突然だが、俺には彼女がいる。
いや、彼女達がいる。
キッカケはここで語るにはあまりに多く、時間が足りない。
時間が足りない理由、それは…。
これから事の顛末を彼女達に語るからだ。
いらっしゃいませー。と店員の声が聞こえ2人の美女が案内され、やってくる。
「ひゃっはろー!」
「こんにちわ、待たせてしまったかしら」
2人の美女こと、雪ノ下姉妹。
かたや美少女、かたや美女。
それに加えて頭も良い才色兼備の彼女達。
「それで?今日は大事な話があると聞いているけれど?」
「うんうん。私もそう聞いたよ?」
(比企谷君と私との関係を姉さんに打ち明けるのね!)
(私と比企谷くんの関係を雪乃ちゃんに打ち明けるんだね!)
やばいどうしよう。
実は二股かけてましたとか言えるわけがない雰囲気なんだが…。
「じ、実はですね。俺付き合ってる人がいるんです」
勇気を振り絞り2人にそう告げた。
「主語が抜けてるよ?誰が誰と付き合ってるか雪乃ちゃんに教えてあげて?」
「姉さんが何を言っているのかわからないのだけれど…。さぁ比企谷君、誰と付き合っているのか姉さんに教えてあげなさい」
「ん?」
「え?」
やばい。俺の彼女と彼女が最高に修羅場っている件。
と、ライトノベルのタイトル風に言って軽い現実逃避を挟んでも状況は変わらない。
だが、この状況を打破しなきゃここから進めそうにないしなぁ…。
「まず、雪乃。俺はこちらの雪ノ下陽乃さんと付き合っている」
「そして陽乃さん。俺はこちらの雪ノ下雪乃と付き合っています」
「「は?」」
やめてそこハモらないで!
その冷たい2人の視線がビクンビクン…なんて冗談が挟まる空気ならよかったのに…。
「つまり、比企谷くんは二股してたってこと?」
「…端的に言えば」
はぁーと深い息を吐き、2人は目を閉じて思案の表情を浮かべていた。
「じゃあ今日の話はどちらかと別れたいということでいいのよね?」
「あーあ可哀想に雪乃ちゃん。雪乃ちゃんはまた選ばれないんだね」
「あら?比企谷君が別れたいのは姉さんの方かもしれないわよ?」
「「……」」
そうして2人がお互いに釘を刺しあっていた。
それどころか多少睨み合いまでしているんですが…。
お互いの顔が近くてチューでもするのかと八幡ドキドキしちゃう!いやこのドキドキは全く別のものですねはい。
「それで比企谷くんはどうするの?」
「えーっとですね…」
「比企谷くんも男の子だもんね。多少の火遊びくらいは許してあげる。だから私を選びなさい」
「比企谷君はもちろん私を選んでくれるわよね?というか選びなさい。浮気相手が姉さんというのも少し思うところがあるのだけれど、それはいいわ。2人でやり直しましょう?」
2人には2人の良いところが山ほどある。
陽乃さんはどんな時も一緒にずっと居て、俺が馬鹿をやっても笑ってくれて俺を陽に当て続けてくれる。
雪乃はだらしがない俺を甘やかさず叱咤しながらも一緒に色々と成し遂げてくれる、一見冷たいだけのように見えて実は雪の様に俺の周りに優しさを降りそそいでくれている。
「俺にはどちらか片方なんて選べない」
「…ダメよ比企谷君。決めて頂戴」
「そうだよ。私達はもうどっちが選ばれようともその覚悟はしているんだから」
「俺は2人ともが好きなんです。好きな人と好きな人が一緒に居たら素敵だなって、欲張りだろうけどそうは思わないか?」
「…なんでそれで通せると思ったのかしら。全く思わないのだけれど」
「良いこと言ってなぁなぁにしようとしてる魂胆が丸見えで嫌」
ですよねぇ!!
言ったことは本心だけどそっちの狙いも見逃すはずがないですよねぇ!!
「…はぁ。仕方ないね。ここは雪乃ちゃんに譲ってあげる。お幸せにね」
「嫌よ。私はそんな与えられるような形で幸せを手にしたくはないわ。姉さん、ちゃんと話しましょ」
「…雪乃ちゃん」
このやり取りを見て俺はまたどちらか片方を選ぶという選択肢を捨てた。
「じ、じゃあ1つと1つの関係ではなくて3人で1つの形というのはダメか?」
「姉さんと私で比企谷君を共有するってことかしら…」
「私達きっと独占欲強いよ?君がちゃんと満たせるの?」
「それにそれには色々と問題もあるしルールも決めるようよ?」
俺が変わるのはここだと思う。
2人の女性を好きになってしまった禁忌。
その禁忌には俺の頑張りで応えなきゃ男じゃないぜ比企谷八幡!
「2人にも多少の不満は生まれるかもしれない。でも寂しい思いはさせないから。…多分」
「あっ最後ヘタレたね。まぁそこが比企谷くんらしいんだけど。私は雪乃ちゃんも可愛い可愛い妹だし大好きだからそれでいいけど、雪乃ちゃんは?それでいいの?」
「遺憾ながら、みんなが幸せになるのはそれがベターよね…。まぁ私も昔と違って姉さんはそれ程嫌いじゃないし」
「雪乃ちゃーん!」ダキ
「ちょ、ちょっと姉さん離れて…」
よきかなよきかな。
俺が見たかった光景、好きな人と好きな人が仲良くてその中に俺も混ざる。まさに夢にまで見た光景だ。
「まぁ詳しいルールは後で決めるとして…。姉さん」
「うんそうだね。とりあえず比企谷くんの罰を決めようか?」
「ちょっと?今いい流れじゃなかった?」
「それはそれこれはこれよ。私達を傷付けたのだから報いを受けるべきよ」
「当然当然。さーてどうしてあげようかなぁ」
「お、お手柔らかに…」
「うん、無理」
「無理ね」
こうして俺達、1つと1つは1つになり再出発することになった。
…ちなみに罰は何を受けたかは俺だけの秘密だ。
了