音ゲーしてたら思いついた物語ですw
普段は別サイトでオリジナル小説ばっか書きますが、今回は東方アレンジです。
満月が霞んで見える夜。何も考えず夜道を一人で歩いていた。
結城 和馬 17歳。高3。
「ただいま。」
自宅へ帰り一言残すと、すぐに母の返事を聞き、すっと部屋へ入って行った。
特に変わったことのない、普通の毎日を過ごしていた。
翌日、またいつもとおなじ日常が迎える。
・・・しかし、今夜は違った。
帰り道、突然周囲を暗闇が包む。暗黒の奥からは、一人の女性。
「ん~、もうすこし強そうな子がいいのだけれど、この際贅沢はなしか。」
「・・・!?」
驚きと恐怖で言葉が出なかった。
「ねぇ君、今の生活に満足してる?」
「え、えっと、、、。」
「ごめんなさいね。変な質問しちゃって。」
とりあえず落ち着こう。目を閉じて。深呼吸。深呼吸。目を開いて。
「えーと、どなたですか?」
「私? 私は八雲紫。君のことは聞かないでも分かるわ。和馬君。」
「で、何の用ですか?この暗いのはあなたがやったものでしょう?早くやめてくれませんか?」
厄介事の予感しかしない。とりあえず早く帰りたい。
「君に話があるの。ちょっと手伝ってほしくて。」
面倒事確定コースキマシタワー・・・。
「・・・一応聞いておきます。何をすればいいんですか?」
「一緒に異世界へ行って、私の下で働いてほしいの。」
「嫌です。」
話を遮るように断った。冗談じゃない。
「ふーん。そう。じきに君から行きたくなるから問題ないわ。」
いやいや。ないから。
彼女は放った暗闇をしまい、暗闇とともに姿を消した。
今起きたちょっとおかしな体験を思い返しながら、帰り道を急いだ。
「ただいま。」
自宅へ着くと、いつもの一言。しかし返事がない。
出かけているのかな。しかしリビングの電気はついている。テレビの音も聞こえる。
部屋の扉をあけると、母がいた。いつも通り椅子に座ってテレビを見ていた。
「ただいま。」
返事はなかった。
「母さん?母さん?」
やはり返事はない。
なんだろう。この自分の心を握られているかのような緊張感は。
どれだけ声をかけてもダメだった。
いよいよ肩を掴もうとする。
自分の腕は母の肩を貫通した。まるで透明人間。辛すぎる現実に、しばらく動けないでいた。
飯の時間がやってきた。妹が二階から下りてき、席に着く。
椅子が一つ減っている。箸も、茶碗も、あるはずのものがない。
まるで、最初から和馬という人間がいないかのような。
ありえない現実に涙を流し、家を出た。
走った。とにかく走った。原因の元であろうあの場所へ。
「おい!どこだァ!どこにいるんだァ!!!!」
精一杯の声で叫んだ。叫び続けていると、彼女はすぐに姿を現した。
「あら~?どうしたの?そんな疲れた顔して。」
「お前・・・。俺に何したんだよ!」
「それは君もわかってるでしょう?」
怒りと辛さでどうにかなりそうだった。我慢が限界に達した。
ついに拳を向け、殴りかかった。
しかし、謎の力に跳ね返された。何度立ち向かっても無駄だった。
「君にもう一度問う。今の生活に満足してる?」
「してねぇよ。アンタのせいでな。」
「私なら君を、今より幸せにできるわよ? 私の頼み、聞いてくれる?」
もう諦めた。
「・・・わかったよ。アンタの頼み聞いてやるよ。」
紫は静かに微笑んだ。
「ふふ、ありがと。さっそくだけど、君は私と契約を結ぶの。」
「・・・契約?」
「式神の契約。君には異世界で私の式として働いてもらうの。」
式神。多分、部下ってことだよな。
紫から折り紙くらいの紙とナイフを渡された。
「君の血で名前をカタカナで書いて。痛みはないから安心して。」
右手の指に小さな傷をつけ、血を出した。が、名前が思い出せない。
「な、なんで?名前がわからない。」
「それもそのはず。私が名前を奪った。だから周囲から認識されなくなったのよ。」
理屈はどうであれ、やっぱりコイツの仕業か。
「名前を戻してあげてもいいけど、せっかくだし私が新しい名をあげる。」
いや、返してよ。と突っ込む間もなく考え始める。
「そうねぇ、あなたと初めてあった時は月が霞んで見えてたわねぇ。」
そういえばそうだった。
「虚。今からあなたの名前は虚よ。朧月を見てる君は、虚ろな目をしていたから。」
「虚・・・。」
紙に ウツロ と血で記し、紙を渡した。
「あなたは私に血で約束を渡した。私もあなたに、異世界渡航の許可と最低限の生活保障を約束してあげる。」
儀式を行うから少し下がりなさいと指示を受け。後ろに下がった。
「賢者 八雲紫の名のもとに、血の主を式神とする。幻想の都へと誘おう。」
眩い光が放たれ、虚の左手に集約した。そして掌に刻まれる、虚の文字。
「これで終わり。よろしくね。」
微笑みを見せると、右手を上げ、ゆっくり闇を戻していく。
彼女の横に、金髪の幼い少女がいるのが見えた。
そうして意識は途絶えた。