レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

5 / 37
傷だらけの紅魔館の住人たち

 

 

──()()()()は復活するわ…

 

 

私のその言葉を待っていたかのようにこの部屋に通じる扉が勢いよく開かれ、その奥から大小三つの人影が現れた。

逆光を背にしているせいで黒い人影にしか見えないが……その特徴のある輪郭からボーボボたち三人組だということが分かる。

あまりにもタイミングのいい登場の仕方に「部屋の外で私たちがピンチになるのを待っていたんじゃないか?」…と疑ってしまうのは私でなくてもそう思うことだろう。

 

 

「すまないなレミリア。ここまで回復するのに時間がかかった」

 

 

そう言いながら近づいてくるボーボボらしきアフロをした影。距離が縮まるほどにその姿が露になっていく…

 

 

「ぜぇ…はァ……ぜェ…ハぁ…」

 

 

光の下に晒されたボーボボたちの姿は……全身を包帯でぐるぐる巻きにした……所謂、ミイラのような格好だった。

どういう原理か、一目で分かるようにドラクエ等で見られるステータスウィンドウを頭上に表示させながら…

 

 

ボーボボ  首領パッチ  天の助

HP 1   HP 1   HP 0.5

 

 

死にかけとる─────!!!? ご丁寧に赤くしとるし!

 

 

「天の助は片栗粉で固めて、首領パッチは元に戻らないから一度ぶち壊して破片をご飯粒でくっ付けて急いで来たんだが…」

 

「片栗粉!? ご飯粒!? それで元に戻れるの!? …というか、そんなんで大丈夫なの!?」

 

 

そう言うボーボボは銀髪の少女にやられた傷が痛むのか、額に汗を滲ませながら片手でお腹を押さえていた。

指の隙間から見える包帯が赤黒く変色していて、今も尚じわじわと広がっている。

ボーボボたちの再生能力は……「早い」を通り越して異常。

時を止められる少女との戦闘から大分時間が経っている……にも関わらず未だ完全に癒えていないようだ。

 

 

「そこの娘に時間を「巻き戻す」能力はないが……代わりに「減速」と「加速」がある。

 減速の能力を使わせて「傷の治る時間」を遅くしたのよ」

 

 

「くっくっく…」と人を小馬鹿するように嘲笑う爺さん。

一頻り笑った後、爺さんは私たちに対して…

 

 

「さてと()()()()も集まったことだし、そろそろ()()を始めようではないか?」

 

 

やたらとボーボボたちを強調して言う爺さん。

はて? 爺さんの目的は「吸血鬼」である私のハズ……いったい、どういうつもりなのか問いただす前に首領パッチが「いやぁぁぁっ!」と女性のように甲高い悲鳴を上げた。

 

 

あの爺さん、世界で一番美しい妖精である私を捕獲するつもりなんだわ!!!!

 

 

瞳を潤ませつつ、そんなことを宣う。

 

そして何の前触れもなく短く華やかなファンファーレが鳴り響いて、一面が劇場で見られる舞台へと変化した。

因みに劇の題目は『ボーボボ劇場:世界で一番美しき妖精「首領パッチ」様』

観客である動物たちが見守る中……紅い垂れ幕が左右に開き、その奥に「3…2…1」とカウントダウンを刻む白黒の映像があった。

やがて数字が0に達すると暗転──

 

 

──ああ、何で私はこんなに美しいのかしら…

 

 

手鏡を片手に化粧を施した己の、うっすらと頬を赤く染め上げた顔を見て自画自賛する首領パッチ。

自分の世界に入っているのか、周囲の声と音は聞こえていないようだ。

 

 

──ああ、神様。神様。どうか罪深い私に欠点をお与えてくださいませ、ませ…

 

 

敬遠なクリスチャンの如く、両手を組み合わせて祈りを捧げる首領パッチ。

 

 

──そしたら神様がクスッと笑って…

 

 

自分の体の頭部にあるトゲの一つを指差すと…

 

 

「トゲの一つを『とんが○コーン』に変えてくれたんだ!」

 

 

無邪気な笑顔で声を弾ませてそんなことを言う。

心底どうでもいいし、それ欠点のうちに入るの?

 

 

「とんが○コーン云々は兎も角。ワシの目的はそこの三人じゃよ」

 

 

アゴでボーボボたち三人を指す爺さん。

首領パッチの憶測は間違っていなかった。

 

 

「吸血鬼以上の生命力を持った生物にワシが興味を抱かんわけがなかろう?

 どうじゃレミリア・スカーレット? そこの三人を大人しく差し出せば……今後、お主と地下にいる妹には手を出さないことを誓おう」

 

 

守るかどうか分からない相手──それも不老不死を求める秘密結社の首魁の言葉。しかも隠し通していたと思っていたフランの存在をどういうわけか知っていた。

 

 

「あ、ゴメーン。街に出掛けたときに知り合いのおばさん連中にバラしちゃった♪」

 

「これが終わったら覚悟しなさい。首領パッチ…」

 

 

犯人は身近にいた。あとで思いっきり殴ることを心に誓い、今の状況を冷静な目で見る。

形勢は明らかにこちらが不利。ボーボボたちも不安そうに私とバレンタインのやり取りを眺めている。

 

 

「答えはNOよ。ここで三人を引き渡したところで貴方たちは必ずまたやって来るわ。今度は私たちを捕らえるためにね?

