「──荒ぶるババアのポーズ…!!」
──ゆったりとした動作で両手を上に伸ばし、さらに曲げた右足を上げる──という奇妙な構え(ボーボボ曰く『荒ぶる鷹のポーズ』)をティアラ婆さんが取ると…
『 ワンダフル鼻毛7DAYS!!!! 』
ティアラ婆さんを起点に赤い突風が駆け抜ける。
暴力的な風にその場にいた誰もが腕で顔を覆う。
「一体どんな原理で発動してるのか解らないけど、ボーボボの技でしょ!? 中断させることってできないの!?」
「残念だがレミリア。あの技は一度発動したら最後まで耐えるしか方法がない! 最悪、天の助で攻撃を防げばいい!」
横にいた天の助が「えっ?」みたいな顔していたが私は「それもそうね」と二つ返事で返答。
「──だが、完全に発動するまでに同じ鼻毛真拳奥義かつ威力の高い奥義をぶつければ相殺できるかもしれん!」
鼻毛を伸ばし、大きくしならせながらティアラ婆さんへと一直線に跳ぶボーボボ。
「ババアを舐めるな!
このワシが対策を用意せずに発動すると思うたか!!?」
構えを崩して、先ほどの構えとは別のをポーズを取るティアラ婆さん。完成したそれは今にも駆け出しそうな格好に見えなくもない(ボーボボ曰く『荒ぶる悪魔のポーズ』)。
「アレクや、やっておしまいなさい!」
「あいよ」
軽い返事とともにゴリラのアレクがモヒカンとキラーマシン擬きを引き連れてボーボボの前に立ち塞がって行く手を遮る。
先頭に立つアレクがコンバットナイフを片手に、手元が霞んで見えるほどの高速でボーボボの鼻毛を細切れに切断。さらに無防備になったボーボボの腹に蹴りを入れて突き飛ばす。
「オレたちは時間稼ぎのためにここに集められた。婆さんの邪魔をしたけりゃオレたちを倒すことだな?」
片膝をつくボーボボに流暢に人間の言葉で話すアレク。その間にも後方にいるティアラ婆さんが南国を彷彿させる怪しげな踊りを「ヒーラリヒラヒラヒヒラリラー」と曲げた腕をカックンカックン動かして踊っている。
その踊り、本当に必要なんだろうか…?
「さらばだ愚弟よ! 地獄で兄を敬え!!」
吼えながらアレクの背後から襲撃を仕掛けるのは四匹のゴリラ。
4本ある刀の切っ先をアレクに向けて突撃。アレクもまた彼らを迎え撃つべくナイフを逆手に持って待ち構える。
「「 三刀流、二剛力斬!! 」」
必殺の一撃が込められたであろう重なり交じりあう4本の刃。
アレクはあろうことかナイフの切っ先で受け止めて阻止してみせた。
「悲しいねぇ。実の兄弟で殺し合うなんて、それに学習能力もねぇ…」
そう言うと右上から左下へと弧を描くようにナイフを一閃。その一振りだけでアレクは自分の兄たちを斬り伏せた。
「先刻、兄者たちの攻撃がオレたちに通用しなかったのを忘れたのか? それともダメもとで試したのか?」
憐れむような視線で己の足下に倒れている兄たちを見下ろすアレク。
地に伏せたままゴリラの兄弟たちは手にした日本刀を強く握りしめながら悔しそうに呟く。
「くそっ…聖剣エクスカリバーが通用しないなんて…!」
そのエクスカリバー、どう見ても日本刀なんですけど!?
