ToLOVEる~氷炎の騎士~   作:カイナ

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第三話 新たな生活

炎佐とザスティンの激闘から数日が過ぎ、炎佐は平和な生活を取り戻していた。とはいえまた一つ騒動が起きているわけなのだが。

 

「なんのつもりだよララ!! いきなり転校してくるなんてっ!!」

 

「?」

 

リトは目の前にいる少女――リトと同じ彩南高校の女子用制服を着ているララ――に向けて声を上げ、それにララは不思議そうに首を傾げた。

 

「おかげで俺達学校の噂の的じゃねーか! おまけに俺ん家にいることまでバラしちまって!!」

 

「えー、だって……いつもリトのそばにいたかったんだもん」

 

リトの怒号に対しポッと頬を桃色に染め、はにかみながらそう言うララ。と美少女にそんなことを言われてドキッとしたらしいリトは頬を赤くしそれを隠すようにふいっと顔を逸らした。

 

「い……一応遠い親戚同士だって言い訳はしといたけどよ……」

 

「しかしプリンセス、一体どうやって転入手続きしたんですか?」

 

「あ、そう言われてみりゃ宇宙人なんだから戸籍もねえし……てか炎佐はどうやったんだ?」

 

「あぁ、俺は地球での戸籍を偽造したから。そういう専門の業者がいるんだよ、俺みたいに地球で静養したり地球で暮らすことを決めた宇宙人とか結構いるからさ」

 

「へ、へー……」

 

リトに続いて炎佐が尋ねるとリトもそこで気づいたようにそう言い、炎佐に問う。それに炎佐がさらっと地球なら間違いなく法に触れている事を説明するとリトは頬をひくつかせた。

 

「で、ララはどうやったんだ?」

 

「あーそれは簡単だよ。このガッコのコーチョーって人にお願いしたら“カワイイのでOKッ”って!」

 

((あのエロ校長……))

 

ララの天真爛漫な笑顔での言葉にリトと炎佐の心の中の声が一致した。

 

「でも心配しないで! 宇宙人ってことはヒミツにしてあるから」

 

「そんなん当たり前だ! ただでさえお前注目されてんのに宇宙人なんて知れたら大騒ぎに――」

[そんな単純な問題ではない!! ララ様はデビルーク星のプリンセス! それが公になれば命を狙われる可能性もあるのです!!]

 

ララの言葉にリトが叫ぶとそれを遮ってペケが声を上げる。

 

[ま、リト殿が本当に頼りになる男ならそんな心配する必要ないのですがね~]

 

「なんかトゲのある言い方だな……ってあれ? ペケじゃん。もしかしてその制服って……」

 

「そ! ペケが制服にチェンジしてるの」

 

「ペケは様々な服に変身できるコスチュームロボットだからな。リトも俺がザスティンと戦う時に鎧姿になったの見ただろ?」

 

「あー、あの鎧?」

 

ペケのトゲのある言葉にリトはカチンとくるが直後ララの髪留めがペケなのに気づき、ララが自分の制服はペケがチェンジしているものだと言うと炎佐も説明を挟み、リトが気づいたように尋ねると炎佐はポケットからペケの顔が書かれているバッジを取り出した。

 

「こいつはプリンセス・ララが開発した簡易ペケバッジの試作品。開発時に登録したものしかチェンジ出来ないのが難点なんだそうだが俺の戦闘用の鎧にチェンジ出来れば充分だ」

 

「あ、そのデータ後で頂戴ね。新しいの作って渡すから」

 

「光栄です」

 

炎佐の説明の後ララがそう言うと炎佐はぺこりと頭を下げる。とリトは頭をかいた。

 

「へ~……そんなの必要なのか?」

 

「当たり前だろうが。俺は戦う時はフレイム星人の力を使う時は炎を、ブリザド星人の力を使う時は氷を操る。もちろんその時々に応じて必要な分体温やそれによって周辺の気温を上下させることもあるからな。地球にはそこまでカバーできてかつ戦闘にまで耐えきれる服はそうそうないだろ?」

 

「た、確かに……」

 

炎佐の言葉にリトはまたもや頬をひくつかせる。

 

