レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

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十六夜の月が咲いた夜に…

 

  

   少女移動中 NowLoading...

 

 

紅魔館にある部屋の中でも最も広い一室、玄関に設けられているロビーと見紛うほどの広さのある部屋の中、玉座に深く腰掛けて静かに待つのは紅魔館の主である私──レミリア・スカーレット。仰々しい紅い玉座の左右に美鈴とパチェを侍らせて静かに座して待つ。

暫くの間、時計の秒針が時を刻む音だけが規則的に鳴り続ける。

やがて廊下に通じる両開きの扉が左右に開かれて……件の少女が姿を現す。ボーボボたち三人を打ち破った銀髪の少女が…

 

ボーボボが残したメッセージが本当ならば、彼女には「時を止める」という能力を有していることになる。「神」でもなく「悪魔」でもない──ただの一介の「人間」が「時間」を支配しているのだ。

 

 

「──非常に興味深い能力を持っているわね。シスターを辞めて家でメイドをやってみる気はない?」

 

 

冗談交じりで問うが返答は無し、代わりに彼女の姿が掻き消え──すぐにまた消えた地点に姿を現す。彼女が意図的にやっているわけではない。こんな場面でそのようなことをする理由はない。ボーボボたち……特に首領パッチならやりそうだけど。

 

彼女はこちらを──いえ、隣にいるパチェを見る。手のひらから淡い薄紫色の光を放つ小さな魔方陣を展開していた。

 

 

「貴女の「時を止める」能力というのは……分かりやすく説明するならば「空間」に自身の力を垂れ流して「凝固」「凍結」させるもの……手品の種さえ分かれば、いくらでも対処はできる。──ちなみに今回は貴女の力が満たされる前に部屋を私の魔力で満たし、貴女の力を遮断してみたわ」

 

 

要は空のコップを満たされる前に自分の力を注いだ──ということなのだろう。乱暴な理論な気がしなくもないが…

 

 

「──付け加えて貴女の「時を止める」という能力なんだけど、強力な分いろいろと制限があるみたいね?」

 

 

時間を止めている間に相手を倒せばいい。出会った瞬間に時を止めて、刃物で相手の首でもはねれば勝負がつく。彼女がそれをしないのは、矜持でもプライドとか関係なく、能力ゆえの制限──とパチェは指摘する。

 

 

「時が止まった世界は「空気」すらも止まり……文字通り「大気の壁」と化す。極端にいえば生身で深海にいるようなものじゃないかしら? 当然、そんな状況下では移動するどころか呼吸すらもままならないでしょうね」

 

 

指を一本ずつ立てながらパチェは憶測を述べる。

 

 

「「呼吸」と「移動」…。少なくとも二つか三つ、あるいはそれ以上……能力を補佐する役目のマジックアイテムを持っているわね?」

 

 

疑問には答えず、ナイフの切っ先を向けながら駆ける彼女。その先にあるのはパチュリー・ノーレッジ。狙いは阻害された能力を再び使えるようにするために彼女──パチェを討つこと。

 

無論、そんなことを私が許すハズもなく……しかし、私が命令をいちいち口にして出さなければならないほど、美鈴は無能でもなく…

 

パチェを庇うべく、前に躍り出る。

 

 

   ハ ゜ キ ィ ィ ィ ィ ィ ン ン ン ...

 

 

同時に、銀髪の少女が繰り出すその刃を、美鈴は両の手のひらで挟んで受け止め、あっさりとへし折った。

 

 

「……っ!?」

 

 

破壊されたナイフはよほど業物だったか、その一撃に絶対の自信を持っていたのか、目を大きく見開いて驚愕する彼女。僅かに動きを止め、隙を見せた彼女に美鈴は逃さず追撃をかける。

打ち抜かんばりに床を踏み込み、体を捻らせながら腹部に掌底を叩き込む。

 

肉を打つ鈍い衝撃音が部屋に木霊した。

 

力の弱い妖魔なら一撃で粉砕するほどの威力を持つ美鈴の剛拳。ましてや相手が人間ならば、たとえ手加減した一撃でも意識を刈り取るのには十分。相対した彼女も例に漏れず、小さな呻き声を一つ上げた後、美鈴に体を預けるようにもたれかけ……意識を失った。

 

 

「これで先ずは一人目ね。そこにいるんでしょ? 二人目の侵入者さん?」

 

 

気を失った少女を美鈴に言って床に横たわらせたあと、部屋の隅を睨み付ける。

そこには踞るように身を屈めた白い影がいた。

 

 

「そう睨まんでくれ、この老体にその視線は、ちと堪えるわい…」

 

 

そう言いながら私たちの前に姿を現したのは白い司教姿に帽子を被った老爺。白い髭と眉で目と口が隠れているが、年の割には背筋を伸ばしており、紅魔館に至るまでの道中を考えると、随分と元気な爺さんである。

だが忘れてはいけない、この老爺の正体は…

 

 

