最強の力を手に入れた弱小妖怪
あの異変から三日が経った。
「文々。新聞でーす!」
「おっ、悪いね文屋さん」
花壇周りの掃除を行っている時に、射命丸文から新聞を渡された。
外の世界と同じように、幻想郷でも新聞は貴重な情報源だ。
最近の幻想郷の出来事を知れるのがいいところだ。
しかし、この新聞は賛否両論あるらしい。
花壇の仕事を終えて、息抜きに新聞を読む。
一番の見出しに、こう書いてあった。
『幻想郷各地に開きかけのスキマが多数出現!真相はいかに?』
スキマとは、おそらく紫が作るスキマの事だろう。
文々。新聞では、真相まで掴めてないらしい。
「まぁ、俺には関係ないか。さっ、仕事仕事」
新聞を片付けて、竹箒を持って再び掃除に戻る。
奴隷がその記事を見る一日前の事。
幻想郷のとある場所で、一人の妖怪が感動に手を震わしていた。
「は…はは、はははは!やった!私はやったぞ!」
その妖怪が手を下に下ろすと、それになぞって
「あんたの言う通りだった。ふふっ、奪えたぞ。境界を操る程度の能力をな」
「それはどうも。それじゃあ、革命を起こしてくれる?鬼人正邪」
「この程度の能力があれば、私が目指した『弱者が幻想郷を支配する』夢が叶う。革命は近いうちに起こす。私は仲間を収集する。…あんたも来るか?」
鬼人正邪は、情報提供者を誘う。
しかし、情報提供者は首を横に振った。
「残念だけれど、私はまだやることがあるのよ」
「そうか…。まぁ、止めはしない。生まれ変わった幻想郷でまた会おう」
「そうね。期待しているわ」
情報提供者はあざとく笑い、その場から去っていった。
「行かせていいの?」
「安心しろ針妙丸。あいつは敵に情報を流すようなやつじゃない…はず」
「…はぁ」
針妙丸と呼ばれた小人はため息をつく。
「まぁ、今回は私は裏側でやらせてもらうよ。私の体には丁度いい仕事でしょ?」
「悪いな針妙丸。…今度こそ成功させてみせる」
「期待しているよ正邪」
情報提供者と同じ風に言い、針妙丸も去っていった。
「まだ慣れないな」
無理矢理奪った程度の能力のため、力をフルに使えない。
時間をかけてスキマを開き、正邪はそこから消えた。
少し時間が経ち、その場に何者かがやってきた。
「はぁ…はぁ…いない?」
辺りを探索するも、すでにもぬけの殻となっていた。
「くそっ!」
八つ当たりに壁を殴る。
殴った壁に亀裂が入り、光が中に差し込む。
特徴的な九本の尾を持った、八雲紫の式神の八雲藍がそこにいた。
「紫様の事がバレないように、こっそりやらないと…」
藍は再び正邪を追うために外に出る。
「あの九尾も必死ねぇ」
遠くでそれを見ていた情報提供者は大笑いする。
「貴女じゃ勝てないってことが分からないのかしら。まぁ、いいわ。後はどう動くか見るだけよ」
情報提供者は森の闇の中に消えた。