「凄まじい力を感じる。今ならテリーマンをボコったジャスティスマンを倒せそうだ」
星のマークを両肩につけたら、何故かどこぞの超人レスラーみたいな容姿になったボーボボ。彼は変化した自分の姿をまじまじと見つめながらそう呟くと……
「ほう、それは聞き捨てならないな」
「 ひー!? ジャスティスマン来ちゃった!! 」
「 ジャスティスマン!? 何でいるのよ!? 」
何処から駆けつけてきたのか、やたらと重圧感を放つ超人が品定めをするかのごとくボーボボをじっと見据え、その視線を受けたボーボボは間髪置かずに首領パッチを前に押しつつ言い訳を言う。
「 ──ってコイツが言ってました! 」
「 ちょ!? おいっ! ボーボボ! 」
「 ほう 」
「 ほう、って今ので納得しちゃうの!? ねぇ!? 」
「首領パッチよ~~っ、これがお前に下す最後の裁きだ。
その思い上がりごと砕け散るがいい──っ!」
片手で首領パッチの顔面を掴むと掴んだまま急上昇、天高くまで昇ると今度は落下を開始。首領パッチの後頭部を下にして落ちていく。
「
地面と激突。鼓膜を揺るがす轟音が轟き……
そして暫しの静寂の後、ピシッという音を合図に首領パッチの後頭部を起点に身体中にヒビが入っていき……ほどなくして土塊のように崩れていく。
首領パッチの最期を見届け終えるとジャスティスマンはこちらに背を向けていずこへと立ち去る。彼が向かう先には沈んでいく夕陽の幻影が見えた気がした。
「なんてことだ。天の助だけじゃなく首領パッチまでやられるとは……」
「首領パッチは貴方のせいでしょうが、それに天の助は普通に生きてるし」
「──だがそのかいあって胸の爆弾は消えたようだな」
術者──薫を撃破したせいだろう、ボーボボの胸にあった爆弾はいつの間にか消えていた。あとは「紅魔館の卵」を探すだけなのだが──
「園内をやみくもに探すよりも彼らから聞き出した方が手っ取り早いわね」
そう言って私の蹴りで吹き飛んで壁にめり込んだまま気を失っている薫と鉄仮面に視線を送ると、私の意図を汲み取った美鈴が一つ頷いてから丈夫そうな縄を手に未だ意識を取り戻さない彼らに近づいていく。
『──その必要はないですよ?』
その音声とともに宙に現れるのは──もはや見慣れた鉄仮面の画像。ボーボボは壁にめり込んだ鉄仮面と画像に映っている両者を見比べたあと、何やら一人で納得してアゴに手を当てて頻りに頷く。
「残像、あるいは念能力ってやつか……」
「気を失った状態でどうやって残像を残すほどの高速移動ができるのよ? それに念能力はどう説明するの?」
「死後の念ならば……」
「殺してないよ!? ちゃんと手加減したよ! 私!」
ボーボボとそんな掛け合いが面白いのか、画像に映っている鉄仮面は「くっくっく…」と含み笑いめいた声を漏らしたのち……
『残念だが残像ではないし、念能力でもない。そして君たちがそこで戦っている間に──』
鉄仮面が映っている画像がどんどんと引いていき、全体像が映し出された。
『私は空の旅を堪能している』
鉄仮面がいた場所は飛行機の機内らしき場所だった。私たちに分かりやすく理解させるためだろう、窓の外の光景──青い空と白い雲を映している。
『そうそう、君たちの言う「紅魔館の卵」とやらは、
そちらにいる。──と言うからにはすでにこの場にいるのだろう、私は確認のために周囲を見渡すとその男はそこにいた。背が低く小太りで逆立った髪をしたスーツ姿の男が、くりくりとした小動物っぽい円らな瞳でこちらを見ていた。
「ドーモ、レミリア=サン。弁護士のカラサワと申します。早速ですが
手を合わせて自己紹介するや否や、園内の一角だった場所が裁判所の法廷内部へと瞬時に変わる。
中央──被告人が立つ場所には私が、左側には検察官が立つべき場所にはカラサワ。それ以外の場所にはモヒカンたちで埋め尽くされていた。誰が見てもこれから行われる裁判とやらがこちらに対して不利なのは明白である。
「ちなみにこの裁判の結果で有罪になった場合は牢獄に直接、転送されます」
なにそれ恐い。
「安心しろレミリア! お前には俺たちがついてるぜ!!」
右手から聞こえたボーボボの声に振り向くと、ボーボボを筆頭にやる気の無さそうなウサギ、紙袋を被った半裸の男等々、どう見ても弁護に向いてない連中がそこにいた。
「 安心できる要素が一個もないんですけど!? 」
少女裁判中 NowLording...
「 判決、被告人は無罪 」
「「 よっしゃぁぁぁ~~~! 」」
「 無罪、勝ち取っちゃったよ! 」
モヒカン頭の裁判長が無罪を読み上げるとカラサワはガックシと肩を落とし、対してボーボボたちは喜びの喝采を上げる。
「「 さすが美鈴だぜ! 」」
「 あなた達が弁護したわけじゃないの!? 」
「 決め手は賄賂と脅迫でした 」
「 まさかの違法行為!? 」
堂々の違法行為宣告なのに何故か誇らしげな顔で親指を立てる美鈴。ボーボボたちもそんな彼女に対して窘めるどころか囃し立てる始末。
「キサマの負けだカラサワ=サン!
鉄仮面=サンが奪った『紅魔館の卵』を返してもらいます! はいッ!」
おかしな口調でカラサワを指差しつつ言うボーボボ。カラサワも観念したのか懐から紅魔館の卵らしき物体を取り出す。どうやら本物らしくパチェから借りたログポースもどきの指針がそれを示す。
「随分と素直ね? 何か裏があるんじゃないの?」
「欲しい知識は手に入れた。持っていても居場所を特定されてしまうなら手放した方が良い……と鉄仮面=サンが私ことカラサワに仰ったのです。レミリア=サン」
彼の言うことに納得すると同時に新たに語る「欲しい知識」とやらに興味を抱く。強奪してまでも欲しがる知識を問いただそうとした瞬間──
「残念ながら私はここまでのようです。本来ならレミリア=サンが刑務所送りになるはずでしたが……能力の反動で私が送られるようです」
汗だくで言うカラサワの背後には、どことなくフランが使っている地下室の入り口を彷彿させるが巨大な門扉が現れていた。
「この能力はただ単に刑務所に入れられるわけではなく、送られる者にとって最も最悪な場所へと……」
「あらまあ、可愛らしい新入りさんね♥」
一体いつの間に現れたのか、彼の背後には縞模様の囚人服を着こんだ屈強な男がカラサワを値踏みしていた。
「さあ、逝きましょう♥」
腕を絡ませ自分の方へと手繰り寄せると開かれた門の奥へと消えていく。最後に見たカラサワの顔は死人と見紛うほど生気を失っていた。
「 アアアアぁぁぁぁ~~~~~ッッ!!!? 」
扉越しからでも聞こえる耳を塞ぎたくなるほどの絶叫が迸ったあと、誰からともなく私たちは手を合わせて合掌。目をつむりながら彼の冥福を祈った。
(´・ω・)にゃもし。
◆ようやく目的の物が手に入りました。