どうやらオレは巻き込まれ体質らしい 作:どらい
『なんで私が・・・もう1人いるの!?』
『こんにちは、もう1人の私・・・。でもこの世界に私は2人は要らないの・・・。だから』
『きゃあああああああああ!!!』
「うおっ!なにこれ怖っ」
オレは今、夜の怖いもの特集というテレビ番組を見ている。開始10分で鳥肌が半端ないことになってる。これ以上見ると眠れなくなりそうだからもう見るのやめよう。リモコンを操作してテレビを消したオレはそのままソファーに寄りかかり一息ついて-----ふと思いついた。
(今テレビでやってたやつをアリサにやったら、毎日罵倒されてる仕返しができるんじゃないか?)
もう1人の自分を見た時、アリサはどんな反応をするのか楽しみになったオレは明日の休日を利用して、アリサを驚かせるための準備をすることにした。
(羽島カイの反撃始まります)
次の日、オレは大型スーパーに来ていた。この大型スーパーには色々な店が中に入っており、日用品はもちろんカードショップなどもあってカードを購入することもできるのだ。そしてオレはカツラが売っている店の前に立っている。ここはパーティー用から日常的に使うものまで買うことのできる店である。
「お客様。何かお探しの物はあるでしょうか?」
店員さんが話しかけてきた。おお、小学生にもちゃんと接客してくれるらしい。冷やかしだとは思われていないようだ。
「えーと、予算はあまりないんですけど金髪の女性用のカツラってありますか?」
「ありますよ!こちらです」
店員さんに案内されて金髪コーナーまで来るとそこにはたくさんの種類のカツラがあった。色々試着して一番アリサに近いものを購入した。小学生のお小遣いには少しきついお値段だったが気にしない。これもアリサに反撃するためだ!
「ありがとうございました」
店員さんの声を背に次にオレはコンタクトを買いに雑貨屋に向かった。雑貨屋で緑のカラーコンタクトを購入し家に帰る。
(ふふふ、アリサよ覚悟するがいい)
オレはワクワクしながら眠りについた。
そして迎えた月曜日。学校が放課になり今はオレとアリサとすずかの3人で帰路についている。なのはは用があるといって帰ってしまった。いよいよ作戦を実行するときがやってきた。
「あ、学校に忘れ物しちゃったから取りに行ってくる」
「待ってようか?」
「私たちも一緒に行くよ」
「ううん、大丈夫。すぐ追いつくから先行ってて」
「わかったわ」
「また後でね」
アリサたちと別れオレはすぐ物陰に入る。カバンから金髪のカツラとカラーコンタクトを取り出しすぐに装着する。昨日練習したせいか、すぐにコンタクトをつけることができた。羽島カイ戦闘準備完了!今から現場に急行します!
物陰から出ると談笑しながら歩いている2人が見えた。オレは走っていき、アリサたちに声をかける。
「見つけたわ、もう1人の私」
「え?・・・」
「アリサちゃん、どうしたの・・・」
オレを見て2人が固まっている。ふははははは!どうやら恐怖で動けないようだな、2人とも顔が引きつっているぞ。そしてアリサよ、今までの罵倒の分さらに怖がらせてやるぜ。
「この世界に2人も私は要らないの。だから消えてもらうわ」
そういってアリサの肩をつかもうとするオレ。さあもう1人の自分に恐怖するがいい!!ふはははははははは・・・
「何やってんのよ、アンタ」
「そういう趣味に目覚めちゃったの?カイ君」
「は・・・・!?」
羽島カイ緊急停止。今この2人なんて言った?まさか最初からばれていたのか!?すずかに至っては本当に心配するような目でこちらを見ている。やめて、そんな目でオレを見ないで!
「オレの完璧な変装がばれていた・・・だと」
「だって声がアンタだし、服装も制服だしね」
「しかも今のセリフ土曜日にテレビでやってたやつだよね?」
「・・・・・」
うかつだった!このオレとしたことがそこまで考えつかなかった!?しかもすずか、君も土曜日にやってた怖いもの特集見てたんだね・・・。
「ふ、ふん!どうやら少しはやるようじゃないか・・・。今日はこの辺で勘弁してやろうではないか・・・だからそんなゴミを見るような目で見ないでください、お願いしますアリサさん」
「私のことが好きすぎてついに変態行為に走ったかと思ったわ」
「いや、違うから!アリサを脅かそうと思ってやったんだよ!」
「私を驚かせようなんて100年早いわよ。そのカツラとコンタクトどうしたのよ?」
「・・・買った」
「ぷっ!!わざわざ買ったのアンタ」
アリサが噴き出した。大佐ァ、こちら羽島!アリサに仕返しするどころか尋常じゃない被害を受けているんだが!!
「う、うるさい!これでも結構高かったんだよ!」
「頑張ったんだね、カイ君」
すずかのフォローがオレの心をさらに傷つける。ぐああああああ!もう嫌だ!!すぐさまこの場を離脱しないと。
「ちょっと、オレ着替えてくるぅぅぅぅ!!」
「はいはい、待ってるわね」
「急がなくていいからね」
オレは涙の逃走を開始した。もうヤダ!オレの心はズタズタだよ!そして着替えるために物陰に入ろうとしたとき、路駐してあった黒い車の扉が開いてオレの手を掴んできた。
「へっ?」
そんな間抜けな声を残しオレは車に引きずり込まれた。え?マジで何なのコレ。ドラマの撮影?
