どうやらオレは巻き込まれ体質らしい   作:どらい

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短めです。


金髪少女とデバイス

「昨日は大変だった・・・」

 

昨日高町家で剣道の稽古をやっていたオレは、美由希さんの料理でとどめを刺された。それから数分の間記憶が飛んで、起きたら恭也さんに「今日はもう終わりにしよう」と言われ解散になった。早く帰れるのは良かったが、あの時の恭也さんの慈愛に満ちた表情が忘れられない。気のせいか、「また1つ強くなったな」なんて声が聞こえてきそうな表情であった。

なお稽古は今日も行われるそうです。母さんルートでオレの予定が士郎さんと恭也さんに知られてしまっていた。父さんも母さんも「カイが体を動かしてくれる機会ができて嬉しい」なんて笑顔で言うものだから断るに断れなくなってしまった。まあ、これも運動不足解消だと考えるようにしよう。気が付いたら外堀が埋められていて逃げることができなかったという訳ではない、断じて。

少し筋肉痛の残る腕を擦りながら今日も学校へと向かっていく。士郎さんはいったい何者なのか。あの人のマッサージのおかげ(せい)で筋肉痛が少ししかない。全身筋肉痛で今日の稽古は休みだと思って喜んでいた昨日のオレを殴りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばい、早く慣れないと・・・死ぬ」

 

今日の稽古は軽めだと言っていたのに、素振りを200回と走り込みをやらされるとは思わなんだ。むしろ全身が疲れてしまった。だけど、明日は休みだということで歓喜しているオレがいる。今日と明日は体を休めたい。

というか背中に背負っている木刀のせいで歩きづらいんだが。士郎さんが「これはカイ君専用の木刀だ、使ってくれ!」なんて笑顔で言うもんだから受け取るしかなった。これは家でも素振りをしろと遠回しに言ってるのか・・・?こんなにもらって微妙な気持ちになるプレゼントは初めてだ。

 

「これでオレが高町家の仲間入りをしてしまったらどうするんだ。種族が変わってしまうぞ」

 

『羽島カイ、種族タカマチ』とかなってしまったら笑えない。あの人たちは嬉々としてオレを稽古に呼び続けるだろう。オレの精神はボドボドダァ。

 

「・・・ん?」

 

内心ナーバスになっていると、公園のベンチに知り合いの少女がいることがわかった。なんか思い詰めてるような顔してるんだけど・・・。自分の洗濯物をお父さんの洗濯物と一緒に洗われでもしたのだろうか。うん、思春期特有の悩みだネ!きっと彼女のお父さんは誰もいないところで咽び泣いているに違いない。・・・お父さん、ファイトだ!

 

「あっ、カイ・・・」

 

1人で納得して頷いていると、ベンチに座っている少女がオレに気が付いたようだった。アッガイみたいに呼ばれたと思うのは気のせいだろう。最近被害妄想が過ぎる気がする。オレの精神状態はどうなっているのだろう。

 

「どうしたの?この世の終わりみたいな顔して。ガリガリ君の当たり棒でも落とした?」

 

「ううん、違うよ」

 

即答された。冗談でもかまして明るい雰囲気にしようと思ったのに効果が無かった。

カイ の ふんいきぶれいく →フェイトには こうかが なかった

今日も空回り絶好調である。流石オレ(棒)。

 

「カイなら話してもいいかな・・・」

 

暗い雰囲気のままフェイトが話し始めた。何でもジュエルシード集めを邪魔する輩がいて、フェイトは集めにくくなっているらしい。フェイトのお母さんのためにも相手の魔導師を倒してジュエルシードをたくさん集めなくてはならないそうだ。ついにフェイトの話に相手の組織っぽいのが出てくるようになったぞ。

おい、ジュエルシード。そんなにブームになっていたのか。まさかの少女たちの間だけでなくカンリキョクとかいう組織まで絡んでいるではないか。少女たちの争奪戦は怖い。そんなに一世を風靡しているのにオレは知らなかったとか、完全にオレの情報不足だ。だってしょうがないじゃん、家のパソコンで検索しても出てこないんだよ?

それはともかく相手の魔導師に対抗してジュエルシードを集める方法か。フェイトの設定だと、フェイトは速さに自信があって、相手の魔導師は砲撃型だそうだ。うん、あれか。ソニックVSバスターガンダムと考えればいいのか?・・・何その無理ゲー、勝てるの?