 そもそも、いきなし問答無用でケンカをふっかけてくるような連中をどうやって信用しろと?」

 

 

こいつらが私たちを調べているように、私たちもまた人間を知っている……人間の持つ底知れぬ欲望を。たとえこの場を切り抜けたところで、またハンターたちを引き連れて現れるのは目に見えて分かる。

 

 

「私は誇り高き吸血鬼の一人であり、この紅魔館の当主でもあるレミリア・スカーレット。

 自分の命惜しさに客人を売り渡すような恥知らずな真似など……できるものか!」

 

 

最後は吐き捨てるように吼えた。

 

 

「くっくっく…。ワシが与える慈悲を理解できぬとはなぁ~?」

 

 

しかし、こうなることは分かっていたのだろう……髭で覆われている口の端が上がっている。

 

 

「ならば、寂しくならないように一人残らず全員生け捕ってくれようぞ!」

 

 

残像と風を切る音を残して姿を掻き消すバレンタイン。

彼が次に現れた場所はパチェの背後だった。

 

 

「暫く静かにしてもらおうか?」

 

 

素早く腕を掴み、パチェの口元を布で覆わせる。

クロロホルムを染み込ませた布を嗅がせて眠らせる気か…?

 

 

「いや、ワシの 靴下 じゃ」

 

「ぐはぁっ!?」

 

 

布の正体を知ったパチェが白目を剥いて血を吐き、床に倒れて気を失った。

惨たらしいバレンタインの攻撃に敵も味方も関係なく、その場にいた全員が恐れ(おのの)く。

 

 

「これで魔女は再起不能。

 『靴下を嗅がされて失禁した女www』というタイトルでネットに拡散してやろう…」

 

 

極悪人か、こいつは……いや、悪人か。不老不死を目論んでいる奴が善人のわけないし…

 

 

「手こずるかと思った魔女戦だが……案外、呆気なく倒したもんじゃのォ。

 まあ、そのお陰で貴重な能力者を失わずに済んだが…」

 

 

能力者──時間停止の力を持った少女をチラリと見た後、美鈴がいる方向に顔を向ける。そこには…

 

 

「倒しておきましたよ」

 

 

丁度、最後のモヒカンが前のめりになって倒れ……床に突っ伏すところだった。

周囲には美鈴が倒したであろうモヒカンが倒れ伏せていて、そのどれもが白目を剥いて口から泡を吹いている。

 

 

「バカな……あれだけのモヒカンたちを……いったい、どうやって!? 答えろ!」

 

 

ここにきて初めて狼狽えた様子を見せるバレンタイン。

爺さんではないが私もどうやって倒したのか気になる。

美鈴は察したのか、モヒカンたちを倒した術を真顔で言い放った。

 

 

股間を思いっきり蹴りました。

 

 

「「 は あ う っ わ っ !!!? 」」

 

 

実際にやられたわけでもないのに爺さんとボーボボたち三人、男衆が苦しそうな表情で股間を手で押さえて前屈みになる。

さしもののモヒカンもそれには耐えられなかったようで今も床に転がっている。

…とはいえ躊躇なく急所攻撃をやってのけるとは、美鈴は私が思っている以上に恐ろしい子のようだ。

 

 

「こ、小娘……貴様、何て恐ろしいことを!?

 女には分からんが、あれは物凄く痛いんじゃぞ!?」

 

「正直、私もこんな手は使いたくなかったのですが…

 武器を持った奴が相手なら、金的攻撃『覇王翔吼拳』を使わざるを得ませんでした」

 

 

右拳を強く握りしめて顔を背けるように横を向く美鈴。

「金的攻撃」を口にしてたような気がするが……この不利な状況下では致し方無しか…?

それに襲ってきたのは向こうだし、正当防衛の一言で片付けよう。うん、そうしよう。

 

 

「何をしている美鈴!? 早く止めを刺すんだ!」

 

「分かっていますよ! ボーボボさん!」

 

 

急かすボーボボに美鈴は足を大きく広げて腰を落とし、その状態から手首同士を合わせた両手を体の前方に構え…

 

 

か~」 「め~」 「は~」 「め~

 

 

ゆっくりと発音しながら両手を腰付近に持っていき、両手の間に青白く輝く気の塊を作り出す。

…という何処かで見たことのある技を使い始めた。

 

 

波ぁ━━━━っ!!!!