「「不老不死」を研究している割には善人っぽい顔付きをしているわね?」

 

「悪人面じゃ寄付は集まらんからのォ~?」

 

 

悪びれもせずにそう言ってのける。

 

 

「──ワシの名は『セイント・バレンタイン』…。バレンタインと呼んでくれて構わん」

 

「ご丁寧な自己紹介をありがとう。でも、長い付き合いになるとは思わないけどね?」

 

「そうつれないことを言わんでくれ。折角、お嬢ちゃんたちに面白い品を持ってきたんじゃからのォ…」

 

 

懐から取り出したのは赤と白のツートーンカラーのボール。ポケモンに出てくるボールに極似している……というか、まんまアレ。

 

爺さんはボールの真ん中に付いているボタンを押すと「モヒカン、君に決めた!」と叫びながらボールを宙に放り投げた。

 

しかし、爺さんが投げたモンスターボール擬きからは何も飛び出して来ず、赤い閃光を放ったあと床に転がる。

 

てっきりボールから爺さんの援軍が出てくると思っていた私たち紅魔館組は終始無言。ひたすら冷めた目で爺さんを眺めていた。

 

否、異変に一早く気付いたのが一人。

 

 

「お嬢様! 扉の外に急に気配が!」

 

 

切羽詰まった美鈴の言葉と共に、扉の外から部屋の中へと人が雪崩のように流れてきた。

 

 

「「ヒャッハー!! ウサギ狩りだぜェェェ──っ!!!!」」

 

 

世紀末ファッションで身を固めたモヒカンたちが。

 

 

「ちょっと、そのモンスターボールが出てくるんじゃなかったの!? あと何そのモヒカン!?」

 

 

床に転がっているボールと部屋にうじゃうじゃいるモヒカンの団体──パッと見て十数人は下らないか──を指差して問い詰めると爺さんは言い放つ。

 

 

「モンスターボールはただの飾りじゃ!!!!

 

 

言い切りおった。

 

 

「無論、最初は原作通りにモンスターが入るような作りにしたかったんじゃがな…。残念ながら今のワシらの技術じゃ再現は不可能。

 しかし、このまま捨てるのも勿体ないからのォ、そこの中華娘の気配察知能力から隠蔽する品にしたわけじゃ」

 

 

「見てくれはおかしいが、なかなかの品じゃろ?」…と周囲にいるモヒカンたちをアゴで指す。モヒカンたちも物騒な得物を手にお世辞にも上品とは言い難い笑みを浮かべる。

 

 

「それで、そこにいるモヒカンたちが相手をしてくれるの? 悪いけどこの前やって来たハンターたちの方が手強そうだけど?」

 

「強いかどうかは戦ってみれば嫌でも分かるぞい?」

 

「いやいや、戦う云々というよりも正直、関わりたくないんですけど…?」

 

 

何が悲しくて世紀末映画に出てきそうなモヒカンたちと顔を合わせなければならないのやら……それにこの爺さんの自信はいったい何処から出てくるのか…

 

 

「相手が何者であろうと打ち倒せば済むことです。ここは私に任せてください」

 

 

ゆったりとした動作でモヒカンたちに近づく美鈴。

モヒカンたちも刃物や鈍器を強く握りしめて駆け、或いは床を蹴って飛び掛かる

 

 

『ショットガン!!!!

 

 

高速の拳の乱打から撃ち出された気の塊がモヒカンたちの頭や体にめり込み──吹き飛び、床や壁に激しく打ち付けられた。

普通の人間ならば良くて重傷。当りどころが悪ければ死んでもおかしくない一撃……を喰らったにも関わらず…

 

 

「「ありがとうございます!!!!」」

 

 

モヒカンたちは起き上がり、戦う構えを見せる。恍惚した表情で鼻血を垂らしながら…

 

 

「くっくっく。こやつらはただのモヒカンではない。

 異性、すなわち少女からの暴力を受け入れ、愛する。嗜虐嗜好の集団よ!」

 

 

ただの変態じゃん!!!!

 

 

「それにしてはこのタフさは異常です! ただの人間が私の拳を受けて起き上がるなんて!」

 

 

拳と蹴りを交えつつモヒカンたちを倒していく美鈴。しかし、倒したそばからモヒカンたちは立ち上がり、復活する。

その戦闘の傍ら、バレンタインはモヒカンたちの異常なまでの肉体のわけを話す。

 

 

「そやつらの肉体が頑丈なのは…髪の毛を代償にして手に入れたからじゃ!」

 

 

「ワンパンマン」の単行本を片手にそう強く語る。

圧倒的な力を得るためにハゲになってしまった男が主人公の日本のマンガ。

 

 

そんなんで強くなってたまるか!!

