虚に転生したけど二番隊に入りました。   作:フル・フロンタル

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ルイスと五番隊

 

 

たまに夜一さんに修行をつけてもらったり、その修行に砕蜂が混ざったりして数ヶ月が経った。

夜一さんが気を利かせてくれて、俺の部屋にたまに矢胴丸さんとか京楽さんを連れて来てくれて、俺に友達ができた。原作キャラの中でも矢胴丸さんはともかく、京楽さんは知ってる人なので、俺はかなり舞い上がっていた。ホントに夜一さんは母ちゃんみたいで良い人だ。

で、今日もなんか新しく誰か連れて来たみたいです。

 

「よう。この子が虚の子か?」

 

この人は平子真子か。出た来たときにヤケに一護に絡んでたから覚えてる。そしてその後ろから現れたのは、………藍染惣右介だ。27巻までしか読んでない俺でも分かるラスボス。ブックオフとかで、BLEACHの単行本をよくみかけるけど、確か48巻くらいまで背表紙で出てた気がする。

が、隊長羽織は着てない。俺が知る限り、五番隊隊長はこいつだったはずだ。

………っと、考えるのはやめよう。こいつの前では平静を装え。冷静になれ俺。

 

「えっと……どちら様ですか?」

 

「おっと。すまんすまん。俺は五番隊隊長の平子真子や。こっちが、副隊長の……なんやっけ?」

 

「隊長、意味のないボケはやめて下さい。……副隊長の藍染だよ」

 

「どうも。ルイスです」

 

あれがラスボスか……なんというか、見れば見るほど悪い人には見えないな……。

 

「すみません、なんか来てもらって」

 

「いやいや、俺らも暇やったから。別に気にせんでええよ。………それより、ホントに自分は虚なんか?」

 

「は、はぁ」

 

「偉く可愛い子やなぁ。ひよ里のアホと違って礼儀正しそうやし」

 

あれと比べるなよ。男口調であることを除けば俺は偉くまともな人なんだから。………多分。

 

「それで、その……俺に何か?」

 

「おたくの隊長はんが、ルーたんが一人で寂しそうにしてるって言ってたから会いに来たんや」

 

「あの、ルーたんはやめて下さい」

 

「しかし、広い部屋やなぁ」

 

スルーされてしまった……。でも、初対面の人に俺強く言えないしなぁ……。

 

「いや、広くてもそんな良い事ないですよ。喜助や夜一さんが退屈しないようにしてくれましたけど、やっぱ何十年もここにいると気が滅入りますから」

 

「そら大変やなぁ」

 

「でも、最近はみんな遊びに来てくれますから、退屈はしませんけどね」

 

「ほーん……。みんなって?」

 

「矢胴丸さんと京楽さんと……砕蜂と夜一さんと喜助、くらい?」

 

「なんや、ほとんど来てへんのかい」

 

「隊長。あまりそういうこと……」

 

「い、良いですよ。藍染副隊長。………虚になんて、普通は誰も近づきませんから……」

 

「ほら、傷ついちゃったじゃないですか」

 

うるせー、つーかラスボスが俺の心配するなよ。というか心配するフリするなよ。

 

「悪かったな。変な事言って」

 

「いえ、別に大丈夫です。それに、平子隊長や藍染副隊長が来てくれて、俺はそれで満足ですから」

 

これは本心だ。普通は敵と仲良くしてくれるなんているわけない。馬鹿正直に本心を伝えるのもどうかと思ったが、やはり第一印象は大事だと思って、ストレートに伝えた。

俺の台詞に軽くビビったのか、引き気味に平子隊長は口を開いた。

 

「お、おお……なんか、気持ち悪いな」

 

「なんで⁉︎」

 

「や……なんか、良い子過ぎて。なんや、媚び売っとるんか?」

 

こ、こいつ……!今を持って俺の中のカテゴライズ喜助と同類になったぞ。

 

「ああ?男の癖にそんな髪伸ばしてる女々しい奴に気持ち悪いとか言われたかねんだよ」

 

「…………アア?」

 

ギヌロッと睨んでくる平子隊長。睨み返す俺。二人でメンチを切っている状態だ。

 

「ま、まぁまぁ、お二人共……」

 

「「うるさい眼鏡‼︎」」

 