「オリジナルの鎧は今でも家の箪笥に保管してるし、やっぱオリジナルと比べると強度や耐熱等で劣るけど、流石に地球で鎧姿でうろつくわけにもいかないからな。素早く戦闘モードに入る時に役立つ」

 

[う~む……やはりエンザ殿にララ様の護衛をご依頼した方がよろしいでしょうか……]

 

「ペケ、今は静養中とはいえ俺は傭兵だ。正式に依頼するならそれなりの礼金用意してもらわないと俺も困る。ただでさえ護衛期間がいつまで続くのかも分からないんだしな」

 

[う……]

 

ペケの言葉に炎佐は冷たく言い放ち、ペケが黙り込む。と炎佐はあははっと無邪気に笑った。

 

「冗談だよ冗談。宇宙を駆ける傭兵エンザとしての建前はそっちだけど、地球人氷崎炎佐が友達である結城リトとララ・サタリン・デビルークを守るっていうならお金なんて取らないよ」

 

[む……]

 

炎佐の言葉にペケは一本取られたように黙り込み、ララも自信満々に口を開いた。

 

「エンザに頼らなくっても大丈夫だよペケ! リトはいざって時頼りになるから!」

 

「いや……そんなアテにされても……」

 

「モテる男は辛いね~リト君」

 

ララの言葉にリトはジト目でツッコミを入れ、炎佐はけらけらと笑いながらからかうようにそう言ったのであった。

 

 

 

 

 

それから数日が過ぎ、現在は体育の時間。男子はサッカー、女子は百メートル走を行っている。そして男子勢、炎佐はオフェンスに回ってボールをドリブルし、向かってくる男子達をどうにかかわしながらゴールに突進する。

 

「行かせるかっ!」

 

「わっサッカー部!? リトパスッ!」

 

「おうっ!」

 

しかし現役サッカー部相手では分が悪い。炎佐は迷うことなく近くでマークを外したリトにボールをパスし、リトはそのボールを受け取ると一気にゴール向けて走り出す。

 

「「させるかっ!!」」

 

リトがシュートの構えに入ったところで相手チームの二人が壁を作り、リトはくっと唸ってボールを蹴る。しかしそれは壁に弾かれるどころかそれに当たらないような方向に飛んでいった。それに壁二人はよしっと頷く。

 

「いけ、炎佐っ!!」

 

「「!?」」

 

リトの叫び声に反応し、思わずボールの方を見る二人組。そこにはいつの間にかボールに向けて走っている炎佐の姿があり、炎佐は飛び上がると空中で華麗に回転、空中回し蹴りをボールに叩き込みゴールへとボールを叩き込んだ。

 

「いっえーっい!!!」

 

着地した炎佐は両手を上げて歓声を上げ、味方チームも歓声を上げる。そしてリトは炎佐に歩き寄ると肩をぱしっと叩いた。

 

「ナイス!」

 

「無茶するよ」

 

「ザスティンと戦ってた時に空中で回し蹴りしてたの覚えてて咄嗟にな」

 

「地球で学生氷崎炎佐やってる時は力抑えてるつもりなんだから」

 

「あっと、そりゃ悪い」

 

リトと炎佐はこそこそと喋りあいながらフィールド中央へと戻っていき、試合が再開すると同時に再び走り出した。

そして授業も終わって昼休み。席に戻ったリトは弁当箱を取り出し、炎佐は荷物を席に置いて財布を取り出すと席を離れる。

 

「じゃあ僕パン買ってくるから」

 

「おう」

 

炎佐の言葉にリトは軽くそう返し、リトはすたすたと教室を出ていく。それからリトは直後聞こえてきた、春菜が佐清――男子の体育担当教師だ――と部室に行ったという女子達の話に聞き耳を立て始めた。

 

それから少しして炎佐。彼は購買でパンを買った後人気のない学校近くの林へとやってきていた。

 

「何か用?」

 

「気づいていたか」

 

人影のない場所で話しかけるように口を開く炎佐と、その言葉に答えるように姿を現すザスティン。と炎佐はにこっと笑みを浮かべた。

 

「実はただカマをかけただけでしたー。って言ったら信じる?」

 

「……まあいい。ララ様の事なのだが」

 

