幻想の郷の稀人兵士   作:蓬莱の翁

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2話 「紅い館」

湖の対岸にある紅い館にたどり着いたが、さてこのでかい館にはどうやって入ろう?門は何処に・・・門番らしき人影が見える。おそらくはあそこが入り口なんだろう。話しかけてみるか。

近づいてみると、寝てるのか・・・?

スリットから長い美脚を晒ているチャイナドレスのようなものを着た。女性に声を掛けようと近づくと

 

「誰です?」

 

今まで寝てた門番が急に目を覚ました殺気丸出しで。すげぇなこいつ気配を感じ取ったのか?にしてもデカイな、俺と5cmくらいしか変わんないんじゃないか?顔は女性と言うか少女のようなだけど出てる気配はプロそのものだな。構えは、中国南側の拳法の様にも見えるな。

 

「あぁいや今晩ここで泊めてもらえないかと思って来てみたんだが、迷惑だったか?」

 

ふむ・・・と少女は少し考えるとふっと顔を上げ

 

「わかりました。レミリアお嬢様に掛け合わせてみます。ただし淫らな行為に及ぶような事があればその時は...覚悟してくださいね?」

 

なんだろうこの子の笑顔はすごく怖い・・・殺気が漲っているのか背後に凄い黒い靄が見える気がする。庭で作業をしていたメイドに何か指示を出している彼女を尻目に最初の戦場で人を殺めて以来の冷や汗を流しながら

 

 

「あ、あぁ・・・肝に命じておくよ。」

 

何とかそう答える。

 

「一応俺は、鬼灯雅だ。今晩はよろしく頼むよ。」

 

俺は、殺気を放つ彼女に手を差し出す。すると彼女は、殺気を収め人懐っこい笑顔とともに手を取りブンブンと大げさに手を振りながら。

 

「私は、紅 美鈴です。では鬼灯様。ようこそ紅魔館へ。」

 

 

「そう言えば、君の立ち方や構えは中国拳法かい?相当の実力者と見受けたが」

 

俺は好奇心から美鈴へ聞いてみる

 

「そうですよ。貴方も最初見た時は明らかに普通の方ではない気配を感じましたし手を取った際にかなり戦い慣れてるなってわかりましたよ」

 

この娘・・・侮ってはいけなかったな

これは、泊めて貰う前に手合わせでもしてみるかな。もし、って事になったら嫌だし。

 

「凄いな、そこまでわかるのか。一応俺も腕に覚えは、あるつもりでいるんだが・・・手合わせをしてみるか?」

 

「いいんですか?丁度最近修行に付き合ってくれる方がいなくて困っていたところでしたよ。」

 

嬉しそうに言うと彼女は、右手足を前に左手を少し引いた構えを取る。やっぱり中国拳法か。気を引き締めていかんとこっちがやられそうだな。

刹那一足で美鈴は、俺の間合いへ入りその長い脚を振るう。咄嗟にスウェーで躱すがギリギリだな・・・これは躱してたらいつかは当たるな。しかし俺も負けちゃいない。美鈴の軸足に蹴りを入れるが跳躍で躱される。ならばすかさず軸足を切り替え後ろ回し蹴りを見舞うが、受け止められその力を利用して後ろに距離を取られる。まさしく足の応酬。間合いへ跳ぶ足、鞭のような足、崩す足、殺す足。互いに蹴りのみで相手の実力を察する。このままじゃラチがあかない。

 

俺は、動きを力を流す構えに変える。これは俺が戦場で身に付け被験体の成れの果てから身を守る為に完成した型だ。構えといっても力を完全に抜いただけだ。腕を下げ足前後に少し開く。美鈴の方は、訝しげに

 

「えぇと、構えを解いてどうするんですか?」

 

それはそうだ。アレほどの足技の応酬の直後にこの構え、見る人が見ればふざけているのかと怒り出すだろう。

 

「いやこれが俺の構えだよ。さぁ遠慮はいらないからどうぞ」

 

俺は、静かにそう答える。美鈴は、それではと砲弾の様な一足で拳を放つ。刹那世界がゆっくりと進む。美鈴の拳が俺の肩に触れた瞬間体を捻る。回転扉のように拳の威力は吸収され遠心力によって力が倍増された俺の拳が美鈴に直撃する。

石畳にヒビが入る勢いで叩きつけられた美鈴だったがほんの数秒で

 

「イタタッ・・・こんなに強烈な一撃を食らったのは久し振りですよぉ強いですね雅さんは」

 

と言ってケロッとしてる。

どうなってんだよこいつ・・・乱れた服を正し少しキリッとした顔で

 

「いやぁいい教訓のなりましたよ。ありがとうございます。いやぁあんなやり方もあるんですねぇ。っとこんな事してるうちに暗くなってきちゃいましたね。今案内呼びますね」

 

美鈴が館に入り暫くすると小さなメイド(?)を連れて来た。さて泊めて貰えるかな?美鈴の笑顔を背に俺は館の門をくぐる。

 

中に入るとこれまたたまげたなぁ。

真っ赤な外観とは打って変わって中は、これぞ洋館と言うような作りになっていた。

エントランスはちょっとしたホールのような造りで高い天井にある巨大なシャンデリアが広い空間を明るく照らしている。

また壁や並べてある絵画や美術品はどれも非常に高価なようである。確か館を美術品等で飾ったり複雑構成でそれ自体を一つの芸術品にする建築法があったな。

確か・・・バロック建築だったかな16世紀頃にヨーロッパで流行った建築法だったらしい

2階へ続く真ん中の大階段。左右にり館を分ける大扉。どこかのホラーゲームで見たことあるような造りだな。

感心して眺めていると小さなメイドに服を引っ張られた。どうやらいそげと言う事らしいので俺は素直について行く。

ん?・・・そこの左の大扉か入るんじゃないのか?食堂兼応接間って書いてあるんだが。

そんな事は御構い無しにメイドは2階へと上がって行く。それについて行くが結構左へ進んで行く。扉を開け階段を降りるとそこは普通の食堂だった。来た道とは別の扉を見ると大扉のある位置の扉が普通のものになっている。どうやら余程見せたくないものがあるらしいな。

椅子を引かれたのでそこに座ると早速メイドがワインを注いだ。毒は無さそうなので一口飲んでみる。独特な香りと他にはあまり無い甘み、飲みやすさこれはルーマニアワインか。東欧の戦場にいた時出されたことがあったな。

 

「やっぱり美味いなぁ懐かしい味だ。」

 

「あらお気に召したのかしら?」

 

懐かしみながらワインを飲んでいると前方から声を掛けられる。

薄ピンクの俺にはわからない種類の服に同じくピンクのナイトキャップを被った少女がメイドを伴って立っている。青みがかった銀色の髪の少女は、もしや美鈴の言っていたこの館の主確か名前は・・・

 

「私の名はレミリア・スカーレット私をこんな早くに叩き起こして、まったく不愉快だわ」

 

そうレミリアだ。彼女は如何にも不機嫌そうに雅を睨み付けた。

 

 

 


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