青年の異世界道中~Re:ゼロから始める異世界生活~ 作:カイト
「さて、彼等を追う前に一応は保険を掛けて置こうか」
《保険?》
「あぁ、確実に厄介事・・・いや戦闘になると思うからなこの国の兵士か騎士にでも話が通れば良いのだが」
《詰所にでも行くの?》
「それか巡回中の者に会えればいいのだが」
青年が思案しながら歩いていると
「何か困り事ですか?」
青年が振り向くとこの街では珍しい上も下も純白の服に腰に剣を刺した好青年の様な人物が青年に声を掛けて来た。
「・・・まぁ、困り事って言えば困り事だがアンタは誰だ?」
「おっと、自己紹介がまだだったね。 僕の名前はラインハルト、ラインハルト・ヴァン・アストレアと言います。」
「俺の名前はカイトだ。 それにしても家名持ち・・・貴族の上に騎士様か。 その剣を見るに上位の方とお見受けするが」
「まぁ、そうだね。 剣聖なんて呼ばれたりするけど今は休暇中でね。 ただのラインハルトさ」
そう爽やかに言うラインハルトにカイトは苦笑しながら
「とんでもない大物じゃないか。 役職もそれ相応なのだから護衛は・・・必要を感じられないな」
「ふふ、そう言う事。 で困り事とは?」
「そうだな・・・先程知り合った少年少女の二人組が盗まれた物があるらしく貧民街らしき場所に向かったのだが厄介な事が起きないとは言い切れないのでね。 一応この国の兵士なり騎士なりに話を通しておく必要があるかと思っていた所にラインハルト、キミが現れたって所だ。」
「盗まれたって・・・その物は?」
「さぁ、俺も如何せん通りすがりの状態で彼等に会って助言だけしただけでどう言った物かは聞いていないが相当に重要な物らしい事は察してはいる。」
「・・・少年はともかくとして少女の容姿は」
「とするとやはり彼女は何かしら重要な立ち位置にいるのか・・・あぁ、容姿は煌めくような銀の長髪で瞳は紫紺の将来有望な少女だったな。」
「やはりエミリア様か」
「エミリア・・・それが彼女の名前か」
「あぁ、取り敢えず急ごうもし盗まれた物が本当にアレならば・・・大変な事に」
そう言って歩くラインハルトを追おうとした瞬間、カイトの視界が暗転し
「は?」
カイトは今しがた会っていたラインハルトと一緒に貧民街らしき場所に向かう所だった筈が今、カイトの目に移るのは最初にカイトが立っていた場所に戻っていた。
「・・・どういうことだ?」
《分からないけど・・・どうやら巻き戻った違うね。 別の時間軸に飛ばされた感じだね》
「別の時間軸? 何が切っ掛けで・・・まさかあの場違いな少年が鍵か?」
《状況からみてそうだろうね。 ただ発動条件がどういったものかは分からないけど》
「・・・ふむ、しかし少年を見つけるにしてもその少年がいるのかどうかも分からんのだが」
《ですね。 仮にですがあの少年が発動の鍵だとしてもあの少年が何処にいるのかが分からないとどうにもなりませんからね。》
カイトの言葉に同意しながら胸元のペンダントが明滅する。
「兎に角、件の少年を見つけるのが先だな。 探索・・・いや、それだと遅いか。」
いうなりカイトは路地裏に入り
「認識阻害を発動しつつ飛行魔法を行使」
《了解》
言うとカイトの体が宙に浮かんだと思った矢先、街の上空を飛んでいた。
「この位の高さからなら大体が見渡せるな。」
《キミだから出来る芸当だからね? 普通の人が空を飛んだくらいで下に広がる街の様子をつぶさに見える訳じゃないからね?》
「何をいまさら・・・俺は人間を軽く止めているが、それでもこの世界に来る際にはかなり能力を落としているのだぞ?」
カイトの言葉通りに能力面で言えば肉体はこの世界の最高点にし、魔法が使える程度で他は常人と同じで不意を突かれれば簡単に死ぬし、病気などにも掛かる。 他の技能は完全に封印しての現界である。
《で、件の少年は》
「まぁ、待て・・・探索魔法『エリア・サーチ』」
足下に赤黒い魔法陣が展開すると瞬く間に町全体を覆うようなサイズに拡大する。 無論他の住人に感付かれない様に術式には認識阻害を組み込んだものを使用するほどの慎重さで少年を探す。
「・・・いたぞ。 あの貧民街に移動している様子だ。 ただし」
《単独で動いているみたいだね。 あのエミリアって子とは別行動なのかな?》
「知らんな。 ただ、逆行にしろ時間移動にしろ自身は覚えていて他者は何も覚えていないのではどうしたら分からんと思うが・・・少年が何をするのか気にはなるな。」
そう言ってカイトはその場から少年の下へと急ぐのであった。