紅魔館中を飛び回り、とうとう針妙丸を見つけた。
ルナサの弾幕を直撃した影響か、針を地面に突き立てている。
「吸血鬼から逃げられると思ってる?」
その声を聞いた針妙丸は顔を青ざめた。
「しつこい…!」
相手がレミリアと分かっていながら逃げない。
その自信はオカルトボールが手元にあるからだろう。
針妙丸はオカルトボールを掲げ、緑色の巨人を召喚した。
その巨大な足は、レミリアを踏み潰すために下ろされた。
レミリアは吸血鬼のスピードを生かして回避していく。
「夜符『デーモンキングクレイドル』!」
一気に針妙丸に接近する。
針妙丸は左手でオカルトボールを抱え、右手で針を取り出す。
その針からは煙が発生している。
「『ウォールオブイッスン』」
弾幕が壁のように連なり、なおかつレミリアに当てにかかる。
レミリアは接近を諦め、針妙丸の弾幕を回避するのに専念する。
その光景を見て、針妙丸はにやりと笑う。
「(もうすぐ力が溜まる…)」
オカルトボールが紫色に光る。
弾幕の壁に阻まれて、レミリアにはオカルトボールが見えないはずだ。
彼女が弾幕の壁を掻い潜った瞬間、怪奇を発動する。
当然、レミリアは避けられないだろう。
針妙丸が思っていた通りにレミリアは動いた。
後はオカルトボールをかざすだけ。
「*緑の巨人よ、おおきくなれよ!*」
緑色の巨人が現れ、レミリアを蹴り飛ばすために足を振り上げた。
一気に振り下ろされた。
レミリアは地面に着地し、唸り声をあげた。
緑色の巨人の一撃を受け止めたのだ。
これには針妙丸も驚いた。
レミリアは言った。
「吸血鬼の力を舐めんじゃないわよ」
一撃を押し返し、針妙丸の…オカルトボールに向けてスペルを詠唱する。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
放たれた紅い槍はオカルトボールを貫通した。
針妙丸は慌てて、再び掲げた。
「*幻の国ブレフスキュ*」
しかし、数体の小人が現れたところでオカルトボールは完全に壊れてしまった。
小人をレミリアにぶつけ、針妙丸はその隙に逃走を開始した。
「待ちなさい!」
レミリアが小人を壊して追うも、すでに針妙丸の姿はなかった。
見晴らしの悪い霧の湖付近なので、レミリアは針妙丸を見失ってしまった。
流石は紅魔勢。
紅魔館で奮闘していた革命派の妖怪達を全て殺した。
「悪いわね。手伝ってもらっちゃって」
リリカは首を振った。
「お礼はいらないわ。紅魔館で演奏させてくれるだけで満足よ」
メルランは辺りを見渡した。
「姉さんはどこ行ったの?」
「ああ、それなら永遠亭に行きましたよ」
「永遠亭?」
リリカとメルランが首を傾げた。
「毒に侵された奴隷を運んだのですよ」
「あら!」
リリカは驚きの声をあげた。
メルランもにやにやと笑った。
「はあ、どうかしましたか?」
咲夜の質問に、リリカは意地悪そうに笑った。
「えーっとね…」
咲夜に耳打ちした。
咲夜の目が見開いた。
「本当なの?それ」
「あの反応を見て間違いない!」
メルランとリリカは胸を張った。
咲夜は周りを見渡し、メルランとリリカにしか聞こえないような声で話した。
「いい?このことをメイド妖精に言わないでちょうだいね。悪戯好きだから」
「おっけー!」
咲夜は、主要なメンバーになら話そうかなと思った。
皆は、奴隷とルナサが帰ってくるまで紅魔館の修理などを行った。