紅魔館の奴隷   作:ハクキョミ

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戦場での会話

飛行物体の核の部分があるという部屋に、奴隷はいた。

奴隷はあんぐりと口を開けている。

核の部分は容易に見つかった。

しかし、一つの問題に当たった。

「この核…硬すぎる!?」

奴隷が銃剣を振り下ろしても、傷一つ入らない。

辺りを見渡す。

整備のための機材が沢山転がっている。

「なんでもいい!早くしないと藍さんが…」

藁にもすがる気持ちで、奴隷は近くの機材を手当り次第に核にぶつけた。

 

 

今もなお、飛行物体の中では激戦が続いている。

しかし、ある一箇所では睨み合いが続いていた。

幻想郷側、風見幽香。

月側、綿月依姫。

どちらにも手下がいたが、割り込めば殺されると皆が思っていた。

まともに戦えば、依姫が勝つだろう。

だが、依姫もなかなか手を出せない。

場所が問題だ。

「(外ならまだいいものの、中となると被害が…)」

内の防御は外より硬くはない。

墜落する可能性がある。

「ふふっ」

どう対処しようか悩んでいる依姫を見て、幽香が笑う。

「そうそう、私に時間を使いなさい」

「?」

依姫が怪しんだ瞬間、飛行物体に再び衝撃が襲った。

 

 

藍と月夜見がいる場所に風穴が空いた。

風穴からは幻想郷に似つかないロボットの顔が見える。

月夜見の顔が険しくなった。

「神…か」

「あんたと同じね」

月夜見の前には、八坂神奈子と洩矢諏訪子が立っている。

「二神方…」

「九尾は下がってな。私らでも怪しい」

同時刻、奴隷がいる核がある部屋にも助っ人がやってきた。

「おーおー、こりゃ派手にやったな」

「お前は…」

「ヒーローだぜ。どいてろ、私のマスパで一発だ」

直後、轟音とともに飛行物体がバランスを崩した。

 

 

月側は地上に堕ちた。

地上の妖怪達が一斉に襲いかかる。

飛行物体の浄化能力が切れた今、月側は大変苦戦を強いられていた。

殆どの者は自分の周りを浄化することでいっぱいで、それが隙を生んでしまう。

「火雷神よ!」

天からの攻撃で妖怪達が薙ぎ払われる。

しかし、地の利は幻想郷側にある。

飛行物体攻略組のために行った戦闘より激しくなった。

「おいおい、俺はこんなの望んでねぇ!」

魔理沙の箒に乗せてもらいながら、奴隷は目の前の状況を見る。

「それで、どうするんだ?」

「紫さんのとこまで頼めるか?」

「お安い御用だぜ」

紫の場所まで飛んでいく。

その道中数々の妖怪と月人の死体を見て、思わず目をつぶった。

「到着だ」

魔理沙の箒から降り、紫に声をかける。

「紫さん!」

「この状況からどうするつもりかしら?悪化してるわよ」

「…俺を戦場まで運んでください」

「何をするつもり?」

「いいから、お願いします」

紫はスキマを開く。

奴隷はお礼を言ってスキマの中に入る。

ここを抜けた先は戦場だ。

銃剣を握りしめながら、血なまぐさい戦場に出た。

「あいつは…賢者はどこだ!?」

妖怪の死体を足場にして辺りを見渡す。

「…あいつか?」

扇子を持った女性が見えた。

彼女が扇子を振るう事に妖怪達の姿が消えていく。

只者ではない、恐らく賢者だ。

しかし、近づくにはあまりにも危険すぎる。

何か、何かないか。

そして、奴隷は手元を見た。

 

 

「!?」

突然扇子が弾かれた。

綿月豊姫扇子を見たが、完全に壊れてしまっている。

周囲に目を配ると、一人の男が近づいてくる。

手には銃剣、彼がやったのだろう。

「綿月豊姫だな」

奴隷はそう言い、手を上げながら豊姫に近づく。

「何のつもり?」

「抵抗するつもりは無い。俺はこの戦争を終わらせたいんだ」

「私達を全滅させて?」

「違う!…嫦娥は紅魔館に居る」

「…!」

豊姫が大きく反応した。

「ただし、引き渡すのに条件がある」

「条件?」

「日時、場所は月側が決めていい。だから、お前らと話し合いをさせてくれ!そうすれば、戦争が終わる…かもしれない」

「曖昧ね。それに、八雲紫がただの人間が嫦娥様の居場所を教えるはずがない」

「そうか」

奴隷は豊姫に銃剣を押し付ける。

「分かった。綿月豊姫、俺の言ったことが信用出来ないならこの銃剣で俺の頭を撃つがいい。そうすれば、この話はチャラ。どちらかが全滅するまで戦争は続くだろう」

奴隷は後ろを向いて正座をし、目を閉じる。

綿月豊姫は銃剣を構えーーー下ろした。

「…いい覚悟ね」

ありがとう、と呟いた。

豊姫は、紫と同じように空間にスキマを空ける。

「休戦よ」

「こっちもな」

奴隷は銃剣を見た。

この銃剣のおかげで豊姫と話ができ、豊姫に覚悟を見せられて、話し合いの場へと持ち込むことが出来た。

清藍に今度お礼を言わないとなと思いつつ、奴隷は紅魔館へと向かった。

 

 

 

 


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