レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

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紫が三人のバカを連れてきた時の話

 

 

紅魔館には地下室がある。

そこには危険な能力を持った故に閉じ込められた吸血鬼がいる。

名は「フランドール・スカーレット」

私ことレミリア・スカーレットの唯一の肉親であり妹である。

 

この紅魔館が彼女を外に出さないための牢獄と言っても過言ではない。

もっとも彼女がその気になれば外へ出ることなど不可能ではないが、

 

当主であり責任者でもある私はここを離れるわけにはいかない。

さらにこの場所を人に知られるわけにもいかない。

 

…が、それにも限界というものがある。

 

 

「人を襲い、人に恐怖を与え、人から畏怖される存在が、畏れさせる人間から襲撃される。…ってのは笑えない冗談よね。そう思わないパチェ?」

 

「転移する頃合いじゃないのかしら? こっちはいつでもいいんだけど…?」

 

 

妹がいる部屋とは別に設けられている地下。そこには膨大な数の書物が収められている広大な図書館がある。ちょっとした屋敷が丸々納まってしまうほどの大きさはある。

先ほどから私と会話しているのは図書館を管理している魔女パチェリー・ノーレッジ。愛称は「パチェ」もっともそう呼んでいるのは私だけだが。

彼女からしてみれば日々やって来る襲撃者──ハンターたちは彼女の平穏を乱す害にしかならない。ついでに言えばハンターたちの手の届かない場所、例えば幻想郷への転移なんてのも望んでいることだろう。

 

 

   コン、コン

 

 

控えめなノックが広大な図書館内部に響き渡る。今いる場所から入り口までかなりの距離があるにも関わらずに…。

それから間を置かずに空間に紫色の穴を空けて図書館内部に侵入する影が一つ。紫のドレスを身につけた金髪の女性、八雲紫(やくもゆかり)がやって来た。見知った顔である。親しいかどうかは別だが…。

 

 

「人手が必要と思って幻想郷の三銃士を連れてきたわよ」

 

 

挨拶もそこそこに彼女の背後からぞろぞろとさまざまな姿形をした人物が出てくる。

 

 

「ボボボーボ・ボーボボです」

 

 

まずはサングラスをかけたアフロの男が名乗る。

変わった特徴を持っているものの、一目見たところ長身の男にしか見えないが…

 

 

「回っている扇風機に向かって「あ~」と言うのが得意です

 

 

肘を真っ直ぐ上に伸ばして元気よく笑顔で答えるボーボボ。

彼の発言で思考が一旦停止。頭の中で扇風機に向かって四つん這いで「あ~」と言い続ける彼の姿が思い浮かんだ。

 

 

「年一度に行われる大会で二位を取りました

 

 

そんなのに大会あんの!?

 

 

続く彼の言葉で思考が復活、思わずツッコム。

 

 

「大丈夫ですか、お嬢様!? 地下から気配を感じたのですが!?

 

 

蹴破る勢いで両開きの扉を開けて美鈴が入ってきた。

彼女は自身の能力で気配を察知し、文字通り飛んで来たのだろう。

彼女は目敏くボーボボを発見すると彼を指差して叫んだ。

 

 

「昨年の世界大会で二位を取った人!?

 

 

美鈴、知ってるの!?

 

 

「マイナーなスポーツで競技人数もそんなに多くはいないから知ってる人も少ないでしょうけど……ちゃんと実在してるわね」

 

 

「ほらここに…」と何処からか持ってきた新聞に掲載されている写真を指で差すパチェリー。そこにはF1でも開催されたのかと思うぐらいに無駄に立派なトロフィーを高く掲げたボーボボの姿が写し出されていた。余談だが一位と三位はミスコンに通用しそうな美女。ますますもって分からん。理解しようとする方が間違いだと判断し、記憶から排除することにした。

 

 

「甘いなボーボボ、そんな特技が戦闘に役立つわけがなかろう。この天の助の力の一端をこれで証明してみせよう」

 

 

もっともらしいことを言うのは体がところてんでできた「天の助」

彼は腕の先に豆腐を水平に乗せると、ぷるぷると体を小刻みに震わせて…

 

 

「指がないから握り潰せねぇじゃねぇぇぇかァァァ~~~っ!!

 

 

暫く時間が経った後、怒り心頭で豆腐を床にべちゃっと叩きつけた。

その上それだけでは腹の虫が収まらないのか、巨大なししゃもで何度も叩きつける。

 

 

「男はすべからず、ししゃもであれ!!!!

