陽の光が差し込んでくる。
霧の湖には、多くの妖怪達が戦いに備えていた。
決して数は多いとはいえない。
しかし、それらを補う策がある。
「もうそろそろよ。失敗は許されないわ」
紫が全妖怪の司令塔を務め、風見幽香らは飛行物体を攻略する。
奴隷も攻略組にいた。
幻想郷の中で一番飛行物体のことについて詳しいので、核となる場所を破壊するという重大な任務を課せられた。
その他にもある。
「皆、位置につけ!」
紫の号令とともに、妖怪達は一斉に行動を始める。
「さぁ、奴隷」
「了解」
紫の手を握る。
その瞬間、妖怪達の姿が消えた。
飛行物体の中では、玉兎兵達が慌ただしく動いていた。
月の都の襲撃。
それはかなりの被害を生み出していた。
「まさかこのタイミングで…」
豊姫も顔に手をあてている。
「幻想郷側はどうなってるの?」
「あ、はい。えーと…」
依姫の声に、玉兎兵は機械のボタンをいじる。
幻想郷全土が映像に映し出された。
「…妖怪達がいない?」
映像には、誰一人映っていない。
流石の玉兎兵も疑問の声をあげた。
「おかしいですね。まさか逃げた…とか?」
玉兎兵はそう推測した。
しかし、その三秒後に事実を知ることになる。
突然、飛行物体が攻撃を受けた。
「こ、攻撃を受けました!幻想郷側からです!」
玉兎兵が映像を切り替えると、飛行物体に大きな船と巨大な人形がぶつかっていた。
「落ち着いて、結界があるから大丈夫よ」
豊姫はそう言ったが、その発言は無に返された。
結界が消滅した。
飛行物体に直接ダメージが入る。
「どうして…!?」
依姫がそういう前に、大きな船と巨大な人形の腹から妖怪達が現れ、侵入してきた。
「総員、戦闘態勢に移れ!」
月人、玉兎兵が慌てて構える。
飛行物体内で妖怪達と月人らが衝突した。
奴隷と藍は飛行物体の最深部にいた。
「上手くいきましたね」
「そうだな」
幻想郷側が行ったことは簡単だ。
紫の妖力を借りて聖輦船と、アリス・マーガトロイドという人形師の失敗作…巨大化しすぎたゴリアテ人形の姿を消し去り、飛行物体に近づいた。
程度の能力は衝突する寸前で解除した。
衝突した瞬間に奴隷と藍は結界の抜け目から飛行物体に侵入し、結界を解除した。
「核を壊しに行きましょう藍さん」
「護衛は任された」
藍と一緒に飛行物体の核の部分を壊そうと、行動を開始する。
すぐ上では、激戦が繰り広げられている。
無事に核の部分がある部屋まで辿り着いた。
清蘭の銃剣をかざしてロックを開ける。
広い場所に出た。
奥に扉が見えるので、恐らくあの奥に核があるのだろう。
そこまで行こうとしたが、藍が制止した。
「藍さん?」
藍を見ると、周囲を見渡して警戒しているようだ。
そして、次の言葉を発した。
「出てきな」
藍がそう言うと、正面から月人が現れた。
どうやら、光学迷彩で姿を消していたらしい。
待ち伏せをしていた月人を見て、奴隷の表情は強張る。
「藍さん、気をつけてください。…賢者です」
月夜見。
それはへカーティアらと戦闘をしたはずの賢者だった。
ここにいるということは、へカーティアらは負けたのか。
「賢者…か、安心しろ。式神とはいえ、そんじょそこらの妖怪より力はある。十分は持つ」
「なっ…藍さん!」
藍の発言は、自身が捨て駒になると言っているようなものだ。
見捨てることは出来ない。
「核を壊せば、あいつもここにはいられなくなる。私の事を思ってくれてるのなら、手早く核を壊してくれ」
「…分かりました。死なないでくださいね」
月夜見の特徴を伝え、奴隷は扉を開けて室内へと入る。
「さて、相手をしようか」
「…十分と言ったな。果たして十分も持つかな?」
月夜見は、何事も縛り付ける程度の能力を持った月の最新兵器を抜く。
場所は変わって妖怪の山。
飛行物体攻略組じゃない妖怪達が何かの整備をしていた。
その妖怪達の正体は河童。
「よし、完了!いつでも出せるよ」
「ありがとうございます」
現人神の東風谷早苗は頷く。
背後には、二人の神様も控えていた。
「行きますよ神奈子様、諏訪子様!」
早苗は操縦席に乗り、レバーを引く。
妖怪の山全体が振動する。
神奈子、諏訪子は肩に乗る。
「核熱造神非想天則!行きまーす!」
巨大なロボットが妖怪の山から射出された。
それは月側に