期待に応えられるよう頑張ります。本編どうぞ。
牧野真一は、大のゲーム好きである。
子供のころからゲームが好きで、一人でも遊ぶ時はもちろん、友達と遊ぶ時ときもいつもゲームをして遊んだ。親からは目が悪くなるからやめなさいと注意されてきたが、生まれてこのかた彼の視力が1.5を下回ったことはない。
中学、高校、大学と歳を重ねるにつれて、友達の多くはゲームを卒業していった。しかし、彼のゲーム好きは留まることを知らなった。周りから友達がいなくなろうとも、たとえボッチになろうとも、オタクと言われようとも、彼はゲームをし続ける。
Q.それはなぜか?
A.ゲームが好きだから。
それ以上の理由もそれ以下も理由も、真一は持ち合わせていない。好きなものは好きなのだ。
そんな彼の悪い癖は、あらゆることをゲームに置き換えて考えることであった。
幻想郷において“ゲーム”という単語はあまり広まっていない。幻想入りした古いゲーム機こそあっても、それが人の手に渡ることは滅多にないし、大半が壊れていて起動することはない。
咲夜と美鈴は、真一の言うゲームという単語にクエスチョンマークを浮かべるが、真一の笑顔を見た2人にはそんな疑問はどうでもよくなっていた。
「あの、すみません。お名前を教えてもらってもいいですか?」
咲夜の隣にいた美鈴が手を上げて質問する。そう言えばまだ名乗っていなかったと思い、彼は答える。
「オレは牧野真一。真一でいいぞ」
「十六夜咲夜と申します」
「紅美鈴。紅魔館の門番をやっています」
咲夜はスカートと端をつまみながら、美鈴は敬礼をするように右手をビシッとさせて自己紹介をする。
「それでなんですが、真一さんが倒れていた場所にこんなものが落ちてたんですが、真一さんの私物でしょうか?」
「!?」
美鈴は“それ”を持ちだす。咲夜も美鈴も“それ”には見覚えはなかった。見覚えがないからこそ、外来人である彼のものではないかと考えた美鈴は、真一の傍にバラバラになって落ちていた“それ”を念のため持ち帰ったのだ。
そして“それ”を見た瞬間、彼の目が変わった。
*――――――――――――――*
おい。
おいおい。
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。
………嘘だろおい。
「オレの3DSゥゥウウウウ!!?」
見た瞬間、涙が止まらなかった。
メーリンさん(漢字わからん)が差し出したのは、見るも無残にバラバラになった3DSと、真っ二つに割れたポケ〇ンのカートリッチ。
壊れた原因は間違いなく、オレと一緒に空から落ちた衝撃だろう。クレーターができるほど高いところから落ちたんだ、壊れないわけがない。そう考えると、オレよく生きてたな、奇跡か。
3DSはまだいい。金はかかるが買い直せる。だがカートリッジ。お前はダメだ。お前だけは壊れちゃいかん。いかんのや。
「ど、どうしてこんなことに……オレのポケ〇ンたち……オレの495時間……」
「そ、そんなにも大切なものだったんですか!?」
突然涙を流すオレに2人は慌てだす。
本当に、本ッ当に申し訳ない。咲夜さんもメーリンさんも全く悪くないのに。でもごめん。この怒りと悲しみ、ぶちまけさせてください。
「当たり前だろう!! この中にはなぁ、オレの愛情を懸けて育てた仲間たちがいたんだ!! それをおま……こんな見るも無残な姿に……うわああぁぁぁぁぁぁ!」
余りの悲しみに泣き崩れるオレ。わかる人にはわかるはずだ、言葉では決していい表せない、この深い悲しみを。
返せぇ………! オレの495時間返せぇ…………!!