とにかく速さが全てであり、速さに勝てるものはないって言っておいた。一発一発の威力があっても、当たらなければどうということはないって赤い彗星のあのお方も言ってたしね。間違いではないと思われる。

フェイトは悩みが解決したみたいで笑顔になった。お、おう・・・良かったよ。ポケモンバトルでの素早さの重要性とか言ってただけだけど、どうやらそれが高評価だったようだ。

 

「あれ、カイその背中に背負っているものって?」

 

「ああ、これ?」

 

オレが速さについて力説した後にフェイトがオレが背中に背負っていた木刀に気が付いた。気になっているようなので背中から降ろして袋から取り出し、フェイトに見せる。

 

「これはまさか・・・カイのデバイスなの?」

 

デバイス?デバイス・・・って装置ということだよな?まあ、剣術に必要なものだからデバイスって言ってもいいかもしれん。

 

「ん?・・・そうだよ」

 

格好良くない?デバイスって言い方。気に入ったッ!これから木刀のことはデバイスと呼ぼう!・・・数日後に士郎さんたちに怪訝な顔されて言い方を直すことになるとはこの時のオレは知らなかった。

 

「アームドデバイスかな?カイ程の魔力量を持つ人が使っているぐらいだからきっと凄いんだろうなあ」

 

なんかフェイトさんが目を輝かせてオレの木刀を見ているんだけど。そんなに木刀が気に入ったのかな?

 

「少し素振りしてみる?」

 

「え?いいの?魔導士にとってデバイスは大切なのに?」

 

「うん、別に構わないよ」

 

大切っちゃあ大切だけど、普通にオレの木刀道場に打ち付けられたりしてるからね。主に恭也さんの武器落としで。あの人的確にオレの武器はたいてくるからね。昨日の模擬戦なんてそれで10回は落とされた。

 

「そっか、ありがとうカイ。素振りしてみるね」

 

「オッケー」

 

「そう言えばこのデバイスの名前何て言うの?」

 

「それは木刀って言うんだ」

 

「“ボクトウ”か・・・いい名前だね」

 

そんなに木刀の名前が気に入ったのだろうか。微笑んで木刀を握っている。

 

「よろしくね、ボクトウ」

 

「ぐはあっ」

 

「何!?どうしたのカイ!?」

 

フェイトさんが可愛すぎて辛い(吐血)。笑顔で木刀に話しかけてるよ。オレなんて一度もそんなことしてなかったのに。道具に慈しみを持って話しかけるとか天使か。そう言えば大切に使っている道具には、魂が宿るって聞いたことがあるけど、それはこういうことが関係しているのかもしれない。フェイト・・・恐ろしい子ッ。

 

「カイありがとう。ボクトウ返すね」

 

「お、おう」

 

オレが悶えている間にフェイトの素振りが終わったようだ。木刀が返ってくる。おお、木刀よ。これからオレも大切に使うからね・・・。

 

「カイにデバイスを見せてもらったし、今度は私のデバイスを見せるね」

 

「見せてくれんの?」

 

「うん」

 

次はフェイトが木刀を見せてくれるらしい。道具を大切に使うフェイトだ、さぞかしツヤや強度がしっかりしているに違いない。

 

「来て・・・バルディッシュ」

≪Yes,sir≫

 

「・・・え?」

 

今喋った?

そして変形音を出してフェイトの手に握られていたものは・・・

 

「これが私のデバイスで、名前はバルディッシュだよ」

 

「・・・・・」

 

どう見てもバトルアックスなんですが。なんかオレの知っている木刀と違う。

 

「どうしたの、カイ?」

 

「あ、いやオレの知っているデバイス違うな~って思って。こんなに格好いいの初めて見た」

 

「ありがとう、カイ」

≪Thanks≫

 

しかも喋るし。剣術って木刀とか竹刀とかじゃないと駄目だと思ってた。まさかこんなに格好いいのを使っていいなんて!声も渋いし格好いい!!惚れた!抱いて!・・・家帰ったらバルディッシュ調べてみよう。

 

「フェイトはこのデバイスを使って戦ってるんだな(試合相手と)」

 

「うん、いつもバルディッシュと一緒に戦ってるよ(魔導師と)」

 

「羨ましい!!」

 

「?カイだってボクトウと一緒に戦ってるんでしょ?」

 

今日は格好いい武器を見ることができた。家のパソコン(新しいものに変えた)で調べてみてもバルディッシュは出てこなかった。なんでだ。




フェイトさんはカイの木刀のことを『ボクトウという名前のデバイス』だと思っているようです。
今日も勘違いが仕事する。

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