レミリア と ボボボーボ・ボーボボ   作:にゃもし。

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紅魔館に束の間の平和がやって来て…
戦い終えて…


 

 

私の肩で「すぅすぅ」と小さな寝息を立てて眠るフラン。

背中にある一対の羽。枯れた枝に水晶をぶら下げたイビツなその羽さえなければ… どこにでもいる人間の女の子の一人に見えたことだろう。

 

そんなことを思いながら彼女の横顔を暫し眺めていると、唐突にその両目が「くわっ!」と見開き、次いで私の両腕を掴んで動きを封じた後、床を片足で蹴って跳び上がる。

 

そこからさらに空中で反り返って上下逆さまになると… 

床に向かって落下────私の脳天を石畳の床に叩きつけた。

 

 

超人十字架落とし!!!!

 

 

ゴッ… という聞いてて痛そうな凄まじい音が脳内に響き、次に激痛が頭に走る。

これには堪らず「うヴぉぉぉ…!?」という乙女にあるまじき呻き声を漏らしながら、私は無様にも頭を抱えてゴロゴロと床の上で右へ左へと転げ回った。

 

そんな様子の私がおもしろ可笑しいのか、我が妹様はボーボボたちと一緒にこちらを指差しつつ腹を抱えて「ぶひゃひゃ」と無遠慮に爆笑。

 

連中の態度に怒りを覚えた私はすぐさま右足を軸にした飛び蹴りを敢行。

未だに笑い転げていて隙だらけのフランの顔面に見事に命中。ついでに当たった瞬間に足首に捻りを入れてダメージアップを図る。

 

これが功を成したのか、後ろにいたボーボボたち三人を巻き込んで吹っ飛ぶフラン。

壁に激突し、全員仲良く気を失って倒れた。

 

少々やり過ぎたかな…? と思いつつ静観するも一向に起き上がる気配を見せない。

フランたちを蹴り飛ばしたことで溜飲が下がり、冷静になった頭で私は今日のやたらと濃かった一日の出来事を思い出す。

 

さしもののボーボボたちといえど連戦に次ぐ連戦には堪えたのだろう。

そしてそれは私にも言えることであって、気がつけば私は床に俯せになって倒れていた。

もっとも私の場合は精神面での披露の方が大きいのだろうが…

 

 

   少女睡眠中 NowLoading...

 

 

「妹様の槍を帽子で防ぐなんて無謀にも程があるわね」

 

 

長テーブルを挟んで向かいにいるパチェが呆れたような物言いで話す。

一晩経った翌日の昼。私を含めた地下にいた者は全員、大図書館に移動していた。

 

あの後いくら待っても戻ってこない私たちに不審に思ったパチェが美鈴にお願いして向かわせたところ……倒れている私たちを発見。とりあえず大図書館に運んだとのこと。フランに関してはさんざん悩んだようだが……気を失っていたこともあって大丈夫だろう、と判断を下して一緒に連れてきた──ということらしい。

 

 

「これで残る問題は上の紅魔館なんだけど、どうするのレミィ?

 いつまでもここ(大図書館)で寝泊まりするわけにはいかないでしょ?」

 

 

──と、大図書館の隅っこで布団を敷いて眠るボーボボたちに視線を向ける。

言外にあの連中をどうにかしろ、と言いたいようだ。

 

グースカと豪快にイビキをかいて眠る彼らの横にはどこから持ってきたのかキングサイズのベッドにいぬさくやを抱いて眠るフランの姿もあった。こちらはでっかい鼻ちょうちんを作って眠っている。

 

 

「お姉様… ス、スイカ丸呑みしちゃダメだよ。

 バカだねー。耳からキュウリを入れると鼻からシイタケが出るんだよ?」

 

 

「うふふ♪」と、何とも意味不明な寝言を口に出して、心底愉しそうな笑顔を浮かべている。

いったいどんな愉快な夢を見ているんだか…

 

 

「とりあえずゴーレムをいっぱい作って、それを家の形に組んでもらう方法があるんだけど…」

 

「イヤよ、そんな不気味な家! 住みたくないし、誰が好き好んで住むの!?」

 

「意外と住む環境にこだわりを持つのね」

 

「ゴーレムの家なんぞ、私でなくとも否定したくなるよ!?」

 

「でも、もう既にゴーレムいっぱい作っちゃったし…」

 

「すでに手遅れ!?」

 

 

四角い魔方陣を通して映し出される外の光景には、紅い色のレンガで造られたゴーレムたちがどこぞの国民的RPGのように規則正しく等間隔で横一列に並んでいた。今にも緊迫感のある音楽が流れてきそうな感じであるが…

 

 

「何で家主の許可なく勝手にやってるのよ!?