「さっきゅん! お前の『
「さっきゅんって、もしかして私のことですか?」
「いいから答えろクズ!」
ボーボボからクズ呼ばわれて絶句する咲夜。それでも彼女は律儀に答える。
「残念ですけど、時を止めることはできません。
どうやらパチュリー様と同じ方法で防いでるみたいです」
「ちぃっ、ラスボスみたいな能力持ってるクセに使えねぇなァ…」
「ペッ」と地面に唾を吐いて悪態をつくボーボボに「すいません」と叱られた子犬のようにシュンとした表情で謝罪する咲夜。
彼女に非はないと思うんだけど…
「時は満ちた! まずは月曜日じゃ!!」
歓喜極まったティアラ婆さんの言葉を合図に空間が歪み、収まったあとにはクイズ番組の収録現場へと変わる。
「これはオレの使う奥義とは違う。
もはや別物と割りきった方がよさそうだな」
ボーボボを筆頭に一つ一つの解答席には私たち。観客席には色とりどりのモヒカン。そして司会者の席にはティアラ婆さんが陣取っていた。
「まだワシのターンじゃ!! 頭上を見るがよい!!」
『
遥か頭上に巨大な回転盤が顕現。ただし文字や数字が書いてあるはずであろうそのパネルは空白になっていた。
いずれその空白の部分には私たちの名が記されるのは想像に難くない。
キレイに六等分に分けられた回転盤のパネル。そのうち三つの部分に徐々に文字が浮かび上がってくる。
『 紅魔館の誰か1名 』と…
「 すんごいアバウトなんですけど!!? 」
私がそう叫んでる間に残りのパネルにも変化が現れる。うち一つは「秘密結社の誰か1名」これはもはや想定内。しかし残り二つは…
『天の助』『天の助』と、うちの陣営だった。
「オレのが二ヶ所あるんだけど!?
さっきのパネルも含めたらほぼオレなんだけど!?」
「天の助じゃないけど、不平にも程があるわよね!?」
あまりの理不尽さに問い詰めるもティアラ婆さんは聞く耳を持たぬのかガン無視。そうこうしてる間に無情にもルーレットの針が回り始める。
結果は案の定「天の助」
そんな彼にクイズ番組らしく問題が出される。
問1)ビタミンCの正式名称は?
真っ当な問題ではあるが天の助にはわからないらしく「うんうん」と唸っていた。
「…し、ししゃも……?」
時間切れ間近に何を思ったのか、そう答える。
無論それが正解のハズもなく不正解を示すブザーが鳴る。
「ちくしょ──っ! ビタミンCの正式名称なんて分かるかよ~~~っ!!」
滝のように涙を流す天の助とともに回転盤とは別に何かスロットマシンに似た物体が出現。ドラムが回転する。
「あれは『裁き』だな。出た裁きによって攻撃が繰り出される。巻き込まれないように天の助から離れるんだ!」
そう言いつつ天の助の背中に蹴りをぶちかますボーボボ。
──と同時のドラムの回転が止まり、件の裁きとやらが出る。
『 ティアラ婆さんと接吻♥ 』
「 ぎゃぁぁぁ~~~っ!!? 」
とんでもない裁きの内容に悲鳴を上げる天の助。
ティアラ婆さんから離れるべく彼女に背を向けるも…
「 知らなかったのか…?
ババアからは逃げられない… 」
天の助の前には口の端を上げて笑みを浮かべるティアラ婆さんの姿。
「どこへ行くつもりだァ?」
「お前と一緒に逃げようと思ってな…?」
恐怖に陥ったのか意味不明なことを言う天の助。敵と一緒に逃げてどうする?
「天の助さ───っ!」
「おお、美鈴! 助けてくれるのか!?」
「ビタミンCの正式名称は『L-アスコルビン酸』です!」
「今さら!?」
てっきり救いの手を差し伸べられると思って美鈴の方へ振り向いた天の助。
ティアラ婆さんはその隙を逃すハズがなく、素早く天の助の頭を掴み……
自分の顔へと引き寄せ…
ぶちゅぅぅぅううう~~~っ……
咲夜の能力とは違った時間が止まったかのような既視感。
しかしその止まった空気の中をティアラ婆さんの貪るような一方的な接吻から奏でる音が鳴り止まない。
「味の薄いマスカットに、食感はナタデココじゃな」
やがて無限とも思えた時間のあと、ティアラ婆さんは吸い付くされてミイラのように干からびた天の助を地面に捨てた。
「「 天の助ぇぇぇぇぇ~~~っ!!? 」」
さして広くない収録現場に…
彼の名を叫ぶ私たちの声が響いた。
(´・ω・)にゃもし。
スマホゲーやってた。スマン。