 第一、髪の毛を失って強くなれるんだったら、世の中のハゲはみんな人外じみた強者になってるハズよ!? そもそもモヒカンにする意味は!?」

 

 

「そういう問題じゃないと思うわよ」…と隣にいる魔女が言ってきたが敢えて知らないフリ。代わりに爺さんが答える。

 

 

「そいつらはおそらく自然にハゲになった連中じゃろ。

 だがここにいるモヒカンは違う。自らの意思で髪を剃った奴らじゃ…

 鍛え方が違う! 精魂が違う! 理想が違う! 決意が違う! 

 覚悟が違う! 背負っている物が違う!

 何よりも 信念 が違う!

 

捨ててしまえ! そんな邪念だらけの信念なんぞ!

 

 

わざわざ眉毛を上げて両目を「くわっ!」と見開いて力説する爺さんに、爺さんの背後で鉄アレイを持ってポーズを決めるモヒカンたち。

 

 

「ねぇ、レミィ。もういっそ燃やした方がいいんじゃない? アレ」

 

「火事になると困るから、やめて」

 

 

アレ──モヒカンと爺さんを指差しつつ面倒くさそうに言うパチェに危うく賛同しかけたが…

…とはいえ打撃に対して免疫があれど……いくらなんでも魔法に対する対処法は持ち合わせていないことだろう。

 

 

「ふははは。ワシがその対策をしてないと思うたか!? そこに倒れている娘がそのための布石よ!」

 

 

美鈴の一撃で気を失っている少女を指差すバレンタイン。

少女の胸元にある懐中時計が浮かび上がり、時計の針がぐるぐると回り始めた。

少女の「時を止める」能力はパチェが己の魔力で防いでおり、使用は不可。いったい何をするつもりなのかと窺っていると…

 

 

「急速な成長による老化。この娘の「死」を早めさせるつもりね?」

 

「左様。流石は古くから生きている魔女の一人だけのことはある。すぐさま理を理解し、対応するとはのォ…」

 

 

目を凝らして見れば、懐中時計が薄紫色の膜で覆われており、時計の針も停止していた。

 

 

「だがそれも想定内じゃ!」

 

 

遥か東にある国を思わせる呪文と手の動きを見せるバレンタイン。短い言葉と動作を終えると早速その効果が現れた。

床に横たわっている少女に──

 

 

う ぅ あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ……!!!?

 

 

首にある黒い痣を起点に枯れ木の枝のように幾重にも伸びて、皮膚を少しずつ黒く染めていく。その度に少女は苦悶の表情を浮かべ、苦しそうな呻き声を漏らした。

 

 

「くっくっく、それは日本のマンガ「NARUTO」の「呪印」を見よう見まねでやってみたら出来たものじゃ!

 原作と違って生命力を削るだけの代物になってしまったがな!」

 

「モンスターボールといいコレといい…

 どうせやるなら原作通りの効果にしなさいよね!?」

 

「バカめ! 原作通りにして万が一にでも力をつけて逆らうようになったら困るではないか!?」

 

「いやまぁ、そうだけどもさ…」

 

 

モヒカンがパワーアップするのはいいのか? ──と思ったが……今も幸せそうな顔で美鈴に殴られているところを見ると何かしらの取引があったのでしょうね。

 

 

「レミィ、私が呪印を解析して無力化するよりもそこの爺さんをはっ倒した方が早いかもしれないわ」

 

 

友人の魔女に言われ、右手に紅い紅い槍の生成を開始……その途中で槍は雲散霧消、同時に体に重力がかかり、重力に従って腕を下ろし、膝を曲げて床につけてしまう。

 

 

「吸血鬼は強力じゃが、そのぶん弱点も多い。しかし、そのどれもが決定打に欠ける」

 

 

私を見下ろす形で淡々と述べていくバレンタイン爺さん。どうやら、この現象は私──吸血鬼だけに起きているようだ。その証拠に私以外は平常通りに動いている。

 

 

「ニンニク。鰯の頭。折った柊の枝。炒り豆……等々。吸血鬼の弱点と云われるものをくくりつけた十字架を……無論、落ちたときの衝撃で壊れないよう施した物を上空5000mから此処──紅魔館の周辺に落としたのじゃよ」

 

「いったい何をした…? そんなもので吸血鬼を倒せないのは、あんた達が知っているハズでしょ?」

 

「その数、億を超える」

 

「んなっ!?」

 

 

あまりの馬鹿げた数字に思わず間の抜けた声が出た。

外の光景を映し出す水晶には大小さまざまな大きさの十字架が地面に刺さっていた。ご丁寧に吸血鬼の弱点をくくりつけて…

 

 

「これがダメなら他の方法も考えていたんじゃが…

 どうやら「こうかは ばつぐんだ!」…のようじゃな? レミリア・スカーレット?」

 

 

美鈴は戦闘中。パチェは呪印の解析で手一杯。

勝ち誇った顔を見せつける爺さんに私は…

 

 

「時間をかけすぎよバレンタイン司教? こんだけ時間があれば()()()()は復活するわ」

 

 




(´・ω・)にゃもし。

マインクラフトにハマってしまった。スマン。

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