どうやらオレは巻き込まれ体質らしい 作:どらい
「・・・・・」
「・・・にゃ~」
「・・・・・」
「・・・にゃ~」
プレシアさんに買ってもらった高級ネギと大根を買い物袋に入れて、ルンルン気分で帰宅したのはいいが、玄関の前に薄汚れた猫が丸くなっているのが見えた。しかもこちらを見て悲しそうに鳴いているではないか。周囲を見渡してみても、飼い主らしき人を確認することはできない。
捨て猫だろうか?こんなに可愛い猫を捨てるなんて許せんよなあ?
お~よしよし。ひどい目にあったんだね。なでこなでこ。
「にゃ~」
くっそ可愛いんですが。思わず鼻血が出そうである。こちらを見て、撫でている手に嬉しそうに反応する猫。ふさふさで柔らかい。改めて周囲を見渡し人がいないことを確認する。
・・・よし。
「君は家で飼うことにしよう」
ちょうど昨日の朝、すずかがタマ(仮称)を迎えに来たのだが、タマ(仮称)は謎の逃走劇を繰り広げて、結局家で飼うことになったのである。両親はタマ(仮称)のことを大層気に入っていたので大喜びだったが。こんなオレでもタマ(仮称)に気に入られていたらしい。すずかも飼い主が見つかってよかったと喜んでいた。やはりあの子は天使かなんかだろう。ドッジボールの時には堕天するけど。
余談だが、タマ(仮称)が昨日からオレの顔面で寝なくなった。やっと毎朝の死の危険から遠ざかることができた。余は嬉しい!
玄関の鍵を開けてから買い物袋の中身を冷蔵庫に入れる。その後再び玄関に戻り両手で猫を抱え上げ、ふろ場に直行する。まずは猫をきれいにすることにしよう。
まずは温めの温度のお湯で、猫をお湯攻めにする。うむ、とても気持ちよさそうに鳴いておる。その後は昨日母さんが買ってきた猫用のボディーソープを使用し、泡攻め。そして再びお湯攻め。
見た目もきれいになり良い匂いをするようになった猫をタオルでくるむ。猫の体から水気を取ってやったぜ。おい、頭を擦り付けるんじゃない。可愛くて悶え死ぬだろうが。
「君の名前は・・・何にしようか」
猫にミルクと缶詰の餌を与え、しばし考える。しばらく考えてもいい名前が思い浮かばなかったので、とりあえず両親が帰ってくるまで保留にする。タマ(仮称)の名前も考えなくては。
「いいか、タマ(仮称)?この子は新しい家族だ。喧嘩するんじゃないぞ」
「にゃ!」
猫が食事を終えた後、タマ(仮称)と対面させる。気のせいか前足で敬礼しているように見える。やっぱこいつ凄く賢くない?しかもタマ(仮称)で反応してるし、名前はタマがいいかもしれない。両親もタマって呼んでいるし。
「よし、今日から君の名前はタマだ」
「?」
不思議そうにしている。確かに口では伝わりづらかったか。
猫同士は喧嘩するものだと思っていたが、どうやらそれはオレの杞憂だったらしい。2匹とも楽しそうにじゃれている。
・・・少しアグレッシブすぎるんじゃないかという点を除けば。
君たちなんでオレを追いかけてるんですかね?ぴょんぴょん飛んできて、その度に紙一重で躱すという流れが出来上がってるんだが。
そんなにオレの頭の上が好みかい?おかげでオレは家の中を走り回る事態に陥ってるじゃないか!
逃げながら2匹の方を確認。・・・目が怖いよ!!
「うおおおおおお!!」
「にゃー!!」
「にゃー!!」
我が家の猫は元気そうです。
「艦長!通信です!」
今日もいつも通り、ジュエルシードの探索をしようと思っていた時、アースラに通信が入った。私は画面の向こうにいるきれいな女の人が誰かわからなかったけど、アースラの人たちは知っていたみたいで動揺していたの。
『こんにちは管理局の皆さん。私の名前はプレシア・テスタロッサ。フェイトの母親よ』
どうやらフェイトちゃんの母親らしい。私のお母さんと一緒で、とても若く見える。
その挨拶を聞いてリンディさんが答えることにしたらしい。
「ご丁寧にありがとうございます。私はL級巡航艦アースラ艦長、リンディ・ハラオウンです。プレシア女史、本日はどのような用件でしょうか?」
『私がフェイトに命じて集めさせていたジュエルシードを、そちらに引き渡そうと思いまして』
「なんですって?」
再びアースラに動揺が走る。そういう私も隣にいるユーノ君も動揺が隠しきれない。フェイトちゃんはプレシアさんの為に集めてたんじゃなかったの?
