愚痴るロン毛の男。どうやら記者のようだ。腰にカメラポーチが眠っている。おおかた、代々木公園の写真を取る予定だったのだろう。
カメラにとっては、取る事すら出来ないなんて、無念以外の何者でもないと思うな。
「……?」
暫く見つめていると、視線に気が付いたようだ。男が帽子を外して、此方の事を見返してきた。
ロン毛男から見て、気になる所はあったのだろうか。
「なんだ、俺になんか用か?」
そんな事を考えていると、ロン毛男の方から声をかけてきた。やはり記者ともなると、行動力はとてつもなく凄いのだろうか。彼の事を見ていると、そうとしか見えなくなってしまった。
若干驚きつつ、声を返す。
「ああ、ここで実際にどんな事が起こったのか、あんたの目から見た世界を聞いて見たくてな」
やはり、暴徒が警察に取り押さえられる前の出来事を追って居たのだろうか。いや、だとしたら公園などに来ないで、暴徒関係者に聞き込みに行く方が良い気がするな。
やはり、現場を見て動きたかったのかもしれない。記者だから、自分の足で……みたいな。
「俺の目から見た世界、ね……。……知ってるか、この公園で起こった事」
「ああ、一応は。企業と市民団体の衝突で起こった騒動……だよな」
駅員も、街頭ビジョンのキャスターも言って居た事だ。
代々木公園の緑を争って起こった不運な事故だと。
だが、男の顔色を見るに、どうやら違うらしい。
男は髭を弄りながら答える。この世界では馴染みの無かった言葉を。
「ああ、その通りだ。テレビの、表の世界ではな……。
だが、裏の世界じゃこう言われているよ」
そう言って、一息つけてから、答える。
「『姿を変えた、闇の勢力同士の争い』、とな」