「ペケにも言われたよ。こっちとしても傭兵エンザがプリンセス・ララを護衛するっていうならそれなりの礼金貰う必要あるけど地球人氷崎炎佐が友達であるララ・サタリン・デビルークを守るってだけなら言われなくてもやるつもりさ」

 

「そうか……それを聞いて安心した」

 

炎佐のわざとらしい言葉にザスティンは呆れたようにため息をついてから本題に入ろうとするがその内容を予想していたように炎佐はさらりとそう返し、それにザスティンは一つ頷いた。

 

「だが、既に地球に識別不明の宇宙船が突入したという報告がある。ララ様を狙うものとは限らないが……」

 

「希望的観測だけ述べててもしょうがねえよ。つっても部外者であるザスティンが学校の中入ったら即行通報コースだし、学校内や表立っての警護は俺に任せといてくれ。地球の勝手がまだ分かってないそっちは影ながらの護衛か裏方作業した方が目立たずに済むだろ?」

 

「了解した。状況によっては正式にララ様の護衛任務を依頼する事もあるかもしれない事は覚えておいてくれ」

 

「肝に命じとくよ……ま、ララもそうだけどさ」

 

炎佐の出した提案にザスティンは了承の言葉を返した後この後の事を話すと炎佐は手をひらひらと振って返しながら彼を通り過ぎ、数歩進んだところで足をぴたりと止めると振り返る。その顔はなんというか、目からは一切の感情が消え、口元にはにたぁとしか表現できないような笑みが浮かんでいた。

 

「リトは俺の地球に来て初めての地球人での友達にして無二の親友なんだ……リトに手ぇ出す奴がいるってんなら、そいつは塵も残さず焼き尽くすか骨の髄まで凍らせてやるよ」

 

彼はそう言うと歩き去っていく。それを見送るザスティンも、自分の顔に汗が浮かぶのを感じずにはいられなかった。

それから炎佐は購買で買ったパンを齧りながら教室に戻ってくる。

 

「おう、炎佐」

 

「や、サル……リトとララちゃんは? 西連寺さんもいないし……」

 

「ああ、リトだったらララちゃんから逃げるようにどっか行って、ララちゃんもその後を追って行っちまったよ。春菜ちゃんは佐清とどっか行ったとか女子が言ってたからリトはそれを追ったんじゃね?」

 

「なーんだ」

 

炎佐が教室に入ると一番に気付いた猿山が声をかけ、炎佐も軽く返した後教室を見回してリト達がいないことに気付くと首を傾げ、それに猿山はけらけら笑いながら説明し、炎佐も笑いながら返す。

 

「あ、僕喉乾いてきたから水飲んでくるよ」

 

「お~」

 

と、話を聞いた炎佐は踵を返して教室を出ていき、猿山も飯を食いながら適当に返す。廊下に出た炎佐は早足で廊下を歩いていた。

 

(三人揃っていなくなるって……西連寺さんが佐清先生に手伝いを頼まれて、リトが嫉妬に駆られて動き出してララもそれを追って、っていうのは何もおかしくはない……けど、何か引っかかる)

 

炎佐は傭兵としての直感が引っかかりを感じてリト達を探すため廊下に出てきていた。しかし彼らを探すための手がかりがあるわけではなく、手探りで探さなければならない状態だ。何かヒントになるものはないか、炎佐は自分の記憶を手繰りながら思考に入る、と廊下の曲がり角に突然人影が現れた。

 

「!?」

 

咄嗟に斜め前に飛び退く炎佐。と、その姿を見た相手がむっと声を漏らした。

 

「む、君はこの前の……」

 

「あ、パンの……九条先輩!」

 

そこに立っていたのは以前炎佐にパンをくれた少女、その姿を見た炎佐は咄嗟にそう返していた。と彼はピーンと何か思いついた様子で彼女に声をかける。

 

「あの、すいません。オレンジ色の髪をした、こう冴えない顔つきの男子見ませんでした? 結城リトっていうんですが……」

 

「ん?……ああ、たしかさっきそんな髪色の男子が部室棟の方に血相を変えて走っていくのを見たな……」

 

「そうですか、ありがとうございます!」

 

炎佐の質問に九条は口元に手をやって記憶をたどるように虚空を見上げた後思い出してそう言い、それを聞いた炎佐はお礼を言ってすぐに走っていく。九条はそれを見送りながら首を傾げ、まあいいかと結論付けるとまた歩いていった。

