男が意識を取り戻した。
「お目覚めかしら」
女性の声ともに飛び起き…られない。
手は拘束されていて動かせなかった。
「待て、どこだここは」
拘束器具を動かしながら問いかける。
メイド服の女性はナイフを手に持つ。
「…残念ね」
ナイフを男に突きつける。
「今から食料となるのに、最期の言葉はそれでいい?」
「おい、待て。冗談だよな?」
「これが冗談に見える?」
メイド服の女性はナイフを振りかぶり、一気に振り下ろす。
「待て、待て!よせ!」
男はメイド服の女性の手首を掴み、その手を止める。
「貴方、拘束器具は…!?」
メイド服の女性を突き飛ばし、近くの扉から転がり出る。
「ここは何処だ?」
出た先は、赤い絨毯が敷かれた長い廊下。
背後から音がして、慌てて全速力で走る。
「ここから逃げなきゃ…出口は何処だ?」
現在地がわからないまま走り続けて、目の前の扉を開ける。
広いところに出た。
おそらくホールだろう。
階段を一気に駆け下りて、大きな扉を開ける。
目の前に広がった光景は…金髪の小さな女の子が不思議そうにこちらを見つめていた。
「貴方はだあれ?」
「えっ…あっ…」
返答に困ったが、この館に住んでいるとなればこの少女も…。
そう考えた時には、男は金髪少女の横を通り抜けた。
「あっ、待てー!」
金髪少女に飛びつかれ…そのまま壁まで吹き飛ばされた。
「〜〜!、!?」
あまりの激痛に声すらだせなかった。
「もう壊れたの?」
金髪少女が近寄ってくる。
「じゃあ…死んじゃえ♪」
金髪少女は小さな手をこちらに向ける。
「きゅっとして…」
何やらやばい雰囲気を匂わせる。
逃げようとするが、痛みで体が痺れている。
そうこうしている間に、少女の手はどんどん縮まっていく。
「どかー…あれ?」
突然、金髪少女が疑問の声を上げた。
「どこいったの?」
「?」
男も思わず疑問の声を上げた。
何故目の前にいるのに、この少女は俺を見失っているのだろうと。
「(よく分からんが…今なら逃げられる!)」
痛む体に鞭を叩いて、出口の扉に向かう。
しかし、ノブを回しても開かない。
「くそっ、開け!開けよ!」
ノブをいくら回しても開かない。
「あっ、見ーつけた♪」
恐怖の少女の声が聞こえ、振り向いた瞬間には首根っこを掴まれていた。
そのまま施錠されていた扉ごと、投げ飛ばされた。
「今度こそ終わりにしてあげる」
金髪少女が近づいてくる。
男は周囲に目を配らせ、シャベルを見つける。
「(これなら…!?)」
しかし、シャベルを掴む前に金髪少女に首を締められる。
「かっ…!?」
窒息の苦しみに悶えながらもシャベルを掴み、金髪少女の腹に突き刺した。
「ごぅぼっ…!」
シャベルを刺された金髪少女は、力無く地面に倒れる。
「げほっげほっ…」
咳き込みながら、金髪少女の死体を見る。
「(やっ、やっ、やってしまった…)」
血まみれの手を見て、思わず震える。
「…フラン?」
その時、別の女性の声が聞こえた。
慌てて振り返ると、先ほどの金髪少女に似た少女が立っていた。
何故か、羽が生えている。
「貴様!」
抵抗する間もなく、羽が生えている少女に胸倉を掴まれる。
そして、少女の小さな手が男の腹を貫通した。
腹部から鮮血が溢れ出る。
「よくもフランを!死になさい!」
羽が生えている少女は、血まみれの手を振り上げた。
「待って、待ってお姉様!」
制止の声に、羽が生えている少女は動きを止める。
「何かしらフラン。私はこいつを殺すところなのよ」
「だからそれを待ってってば。私決めたの!」
「?」
羽が生えている少女は疑問の声を上げる。
フランと呼ばれた少女は、腹から血を流して気を失っている男を指差してこう言った。
「この男を、私の奴隷にする!」
男は思いもしないだろう。
まさか、目を覚ましたらフランと呼ばれた少女の奴隷になっているなんて…。