 

 

──の声と共に半開きした両手を前面に出し、その掌から青白い光線を発射した。

 

 

「何ぃ!? ワシのギャリック砲にそっくりじゃと!?」

 

 

爺さんは慌てて懐から奇妙な形の銃を取り出すと右腕に装着、間を置かずに銃口から薄紫色の──美鈴のとよく似た光を撃ち出した。

 

あの銃が爺さんの「ギャリック砲」らしいが……記憶が確かなら技の名前だった気がする……それも名前が野菜の宇宙人の…

 

 

「こんなもの! こ、こんなもの…っ! こ、こんな…こんな…!

 うわぁぁぁ───!」

 

 

──それはさておき、爺さんが撃った光は美鈴の放った光線に飲み込まれ……少しずつ距離を縮ませ、(せば)まってきた。

 

 

「ちぃっ、やむを得ん! これを使うか!」

 

 

光が銃口の先を掠めた瞬間。

何を思ったのか、両手を横に広げて巨大な球体と化した気の塊を体全体で受け止める。

上半身の衣服が耐えきれず弾け飛び……その下から鏡のように反射する銀色の盾が現れた。

誰よりも目敏く見つけた天の助がその盾の名前を叫ぶ。

 

 

「あれは『シャハルの鏡』!? そんな物まで作っていたのか!?」

 

「──如何にも。あれとは違ってたったの一度しか跳ね返せないのが難点じゃが…

 受けた攻撃を 1.125倍 にして返すことができるのじゃ!」

 

 

すんごい微妙なんですけど!?

 

 

盾に吸い込まれるように気の塊が徐々に萎んでいき……それとは対称的にシャハルの鏡が光を放ち、輝きを増していき……最後には美鈴の光線を完全に吸収した。

 

 

「くぅっ、反射できても当たらなければどうってことはありません!」

 

「……小娘。動き回るキサマに当てるのは至難の技じゃろうな、だが──」

 

 

向かい合って対峙している美鈴から視線を外して、こちら──私に体ごとシャハルの鏡を向ける。

 

 

「弱体化して思うように動けん吸血鬼ならば、話は別じゃろ?」

 

 

シャハルの鏡から青白い光線を飛ばしてきた。

すぐさま美鈴が動けない私を守るために、間に割って入ってくる。

 

 

「美鈴、吸血鬼である私の再生能力を知っているでしょ? 退きなさい」

 

「でも、()()()()で受けたら、どうなるかのか分からないですよね?」

 

 

私の命令にも振り返ることも、その場から動くこともなく……私の代わりに熱を帯びた光を大の字になって受け止める。

 

 

「ボーボボさん、天の助さん、首領パッチさん…

 このあともバカなことやって負けたら承知しませんからね?」

 

 

ボーボボたちに振り向いて笑顔で言い、直後に爆発。

やがて、爆風が収まると……爆心地の中心で踞るように倒れた薄汚れた美鈴の姿があった。

 

 

「美鈴は…さ、最後の最後で…ボボ神のワシを超え…た…う、うれしいぞ…

 後は任せたぞポポの助。ポポパッチ」

 

 

「「 ボ ボ 神 様 !? 」」

 

 

「神」という文字が施された白いローブと青のマントを羽織ったボーボボが、アラビアン風の衣装を着た天の助、首領パッチとそんなやり取りをしていた。

 

ゴメン美鈴。早速、バカなことをやっている。

 

 

「戦闘中なのに余裕じゃな? もはや抗える者はおらんというのに…」

 

 

勝利を確信したのだろう余裕を見せるバレンタインだが、ボーボボたちを見て違和感を感じ、それを口にする。

 

 

「む…? いや待て、何故キサマらは五体満足に体を動かせる? 

 再生能力は低下しているハズじゃぞ? まさか!?」

 

 

ボーボボたちの姿は最初のミイラ姿からいつもの格好に戻っていた。

 

 

「今度こそ待たせたなレミリア。見ての通り完全回復したぜ」

 

 

例の如くウインドウを見せて現在の状況を見せる。

 

ボーボボ  首領パッチ  天の助

HP7    HP5    HP0.7

 

 

一桁!? これで完全回復したの!? 天の助に至っては1以下なんですけど!?

 

 

「貴方がそこのシスターにやっていた急激な「成長」と「呪印」…をやめてくれたお陰で彼らにかけられた「減速」を解除できたわ…」

 

 

床に伏せたまま、パチェが掌に隠れるほど小さな魔方陣をボーボボたちに向けて展開していた。

その様子を見て爺さんが舌打ちをする。

 

 

「魔女め、生きておったのか…」

 

「死ぬわけないでしょ……あんなので……」

 

 

それでも爺さんのあの攻撃はキツかったのだろう、今度こそパチェは眠るように気を失った。

 

 

「悪いわけど、任せていいかしら?」

 

 

ボーボボ、首領パッチ、天の助の顔を順次に見ながら、そう尋ねてみる。

 

 

「「 当然だ。俺たちを誰だと思ってやがる!? 」」

 

 

彼ら三人は力強く、そう答えた。

 

  




 

(´・ω・)にゃもし。

特殊タグを多用しているので、実際の文字数ってどうなっているのかな…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。