人里にある寺子屋。
昔は難解で退屈な授業と評判で、子供からの人気は薄かったが、少し前に授業内容を変更して以降人気が高い。
先生が美人ということでも評判だ。
そんな寺子屋に、物騒な物を持った奴隷が戸をノックした。
「残党狩りの…」
全てを言う前に戸は開かれた。
中から寺子屋の教師、上白沢慧音が姿を現す。
「入ってくれ。奥の部屋に妹紅がいるはずだ」
奴隷は一礼し、奥の部屋へと進む。
大人の女性だなと思いつつ扉を開く。
慧音が言った通り、藤原妹紅が片膝を立てて座っていた。
目を閉じているあたり、どうやら寝ているようだ。
起こさないようにしようと思ったが、机を蹴ってしまって大きな音を出してしまった。
妹紅は体をビクリと震わせて目を覚ました。
「慧音…?あぁ、残党狩りか」
妹紅はのろのろと立ち上がる。
「藤原妹紅だ。よろしく」
妹紅が手を出す。
「紅魔館の奴隷だ。こちらこそよろしく」
妹紅の手を取り握手を交わす。
奴隷は残党狩りについてのことで会話を弾ませた。
どうやら、妹紅は前から似たようなことを行っていたらしい。
「いつしか、紅の自警隊と呼ばれるまでになったもんだよ」
「へえ」
次の話題を考えていると、また一人やってきた。
円盾に刀という、獣耳と尻尾を生やした武装少女だった。
「白狼天狗…下っ端か」
妹紅は素っ気ない感じで呟いた。
じろりと妹紅と奴隷は見る。
「妖怪の山から派遣された犬走椛だ」
「紅魔館の奴隷だ。よろしく」
挨拶を済ます。
話しかけようとしたが、何やらプライドが高そうで話しかけにくかった。
観察していると、椛は将棋盤に視線がいっていた。
「将棋でもやるか?」
親睦を深めるにはこれしかないと思い、奴隷は椛に対戦を挑んだ。
「ふっ、いいでしょう!」
将棋は得意分野なのか、椛は勝ち誇った笑みを浮かべた。
将棋は少しだけやったことがある。
この勝負は負けるだろうが、場繋ぎには充分だ。
一手、一手、また一手と繰り返し、妹紅は観戦へと回った。
椛はじっくりと考える系で、奴隷もそうだったために一手が普通より長かった。
「…王手!」
「む!?」
とうとう負けてしまった。
やはりプロは強い、お手上げだと仕草で表す。
椛は胸を張っていたが、奴隷的には親睦を深めれただけで充分な収穫だった。
それに、もう一人が来たようだ。
「遅れて失礼しました。私が最後みたいですね」
入ってきたのは…妖夢と呼ばれていた少女だ。
妖夢は一応の自己紹介を済ませた。
奴隷は彼女らを一瞥し、頼り甲斐がありそうと判断して安心する。
恐らく…皆、奴隷より年上だろう。
一番身長が高いのに年齢が一番下とは複雑な気持ちだが、特に改まる必要は無いと感じた。
四人が集合した後、慧音から説明を受けた。
大体は手紙の内容と同じだった。
奴隷は心の奥底で震えながら、仕事に取り掛かった。