 それにゴーレムが紅いのは、もしかしなくてもうち(紅魔館)の残骸ですよね!?」

 

「とりあえず暫くの間はこれで雨風を凌げる場所を確保できるわね…」

 

 

私の苦言にも何のその、宙に浮いている魔方陣を指先でちょちょいとつつくパチェ。

彼女が触れると画面の中のゴーレムたちが鈍重そうな動きを見せつつも移動を始める。

 

 

「ちょっと何勝手にゴーレムに指示を出してるのよ!?」

 

「何って、紅魔館ができるまでの仮の住まいを建ててるとこだけど…?

 私は大図書館から出たくないから、ここから遠隔操作しているのよ」

 

「さも同然のように答えないで! 今すぐ止めて! お願い!」

 

 

無理矢理にでも中断させようと掴みかかるも、パチェは後ろに退いて己の周囲に流水でできた巨大な水の膜──吸血鬼の特性である流れている水を渡ることができない──を利用した結界を展開。こちらを近寄らせない。

 

 

くっ!? こいつ、ここぞとばかりに無駄に抵抗を…!!

 

 

気だるそうな表情のまま立ち塞がるパチェ。その間にもゴーレムたちは着々と作業をこなし、段々と館の形を成していく。ただし外壁は紅いゴーレム。ゴーレムたちの体を壁とした紅い館。ところどころ手足がはみ出ていて、それがある種のオブジェと言えなくもない。

 

 

「ちょっと、パチェ!? まさかアレで終わりじゃないでしょうね!?」

 

 

他人のを見る分にはいいが、自分がアレに住むとなると話は別。

趣味の悪い外観の館に住みたいとは誰も思わない。

 

 

「はみ出ている手足と頭に関しては… 切り落とせば幾らかは見映えがよくなるでしょ?」

 

 

なんてことはないと言わんばかりに言う。

心なしかゴーレムたちがビクッと身を震わせたのは気のせいだろうか…

 

魔方陣に手を翳して聞き取れない小さな声で呪文を詠唱。

ゴーレムの体が炎で熱しられたアメのように溶かされながら、徐々に形を整えられていく。

最終的には──見た目だけならば、以前の紅魔館とほぼ一緒の姿になった。

 

 

「でも整ったのは外側だけで内側は変わってないのよね…」

 

 

そう言って館内を見せる彼女。

ゴーレムの腕や足、頭などの体の一部が紅魔館の至るところから生えていた。

 

 

「ひいいいぃぃぃっ!? 館の内側が手足だらけ────っ!?

 やるんなら最後までやってくれない!? なんか今にも動き出そうなんですけど!?」

 

「催促してるところ悪いけど… 今、MP(やる気)が底を尽きているのよ。

 あと壁のゴーレムはご要望があれば動かせるけど?」

 

「MPの呼び名が『やる気』に聞こえてくるんですけども────っ!?

 あとゴーレムは動かさなくていいよ!」

 

 

やいのやいのと騒ぎ立てる私たちの騒音に目を覚ましたのか、フランが眠い目を擦りながら起き上がり… 首領パッチと天の助も「ふわぁ~」と欠伸を漏らしながら上体を起こす。何故か一緒にいたハズのボーボボの姿がどこにも見当たらない。

 

 

「先生ぇー、アイツがうるさくて眠れません」

 

「実の姉に向かって『アイツ』呼ばわり!?」

 

 

フランが非難がましく先生とやらに告げると… 大図書館の入り口が突如開かれ、部屋から姿を消したボーボボが現れた。

何やら沈痛な表情で私を一瞥すると、両目を片手で覆う。顔と手の隙間から光に照らされた一滴の涙が頬をつたって… ピチャッ…と床に落ちた。

 

 

「皆の睡眠を妨げたその罪。残念だが… でしか償うことができない」

 

私そこまで重罪!?

 

「喰らうがいい… 鼻毛真拳究極奥義ぃぃぃ~~~っっっ!!!!

 

 

鼻毛を数本伸ばして生き物のようにくねらせるボーボボ。さらにゆったりとした動作で両腕を動かす。さながら素手による剣舞のよう──と思ったら懐に手を突っ込んで何かを探し始める。……しかし、いくら懐をまさぐっても出てくる気配はない。

 

 

「おかしい。ここに小銃──ベレッタがあったハズなんだが…」

 

「小銃!? ベレッタ!? 究極奥義が武器なの!? 

 …って何でそんな物騒なものを持っているのよ!?」

 

「仕方ない代わりにこれを使うか…」

 

 

ボーボボが着ている服の下の何処に()()をしまう空間があったのか… 自分の身の丈の半分を持つ銃身──それを複数束ねたガトリングガンを取り出すと…

 

 

ボーボボ波っ! ボーボボ波っ!

