イーグルラヴィに解放されてから、奴隷は月の都の建物の目の前にいた。
「月の都に侵入して証拠を見つけてほしいって言われたけど…」
正面入口には見張りの月人が二人いる。
手には清蘭から貰った銃剣が握られているが、別に射的は得意ではないし接近戦も相手が二人いるので勝てる保証はない。
「正面は無理だな…」
別の入口はないかと建物の周りを調べる。
その調べている最中、背後で物音がした。
「!?」
振り向く余裕すらなく、首に鎖をかけられて奴隷はどこかに引きずられてしまった。
「純狐ー。建物周りをうろついていた月人をとっ捕まえたわよ」
「あら、上出来ねへカーティア」
へカーティアは片手で引きずっている奴隷を放り投げる。
「痛った…誰だお前ら」
「私達を知らない?新人かな?」
「そんな馬鹿な。ねぇ、貴方の目の前には誰がいる?」
「はぁ?」
意味の分からない質問を言われた。
正直、目の前にいる三人の事は一切知らない。
「誰って…何か金持ちそうな女に変なTシャツを着た女、それにアメリカンな妖精じゃないの?」
「変な…Tシャツ!?」
へカーティアはショックを受けたようだ。
純狐とクラウンピースは笑っている。
「いや、どう見ても変だろ。もっとマシなシャツを…」
最後まで言う前に、へカーティアに口を塞がれた。
「『貴方は私に暴言を吐いた』それだけの理由で地獄に墜としてやろうかしら」
「まぁまぁへカーティア。聞く前に殺しちゃまずいでしょ」
どうやら、また尋問されるらしい。
しかし、どうも月に関係する者とは思えない。
へカーティア、純狐という名前は紫さんから聞いた覚えはない。
「待て待て!お前らは月人じゃないのか?」
「んー…本当に知らないようね」
やっと分かってもらえたようだ。
「あー…俺は奴隷だ。幻想郷の住人と言えば分かるか?」
「へぇ、幻想郷ね。私は純狐」
「私は地獄の女神のへカーティア・ラピスラズリ」
「あたいはその妖精のクラウンピース!」
簡単な自己紹介を済ませ、互いの目的について聞く。
「月の都に侵入…目的は一緒だな」
「貴方も月の都に?」
「具体的には、目の前に見える大きな建物だけど」
「奇遇ね、私達もそこよ。何故か警備が手薄になってるのよ」
「ん?今は幻想郷と戦争してるって知らない?」
「!?」
純狐は驚いた。
その反応に、奴隷も驚いた。
「え…戦争やってるの知らない?」
「ええ」
どうやら外部には幻想郷と戦争をしている事を知らせていないようだ。
ここに来る道中様々な玉兎を見たが、とても戦争中とは思えないほど普通の暮らしをしていた。
「まぁ、今が攻めるチャンスってことです。賢者も幻想郷にいるでしょうし」
「確かに、これ程の好機はないわ」
純狐が手を差し出す。
奴隷はその手を取り、握手をする。
純狐、へカーティア・ラピスラズリ、クラウンピース、奴隷という奇妙な同盟が出来上がった瞬間だった。
「嫦娥よ見ているか!今からお前がいる所を攻めてやるぞ!」
純狐の掛け声とともに、それぞれが動く。
綿月豊姫、綿月依姫は不在。
玉兎兵も幻想郷に駆り出されているはずだ。
清蘭と鈴瑚…イーグルラヴィの願いは、強そうな三人組を上手く利用すればいけそうだ、と思った奴隷であった。
『東方文果真報』の表紙が公開されましたね。
とても喜ばしい限りです。
表面の文が天使に見えました。
裏面はへカーティア・ラピスラズリとクラウンピースの姿が。
公式でヘカクラ…?
最初はクラウンピースが早苗に見えました(汗)
もう一つ気になったのは…袋とじですね。
何でしょう、あのほとばしる犯罪臭は。