レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

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紅魔館にマッスルな婆さんがやって来て…
留守番組と討伐組


 

 

人の良さそうな柔和な笑みで物騒なことを平然と宣う紫。

 

紫が語る件の組織は──巨大人型ロボットに乗った緑髪の巫女の手によって本拠地を完膚無きまでに破壊し尽くされて壊滅した……と思っていたが、どうやら連中はゴキブリ並にしぶといらしい。

まあ、あのじいさん(セイント・バレンタイン)とモヒカンがいるとこだし…

 

 

「──でも連中の居場所は……って、うちには咲夜がいたわね」

 

 

モヒカンたちを率いたセイント・バレンタインの襲撃以降は紅魔館に滞在している咲夜。

彼女はここ(紅魔館)にくる前はその組織に所属していた。

組織にいた彼女ならば連中がいそうな場所を知ってても不思議ではない。

そのことは予想していたのだろう、咲夜が戻るよりも早く紫は答えた。

 

 

車で 5分 行ったところに組織の支部があるわよ?

 

車で行ける所にあんの!? しかも5分!?

 

 

予想外に近くにいたことに驚きを隠せないが、襲撃後からだいぶ日数が経っている。

残党がいつまでもその場所に留まっているとは限らない。

 

 

「とりあえず、咲夜が戻ってから全員図書館に移動。それから準備するわよ」

 

 

 

 

── 今 ま で の 借 り を 返 す た め に ね ?

 

 

 

 

その場にいた一同、曰く。

その時の私の顔はなんとも意地の悪そうな表情を浮かべていたそうな。

 

 

 

 

   少女 +α 移動中 NowLording…

 

 

 

 

「──そういうわけで、これから殴りに行こうかと、思っているのよ」

 

「好きにすればいいんじゃない? 私はここから離れるつもりはないから…」

 

 

テーブルの上に広げた魔導書から視線を外さぬまま素っ気ない返事を返すパチェ。

床には無数の書物が無造作に散乱しており、先ほどまでは行儀悪く床に寝そべって本を読むフランの姿があったのだが、今はどこにも見当たらない。

 

 

にゃあ

 

 

代わりに小さい子供が描いたような猫らしき物体が足下でぷるぷると体を振るわせて蠢いていた。

三角の耳がついた丸い頭に、楕円形の体に細い手足をつけただけの雑な作りの、どことなく紅魔館の壁に出現した人型のシミを彷彿させる。もしかして、あの人型のシミもフランが作ったものじゃなかろうか…? それら不気味な物体の出所について問うべく私はパチェに質問した。

 

 

「何これ?」

 

「妹様が魔法で作った猫。しばらくしたら勝手に消えるから大丈夫よ」

 

 

試しに喉を撫でると一丁前にゴロゴロ鳴るし、見た目のビジュアルはともかく確かに猫だわ。

 

 

「別にパチェを連れていくつもりはないわよ。

 私たちはここを離れるから、その間… 紅魔館の周辺に雨を降らしてほしいのよ」

 

「──なるほど。それぐらいなら… 貴女たちが出ていった後に魔法で降らしておくわ。幸い妹様は自室に戻っているから急いだ方がいいわよ」

 

 

私の意図を汲み取り、了承する彼女。

しかし、ボーボボだけは不機嫌に顔をしかめる。

 

 

「この期に及んでフランを仲間外れにするのか?」

 

「勘違いしないでちょうだい。フランのために思ってのことよ。

 495年分もの狂気がすぐに無くなるわけないでしょ?

 何かの間違いでフランが狂気に陥って、周囲に破壊をもたらさないと断言できるの?

 狂気に侵された彼女の厄介さは、あなたたちも承知しているでしょ?」

 

 

言われて押し黙るボーボボ。

首領パッチと天の助も思うところがあるのか沈黙し、どういう原理か頭上にマンガの吹き出しのようなものが出現する。

 

 

「…って、どうなってんの? それ?」

 

 

その吹き出しには口を弧の形に歪ませてケタケタと笑いながら────不気味な人形の腕を持って腹パンをする。または、両手でぬのハンカチをビリビリと破く────を行うフランの映像が映っていた。

首領パッチと天の助の二人はその場面を思い浮かべたのだろう額に汗を滲ませて深く重く頷く。

 

 

「「 ──確かに… 」」

 

そんな過去はなかったよね!? 勝手に捏造するのやめてくれない!?」

 

 

一方、そんな二人の後に続いてボーボボも頭上に吹き出しを出す。

そこに映っていたのは──

 

 

『ここで皆さんに言っておかねばならないことがある』

 

 

メガネをかけた長身の男が大勢の人間の前でそう前置きを置いてから告げる。

 

 

 

 

『オレは 「 爆弾魔(ボマー) 」 だ』

 

 

 

 

──と、

 

 

誰の記憶よ!? っていうか誰!?」

 

「俺たちがこれから向かう場所は戦場になる可能性が高い。

 そんなとこにフランを連れていくわけにはいかないな。

 彼女は戦いと殺し合い、それとは無縁の場所に置くべきだ」

 

「綺麗事言って誤魔化すつもり!?

