マジカル・プリキュア・ゆかりん♥ -永遠の17才-
科学技術が異常に発達したとある学園都市にある魔法魔術学校に通う美少女ゆかりん -永遠の17才- (自称)はある日の学校への登校途中に人間の言葉を話す紅い瞳を持つ奇妙な白い生き物である「きゅうべえ」と遭遇。その生き物と魔法少女になる契約を交わす。契約を交わしたその日から彼女はマジカル・釘バットを片手に正体不明の敵(モヒカン)と戦うこととなった。──というツッコミどころ満載の内容のアニメだった。
「──結局、あの組織とは関係ありませんでしたね…」
やや口の端をひきつらせて話す咲夜に「…そうね」と返事を返して画面に目を向ける。ちょうど製作に携わった者たちの名前が映し出されていた。
ボボボーボ・ボーボボ
首領パッチ
ところ天の助
八雲一家
「 作ったのお前らか!!!! 薄々、気付いてたけどさ!! 」
意味のない、製作者たちの趣味と暴走で作ったような作品にげんなりしつつ、私はその元凶の一人であるボーボボに問いかけた。
「まあ、要するにあの女──紫は私たちを体のいい囮として使って、手薄になったところを叩いた。 …のが今回の計画なんでしょ?」
「──いや、俺たちも紫から詳しいことは聞かされていない。
ただ、小生意気な吸血鬼の小娘が…」
「小生意気な吸血鬼の小娘って…」
「『不老不死を研究している秘密結社に狙われている』──って馴染みの居酒屋で水を飲んでいい感じに酔っている時に聞かされてな…」
「 馴染みの居酒屋で話す内容か!? それに水!? 水を飲んで酔っぱらうの!? 」
「いわゆるプラシーボ効果ってやつだな」
「プラシーボって、思い込みにも程があるわよ!?」
「それに今まで黙っていたが、実は俺は吸血鬼なんだ。
同じ吸血鬼として何か力になれないかと、自分の意思でここに来たのさ」
「あー、はいはい」
返事するのも億劫となり適当に相槌を打つと、ボーボボが席から立ち上がり… 突如、彼の体が黄金色の光に包まれた。
「今まで日焼け止めを塗って何とか耐えてみせたが、どうやらここまでらしい…」
「日焼け止めで防げるものなの?」
自分の手のひらを見つめるボーボボ。
彼の指先が形を崩して、砂のように細かい粒となって足下に落ちていく。
「 ええ──────ぇぇっっ!!!? 」
「そうか、ボーボボがいつも日傘を差していたのはそういう理由だったのか…」
「私、ボーボボが日傘を差しているとこ見たことないんですけど!?」
納得したと言わんばかりの首領パッチに私はすかさず否定。
天の助は何が悲しいのか、ぬのハンカチを取り出して目元に溜まった涙を拭う。
「ミンナ…ハドラーサマヲ…タノム…!! 」
「ハドラーって誰!? もしかして私!? 私のことを言っているの!? 共通点が一文字もないんですけど!?」
屈託のない笑みを浮かべ、最期の別れでもするかのように片手を上げるボーボボ。彼を覆っている光が徐々に強くなっていき…
そのまま、10分 が経過した。
「長いわ!!!! それに何で塵にならないのよ!? 」
「忘れたのかレミリア? ここは室内だぞ?
それも吸血鬼のために建てられた建物なんだぞ?」
「知ってるわよ!! 貴方が紛らわしい演出をしてるから言ってんのよ!!」
「ふぅ、やれやれだぜ。ちょっと光って体の一部を塵に変えただけなのに…」
「ちょっと光って体の一部を塵に変えただけ──って普通できないし、やる意味があるの!?
