レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

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紅魔館の住人とバレンタイン

 

 

ボーボボたち三人と向かい合うのは上半身を剥き出しにした老人──バレンタイン。

その腹部には攻撃を吸収して反射させることができるシャハルの鏡があるが……光を反射して眩い輝きを放っていた表面が今は中心部分から四方八方に亀裂が伸びていて──見るも無惨な姿に変わっていた。

 

 

「気をつけろ、首領パッチ、天の助…

 あの爺さんのことだ、盾以外にも厄介な道具を隠し持っている可能性がある」

 

 

ボーボボが二人に向けて警戒を促し、二人もまた無言で頷いて返す。  

 

 

「人間は道具を使うから人間じゃ。

 獣相手に無手で戦うのは知恵足らずの者が行う愚行…

 道具は使わねば道具が泣くというものよ」

 

 

「これもまたその一つ…」ズボンのポケットから掌ほどの、先端に針のついた銃を取り出すと…

 

 

「 ノッキング!!!!

 

 

自分の首に針を突き刺し、引き金を引いた。

 

 

ホ ォ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ …!!

 

 

バレンタインの口から空気を振わせる重低音が漏れだし……胸元の筋肉が膨張。さらに腕、脚、背中と膨れ上がっていき……アフロも含めると2mを超すボーボボの身長を追い抜いて……そして──

 

今やバレンタインの体は……触れれば折れる枯れ木みたいな体躯から一変、古代ローマの拳闘士を彷彿させる筋肉の塊へと変貌した。

 

 

「さぁ、どこからでもかかってきなさい」

 

 

両腕を大きく広げ、相手を迎え入れるような姿勢をボーボボたちに見せるバレンタイン。体の表面からは湯気のように青白いオーラが絶えず立ち上っていて近寄りがたい雰囲気を放っている。尚且つ、爺さんの体は分厚い筋肉で覆われており、迂闊にこちらから手を出せば……只では済まされない反撃がくることは明白。

三人もそれを理解しているのだろう……その場で動きを止めて静観することに行動を留めていた。

 

 

「ふぅむ。そちらから来ないのならば…」

 

 

動かない三人に少し考えるような素振りを見せた後、ボーボボたちに向かって駆け始めるバレンタイン。

大型の草食動物が群れを成して駆け抜けていくような地響きを鳴らし、建物の壁と床を揺らしながら距離を縮めていく。

これを迎え撃つべくボーボボは右腕を大きく振りかぶって…

 

 

サタン・ミラクル・スペシャル・ウルトラ・メガトン・ボーボボ・パンチ!!

 

 

名前、長っ!! ただのパンチなのに!

 

 

そう叫びながら殴りかかるも、触れる直前でバレンタインは片手でその手首を掴んで止め…

 

 

しっぺ!

 

 

まっすぐに立てた人差し指と中指をボーボボの手首に叩きつけた。

 

 

技、ショボ!!

 

 

でこぴん!

 

 

さらに隣にいた天の助の頭部を弾いた中指で爆散させ…

 

 

ババチョップ!

 

 

手刀で首領パッチを左右二つに分け──

 

 

衝撃波ぁ━━━━っ!!

 

 

最後に、体の表面を覆っている青白いオーラを瞬時に膨張させて、三人を纏めて吹き飛ばした。

 

 

最後だけ何か違くない!?

 

 

ふざけた一連の攻撃から、いきなり少年雑誌に出てくるような技が出てきて思わず声を出す。

 

 

「バレンタイン! 魔法道具(マジック・アイテム)を使うのはお前だけじゃないぞ!」

 

 

攻撃を受けて片膝をついているボーボボ。

彼が懐から出したのは一冊の黒い本。

 

 

「──そのノートに名前を書くと……書かれた者が死ぬ『デス・ノート』或いは『死神の手帳』という物がある…」

 

「まさか!? ボーボボ、キサマが持っている()()がそうだとでも言うつもりか!?」

 

「いや、これはその劣化版で別物だ。死にはしないがこのノートに名前を書かれた者は── 太る …」

 

 

──その名も デブ・ノート!!!!

