俺が通う総武高校には2人の美人教師が居る。
1人は平塚静先生。言わずと知れた生活指導も担当している教諭で俺もお世話になっている。
もう1人は雪ノ下陽乃先生。
俺が入部している奉仕部の部長雪ノ下雪乃の姉である。担当は保健だが、大体は保健室に常駐している。
その後者、雪ノ下先生が曲者なんだよなぁ…。
ちなみに余談だが2人の共通点は白衣である。
☆ ☆ ☆
昼休み、いつも俺はベストプレイスである非常階段の下で昼食を取っていたんだが…。
「あれ?君は確か比企谷八幡くんだよね?こんなところでお昼食べるなら保健室来ていいよ。というか来なさい」
の一言で何日か前から保健室で雪ノ下先生と昼食を取っている。
って保健室って飲食無しなんじゃないの…。
「ん?どうしたの?」
「いや、保健室って飲食ありなんですか?」
「さぁ?いいんじゃない?保健室の先生私なんだし」
「さぁ?って…大丈夫ですかね本当に」
「生徒は細かいこと気にしないでいいの」
「まぁ怒られるのは俺じゃないんで…」
「それより君、雪乃ちゃんと部活一緒でしょ?話聞かせてよ」
絶対この人シスコンでしょ。妹好きすぎて俺に話しかけて来たやつでしょ。
☆ ☆ ☆
雪ノ下先生の噂話をしている男子生徒は多い。
綺麗、可愛い、白衣姿がエロい、怪我してないけど保健室行っちゃう?なんて声もある。
いやいや君たち騙されてるよと言いたい。絶対言わないが。
あの人は裏の顔が怖いタイプの人だろう。部長、雪ノ下にもこれは確認が取れているからまず間違いない。
その日の昼。
「雪ノ下先生って大変そうですね」
「んーそうでもないよ。授業もないしね」
「いや、そのニコニコした顔いつも貼り付けてて」
「…ふーん。君はわかるんだ。流石静ちゃんと雪乃ちゃんのお気に入りだね」
スッ…と表情が消える。
控えめに言って超怖い。
「嘘です何もわかりませんごめんなさいそれでは!!」
「まぁまぁゆっくりしていきなって」
と去ろうとした俺の腕を掴む雪ノ下先生。
いやちょっと?腕に力入れようとしても全然力入らないんだけど?なにこれ。
「あっごめんごめん。合気道嗜んでるだよね私」
「保健室で怪我するところでした…」
「お詫びにお弁当のハンバーグあ げ る」
「いや流石にそんなんで誤魔化されないです」
「君って中々面白いね」
人生でそんなことを言われたのは初めてだが全然嬉しくないんですが。
「少し、君に興味湧いてきたかも。これからもお昼は保健室集合ね」
「いやもう来ません絶対に!」
「ふーん。じゃあ間違えて校内放送とかしたらゴメンね?」
「勘弁して…」
と、俺の毎日の昼の予定が決まってしまった瞬間だった。
☆ ☆ ☆
「そういうわけで雪ノ下、どうにかしてくれ」
「無理ね」
「ヒッキーお昼居ないと思ってたらそんな感じになってたんだ!」
ちっ、妹である雪ノ下に頼めばなんとかなるかと思ったんだが…。
「姉さんは興味がある玩具は壊れるほど遊ぶし興味が無いものには見向きもしないわ。比企谷くん、ご愁傷様」
「不吉なこと言わないでね…」
「けど、実際私にはどうにも出来ないわよ?ましてや相手は教員なのだし」
「ヒッキーとゆきのんのお姉さんが2人きりってなんか嫌かも」
「奇遇だな、俺も嫌だよ」
「まぁ姉さんも姉さんで大変なのだろうし、姉さんを頼むわ」
「へいへい」
☆ ☆ ☆
そして今日も雪ノ下先生の元へ向かう俺…。苦痛ではないから良いけど、なんだかなぁ。
「おっ来たね」
「うっす」
挨拶を交わした後はまず昼食をとる。
「雪ノ下先生って弁当手作りなんすか?」
「そうだよ。雪乃ちゃんとは少し歳が離れてるから小さい頃はよく料理してあげたなぁ」
「あーなるほど」
「小さい時の雪乃ちゃん本当可愛かったんだよ?どこ行くにもついて来たりね」
「はぁ」
と突然始まってしまった妹談義に気の抜けた返事をするしかない。
「でも、雪乃ちゃんには苦労かけるなぁ」
と少し真面目な顔を見せる雪ノ下先生。
「苦労とは?」
「私、両親に大反対されながら教師になったから家の仕事を継ぐのは雪乃ちゃんなのよ」
「両親って確か…」
「建設会社の社長で県議会委員よ」
「スーパーエリートっすね…」
改めて考えると凄い上流階級に感じる肩書きだな。
その令嬢達と昼飯食ったり部活一緒なのかよ俺。
「まぁそんな家だし私はこんなだし雪乃ちゃんの道を狭めちゃったかなーって思ったりもね…」
「でも雪ノ下は嫌なら嫌って言いますよきっと。あいつも誰かに依存して進む道は嫌なはずです」
「そうだといいなぁ。って生徒に話すことじゃないね」
思わぬ形で雪ノ下家の話を聞いてしまった気がする…。
「まぁだからって訳じゃないんだけど会社も継がないし、私って結婚相手は好きに決められるんだよねぇ」
「あー相手の立場気にしなくて済むと」
「そ。極端な話、君とだって結婚出来るわけだよ」
「いや生徒はダメでしょ」
何を言いだすんだこの人…。
俺じゃなかったら本気にして告白して振られちゃうところだったぞ。
「先生と生徒の関係なんて燃えると思わない?」
「いえ全く」
「問題はバレなきゃ問題じゃないんだよ?」
「教師のセリフじゃないんですけど…」
「今は教師と生徒じゃなくて男と女ですもの。違う?」
「屁理屈ですよそれ…」
適当に屁理屈を捏ねるのは俺の専売特許なのに今は雪ノ下先生に押されて屁理屈も出てこない。
「ねぇ君ってめんどくさいってよく言われない?」
「よく知ってますね。結構言われます」
主に小町にめちゃくちゃ言われてる。
「あーもうめんどくさい!」
「え?」
「ねぇ、比企谷くん。保健室ってベットあるんだよ?」
お わ り