 

 

豆腐の破片が辺りに散らばるほどまでに叩きつけて漸く満足したのか私たちに向けてそう叫ぶ。

──と同時に天の助の足下を中心に蒼白い光を放つ魔方陣が出現。

 

 

「図書館の床を豆腐で汚さないでくれる?」

 

 

その魔方陣の外側に立つパチェリーが仕掛けたようだ。

私と冷めた表情のパチェリーの見ている目の前で、底無しの沼にでも落ちたかのようにズブズブと足下から沈んでいく天の助。両腕を上下にバタバタ動かして抜け出そうとするが……必死の努力も空しく床に描かれた魔方陣に呑み込まれて……消えた。

 

 

「くっくっく…。奴は俺たち三人の中で最弱の存在。奴を倒したからっていい気になるなよ? この首領パッチ様はさっきの二人と違う…」

 

 

オレンジ色のコンペイトウ、或いは太陽に細長い手足が生えた容姿の「首領パッチ」

彼は細長い鉄の円柱をどこからか取り出して水平に持つと…

 

 

「俺様の手にかかれば硬い鉄の棒もこの通りぐにゃぐにゃに曲がるんだからなぁ

 

 

腕を上下に動かして鉄の棒を振り、それに連動して鉄の棒がぐにゃぐにゃ曲がる。

「ラバー・ペンシル・イリュージョン」と言われている鉛筆を振ると鉛筆がぐにゃぐにゃ曲がって見えるあの現象。

暫くすると先の天の助と同様に足下に魔方陣が出現。下へ下へと引き込まれていく。

またパチェリーの仕業かと彼女の方へ振り向くと……彼女は手をパタパタと振って否定、隣にいるボーボボを指差す。

 

 

「悪霊退散 悪霊退散

 

 

日本の陰陽師の格好をしたボーボボがお祓い棒──大幣を頭上で振りながら一心不乱に呪文を詠唱していた。

 

 

ちょっとこの人、味方に何やってんの!?

 

 

「ぎゃぁぁぁっ!? あたいを誰だと思っているんだい!? あたいはキャサリンよ!!

 

 

キャサリンって誰よ!?

 

 

体半分を呑み込まれた状態から濃い化粧を施した顔で鬼の形相でギャーギャー喚く首領パッチ。何とかして魔方陣から這い上がろうとするも…

 

 

「あまいな首領パッチ、お前の周囲を見てみろ

 

 

言われて自分の周囲を見る首領パッチ。彼の周りにはいつの間にかに黒い粒が等間隔で設置されていた。

 

 

「これはまさか『レーズン』!? 一体いつの間に!?

 

 

正体を知り焦る首領パッチ。

ボーボボは両手で結んだ印を次々と変えながら「レーズンによるレーズンのためのレーズン!」と言霊を発し、印が変わるたびに首領パッチは苦悶し、痙攣を引き起こし、悲鳴を上げ……やがて先の天の助と同じく魔方陣に呑み込まれ……姿を消した。それを満足した表情で一つ頷くボーボボ。

 

 

「どうだレミレア? これを見てもまだ俺たちの実力を疑うか?」

 

 

思いっくそ不安しか浮かばないんですけど!?

 

 

「──でも人よりも強く、生命力も人以上に優れているわよ?」

 

 

虚空から紫の声が流れると、何もない空間に紫色の穴が空き、その穴を通って瀕死の天の助と首領パッチが落ちてきた。間一髪のところを紫が助けたようだ。二人を床に落とすと、宙に浮かんだ穴の縁に紫が腰掛けて、こちらに問い掛けた。

 

 

「あなたの妹さんの遊び相手には丁度いいんじゃないかしら?」……と、

 

「冗談じゃないわ。あんなのと関わったら……一体どんな影響を及ぼすのか分かったもんじゃない。

 とっとと連れ帰ってくれないかしら?」

 

 

強めに睨み付けて連れて帰るよう促すが……紫で微笑で受け止め

 

 

「確かに彼らと関わることは教育上よいとは言い難いわね。でも…」

 

 

反論するかと思えば、あっさりと認める紫。

彼女はこちらと視線を合わすと強く意志を込めた口調で言い放った。

 

 

「それも突き抜けていけば新たな道となるわ

 

 

なってたまるか!!!!

 

 

この後、紫は自分の作った穴を通って帰っていった。

三人のバカを残して…

 

 




(´・ω・)にゃもし。

続いた。

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