 

 

ダジャレか!?

 

 

「効果は絶大だが、支払う対価は己の寿命。

 だが、それも三人で使えば分散されるハズ。

 これでお前もおしまいだ! セイント・バレンタイン!」

 

 

ボーボボの両側に立つ天の助と首領パッチが開いたページの端をそれぞれが持ち、ボーボボがそこに名前を記入していく。無論、書かれているのはバレンタインであろう。

 

 

「こ、これは!?」

 

 

その証拠にバレンタインの体がぶくぶくと太り始まり……ボーボボたちは老いていく。

やがて両者の変化が終わった頃には……バレンタインの引き締まった体は肉団子に手足が生えたような醜い贅肉の塊と化し…

 

一方でボーボボたちの方は顔や身体に深い皺が刻みられ、体が痩せて細くなり、口元には白い髭が生えていた。

 

 

「「……婆さんや、メシはまだかのぅ~?」」

 

 

三人一斉にこちらに振り向くとお決まりのセリフを吐く。

 

 

すんごい老けてるんですけど!?

 

 

「大丈夫だ。問題ない!

 たとえ体が老化しようとも、老体にしかできない老人だからこそ出来る、老人ならではの方法で戦えばいい!」

 

 

私の心配を余所に自信満々に応えるボーボボたち。

よぼよぼした足取りで肥えた体で思うように動けないバレンタインに技を仕掛けた。

三人全員が白衣を着ると声を揃えて叫ぶ。

 

 

「「 必殺! カワイイ孫のために巨大ロボを作るお爺ちゃん!! 」」

 

 

老人、関係あんの!? それ! 確かに博士って聞くと老人のイメージがあるけどさ…

 

 

突如、紅魔館の天井を破壊しながら黒と黄金色のツートーンカラーの巨大ロボが出現、胸部の赤い板状からバレンタインに向かって赤い熱線を照射、バレンタインを巻き込んで辺り一帯が爆発した。

 

当然、紅魔館も無事に済むハズもなく……壁と天井、その上にあった階も吹き飛び…

紅魔館は私たちがいる部屋の床だけを残して瓦礫の山と化してしまった。

 

 

「うわぁぁぁ!? うちの紅魔館が────っ!!!?」

 

 

バレンタインもろとも紅魔館を破壊した(くろがね)の巨人。

その巨人に備え付けられているスピーカーから若い女性の声が流れてくる。

 

 

『ありがとう、ボーボボさん。

 私はこの核熱造神ヒソウテンソクで世界を支配してみせます!』

 

 

なんか、とんでもないことを口走っているんですけど!?

 

 

言うや否、紅魔館の周りの土地を破壊し回る巨大ロボ。炎が燃え盛り、大地がひび割れる。

そのロボットの足下周辺には……ボーボボのアフロから出ていたのか、小さなゆっくりたちが逃げ惑う。

 

 

何この絵面!?

 

 

火の手が広がる光景に暫し唖然としていると……私たちの近くで瓦礫が崩れ、丸い影が──バレンタインが現れた。

あれだけの激しい攻撃に晒されたにも関わらず、爺さんは皮膚を少し焦げた程度で済んでいた。

 

 

「ぬぅおおお、このままでは不利じゃ。

 ダイエット して余分な贅肉を削ぎ落とさねば…!」

 

 

到底、ダイエットでどうにかできるとは思わないのだが……爺さんはCMで流れている筋トレ道具の一種に座ると「倒れるだけで腹筋ワンダ○コア~♪」の歌と共に腹筋運動を三回繰り返し…

 

ぶよぶよした贅肉の塊と化していたバレンタインの体は元の筋肉質の体型に──戻ったどころか、さらに大きさを増して──ボーボボの身長の倍ぐらいにまでになっていた。

 

 

「ダイエット成功じゃ! ついた贅肉を削ぎ落とすどころか、先程よりもパワーアップしたぞい!!」

 

 

ボディビルダーがするポージングを次々に決めつつ筋肉質の肉体を見せびらかす。

 

 

腹筋三回やっただけでダイエットに成功すな!!!!

