雪ノ下陽乃、城廻めぐり。
俺はこの2人が苦手だ。
なぜなら…。
「あっ比企谷くん、お菓子食べる?」
「ちょっとはるさん!今比企谷くんは私と話してたんですよ」
「えーだって比企谷くん可愛いんだもん」
「それはわかりますけど…」
「ごめんごめん。ほらめぐりにもあげる」
「あの、ちょ、何でもいいんで帰っていいですか?」
「「だーめ」」
こんな感じにやたらと可愛がるというかそんな風に絡んでくるのだ。
俺のパーソナルスペースにナチュラルに入り込んでくる城廻先輩と強引に入り込んでくる雪ノ下さんのコンビはなんというか…強力だ。
「あっカラオケ行こ!」
「はるさんそれ最高です!」
「いってらっしゃい。じゃあまた…」
「え、比企谷くん行かないの?」
「比企谷くん…だめ?」
「だめ!…じゃないかもですはい」
城廻先輩の上目遣いでのお願いを頷けない人はいない(断言)
もしそれを断れても後ろには雪ノ下さんが構えてるという最強の布陣。
あれ?これ詰んでない?
☆ ☆ ☆
「比企谷くんは何歌う?」
「いや聴いてるんで先どうぞ」
「はい!私、比企谷くんの歌が聴きたいです」
「ほら、めぐりもそう言ってるし」
「で、でも1番最初は嫌です」
「じゃあめぐり、あれ歌うよ」
「任せてください!」
デンモクを弄ったあとに曲が始まる。
少し前に流行ったラブソングだ。
愛してるとか好きの部分でチラチラこっち見てくるとか反応に困るからやめてほしいんですけど。
「じゃあはい比企谷くん曲入れてね」
「はぁ…」
とりあえず無難にバラードを歌う俺。
別に歌声に自信があるわけでもないのにそんなに注目されても…。
「〜♫」
「…ねぇねぇめぐり」
「はい?」
「歌ってる時の真剣な表情の横顔よくない?」
「あっそれ凄いわかります!キリッとした表情がキュンってきます!」
「だよね。この低めの声もまたそそる…」
そして無事?一曲歌い終わった。
なにこの緊張感。
というか歌ってる時にヒソヒソ話されると下手だったかな?って勘ぐるからやめてね。
「比企谷くんってバラード好きなの?」
「好きというか明るい歌もキャラじゃないですし比較的聴く歌がバラード系なんですよね。聴くだけならアニソンの方が聴きますけど」
「比企谷くんこの歌知ってる?」
「…知ってますけど。雪ノ下さんこういう歌も知ってるんですか?」
「まぁねー。さっじゃあ歌って歌って!」
「い、いやいや順番が…」
「いいのいいの!ねっめぐり」
と押し切られた。そしてすぐに曲が始まった。
城廻先輩曲入れる準備はやっ…。
「こんなに素敵な言葉がある 短いけど聴いておくれ 愛してるー♩」
「どうしようはるさん!私愛してるの時、目合っちゃった」
「はいはい。気のせい気のせい」
この歌を歌い終え、雪ノ下さんが歌い始めた頃に城廻先輩が俺の耳に顔を近づけ声をかけてくる。
「比企谷くん、歌上手なんだね」
「いやそんなことないと思いますけど」
「ううん、格好良かったよ」
「ど、どうも」
それだけ言うとスーッと甘めの匂いが遠ざかった。
雪ノ下さん俺城廻先輩 の順で並んでるから良い匂いしかしないんだよなぁこの部屋。
この匂いだけ持ち帰りたい。
☆ ☆ ☆
「はぁ歌ったねー」
「ですねー」
待って。おかしい。
順番がおかしすぎた。俺が2曲歌った後に2人のどちらかが歌ってまた俺が2曲の繰り返しだったんですけど。
普通こういうの1人一曲で回るものじゃないの?いや普通を知らんけど。
「ねっ比企谷くんは今日楽しかった?」
「まぁそこそこ…」
「えー私はとっても楽しかったよー?ねっはるさん!」
「だね!でも比企谷くんはそこそこだったんだってー」
「ああもうずるいなぁ…。楽しかったですよ!」
「ふふ、それならよかった」
太陽みたいに笑う2人。
まぁこの笑顔が見れたなら多少の疲れくらい良いかと感じてしまう俺も大概甘い。
「今度はどこ行く?」
「あっ私、次行きたいところあるんですよー」
「か、勘弁してー」
「ははは、やっぱり君は最低だね♫」
やはり俺が歳上2人に可愛がられるのはまちがっている…。
お わ り