ダンジョンで出会ってしまったのは間違っていただろうか?   作:ハヤさん。

11 / 11
書きだめが尽きた...。


第十話[運命狂乱/漆黒人形]

第10話

    [運命狂乱/漆黒人形]

 

 

「ルミナさん...その...」

 

「はい? どうしました?」

 

俺達は、キャンプ場に戻るため、緩やかな山道を下っていた。リューさんと二人っきりとか...平静を保つ事が難しいのは勿論、普通に喋ることも難しい。あぁくそ。なにドキドキしてんだよ。

 

「聞きにくい事なんですが...その、セツナさんと...」

 

...え? もしかして...

 

「もしかして、見られてました?」

 

「...はい。すみません...」

 

...ぬおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!? なにこれ!? 新しいいじめ!? めちゃくちゃ恥ずかしい!! しかもリューさんに、リューさんに見られた!? ...やだ、死にたい。

 

「あああ、あのぉ...その...あれは、深い事情がありまして...」

 

「い、いえ。話せない事ならば構いません。しかし、これだけは教えてください」

 

「はい...?」

 

「...ルミナさんと、セツナさんはそのような関係で...?」

 

...は? そのような、関係...? つ、つまり...? そのような...そのような...そのような...? あっ!!!!

 

「ちっ、違いますよ!!!! 本当に、断じてそのような関係じゃ...!!!

 

てか、リューさんにその疑いは掛けられたくない。

 

「そ、そこまで否定するのもどうかと思いますが...でも、違うんですね」

 

「はっ、はい。俺とセツナさんは仲間ですから」

 

...仲間...そう。俺とセツナさんは仲間だ。だから、そんな関係ではない。

 

「ふふっ。そうですか...良かった...」

 

...? 良かった? どういう意味だろ...? 最近、リューさんの行動は変わってきた。最初、会った時は、軽い会釈程度。料理を運んでくる時は無言。だけど、懸命に声を掛けて、毎日通って...今思えば、なんで俺はあんなに躍起になっていたんだろう? でも、多分。セツナさんと同じなんだろう。あの時のリューさんも、空っぽに見えたんだ。

だから、初めて、おはようございます を言ってくれた時は飛び上がるくらい嬉しかった。いらっしゃいませ と言ってくれた時は、思わず笑みがこぼれた。そして、今。リューさんは、俺に笑顔を向けてくれる。笑顔で、いろんな事を喋ってくれる。

 

それが、とても嬉しい。

 

「...そろそろ見えてきましたね」

 

「あ、本当だ。そういえば、今日の昼食はシチューでしたよ。とても美味しかったですから、リューさんも食べてみてください!!」

 

「そうなのですか? ルミナさんが言うなら、間違いないですね」

 

こんな他愛ない話ができるようになったのも、つい最近で。でも、ずっと前から友達だったかのように、今は仲が良い。今は、これで良い。これで良いんだ。

 

俺は、皆の元へ駆け出した。

 

 

_____________________________________________

 

 

「ふむ...予定と違うな...でも、予定通りっちゃ予定通りなんだよなぁ...」

 

今回のベル誘拐。"ヘルメスは関与していなかった"予定では、ベルを魅惑の覗きに誘い、その後に...という予定であったが、誘おうとした時点で、ベルは居なかった。誰かが、ヘルメスと同じ考えを持っていたという事になる。

 

「ま、これはこれで面白そうだけどね♪ な?」

 

ヘルメスの唇が動く。しかし、その声は、突然吹いた風により掻き消された。

 

 

_____________________________________________

 

 

 

「それは本当か!?」

 

「はい! ベル様が誘拐されたと...見知らぬ人から...」

 

「見知らぬ人?」

 

俺は、キャンプ地に戻ってきていた。そして、そこでは"ベルとヘスティアが拐われた"という話が飛び交っていた。なんでも、最初にヘスティア、その話を聞き付けたベルが、助けにいったのだという。そして、ベルまでも拐われた...と。ん? おい、リリ。お前ヘスティア様の事忘れてない? 絶対忘れてるよね? ねぇ?

 

「はい。黒いローブを着た、背の低い人でした」

 

「...そうか...駄目だ。俺が見てきた限りじゃ、背の低い奴なんて街には居なかった」

 

「リリ、すまん。私にも心当たりが無いな...」

 

くそ...手掛かり無しか...でも、何でベルとヘスティア様を...? 拐った意味はあるのか? 何でだ...何が目的なんだ?