 

 

複数の銃身を回転させながら連続的に銃弾を発射。

他人事のように傍観していた首領パッチと天の助に向けて弾丸の雨を浴びせた。

避ける暇もなく身体中を穴だらけにされる二人。断末魔も耳障りな銃声で聞こえない。

 

 

「ありがとうボーボボ。二人のイビキがうるさくて眠れなかったんだよねー。

 これでぐっすりと眠れるよ♪」

 

 

二人が倒れるのを満足気な表情で見届けてからフランはボーボボに礼を言い、さっさと布団にくるまってすやすやと眠りについた。

 

 

私じゃなくてソイツらの方!?

 

 

硝煙が立ち上る二人の──もはや遺体といってもよさそうな首領パッチと天の助の有り様にボーボボは指を二本立てた印を結ぶと彼らに向けて無駄に渋い声で言った。

 

 

「安心せい。峰打ちでござる」…と。

 

 

峰打ちと聞いて、ガバッ!…と起き上がる首領パッチと天の助。

さすがの二人でもすぐに再生させるのは無理だったのか、身体中が穴だらけのままである。

 

 

「峰打ちだってよ、首領パッチ!」

 

「え!? マジで!? よかった~、撃たれたときはもうダメかと思ってたぜ…」

 

 

眉間にある深い銃創からは絶え間なく血が流れ出ており、他にも多数の銃痕の跡がその身に刻みつけられている。

 

 

「思いっきり撃たれてたし、どう見ても致命傷でしょ!?」

 

 

「そんなことよりもここでお昼の食事にするわよ~」…と割烹着を着たボーボボが言う。

 

 

「凄惨な殺人が今しがた起こったとこなんですけど!?」

 

「レミィ。ここは一応、図書館──本が置いてあるから、できれば食事とかは上の紅魔館で済ましてほしいんだけど…」

 

「ゴーレムの手足をどうにかしてくれたら行くわよ!」

 

 

お昼と聞いて「わーい♪」と喜ぶ首領パッチと天の助の二人。フランもまた匂いにつられて目を覚ましたようでベッドから起き上がる。パチェはしぶしぶ「今回だけよ?」と半ば諦めるように了承した。

食欲をそそる匂いとともに運ばれてくる料理の数々。それらを持ってきたのは美鈴と未だ修道女姿の咲夜。

 

 

「おはよう、咲夜。体の調子はどうかしら?

 貴女用の服も何着か用意した方がよさそうね」

 

「……私はここに留まるつもりは──」

 

「──咲夜がいた組織は私たちの手で壊滅。

 貴女は身一つで外に投げ出されたようなもの… 私には貴女を手助けする責任と義務がある。

 ここを出る準備が整うまではこの紅魔館にあるものは遠慮なく利用していいわ」

 

「さっきまでアホ面晒してたクセに、なにカッコつけて言ってるんだかなー」

 

「ボーボボ。首領パッチのご飯は生ゴミでいいわよ」

 

 

イスに座っていた首領パッチを蹴り飛ばし、ついでに隣にいた天の助も殴り飛ばすボーボボ。

「ほらよ。残さず食えよ?」眼前に生ゴミの入ったバケツを二つ。二人の前に置いて席に着く。

とばっちりを受けた天の助に同情をしつつも私たちは少し遅い昼食を頂くことにした。

 

 

「すいません! いくら俺でも生ゴミは無理です!」

 

「甘ったれるな首領パッチ。天の助を見てみろ」

 

 

ボーボボに言われて天の助の方へ顔を向ける一同。

なぜか生ゴミの入ったバケツはなくなり、代わりにジャガイモを使った料理の品々が彼の前に置かれていた。

 

 

「ヤツは錬金術で生ゴミを腐葉土に錬成。切り捨てられたジャガイモの芽を栽培。

 それを調理してジャガイモ料理を作り上げたんだぞ」

 

「ここの図書館に錬金術に関する本がなければ、成し遂げることができなかっただろう…」

 

 

しみじみと頷く天の助に、素直に感心する私たち。

そんな天の助に首領パッチも負けじと錬成を試みてみる。

 

 

「よっしゃー! 何とか肉マンができたぜ!」

 

 

完成したそれを掲げて見せる首領パッチ。

しかし完成したのはそれは肉マンではなく… 小型の動力付きの自動車模型──所謂、ミニ四駆であった。それも首領パッチを模したやつ。

 

 

「「 なんかスゴいのができてる!? 」」

 

 

タイヤを回転させて首領パッチの手から逃れるミニ四駆。猛スピードで一目散に出口へ駆け抜ける。

「あ、待って!俺の肉マン!」と首領パッチが慌てて跡を追って図書館から出ていった。アレを食うつもりなのだろうか…?

 

騒がしいのが一人いなくなったことで静かになる図書館。

やがて誰かが漏らした微笑を機に笑いに包まれた。その中には咲夜も含まれていて… 最初に会ったときに思わせた氷のような冷たい印象。それが微塵も感じられない、年相応の少女がする笑顔を作っていた。

 

 




(´・ω・)にゃもし。

戦闘シーンよりも日常シーン(?)の方が難しかった。
幻想郷に転移するまではこんな感じでいくと思うの…

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