藍染を黙らせて、俺と平子の顔はほぼゼロ距離まで近付く。そして、お互いに指をコキコキと鳴らし始めた直後、ガンッゴンッとゲンコツが響いた。俺と平子の頭に。

 

「やめんかバカども」

 

喧嘩を止めるのは大抵が夜一さんだ。ていうかいたんだ。

 

「な、何するんですか!今回ばかりは俺悪くないでしょ⁉︎」

 

「一々喧嘩を買うな、子供か主は。平子もじゃ、素直な言葉にそんな言い草はないじゃろう。ルイでなくても腹立てるに決まっておる」

 

「けっ、そりゃ悪うござんした」

 

「……………」

 

「……………」

 

俺と平子は隣で立って互いにそっぽを向いた。すると、ドスッと横から脇腹を突かれた。キッと振り返って睨み返すと、平子はそっぽを向いたままだ。

 

「……………」

 

俺は肘で脇腹を突き返した。

 

「ああ⁉︎やんのかクソチビィッ‼︎」

 

「上等だよクソッタレがボケ‼︎」

 

「だからやめんか‼︎」

 

このやり取り、しばらく平行線をたどりました。

 

 

 

 

俺の部屋を開けられるのは喜助と夜一さんだけだ。それ以外は、俺も含めて開けることができない。理由は、死神と俺の身の安全のためである。どちらかが部屋を出て、或いは部屋に侵入して闇討ちするような事がないようにだ。

そんな部屋の中で俺は少し考え事をしていた。確か、藍染は虚達の番長だったはずだ。で、破面達のほとんどが、藍染の持って来た崩宝によって生まれた存在だ。

が、俺は崩宝などではなく、最初から破面だった。あれ?これ、藍染にとって俺はメチャクチャ良い実験材料のような……そう自覚すると、なかなかに俺は危ない位置のような気がして来た。

 

「…………」

 

と、なると今日、平子と喧嘩できたのはもしかしたら幸運だったかもしれない。これで五番隊はしばらく二番隊隊舎には近付いて来ないだろうな。

ありがとう、平子。サヨウナラ、平子。

しかし、そうなると俺は下手に外には出れない。藍染は俺のことを狙っているかもしれないからだ。そして、斬魄刀の能力が完全催眠。何らかの理由で喜助や夜一さんが俺の知ってるBLEACHのような状態になり、俺がそれについて行くようになるまで安全とは言えない。

原作の雰囲気では、喜助は藍染の事を知ってたような感じだけど、現時点で知ってるかどうかはわからない。俺の身を守れるのは、現状で俺だけだ。

 

「……ダメだ。寝よう」

 

考えれば考えるほど怖くなる。破面、それも最上級大虚でありながら、死神の鬼道や白打、歩法、死神の斬魄刀を持ってるとはいえ、あんな奴に狙われて俺は生きていけるのか。

…………落ち着け。物語上では、たしか一護によって奴は倒されるんだ。原作読んでないから多分だけど。

 

「………いや、藍染副隊長が虚圏に行くまでの辛抱だ」

 

それまでなんとか生き残れよ、俺。そんな事思ってると、夜一さんが入って来た。

 

「ルイ。任務じゃ」

 

「え?今から寝ようと思って……」

 

「任務じゃ」

 

繰り返すなよ。まぁ任務くらいなら問題ないけど。

 

「何の?」

 

「普通に虚の討伐じゃ」

 

なら良いけど……まぁ、虚如きに遅れを取るような俺じゃない。やってやるよ。

 

「で、どんな虚なん?」

 

「大虚じゃ」

 

なら余裕だな。油断してても虚閃一発で勝てる。ただし、それは藍染の介入がなければ、だ。やはり油断はできませんね。

 

「良いよ。今すぐ?」

 

「うむ」

 

「俺一人?」

 

「儂も同行する」

 

「マジか。夜一さんと二人って初めてじゃない?てか、そんな強い大虚なの?」

 

「なんでも、少々面倒な力を持っているらしくてのう。良いか?」

 

「まぁ、良いですけど」

 

と、いうわけで俺と夜一さんは任務に向かった。やったぜ、少し楽しみだ。

と、思っていたのだが……、

 

 

 

 

 

一時間後、

 

「…………はぐれた」

 

森の中でポツンと呟いた。

 

 


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