 それよりもさっきの爆弾魔(ボマー)は何なの!?」

 

「幸い例のアジトは俺が連れてきた婆さんが道案内してくれるそうだ」

 

「なんで私の許可なしに人間をここに連れてくるのよ!?」

 

 

いったいどこから連れてきたのか、東洋人っぽい出で立ちの猫のような雰囲気を放つ老婆がボーボボの隣に立っていた。

 

 

「日本人で今年で九十になる、姫冠と書いて『 ティアラ 』と申します」

 

「なんで日本人がここにいるの!? っていうか何そのキラキラネーム!?」

 

「最近、うちの近所に モヒカン が出てきて困っておったとこなんじゃよ」

 

「そんな害獣が出てきたみたいにモヒカンを……って モヒカン !?」

 

「そういうわけで場所は案内しますので モヒカン の駆除をお願いしますじゃ」

 

「いやいや、別にうちはモヒカン専門の業者でもなんでもないんですけど!?

 専門の業者に依託するように頼まれても困るんですけども!?」

 

 

私が右手をパタパタと横に振って否定しても、婆さんは無視しているのか聞こえていないのか、床に置いてある大きな風呂敷に包まれた荷物を掴んで出発する準備を始めてしまう──のだが……よほど高齢の女性には重たかろう、両手で持ち手を掴んだまま動かせないでいる。

 

 

「ああ、重たいねぇ。なんて重たい荷物なんだい。

 とてもじゃないが私みたいな老人には持ち上げられないよう」

 

 

…なんてことを言い始める。

なら何でそんな物を持ってきた…?

──というより、どうやってここまで持ってきたんだ?

 

 

「この非力でひ弱な老婆のためにこの荷物を持ってくださる…

 勇者は何処かおらんかねぇ!!!?

 

 

黒い瞳がない鋭い三白眼をくわっと大きく見開いて光らせてこちらを見る婆さんに私は思わず叫んだ。

 

 

あからさま過ぎるわ!!!!

 

 

…とはいえ、こんなとこでアホみたいなことで足を止めるわけにはいかず、私は婆さんの代わりに荷物を持つことにした。

 

 

「──って、重っ!? いったい何が入っているのよ!?」

 

 

私やフランならすっぽりと包まれてしまうほどの大きさの風呂敷。

人間よりも遥かに怪力を要する吸血鬼の私でさえ腕がぷるぷると小刻みに震えている。

婆さんは人の良さそうな微笑みでその中身を答えた。

 

 

500kg庭石 ですじゃ 」

 

「そんなもん人に持たせようとするな!! いったいどんな理由で持ち歩いてんのよ!?」

 

「死んだお爺さんから──肌身離さず持ち歩くよう……そう、言われたんじゃよ」

 

「それ絶対嫌がらせでしょ!? あんた、そのじいさんから嫌われてるわよ!?」

 

「何をぬかすか!? 小娘が!! 

 この庭石を常に持ち歩いて体を鍛えろというジジイの愛情がわからんのか!?」

 

 

一気に捲し立てるようにそう言うと上半身が大きく膨れ上がって衣服が弾け飛び、下から老婆とは思えない屈強な筋肉の鎧が露になる。

 

 

「ムダに筋肉がスゴいんですけど!?」

 

 

片腕で庭石を肩に担いで縦横無尽に三次元に図書館をシュバババっと直線的に駆け回る上半身を露出した筋肉ムキムキの婆さん。一応、黒のビキニっぽいものを着衣しているが、ほとんど鍛え上げられた男性の胸部と大差がない。

 

 

「ふははは! 軽い! 軽いぞ! 体が羽のように軽いわ!」

 

「なんかの修行か!?」

 

「ゆっくりしている暇はないぞ! ワシのあとをついてこい!」

 

 

担いでいた庭石を床に置いて、やや前頭姿勢──体を前に傾けた状態で急に走り出す婆さん。向かうその先は図書館の入り口。彼女は走る速度を落とすことなく、そのまま扉を蹴って外へと飛び出した。オリンピックでメダルを取れそうな勢いである。

私たち一同も急いで婆さんの跡を追う。

 

 

「ところで紫はどうしたのよ!? 上で別れたあと姿を見せないんだけど!?」

 

 

ダメもとでボーボボに尋ねてみると返答が返ってきた。

 

 

「飼っている猫にエサをあげなくちゃ、って帰ったぞ?」

 

「あ、そう…」

 

 

もとより期待していなかったとはいえ、ガッカリ感が否めない。

それはそれで良しとするか、正直あの女に借りを作らせてもいいことはない。

 

それにあの女のことだ、今まで残党どもを監視していた可能性がある。

残党が動き出し……アジトを捨て去る気配を感じたからこそ私たちのところに来たのだろう。

 

私たちは残党のアジトへ向かうべく、前を走る婆さんの跡を追った。

 

 

「──っていうか、あの婆さん速くない!?」

 

 

ティアラ婆さんは吸血鬼の全速力をもってしても追いつけないほど速かった。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

私はどうも老人キャラ、筋肉キャラを出すのが好きなようだ。

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