 

 

もはやダイエットの域を越えている。世の女性が見たら歯軋りをするんじゃなかろうか…?

 

贅肉という足枷を無くしたバレンタインに対してボーボボたちは老体になっている。

さすがにこのままではマズいと判断したのか対策を立てるボーボボたち。

 

 

「ならば、こっちは アンチエイジング で若さを取り戻すぞ!」

 

 

もっと無理でしょ!?

 

 

アンチエイジングはあくまで加齢による老化対策であり、年齢による衰えを()()()()()()()()()()()()であって若返ることではない。

 

 

「先ずは体にいい日本食だ! 俺が握った寿司をたらふく食え!」

 

 

板前の格好をした天の助が握り寿司を山盛りに作り、ボーボボが「アンチエイジング! アンチエイジング!」とうるさく喚きながら首領パッチの口の中に無理矢理押し込んでいく。もうこの時点で体に悪そうだ。

 

 

「食事のあとは運動よ~♥ エクササイズやヨガで健康的な体を作るのよ~♥」

 

 

化粧を施し、レオタードを着た首領パッチが二人にそう呼び掛けると…

ボーボボと天の助が「エクササイズ! エクササイズ!」と鬼の形相で釘バットとバールのようなもので首領パッチに暴行を加えた。

 

 

ただのリンチじゃん!!

 

 

「次は半身浴だ! いくぞ天の助!」

 

 

ぐったりとした首領パッチの両手両足を二人で掴むと……やたらとグツグツと煮え立った浴槽に投げ入れた。

当然、浴槽から出ようとする首領パッチ。しかし、そうはさせまいと二人が「おでん、つんつん! おでん、つんつん!」と口ずさみながら首領パッチをこれでもかと小突きまくる。

 

 

もはやアンチエイジングでも何でもないんですけど!?

 

 

「「 よっしゃぁぁぁ! 若さを取り戻したぜ! 」」

 

 

風が吹けば倒れそうな枯れ木のような体躯から、若さ溢れる瑞々しい肉体になっていた。

 

 

元に戻っとる!?

 

 

「くっくっく。いくら元の姿に戻ったところでパワーアップをしたワシに敵うと思うか…?」

 

 

ボーボボたち三人を前にして不敵な発言を言う。

もっともそれは確信した上での物言いなのも事実。

現にバレンタインとの体格の差は子供と大人ぐらいはある。

 

その状況下にも関わらずボーボボもまた不敵な笑みを浮かべて問う。

 

 

「それじゃあ、そこに一人が加わったならどうなるんだ?」

 

「ふん。この悪魔の館にいる住人はここにいるので全員のハズじゃ。

 それに余所者が入って来れないよう、別の部隊に周囲を張らせておる」

 

 

それでも揺るぎないバレンタインの自信。

 

 

「全く荒々しい方法ね。お陰でさっきよりはマシになったけど…」

 

 

そう言って腕をぐるぐる回して体の感触を確かめてみる()

ボーボボたちが呼び出したロボットは紅魔館だけではなく、そこに刺さってあった十字架──バレンタインが用意した吸血鬼を弱体化させる物を熱線で燃やしたのだ。

 

 

「跪き……泣いて……赦しを請うなら半殺し程度で済ませてあげるわよ?」

 

 

──セイント・バレンタイン…?

 

 

私こと、レミリア・スカーレットは十字架が放つ見えない鎖から解放されたのだ。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

次回、戦闘らしい戦闘の描写は少な目にしようと思ふ。
バレンタインの性格を考えてですね。

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