それから炎佐は部室棟に到着、しかし息一つ乱れておらず彼はきょろきょろと辺りを見回し、気配を出来る限り消して少なくともここにいるはずのリトを探し始める。

 

「っぎゃー!!!」

 

「!?」

 

そこに聞こえてきた男性のものと思われる悲鳴。それを聞いた炎佐は驚きに一瞬身体を硬直させた後真剣な顔になって走り出す。

 

「痛い痛いー!! 死んじゃうー!!!」

 

「……?」

 

しかし続く悲鳴を改めて聞くと少し不思議そうな表情に変化した。悲鳴を出している声に聞き覚えはなく、少なくともリトの声でないことは確かだった。

 

「人違いだったか?……まあ調べるだけはするか」

 

炎佐は少し足を止めて考えるがとりあえず調査だけでもするため部室棟を歩いていく。

 

「じゃっ、任せたぜっ!」

 

と、テニス部の部室のドアから顔を真っ赤にしたリトが出てくる。

 

「リト!」

 

「え、炎佐!? なんでここに!?」

 

それを見た炎佐が声をかけるとリトも驚いたように叫んで炎佐に走り寄る。炎佐はその動き方から彼の身体に怪我がないことを確認し、ほっと息を吐く。

 

「お前が血相を変えて部室棟に行ったって聞いたから調べに来たんだよ。ララの事もあるからな」

 

「あ、ああ。ギ・ブリーってやつが俺やララを脅迫してきたんだよ。西連寺を人質に取って」

 

「ギ・ブリー……そいつはどこにいる?」

 

リトから状況の説明を聞いた炎佐は目を研ぎ澄ませながらリトに問いかける。その右手からは炎がちろちろと見えており、リトはぎくっとしたようにのけぞった後両手を前に出す。

 

「だ、大丈夫大丈夫! 既に倒したっていうかなんというか……」

 

「宇宙人を!? そいつひ弱な種族だったのか?……」

 

「あーえっと、ペケはバルケ星人だとかなんとか……」

 

「んだよバルケか」

 

リトから説明を聞いた炎佐はやる気がそがれたというようにため息をつき、入り口の方向けて歩き出す。

 

「え、もういいのか?」

 

「バルケ星人は擬態能力に特化している代わりに戦闘力はすこぶる低い。ぶっちゃけ戦闘モードに入ってない俺でも、リトだって殴り倒せるよ」

 

「あー……」

 

さっきまでの殺気立った様子からは嘘みたいな調子にリトが思わず問いかけると炎佐は呆れたようにそう返し、その言葉を聞いたリトは彼から目を逸らし、頬をかいてそう呟く。

 

「っと、一応ザスティンに報告しとかないとな。ギ・ブリーは?」

 

「ララがなんとかワープ君って発明品で地球外追放しちまった……」

 

「……んじゃいいか」

 

炎佐の思い出したように問いかけてきた言葉にリトは苦笑交じりに返し、炎佐は呆れたようにため息をついて返す。

 

「まあ、リト……」

 

「ん?」

 

「今回は擬態特化のバルケ星人が相手で運が良かったけど……もし戦闘特化の婚約者候補に来られたらぶっちゃけお前じゃどうしようもない」

 

「わ、分ぁってるよ……」

 

炎佐の言葉にリトは少し悔しそうな声を漏らす。

 

「ま、そういう連中は俺に任せとけ。休養中とはいえ腕に覚えのある賞金稼ぎ、むざむざお前やララを殺させたりはしねえよ」

 

「そ、そりゃ頼りにしてるよ……」

 

炎佐は冗談交じりのようなどこか楽しそうな口調でそう言い、リトも苦笑を漏らす。とその時キーンコーンカーンコーンとチャイム音が聞こえてきた。

 

「やべっ、予鈴だ!」

 

「急ごう、リト」

 

チャイム音を聞いたリトが声を上げ、炎佐も地球人モードの優しげな口調になると二人は教室に走っていった。




さて今回はちょいとギ・ブリーと戦闘(?)を行っている間に炎佐が動いていたお話。と言っても彼シリアスではザスティンと話す以外してませんけどね……。
さー次回はどうするか? ま、それでは~。

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