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ………」
「(さ、咲夜さん! どうするんですかコレ! 真一さん泣いちゃいましたよ! 私たちどうすればいいんですかコレ!)」
「(おおおおおちつきなさい。こういう時こそ冷静に物事を判断し、対応するのが瀟洒よ。何とかして励まさないと……)」
「(はッ、思い出しました! この前パチュリー様に貸してもらった本に書いてありましたよ! 悲しみに打ちひしがれている男の人に優しい言葉をかけながら抱擁するとイチコロだって!)」
「(
「(そう言う意味のイチコロじゃないですよ!? さ、咲夜さんがやらないのなら私がやります! 早い者勝ちですからね!)」
「(ちょ、待ちなさい美鈴!?)」
「(女、紅美鈴……! 行かせてもらいます!)」
「はぁーすっきりした」
「ひゃああああああ!?」
ん、どうしたんだメーリンさん、急にしりもちついて。どうでもいいけどメーリンさん、スカートからチラッと見える生足めっちゃ綺麗ですね。口に出したらセクハラで蹴られそうだから言わないけど。
しかしスッキリしたぜ。オレはどこかのマンガで出てくる悪役のように、悲しいときには全力で泣き叫ぶ質なのだ。本当に頭がスッキリする。さらばだ、オレのポケ〇んたち。お前たちとの思い出は死ぬまで忘れん。
「大丈夫ッスかメーリンさん?」
「えっ…………あ、はい」
しりもちをついていたメーリンさんに、手を差し出す。メーリンさんはほんの少し躊躇した後、オレの手を握り立ち上がる。………けっこうデカいな。あ、身長の話だよ。
しかしメーリンさんには悪い事してばかりだな。聞けばこの幻想郷、妖怪とか言うバイオレンスな存在が多々生息するらしいじゃないか。もしメーリンさんに保護してもらえなかったら、オレは気絶しているところを妖怪に喰われていたかもしれない。そう考えると、メーリンさんはオレの命の恩人だ。
冒険の前に、恩返しが先だな。これは。
未だにオレの手を離さないメーリンさんにオレは言った。
「メーリンさん。貴女に恩返しがしたい。オレができることがあれば、何でも言ってくれ」
*――――――――――――――*
『何でも言ってくれ』
『何でも言ってくれ』
『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』『何でも言ってくれ』
美鈴は自分の耳を疑った。隣にいた咲夜も耳を疑った。しかし、彼は間違いなくそう言ったのだ。
『何でも言ってくれ』
それは、“彼女たちみたいなドブスが男から絶対に言われないだろう言葉ランキングトップ10”に入る言葉。
それは、モテない彼女たちが心の奥底に封じていた『異性と混じりたい(いろんな意味で)』という気持ちをいともたやすく開放する、魔法の呪文。
この言葉が咲夜と美鈴の頭の中に延々とこだまする。
先に正気に戻ったのは美鈴。そして彼女は思った。
このチャンスを逃せば、私は死ぬまで甘酸っぱい青春の1ページを刻むことはできない、と。
このチャンスを逃せば、私は死ぬまで処女を卒業できないだろう、と。
「ほ、本当に、何でもいいんですか?」
「おう。オレに出来ることならだけど……どうしたんだメーリンさん、身体が震えてるぞ」
それもそのはず。美鈴は真一に名前を呼ばれるたびに身体が火照り、自分の中の妖怪の本能が解き放たれそうになるのを必死で我慢しているのだ。
我慢が解かれたら真一はここで喰われてしまうだろう。もちろん性的な意味でだ。
覚悟を決めた美鈴は、今なお握っていた真一の右手を両手でつかみ、お願いを口にした。
「で、でしたら! その、………わ、私と、セッ」
グザァ!
「あら大変。美鈴ったらいきなり倒れてしまったわ」
「……え? ……え?? いやあの、メーリンさんの頭にナイフが刺さってるんだけど……」
「大丈夫ですよ真一様。彼女は妖怪、この程度では死にませんわ」
「いや……けっこう深々とナイフが突き刺さってるように見えるんだけど………」
「大丈夫ですよ真一様。彼女は妖怪、この程度では死にませんわ」
笑顔で同じことを繰り返していう咲夜に、真一は思った。これは“はい”を選択しないと次に進まないやつだと。
真一には、突然メーリンの頭からナイフが生えたのように見えた。実際には、美鈴が薄い本的な展開になりかねない危険なワードを言いかけた瞬間、咲夜が時を止めてナイフを思いっきり突き刺しただけである。
彼女の能力を知らない真一は不思議に思ったが、深くは聞かないようにすることにした。
「真一様も突然の幻想入りでお疲れでしょう。今日はごゆっくりとお休みください」
「え? いいのか? 邪魔ならもう出ていくけど」
「とんでもございません! 外は真一様がご想像している以上に危険が沢山ございます。このまま真一様を見殺しにするようなマネ、私にはできません」
「お、おう……確かに何の装備も整えずに出てくのは危険か……わかった。お言葉に甘えさせてもらうよ。ありがとう咲夜さん」
「メイド長として当然の事です(ありがとうっていわれた……ありがとうっていわれた………!)」
咲夜の決死の引き留めで、真一は紅魔館に残ることに決めた。
しかし、先ほどの咲夜の言葉に嘘はない。真一は幻想郷を少し甘く見ている。力を持たない外来人に取って、それは大きな命取りとなる。
下準備は大事。真一はそのことを改めて確認し、咲夜に紅魔館を案内されるのだった。
「(……そういやメーリンさんどこ行ったんだ? さっきまで倒れてたのに、いつの間にか消えてっぞ)」
「どうかされましたか?」
「いや、メーリンさんってどこに」
「大丈夫ですよ真一様。彼女は妖怪、あの程度では死にませんわ」
「アッハイ」
*―――――――そのころ紅魔館前――――――*
「」←メーリン
「よっと。今日は占いで良い結果だったから気分が良い。門から入ってやろう……って寝てるし。相変わらず仕事のしない門番だな」
「」←メーリン
「ナイフが刺さってるってことは、咲夜に寝てるのがバレたのか?まぁいいや。お邪魔するぜ」
「」←メーr(ry
「しっかし運命の出会いかぁ………期待しないで期待しておくぜ」