 

 

 

 

「それはね、ムーが遊ぶためなの」

 

突然聞こえた、幼い声。しかし、それに含まれた、凍えるような冷気に俺は、俺達は"ただ呆然と、その少女を見ることしかできなかった。"

 

「はじめまして、お兄ちゃんお姉ちゃん。ムーは、【ムー・ノワルドール】。ムーは、遊びに来たの。だから...」

 

その[ムー]と名乗った少女の後ろから、"漆黒の毛皮を持つコボルトが現れた。"

 

 

「ムーと遊んでくれる?」

 

コボルトが放った漆黒の火炎弾に、俺は反応することが出来なかった。

 

「ルミナさあああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!」

 

刹那、俺の目の前で、疾風が弾けた。

 

 

_____________________________________________

 

 

「...ちっ、ムーの奴勝手に動きやがって...」

 

赤髪の少年は、舌打ちをし、爪を噛む。彼は[ミュート・ガーネット]。ムーと同じ【異端児/ミュータント】である。

 

「...まぁいい。あいつの好きにさせてやるか...」

 

すると上空に、巨大な影が現れる。最上級モンスター[ガーネットドラゴン]を越えた突然変異種[スカーレットドラゴン]。それは、ミュートの側に舞い降り、彼を頭部に乗せ、遥か上空へと飛び立った。

 

 

 

_____________________________________________

 

 

「次、そこなのです」

 

「くっっそ!!! なんだこいつら!?」

 

俺達は、ムーと名乗る少女が放った、二匹のコボルトに苦戦していた。こいつらは、あの少女の命令を聞いているように見える。少女の手に巻き付いている、あの蔦にも見える道具の力なのか? さっきからチカチカ光ってやがる。...とにかく、今は!!!

 

「セツナさん!!!」

 

「おうよ!!!!」

 

俺は、詠唱準備をし、両手を前に重ねる。セツナさんは、人差し指と中指を口の前に立てる。俗に言う忍者ポーズだ。

 

『閃光付与/レクレールサヴェーション』

 

『影入斬裂/シャドウケイズ』

 

俺の身体に電流が走り、血が沸騰したような感覚に陥る。これは身体中が活性化した証拠だ。そして、セツナさんは居なくなっていた。しかし、セツナさんがいた場所からは、長い影が延びていた。そして、一匹のコボルトに、斬撃が走る。

 

「...ルミナ君!!!」

 

「うおおおおおおおおっ!!!!」

 

衝撃により、空中のかち上げられたコボルトの、無防備な腹に俺の双剣が炸裂する。斜め十字型に斬撃の痕が残る。まだまだ!!! 俺は下に降り下ろした剣を上に持っていき、同じ箇所を、次は下から斬りつける。より痕が深くなり、形容できないうめき声がコボルトから漏れる。...あぁ、最低の気分だ。

 

「...だから、もうこんな気分にさせないでくれ...」

 

俺は、止めに剣の痕が交差している中心部分に、剣を突き刺す。そして、一気に引き抜く。びちゃびちゃ と粘着質な音と共に、どす黒い血のような物が身体に付着する。...あぁ、嫌だなぁ...。

 

「なぁ、ムーちゃんよ...止めにしようぜ?」

 

「え? なんで? ムーまだ遊び足りないよ」

 

「...は? がふっっ!?!?」

 

刹那、少女の顔が目の前にあったかと思うと、瞬間的に俺は吹き飛ばされていた。...なんつー瞬発力、それにパワーだ...あの身体からは想像できな...え...?

 

少女は、身の丈に合わない長大な杖を携えていた。そして、その先端から漏れ出す、電流らしき物を帯びた、蒼き薔薇の莖。

 

「これは、[精霊王の杖]。ムーの玩具なんだ...ムーの友達、殺したね...? 絶対に許さない...死ぬまで、ムーと遊んでもらいます」

 

瞬間、俺の閃光は消し飛び、代わりに、蒼き閃光が辺りを包んだ。

 

 

_____________________________________________

 

「...うっ...ここは...?」

 

おかしいな...僕、街を歩き回っていたんだけど...ていうかここどこ? なんか、木に縛られてるし...ん? 隣に誰かいる。

 

「ベル君!! 目が覚めたかい!?」

 

そこには、歓喜の表情を浮かべた、魅力的な胸と、童顔の神様、ヘスティア様がいた。あれ...? 神様...? そうだ!!!

 

「神様!!! 大丈夫ですか!? 怪我とか無いですか!?」

 

「...僕は大丈夫だよ。そんな事より、早く脱出しないと...」

 

あまり時間は、無さそうだからね...

 

 

遠くで、巨大な、遠吠えが響く。それは、異端によって歪められた、黒き巨人[ゴライアス]。このモンスターもまた、漆黒に変異した、変異種であった。

 

 

 

ついに、[迷宮楽園/アンダーリゾート]での、大規模戦闘が、幕を開ける。

 

 

 

 

 

第10話

    [運命狂乱/漆黒人形]

 

 

_____________________________________________

 

 

 




次回が長そうなんで短編にしました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。