そもそも貴方は吸血鬼じゃないでしょ─────がァ!!!?」
ボーボボとの無意味な会話のやり取りに「ぜーはー、ぜーはー」と肩で息を切らす。無尽蔵に体力がある吸血鬼の体だが、ボーボボとの会話は別の意味で疲れる。
「ねぇ、ボーボボ。あのじいさん──セイント・バレンタインを倒して組織を壊滅させる──という目的を達成した以上、ここに留まる理由なんてあるの?」
「つまり、俺たちと別れるのがツラい……と?」──と横から口を挟むのは首領パッチ。
「 今すぐ帰れ って言ってんのよ。紫とは連絡が取れないの?」
こそこそと陰で動き回るあの女が今回の一連の騒動を知らないハズがない。今もこうしてる間に私たちを覗き見してることだろう。
「ちょっと待ってろ。俺が持っている携帯から紫の携帯にかけてみるよ」
「妖怪が携帯って…」
いつものように頭のアフロヘアーが上下に別れて、その中から古めかしい黒電話が現れた。
慣れた手つきでアフロから取り出して床に置き、正座した状態でジーコ、ジーコとダイヤルを回すボーボボ。
「トゥルルル」という呼び出し音がしばらく流れた後、ようやく繋がった。
『──はい、こちら昇竜拳です』
「──あ、紅魔館のボーボボです。ラーメンと半チャーハン、三人前お願いしまーす」
「今すぐ切れ! それにどこにかけてるのよ!?」
ボーボボが電話を切ると同時に空間に一筋の亀裂が入る。
何も無い空間に突如できた亀裂に、ナイフを取り出して身構える咲夜を片手で制し、その間にも件の亀裂が横に大きく広がり──穴が穿たれる。
その奥から紫色のドレスを着た紫が半身を乗り出して顔を覗かせた。
「は~い♪ お久しぶりね♪」
「──って、さっきの電話は紫のとこだったの!? 「はい、こちら昇竜拳です。」って言ってたよね!? 」
「はい、頼まれたラーメンと半チャーハン三人前ね」
行儀よく座って待っているボーボボと天の助の前に並べていく紫。
ただし首領パッチのところには何も置かず、自分のところに置く。
「あれ!? オレの分は!?」
当然、首領パッチはテーブルでラーメンを啜っている面々に問う。
そんな彼にボーボボは煩わしそうにやや怒気を含んだ声で答えた。
「 泥水 でも啜ってろ」
「オレの扱いヒドくね!?」
さすがにこの扱いに憐れんだのか、そっと冷水の入ったコップを差し出す咲夜。
「ありがとよ、サッキュン。心優しいお前には200首領パッチ・ドルをやるよ」
「いえ、結構です。あと、サッキュンと馴れ馴れしく呼ばないでください」
拒否されてるにも関わらず首領パッチは自分の横顔が描かれた硬貨が二枚。それを咲夜の手のひらに乗せると… そっと握らせ、押し付けた。
「たとえ、どんなに距離が離れていようとも… そのコインが道しるべとなってお前を導くことだろう。持っているといい」
「はぁ…」
至極真面目な顔で語る首領パッチに、咲夜が気の抜けた返事をするのも仕方がない。彼女は諦めてポケットにしまいこむ。
「さて食事も済んだことだし、そろそろ本題に入ろうか?」
「オレ水しか飲んでねーんだけど!?」
「 石 でも食ってろ」
「頼むからせめて食えるもんにしてくれよ!」
「咲夜、首領パッチがうるさくて話が進まないから何か適当な物をあげてちょうだい」
「さもこのオレが悪いように!?」
私の指示に「かしこまりした」と言って部屋を出ていく咲夜に何故か後をついていく首領パッチ。
何度も「オレは何も悪くないよな!?」と尋ねる首領パッチに咲夜は「そうですね」と面倒くさそうに答える。
首領パッチがいなくなったことで静かになった部屋。もう一人、天の助がいたハズだが──と彼の方へ振り向くと本を開いて読書に勤しんでいた。ちなみに本の表紙は「ぬ」。それを真剣な眼差しで読んでいる。
ようやく話を始められる状況になったと判断したのか、紫が口を開く。
「単刀直入に言うとあのご老人の組織の残党が残っているから潰してくれない?」
──と、年頃の少女のように弾んだ声と明るい笑顔でそうお願いしてきた。
(´・ω・)にゃもし。
歩くような早さで執筆してます。