「どういう訳か教えてもらえますか?」
『ええ、もちろん。ジュエルシードを集めていたのは・・・』
プレシアさんの口からジュエルシードのことについて語られる。プレシアさんの話によると、色々な次元世界について調べていた最中に偶然、ジュエルシードが散らばったことを知ったらしい。その後ジュエルシードの危険性を知ったプレシアさんは、フェイトちゃんにジュエルシードを回収するように言ったらしい。また、何故クロノ君と敵対していたのかという質問に対しては、管理局を語ってジュエルシードを手に入れる輩かもしれないから、渡してはいけないとプレシアさんが伝えていたそうだ。
だからフェイトちゃんはお母さんのためって言ってたんだね。私は疑問がはれて納得した。
「なるほど、お話はわかりました。それでは、後日こちらに来ていただくということでよろしいですね?」
『ええ』
「わかりました。・・・私たちはもう一つ貴女に聞きたいことがあるのですが」
これで話は終わりかと思っていたら、そうではなかったようだ。気のせいかさっきよりもリンディさんたちの顔が強張っているように見える。
『・・・何かしら?』
「プレシア女史、貴女にはプロジェクトFなどの違法研究の容疑がかかっています。貴女の娘さんのフェイトさんは・・・」
『・・・ええ』
「やはり・・・」
どういうこと?プロジェクトFって何なの?
『・・・全てはあの事故から始まったの』
「・・・大型魔術駆動炉ヒュードラの暴走事故」
『・・・そうよ』
プレシアさんは魔術駆動炉の実験の安全性を訴えたが、上層部はそれを無視して実験を行った結果、駆動炉は暴走。その責任は全てプレシアさんに押し付けられたそうだ。その時の証拠も提示され、プレシアさんの話は本当のことだとわかった。そして、その時亡くなったアリシアちゃんの妹が欲しいという願いをせめてかなえてあげたいと思い、プロジェクトFの実験を始めたそうだ。使い魔を超える人造生命の作成と死者蘇生の研究、それがプロジェクト
・・・そんなに悲しい理由があったなんて思わなかった。フェイトちゃんは自分のことを聞いたのかな?
「そんなことが・・・」
『フェイトにはこのことを伝えてあるわ。でもフェイトは私のことを家族だと認めてくれた。私はアリシアもフェイトも愛して過ごしていこうと決めたのよ』
「・・・・・」
アースラの雰囲気が重くなる。確かに違法な研究だったかもしれないけど、プレシアさんはアリシアちゃんとフェイトちゃんのことを大事に思ってるんだ。
ん?・・・アリシアちゃん?
『ママーお話終わった?』
『ごめんね、まだなの。あっちでフェイトと遊んでてくれる?』
『はーい』
「・・・・え?」
その声が漏れたのは誰からだろうか。慌ててリンディさんがプレシアさんに尋ねる。
「ちょ、ちょっとすみません。今の声は・・・?」
『ああ、アリシアよ』
「アリシアさんは・・・その・・・亡くなったはずでは?」
『いえ、仮死状態だったの。最近目を覚まして・・・リンカーコアにヒュードラの魔力が影響していたみたい』
「・・・・・」
『・・・どうしたの?』
「・・・・え?」
リンディさんのかすれた声が静かなアースラの室内に響いた。
2日後にプレシアさんたちがアースラにやってきた。アリシアちゃんは検査をしたけど特に異常は無かったみたい。本当に良かった。
プレシアさんはリンディさんと今後のことで話し合いがあると言って、部屋に入っていった。
そして私は・・・。
「行くよ、フェイトちゃん!!」
「うん!!」
協力者となったフェイトちゃんとジュエルシードを封印することになったの。
目の前のジュエルシードの思念体さんを見ながら、フェイトちゃんに声をかける。するとフェイトちゃんから元気な返事が返ってくる。そのことに幸せをかみしめながら封印作業に没頭していくのでした。
祝!タマが羽島家の猫に。家庭内ヒエラルキーはお察しください。
もはや日常の話がほぼメインだった無印。
アリシアの仮死状態云々はプレシアさんの作り話です。
作品が日間ランキングに載っていました!本当にありがとうございます!