「よし、目標を確保した。車を出せ」
サングラスをしたおじさんがなんか言っている。やばい、誤解を解かないと!ドラマの撮影に俳優じゃない一般人が参加しちゃまずいだろ!!
「ちょっと、勘違いしてま・・・むぐっ!?」
オレは俳優じゃなくて一般人だと説明しようと思ったら、布のようなもので口と鼻を覆われ気を失ってしまった。
「え?」
「アリサちゃん、あれって!?」
隣にいるすずかが焦った様子で話しかけてくるけど、私も今目の前で起こった出来事に動揺を隠せない。私の格好をしたカイが急に車に引きずり込まれて・・・まさか誘拐!?あの格好をしたカイを連れ去ったってことは狙いは私だったってこと!?いや、今はこんなことしてる場合じゃない!
「すずか、忍さんに連絡して!私は自分の家に連絡するから!!」
「う、うん!」
私は焦る気持ちを押さえつけながら家に連絡をした。幸いナンバーは覚えていたから見つかるのは時間の問題だと思うけど・・・。お願いカイ、無事でいて。
「む?」
目が覚めたオレが最初に見た光景はもう使われていないと思われるビルの室内だった。
(え?ナニコレ)
「目を覚ましたようだな」
オレが内心パニックに陥っていると近くに立っていたおじさんが話しかけてきた。
(え~と・・・そうだこれはドラマの撮影でオレは子役と間違われてここまで連れてこられたんだ!早く誤解を解かなきゃ)
「んん~んんんんんんんんんんんん~(ちょっと~オレは子役じゃないですよ~)」
・・・どうやら、両手足を縛られているだけじゃなくて口もふさがれているようだ。これじゃ誤解が解けないじゃないか!?どうするんだコレ、あとで怒られるのは嫌なんだけど!?
「おとなしくしときな、お前は金が手に入るまでの人質だ。まあ、金が手に入った後はどうなるかわからねえがな」
そういうとおじさんは笑い始めた。近くにいたおじさんの俳優仲間だと思われる人たちもにやにやと笑い始めた。まずい!もう撮影が始まっているようだ。俳優の人たちが演技に入っちゃってるよ!?しょうがない、この人たちにも予定があるだろうしオレも頑張って演じることにしよう。
「むむむむむむむ~!!(ダレカタスケテー(棒))」
「しかし目標は女じゃないんですか?男物の制服を着てるんですが」
まずい、ばれて怒られる!
「気まぐれかなんかだろう。この髪と瞳の色、さらには聖祥大付属の制服・・・間違いなくこいつがアリサバニングスだ!」
「確かにそうですね。アニキ、こいつ俺の好みなんですけど・・・」
「ああ、殺さなければ好きにしていい」
「ありがとうございます!!さてアリサちゃん、お兄さんといいことしようね~」
下種な笑い方をしながらおじさんBが近づいてくる。ちょっと待って!今アリサって言ったよね!?これドラマの撮影じゃなくてマジもんの誘拐なの!?しかも貞操の危機感じるんですけど!
「むむむむむむむ!!(近づくなおじさんB!!)」
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか、アリサちゃん」
ひええええええええええええ(泣)!この人怖いよ、小学生相手に舌なめずりして近づいてくるよ!!助けて(貞操的な意味で)!!
「そこまでだ!!」
おじさんBがオレに触れようとしたときに、入り口からドサドサという音と共に声が聞こえてきたので反射的にそちらの方を向く。そこにいたのは・・・
「その子を離してもらおうか・・・」
士郎さんと恭也さんだった。うおおおおおおおおお(歓喜)!助けが来たぞ!今この部屋に残っているのはサングラスをかけたおじさんとおじさんBだけだ。オレと恭也さんの目が合う。信じてますよとアイコンタクトを送る。
「ぶはっ!・・・いや何でもない。覚悟しろよ」
何か今恭也さんが笑ったような気がしたんだけど。慌てて格好つけても遅いんですが。
「ぐあっ」
「おげっ」
そんなこんなで2人に倒されるオジサンたち、救出されるオレ。紐をほどいている時に、恭也さんが震えていたのは気のせいだと思いたい。
「大丈夫かい?カイ君」
「すみません、助かりました」
「君が攫われたと聞いたときはとても心配したけど無事でよかった」
士郎さんがオレに話しかけてくれる。アリサの格好をしていなければ名シーンだったはずなんだけどな。
「ところでその恰好は・・・!?」
「ぶはっ!!」
士郎さんがオレの格好を聞いてきた瞬間に恭也さんが噴き出した。ぐあああああ、恥ずかしい!!やっぱさっきも笑ってたんですね!?
「え~と、これは・・・」
どう説明しようか・・・と悩んでいると涙目のアリサとすずかが入り口から飛び込んできた。後ろから忍さんも歩いてきた。
「無事でよかった!!」
「本当に心配したんだから!!」
「う、うん。ごめん」
2人はオレのことを本気で心配してくれていたらしい。すごくうれしいんだけど格好が格好だからね・・・。
「カイ君・・・災難だったわね・・・ふふっ」
忍さんも笑ってるんですけど!?もうやめて、オレのメンタルポイント(略してMP)はもう0よ!!
結局本当のことをみんなに話して、オレは一生消えない黒歴史を作ったのであった。・・・もう女装なんてしない!!絶対に!
読んでいただきありがとうございます。